言論NPOでは、全国各地で選挙戦を行っている各党の候補者にアンケートをお願いしておりましたが、このほど中間集計の結果がまとまりましたので、その結果を報告します。
今回の候補者アンケートは、日本が直面する政治課題をどう認識し、解決の方向をどう描いているかを、候補者に伺うもので、10の党と無所属の388人にアンケートを送付し、7月3日までに回答のあった181人を集計しました。送付者に対する回答者の党別の回答率は、共産党が98.4%と最も高く、公明党は70.0%、社会民主党60.0%と続いています。民主党は33.6%、自民党は34.5%でした。
この調査結果では、候補者の課題認識は少子高齢化の中での財政や社会保障制度などの持続性を軸に、経済と財政と少子化に関心が集中しているものの、その対策に対する認識では政党間でも候補者レベルでばらつきがあることが明らかになっており、また、財政再建や消費税の問題などでは候補者レベルの意識と政党のマニフェストのかい離も浮き彫りになっています。既存政党に関する信頼が低下し、政党の「分解」などが一部で始まる中で、政党が選挙を軸に国民に示すべき政策と、候補者選びが十二分に連動していない、などの問題点も明らかになりました。
まず、候補者の課題認識を明らかにするために、参議院議員になった場合、最初の一年間に優先的に取り組みたい課題を一つだけ挙げてもらいました。
最も多いのは「雇用創出」の35人(19.3%)で、続いて「経済成長戦略の策定と実行」の29人(16%)で、この傾向は党別に見ても同じです。
現在、選挙戦での論点になっている「財政再建の道筋をつくる」と「消費税の増税などの税制改革」を選んだ民主党の候補はいずれもゼロで、自民党も一人(3.4%)に過ぎませんでした。「財政再建の道筋をつける」を選んだ人が相対的に多いのは新党改革の3人(42.9%)とみんなの党の3人(21.4%)で、「消費税増税を含む税制改革に取り組みたい」と答えた候補が最も多いのは共産党の4人(6.3%)でした。
次に、日米関係と日中関係のどちらかが大事かを聞く質問では「どちらも大事」が148人(81.8%)と全体で最も多く、政党別にみても、「どちらも大事」と回答した候補者が9割前後となったのは、社会民主党の9人(100%)、共産党の61人(96.8%)、公明党の13人(92.9%)、民主党の32人(88.9%)でした。
日米関係が大事と言い切る候補者が半数を越えるのは、「たちあがれ日本」の3人(75%)、「みんなの党」の9人(64.3%)で、自民党は9人(31%)、民主党は2人(5.6%)に過ぎません。
さらに、米軍基地が日本に存在することは、必要ではない、と回答した候補者は78人(43.1%)で、このうち63人が共産党の候補者でした。自民党と公明党、新党改革、たちあがれ日本、国民新党の候補者は全員、日本の米軍基地は必要と回答しましたが、社民党と共産党は全員が必要ではないと回答、民主党は、米軍基地は国内に必要とする候補者は26人(72.2%)でしたが、不必要とする候補者も5人(13.9%)いました。
日本の財政は持続可能か、という認識では「このままでは持続可能ではなく、日本の財政は破たんする」と答えた候補者は全体では152人(84%)と8割を超えており、うち公明党、「みんなの党」、「たちあがれ日本」、「日本創新党」は回答者全員、「新党改革」は回答者の85.7%、民主党は80.6%、自民党は72.4%の回答者がそうした危機感を持っています。逆に日本の財政は持続可能と判断している候補者は、民主党が6人(16.7%)、自民党は8人(27.6%)で、国民新党は回答者の2人全員が持続可能と回答しています。
ただし、消費税の増税に賛成か、では「たちあがれ日本」と「日本創新党」が全員賛成しており、自民党は21人(72.4%)の候補者が賛成と回答しています。
これに対して、公明、社会民主党、共産党、みんなの党、国民新党が候補者全員が反対しており、民主党は、菅首相の賛成発言にも関わらず、賛成は8人(22.2%)に過ぎず、反対は13人(36.1%)、無回答が7人(19.4%)などと意見が分かれています。
