農業 : 26点 /100点 |
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実 績
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実行過程
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説明責任
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【実 績】
マニフェストで掲げられた戸別所得補償政策については、米については2010年4月より一年前倒しでモデル事業として実現に向けて動いており、形式的には評価できる。しかし、そのように生産者への配慮が優先される一方で、食品トレーサビリティシステムの確立やBSE全頭検査への国庫補助復活など、消費者の視点に立った食の安全や安心を守る政策はほぼ未着手で後回しとなり、評価できない。また、そもそも戸別所得補償政策は政策目的が曖昧であり、「小規模農家の維持」と「担い手の育成や産業化」とは性質上互いに矛盾するものであり、完全に両立させることは不可能である。支給額は生産調整や自家消費分を考慮すると、50アールの水田作農家の場合で年間3万円程度にすぎず、支給額からも後者の目的が十分達成できるか甚だ疑問である。総じてこの制度は日本の農業をどう再生させるものなのか、それを体系的に説明できるものではなく、高齢化と担い手不足に悩む日本の水田農業の再生の手掛かりを示し切れていない。さらに、他の農業政策との整合性を考えると、米については先行実施する一方で、麦・大豆に関しては自民党政権下で始まった経営所得安定化対策を継続しており、双方のバランスを考慮した全体的な制度設計となっていない。また、中長期のビジョンに関しては、今後10年の農政の方向性をまとめた「食料・農業・農村基本計画」が閣議決定されているが、具体的に農業の担い手をどう育成するのかについては明確な答えを用意していない。食料自給率についても平成32年度の総合食料自給率目標を供給熱量ベースで50%としているが、その具体的な工程や必要な財源は何ら記載されていない。
【実行過程】
赤松前農水省は就任後間もなく、戸別所得補償制度推進本部を設置し、マニフェストの約束を引き継いで、早期に政策の実行プロセスに入ったことは評価できる。一方、「モデル事業」の具体的内容や米の実施前倒しについては前農水相の発言は揺れ動いた上、マニフェストに記載されていなかった所得補償の「定額部分」が突如として浮上しており、政権内の意思統一の乱れが露呈している。さらに、政策決定過程において、同制度の前倒しに伴う5618億円という農水省による大規模な予算要求が実現するにあたっては、党の重点要望が決定的な影響力を与えており、政策決定における政府と党との不透明な関係が浮き彫りになっている。政府主導による政策決定の一元化という観点からも評価はできない。
【説明責任】
赤松前農水相は国会答弁において、戸別所得保障制度の目的として「小規模農家の保護」を説明しながら、全国一律の補償価格による競争促進的要素にも触れている。これらを完全に両立させることは不可能であるにもかかわらず、政策目標の明確化とその実現可能性についての詳細な説明はない。現政権には、この政策を政治的な目的で動かすのではなく、農業の担い手の育成をどういった方策で行うか、日本の農業をいかに再生するのかという、いま日本の農政にとって最大の課題に戦略的・体系的なビジョンを提示することが求められる。これに関してはマニフェストだけでなくこの9カ月の政権運営においても具体的な説明はなされていない。