福田政権の100日評価」 アンケート結果
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現職の官僚や記者・学生・経営者などが判断した「福田政権の100日評価」では、支持率は31.9%で安倍政権時の100日評価(24.0%)と比べて、相対的に高くなっていますが、政権発足後100日経った現段階でも、6割近くの回答者は「何を目指す政権か分らない」と答えています。
福田政権に期待される役割として、構造改革路線を継続しながら「歪みを修正する」ことと答えた回答者は4割おり、また3割の回答者が、「壊す」段階から新しいものを「組み立てる」段階に移るべきと考えています。しかし、そうした役割を福田政権に期待できるかについては、「期待できない」が 39.2%となる一方で、「分からない」は20.5%から27.7%に7.2%増加し、3割近い有権者が福田政権の実力を見極めかねている状況になっています。
さらに、福田政権の性格は「暫定的な選挙管理内閣」と見る回答は50.0%にのぼり、解散を求める声は6割を越しています。また一方で民主党への見方も厳しくなっています。次回の選挙での民主党への政権交代に賛成する回答は43.1%で、反対の27.3%を大きく上回ったものの、選挙の際には民主党マニフェストを書き直すべきとの声は8割にもなり、民主党の政策が十分に支持されていない状況が浮き彫りとなっています。
そうした状況の中で、既存の政党に期待しているかとの設問では、「期待していない」(45.4%)が「期待している」(33.8%)を11.6%も上回っており、有識者の間で、既存の政党への不信が高まっている傾向が目立っています。
「福田政権100日」の全体評価として、福田首相の首相・リーダーとしての適格性と福田政権の政策軸についての8項目の設問を集計した結果、5段階評価で2.3点となりました。これは安倍政権時の2.2点を僅かに上回るものの、項目別に見ると「リーダーシップや政治手腕」「チームや体制」の評価が高くなった一方、「理念や目標」「国民へのアピール度」の評価は低下しています。また、福田政権の個別政策評価では、「適切」と「今後は期待できる」を合わせて半数以上になったのは「中国や韓国とのアジア外交」・「対米関係や国連などの外交全般」と外交分野に留まり、ほとんどの政策で期待できないとの声が多くなっています。安倍前政権の100日評価と比べると、「政権の人事」では「適切である」と評価する声が7.7%から19.6%に増加しましたが、前政権で評価が高かった「経済成長」については、「今後も期待できない」が22.6%から48.4%と2倍以上に増加しています。
福田政権が誕生して1月4日に100日が経過しました。言論NPOでは、この100日間の福田政権を各界の人々がどう評価しているのか、緊急にアンケート調査を実施しました。どの政権でも100日程度はご祝儀相場で政権の取り組みを見守る段階といえますが、100日を経過すれば有権者の厳しい監視にさらされることになります。今回の調査は、そうした緊張感ある関係を、政治と有権者の間に作り上げるための試みでもあります。
回答者は現職の中央省庁官僚、新聞記者などを含め260人
アンケートは福田政権の100日を判断しての政権自体の評価や、首相の適格性、さらにはこの100日の間で取り組んだ安倍政権の各分野の政策評価も含めて26の設問で構成されています。
私たちのこうした試みに、260人の全国や地方の新聞社や放送局で働く編集幹部や現場の記者さん、東京大学、一橋大学、慶應義塾大学、早稲田大学、東京医科歯科大学などの学生、さらに霞ヶ関の中央官僚の皆さん、言論NPOの活動に参加している企業経営者、企業幹部、学者などの有識者の計260人に回答を寄せていただきました。
私たちが官僚やメディア、学生にも調査を広げたのは、現在や将来の日本の政策マーケットの
構成員といえる層の認識動向を、私たちの評価作業や評価議論に反映させるためです。
このアンケート結果では、260人の回答をもとに行った分析結果を公表します。その際に同時に行った回答者のコメントは、「260人の発言」と題して2月27日から順次、言論NPOのウェブサイトで公開する予定です。
調査結果の要約
《福田政権の100日に対する認識》
