日本の政治には、日本の未来や課題解決に向けた政策競争よりも国会での権力争いや、選挙目当あてのポピュリズム的な傾向が見られます。また、海外からは日本の政治の失敗が、日本の将来を不鮮明にしているという論評などもなされています。そのような状況を受けて言論NPOは、有識者を対象に日本の政治や政治家に関する緊急アンケートを実施しました。
私たち言論NPOは、6月16日より、ニフティ株式会社と連携し、インターネット上に、現在の日本の政治に対する市民側の有権者参加型討議の SNS『ミニ・ポピュラス』を開設します。このSNSでは「誰がこの国の政治を変えるのか」を第1回目のテーマとして議論を開始します。今回のアンケートはそれに伴い実施されたものです。
アンケートの集計結果からは、「日本の政治は、日本の未来や課題解決に向かい合っておらず責任を果たしていない」、「今の日本の政治には、政治家の全体の質が高まることが問われている」などかなり厳しい見方が広がっていることが明らかになりました。
参議院では問責決議案が可決され、衆議院では信任決議が行われるなど国会終盤で選挙を意識した与野党の攻防は激しさを増しています。そうした日本の政治の現状に回答者は呆れ果てており、そうした権力争いよりも課題解決のための政策競争や政策の実行を求め、そのためにも政治家の質を問うています。
回答者の属性は、男性が92%、女性が8%でした。年齢は20歳未満が1%、20~29歳が3%、30~39歳が6%、40~49歳が23%、 50~59歳が26%、60歳以上が34%でした。また、回答者の職業は、公務員が9%、サラリーマンが10%、民間企業の役員が21%、マスコミ関係者が17%、学者・研究者が8%、NPO・団体関係者が15%、政治家が1%、大学生が3%、自営業が3%、その他が15%となっています。
(※これらの数値は四捨五入したものです。合計が100%にならない場合があります)
日本の政治は「課題解決を先送り」しており責任を果たしていない
調査の結果、浮かび上がったのは、日本の政治が日本の直面する課題に真剣に向かい合っておらず、またその解決を先送りにしていることへの強い批判でした。回答者のうち9割を超える人がそうした現在の日本政治を批判しています。
こうした政治状況を招いている原因としては、「民主党が政権交代や選挙を最優先としていることで、政治が権力争いに終始していること」「福田政権にビジョンやリーダーシップが欠如していること」を挙げた人が、それぞれ3割を超えています。またメディアや有権者自身の責任や、政治家の能力自体を問う見方もそれぞれ3割近くに及んでいます。
また今の政治が全力で解決に取り組むべき政策課題を尋ねたところ、最も多いのは「医療改革」と「年金制度の改革」でした。「消費者の保護」は1%に過ぎません。
【問1、問1SQ、問4参照】
日本の政治に「ポピュリズム」(人気取り政治)の傾向がある
また現状の政治状況にポピュリズムの傾向が見られるかについては、8割を超える人がその傾向を感じており、その半分近くがこの傾向を「非常に問題だ」と考えています。
そう判断した理由で最も多い回答は、「政治家が増税などの国民負担の問題に触れようとないから」の40%で、「与野党が相手のあら探しに固執し、建設的な議論が行われていないから」が34%でした。「政治がテレビなどのメディアの報道を意識し過ぎており、それに振り回されているから」という回答も 30%ありました。
【問2、問2SQ参照】
海外メディアが失望する日本の将来は「悲観派と期待派が半々」
こうした日本の政治に関して、海外のメディアなどで「日本は政治の失敗で世界から孤立し、近い将来二等国に落ちてしまう」などの論調があることについて「まったくその通りだと思う」、あるいは「その通りだと思うが、外国からそのように言われたくはない」と日本の将来を悲観している人は合わせて 44%、「二等国でも、それなりに国としてやっていければいい」も9%ありました。これに対して「まだ日本の将来には可能性はある」は39%で意見が分かれています。
【問7参照】
日本の政治に今必要なのは「政治家の全体の質が高まること」
現在の日本の政治は衆参のねじれや与野党の攻防も激しくなり、福田政権の支持率も下がっています。こうした日本の政治に何が必要かという問いに対する回答で最も多いのは「政治家全体の資質がもっと高まること」の59%で、「衆議院を早期に解散して、有権者から支持を受けた政権をつくること」の 51%を上回っています。