地方分権では、分権の主役は、知事や市長よりも「住民」と答えた候補者は161人(89%)と圧倒的に多いものの、その対策は、これまで知事などが中心に主張していた霞が関の「権限や財源の移譲」が85人(47%)と最も多く、道州制の導入の29人(16%)が続いています。立法権の地方移譲や住民の行政参加を促す制度の拡充、基礎自治体の強化など選ぶ候補者はわずか1~2%でした。
「道州制の導入」を、「権限や財源の移譲」より多く選んだのは、公明党の11人(78.6%)、新党改革の4人(57.1%)、たちあがれ日本の3人(75%)、日本創新党の1人(100%)でした。
少子化による人口減少という現実に対して、日本の将来にとって決定的に大きな課題という認識を持っている候補者は169人(93.4%)とほとんどでした。こうした認識を持つ候補者に絞って、ではどのような対策をとることが適切かを尋ねると、「保育サービスの拡充などの現物給付」が67人(39.6%)と最も多く、「夫婦が共に働き、ともに家事を分担するワークライフバランスの推進」が26人(15.4%)で続きました。ただし、「その他」も59人(34.9%)と多く、「少子化対策は総合的に行うもので、一つだけに絞れない」の声が特に多くみられました。
ただ、その対策で現行の子ども手当等を通じた現金給付を支持する候補者は国民新党の一人しかおらず、その政策を進めた民主党候補者もそれを選択した人はゼロで、民主党が進めた子ども手当には党内外の候補者に不評なことが分かります。
さらに、年金政策では人口減少と高齢化の進展で、若い世代への負担が高まっています。この現実に対する認識を探るために、あえて候補者に「地元の年金受給者に、皆さんの年金を月5000円減らすと、説明できるか」と設問をぶつけてみました。これに対して、「できる」と答えたのは25人(13.3%)、「できない」が49人(27.2%)、「説明する必要がない」が71人(38.9%)でした。このうち、「できる」という声が多かったのは、自民党の9人(31%)、みんなの党の4人(28.6%)、新党改革の2人(28.6%)、民主党の10人(27.8%)で、公明党、社会民主党、共産党、たちあがれ日本、国民新党、日本創新党は、「できる」と回答した人はいませんでした。
コメの生産調整に関して、「米価を維持するために生産調整を維持すべき」と考える候補者は17人(9.4%)と少なく、「選択的な生産調整で継続すべき」が80人(44.2%)で、「段階的に廃止すべき」が54人(29.8%)だった。段階的な廃止を主張する候補は、社会民主党が6人(66.7%)、みんなの党が13人(92.9%)とこの二党が目立ちました。
また、今後の農業の担い手として大事にすべき人たちに関しては、「差をつけず全農家」が112人(61.7%)、「専業農家」が29人(16%)、「新規参入者」が23人(12.7%)で続きました。
担い手として「専業農家」と「新規参入者」が多いのは、自民党と公明党であり、自民党の候補者は「専業農家」と「新規参入者」を合わせると11人(37.9%)、公明党は12人(85.8%)となりました。
最後に、日本の政治に関して二つを問いました。
一つは、現在の政治が、官僚たたきだけに傾斜しており、政治家が優秀な官僚を使いこなしていない、という意見に賛同するかどうかの設問です。賛同する候補者は132人(72.9%)と多く、「そうは思わない」と考える候補者は37人(20.4%)を大きく上回りました。この37人のうち、20人を民主党の候補者が占めています。
「政治とカネ」をめぐる問題で、国民の信頼を回復するための方策を問う設問では、最も多かったのは「企業・団体の献金禁止」の128人(70.7%)であり、政党別で見てもほとんどの政党の候補者が、これを選択しています。一方で、自民党だけは「秘書と政治家との連帯責任の明確化」が13人(44.8%)と最も多く回答しています。
言論NPOでは、全国各地で選挙戦を行っている各党の候補者にアンケートをお願いしておりましたが、このほど中間集計の結果がまとまりましたので、その結果を報告します。