●福田政権の支持率は全回答者の31.9%となり、前回の安倍政権の24.0%と比較して、相対的に高い水準です。最も支持率が高かったのは中央省庁官僚の50.0%で、これは官僚の支持率が44.0%だった安倍前政権をやや上回りました。
●100日時点での福田政権への評価は、政権誕生時に抱いていたものと比べると、「そもそも期待していない」が最も多く40.4%です。この傾向は安倍前政権の100日評価と共通していますが、「期待通り」は前政権と比べると、13.4%から29.2%へと2倍以上に増加しています。
●ただ、100日経った段階でも、福田政権は何を目指そうとしているのか、「分からない」が65.0%に上りました。「分かった」との回答は28.1%に過ぎません。
●福田政権に求められている役割は、小泉政権流の「壊す構造改革」よりも、その歪みを修正することや「新しいものを組み立てる構造改革」だとする回答が合わせて71.1%にのぼりました。この傾向は安倍政権と共通していますが、「構造改革を追及し続ける」は、安倍政権時の14.6%から5.4%に大きく減少しました。またこうした役割を、福田政権が実行できるかという設問に対しては、「期待できない」が最も多く39.2%で、「期待できる」の11.9%を大幅に上回りました。また「分からない」と回答したのは27.7%で、「無回答」の21.2%と合わせると、判断しかねている層も半数近くに上りました。
● 福田政権の性格に対する理解はこの100日の段階では、「暫定的選挙管理内閣」との認識が50.0%、「近いうちに他の自民党政権に交代する不安定な政権」も16.2%で、あわせて66.2%が福田政権は本格政権としての認識には至ってはいません。「本格的な安定政権」は13.5%に留まりました。
●福田政権の政策課題の評価では、また内政課題・外交課題のいずれか、あるいは両方を評価したのは合わせて48.0%で、内政・外交の「いずれも評価できない」の35.8%を上回っています。しかし安倍前政権と比較すると、内政・外政の評価のいずれか、あるいは両方を評価する人は減少しており、特に電撃的な訪中を成功させた前政権と比べて、外交課題を評価する回答者は58.0%から30.0%に大きく減少しました。
●福田政権が取り組むべき課題の上位5位は、年金制度改革、所得格差や地域格差、財政再建、経済成長の継続、地球環境でした。特に「格差」を選んだ人は、安倍前政権時の27.4%から37.3%に増加しました。
●安倍前政権を引き継いだ福田政権の閣僚人事等に対し、「政権自体、選挙までの暫定内閣なのでやむをえない」との回答が39.2%で最も多くなっています。しかし「政権として何を実現するのか自体が曖昧、人事自体に関心はない」も31.6%あり、「積極性がない、準備不足」の16.5%と併せて、 48.1%が福田政権の人事に疑問を感じているか、あるいは無関心でした。
●衆議院解散については、解散すべきとの声が6割を超え、「解散する必要はない」は13.1%に止まりました。解散時期については、「早期解散が望ましいが、予算や関連法案の国会成立までは厳しい」が35.4%で最も多く、「一日も早く解散すべき」」(13.1%)、「サミット以降」(15.8%)を大きく上回っています。
●「福田政権はいつまで続くか」について最も多いのは「次回の衆議院選挙まで」で、半数を超えました。「次回の衆議院選挙以降も当分続く」は、24.5%に止まっています。
《民主党への評価》
●民主党への政権交代に関して、43.1%は政権交代に賛成で、反対の27.3%を大きく上回りました。ただ、「どちらでもない」も25.8%に上っています。
●民主党が政権交代を掲げる場合、民主党に問われる課題の上位3位は、「政策の実行能力」(64.2%)、 「党内部でのビジョン・政策軸の統一」(60.0%)、政策立案能力(33.5%)で、政策の形成能力や実行能力を問題視する回答が多くなっています。
●民主党マニフェストについて、「財源を明確化するためにある程度の修正はやむをえない」が44.3%と最多で、「政権交代を問う衆院選にあわせて作り変えるべき」も33.0%ありました。これらを併せて、民主党マニフェストは修正する必要があるとの見方が8割近くに達し、「次の総選挙でも変更すべきではない」は6.1%に止まりました。
●民主党の消費税をめぐる対応に関しては、「行財政改革だけでは不十分で消費税を含め財源をはっきりさせなければ公約の信憑性を疑う」が55.0%と最も多くなっています。また、「財政バラ撒きを軸にしながら、財源が不明瞭では評価できない」という意見も35.4%で、反対意見が賛成を大きく上回りました。