続いて「与野党が今の段階で、それぞれの政策をマニフェストとして国民に示すこと」が50%、「民主党が必要な政策の推進にもっと協力すること」が33%でした。
全体的にはこの状況を選挙で解決することを望むよりも、回答者は、選挙を意識し国会などで権力争いが行われていることに呆れ果てており、政策の競争や政策の実行を求め、そのためにも政治家の質を問うていることが分かります。
【問3参照】
9割近くが「有権者の責任で日本の政治を変えるべき」と回答
こうした日本の政治状況には有権者側の責任があるのか。それを尋ねると「有権者がより責任を持って日本の政治を変えていくべき」と回答したのは89%と9割近くにのぼりました。
この回答者に、では日本の有権者には何が求められているかと聞くと、最も多いのは「税金の使われ方などに関心を抱き、自らの問題として政治に対して当事者意識を持つこと」との回答で74%でした。
次に多かったのが、「政党にきちんとしたマニフェストの作成を求め、それに基づいて政治を監視すること」の38%で、「メディアの報道を鵜呑みにせず、自分で考えて政治を判断すること」も37%ありました。
【問5、問5SQ参照】
各政党の「マニフェストを軸とする政治への意欲」には懐疑的
続いて尋ねたのが、日本におけるマニフェスト政治の在り方に対する現状評価です。マニフェストは日本の国政選挙の際には定着しましたが、それを軸とした約束に基づく政治は実現されているのでしょうか。
これに対して最も多かった回答は「各政党のマニフェストは、実際には名前だけで中身は従来の選挙公約と変わらず、本当の意味での国民との約束を軸とした政治を行おうとしているか疑問である」の61%で、「各政党とも内容の充実はこれからだとしても、それなりのマニフェストを提出しており、日本にもマニフェスト型政治が確実に定着しつつある」の16%を大きく上回りました。「一時のブームとしてのマニフェストはすでに衰退し、今の日本の政治家は、マニフェストを軸とした政治に対する関心を失っているように見える」という声も16%ありました。
【問6参照】
政権交代への期待はあるが、民主党の政策には疑問視
最後は政権交代に関する設問です。ここでは3つの設問を用意しました。まず次の総選挙後の政権交代は実現するのかという見通しを尋ねました。政権交代が「実現する」と回答した人が39%と最も多くなりましたが、「実現しない」も23%、「どちらともいえない」も35%と多く、民主党への政権交代に対してはまだ懐疑的か、あるいは空気が大きく動いていないことが読み取れます。
また現在の民主党への政権交代について「賛成」という回答も40%で最も多くなりましたが、半数には届かず、「反対」が34%、「どちらともいえない」が25%でした。
さらに民主党が打ち出している政策への見方を尋ねると、「財源の裏付けがない人気を取るための政策が多く、政権をねらう政党として無責任である」が45%と最も多く、「政府のムダをなくし、行政の仕組みを変えることで、必要な財源は確保できるという民主党の主張は支持できる」という積極的な賛成意見は11%に過ぎませんでした。
ただし「実際に政権を取れば政策も責任があるものになるので、今は政権交代を優先すべきである」という消極的な賛成意見は22%もあり、今の民主党の政策には不満足だが、政権交代への期待から苦慮している層もある程度見られました。
これらの結果をクロスで見てみると、民主党への政権交代に賛成、あるいは政権交代が実現すると考える層には、政策よりも政権交代を優先する考え方の人が多く、また「どちらともいえない」と答えた層には、民主党の政策を「財源の裏付けがない人気を取るための政策が多く、政権をねらう政党として無責任である」と判断している層が半数程度います。政権交代に反対する人だけでなく、政権交代に賛成する層も、立場を決めかねている層も民主党の政策には納得していないという傾向が浮き彫りになっています。
【問8、問9、問10参照】
日本の政治には、日本の未来や課題解決に向けた政策競争よりも国会での権力争いや、選挙目当あてのポピュリズム的な傾向が見られます。また、海外からは日本の政治の失敗が、日本の将来を不鮮明にしているという論評などもなされています。そのような状況を受けて言論NPOは、有識者を対象に日本の政治や政治家に関する緊急アンケートを実施しました。