【対談】政官癒着構造を打破するために

2002年3月16日

fukukawa_s020328.jpg福川伸次 (株式会社電通顧問、アジア戦略会議座長)
ふくかわ・しんじ

1932年生まれ。55年東京大学法学部卒。同年通産省(現経済産業省)入省。ジェトロ・アムステルダム駐在員、太平首相秘書官等を経て、通産省事務次官に。88年、退官。神戸製鋼副社長を経て、94年、電通顧問兼電通総研代表取締役社長兼研究所長に就任。現在、総合資源エネルギー調査会(経済産業省)、政府審議会委員などを務める。主な著書は『21世紀・日本の選択』『IT 時代・成功者の発想』『日本への警告』等。

muramatsu_m031002.jpg村松岐夫(学習院大学法学部教授)
むらまつ・みちお

1940年、生静岡県生まれ。62年京都大学法学部卒。76年より京都大学法学部教授。87年ワシントン大学客員教授、88年オックスフォード大学(St. Antonys College)客員教授に。著書、「戦後日本の官僚制」でサントリー学芸賞、「地方自治」で藤田賞受賞。その他の著書に「日本の行政」、「行政学教科書」などがある。

概要

鈴木宗男問題は単なる一代議士の問題にとどまらず、政治と官僚の長年にわたる相互依存と癒着という構造的な問題をはらんでいる。この政・官の構造問題をいかに解決すべきかについて元通産(現・経済産業省)事務次官で電通総研研究所長の福川伸次氏と、行政学の権威である京都大学教授・村松岐夫氏に論じてもらった。両氏は政治主導の政策形成の必要性を認識しつつも、政治が予算・法律の執行段階に介入しないような明確な基準づくりが欠かせないと指摘する。

要約

鈴木宗男問題は「1つの事件の切開手術で終わるようなものではない、構造的な問題」(村松)である。この政治と行政の構造問題を解決していくには、「まず政治はどういう役割を担い、行政はどういう役割を担うというコンセンサスをつくることが非常に大事」(福川)になってくる。

政治家は地域で選ばれるが、地域の利益を代表するわけではない。しかし、実際には自分の選挙区の住民に喜ばれるような行動に走りがちだ。公共事業の予算の箇所付けにまで政治家が口を出すのも、選挙対策のためである。

一方、役人は予算獲得段階で与党議員の力を頼る。その議員からの頼まれごとは断りにくいという相互依存関係がある。今、政府主導型の政治システムの必要性が叫ばれており、自民党国家戦略本部は党幹部が大臣あるいは副大臣、政務官として行政府に入るべきだと提言している。だが、現在の相互依存関係を残したまま党の実力者が政府に入れば、予算の執行、箇所付けの権限を持つことになり、さらにひどい利益誘導が起こる危険性がある。

この危険性を排除するためには「国の運営の基本政策や基本方針、あるいは条約、予算、法律、そういうものは政治が決める。そして、決まったことを適切に執行するのが行政という役割分担を明確にする。そして、行政が公平、公正、効率よく運用するために政治は介入しない」(福川)というしっかりとした基準づくりが必要不可欠だ。さらには「国民はどういう政策を提案したかによって政治家を評価する」(福川)という意識改革も欠かせない。そうした基準づくりや意識改革がない限り、政・官の構造問題は解決しない。

そして、その基準どおりに政治と行政が行動しているかどうかをチェックするために、「情報公開と政策評価を継続的に行うことが非常に重要になる」(村松)。それが社会の浄化装置として機能するようになれば、政・官の行動原理は大きく変わってくるはずだ。


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