「日本の知事に何が問われているのか」/石川静岡県知事

2008年1月19日

石川 嘉延(静岡県知事)
いしかわ・よしのぶ
1940年生まれ。64年東京大学法学部卒業後、自治省(現総務省)入省。静岡県総務部長、自治大臣官房審議官、自治省行政局公務員部長などを経て、93年静岡県知事に就任(現在4期目)。知事就任時から「行政の生産性向上」を重視し、日本で初めての本格的な「新公共経営」を確立。2003年には「政令県」制度を中核とする内政構造改革を提唱し、市町村合併の推進や権限移譲に取り組むなど、理論に裏打ちされた地域経営を実践している。

第4話 富士山静岡空港はなぜ必要なのか

 静岡県が空港を持つことの意味は、観光にとどまりません。今の産業力をベースにして、静岡県の企業がアジア地域に800以上の事業場を展開しています。その中のほぼ半数が中国です。そういう人たちのビジネスの往来が結構あります。往来の窓口は絶対に必要なのです。

 東京と名古屋の空港に滑走路がいくつもできるということであれば、私もここに空港をつくることを躊躇していたかもしれません。ところが、相当先まで見通してもそれはできない。国際線の滑走路は、国際比較で航空機の処理量でいくと、今、成田に1.8本程度しかありません。羽田にもう1本できたのを一部国際線に振り向けても、成田と合わせて国際線が3本弱しかない。しかし、このエリアには3,000万人の人口があります。これに対し、圏域人口が 2,000万人のニューヨークには滑走路が9本ある。ロンドン圏は700万人の人口で、名古屋圏よりも少ないのですが、そこに滑走路が今、8本ある。ソウルの仁川も3,750メートル滑走路を2本もつくっています。このように外国から見ると、東京や名古屋の現在の貧弱な空港能力を放置しているのは信じられないほどの状態です。富士山静岡空港はそこの間隙を突いているわけです。そういう意味で、本県にとって必要であると同時に、名古屋や東京の空港能力の不足を補うだけの位置にある。ですから、絶対に多くの人々に活用されます。

 富士山静岡空港で今、確定している路線は、国内便はJALが新千歳に1日1往復、福岡に3往復、ANAが那覇に1日1往復、新千歳が1往復、それから、国際便はアシアナ航空が仁川に1日1往復です。それ以外に、県内の鈴与という企業が小型飛行機を使ったリージョナル航空事業に乗り出すことが決まり、開港後半年以内には飛ばす予定で作業が進んでいます。

 中国は中国南方航空、中国東方航空、上海航空、この3つが非常に興味を示していて、定期便を飛ばしてくれそうな気配です。また、台湾のエバー航空やユニー航空というエバーグリーンの系列会社やチャイナエアライン(中華航空)がチャーター便もしくは定期便を引くという前提で、今、我々と話し合いをしています。香港のキャセイパシフィック航空とドラゴン航空がやはり非常に興味を示していて、最低でもチャーター便が飛ぶ。それもかなり多頻度のチャーター便です。加えて、我々が小当たりに当たって非常に反応がいいのがタイです。これからベトナム、シンガポールとフィリピンにも働き掛けをするつもりでいます。

 静岡県を自立した競争力を持つ経済圏にするために、空港の持つ意味は決定的に重要です。海外とのネットワークは確実にできます。我々の空港の滑走路は2,500メートルですので、東はハワイから、南と西はアジア地域しか、今のところカバーできていません。国内でも成田と結ばれると、大きな意味が出てきます。成田経由で国際線に乗ることができるようになります。

 ターミナルビルは全部、純粋民間でやってもらいます。また、空港全体の管理も、管制以外は空港運営会社に可能な限り委託することにしています。将来的には地方空港で初めての民間による運営を目指しています。経営は、維持管理費を着陸料その他の航空会社の利用料で賄うというスキームになっています。民間活力の導入を図るとは言え、富士山静岡空港の管理運営は県の責任ですから、空港の収支計算は県がやります。5年ぐらいの間に単年度の収支が黒字になって、7年から10年ぐらいの間に累積赤字も解消し、あとはずっとプラスがたまっていくと期待しています。

全5話はこちらから

 「日本の知事に何が問われているのか」をテーマに、全国の知事にインタビューを続行中です。
 現在の発言者は石川静岡県知事です。

1 2 3 4 5