●農業政策をめぐっては、自民党の農業政策である営農集約への賛成が38.1%で、民主党の個別所得保障に賛成する14.2%を大きく上回っています。一方で、「どちらでもない」との回答は26.9%と一定数に達し、「わからない」も一割あり、判断を保留した層が36.9%に上りました。
《日本の政党に期待しているか》
●「あなたは日本の政党に期待していますか」との設問には、「期待していない」が45.4%と、「期待している」の33.8%を10ポイント以上上回り、既存政党への不信が高まっていることが明らかになりました。
《福田政権の政策評価》
●福田政権の財政再建への取り組みに関しては、23.1%が「財政再建路線は維持しており、一応は評価できる」と回答、「現在の財政再建路線は不十分で、さらに厳しい目標が必要である」が35.0%で最多となっています。ただ、財政再建路線は継続する中で、工夫によって「必要な課題には予算を増やすべきだ」とする回答は25.0%あります。併せて60.0%が財政再建路線を継続すべきと回答しています。
●消費税に関する取り組みについては、社会保障制度構築の主要財源に位置づけたということは認めつつ、「消費税率の引き上げ幅と時期を明示しなければ評価できない」とする回答が38.8%で最も多数を占めました。「消費税以外の選択肢も考慮すべきである」の27.3%と併せると、66.1%が消費税問題の取り組みに注文をつけています。
●独立行政法人改革については、「政権が本気で取り組んでいるか疑問」(48.1%)、「担当大臣の政治的演出に過ぎない」(12.7%)を併せて、 60.8%が政権としての取り組み姿勢に疑問を持っています。一方で、独立行政法人改革の進め方に対する注文もあり、17.0%が「いきなり民営化・廃止は説明不足」と回答しています。
●海上自衛隊のインド洋での給油再開については多くが求めており、「再開に賛成」が28.8%と最も多く、「賛成だが、国民への説明が不十分」25.0%、「自衛隊の派遣などより踏みん込んだ貢献」を求める人も、10.8%となりました。「そもそも給油活動に反対」は22.3%に過ぎませんでした。
●政治とカネを巡る信頼回復について、最も多い回答は「政治資金規正法が成立しても信頼回復は未実現」の45.8%でした。「改正案は評価できるが、首相の(信頼回復への)リーダーシップは疑問」の25.3%を合わせると約7割が厳しい評価をしています。成立した改正案を評価したのは11.9%に止まりました。
●年金未記録の照合問題をめぐっては、この問題が福田政権の責任というよりも「政治全体の責任」とする回答が37.7%と最多でした。また「政府の対応はやむをえない」も11.5%となり、併せて約半数が、福田内閣だけでの問題ではないと回答しています。「完全な公約違反、責任を取るべき」は6.2%に留まりました。
●自民党と民主党との大連立の是非について、全体で最も多かったのが「反対」の37.3%でした。「どちらかと言えば反対」の17.3%と併せて、大連立の反対派が54.6%と半数を超えました。「どちらかと言えば賛成」は18.1%、「賛成」は最も低く6.5%で賛成派は24.6%に留まっています。
《福田政権100日の全体評価》
●福田政権の100日目の全体評価では、福田首相の首相・リーダーとしての適格性と福田政権の政策軸に関する8項目の設問がありました。その回答結果を5段階(5点満点)で評価すると人柄が3.4で最も高く、その他は1点台後半から2点台前半で、平均点は2.3点となりました。これは安倍前政権時の 2.2点を僅かに上回っており、項目別でみると、「リーダーシップや政治手腕」「チームや体制」の評価が高くなった一方、「理念や目標」「国民へのアピール度」の評価が低下しています。
《個別政策項目評価》
●福田政権のこれまでの対応や打ち出している21の政策項目に対しては、アジア外交・対米関係、経済成長以外に良いと評価された政策項目はありませんでした。特に「社会保障制度改革」「年金受給問題」では、「今後も期待できない」が6割を上回っています。
アンケート結果の詳細については言論NPO 事務局 (TEL:03-3527-3972)までお問い合わせください。
「福田政権100日」評価の【調査結果】を公表します。