安倍政権実績評価 個別項目の評価結果 【経済再生】
評価項目 | 評価 | 評価理由 |
「経済再生本部」を司令塔に「成長で富創出」ができる経済に転換、名目3%以上の経済成長を達成する。 |
4 | 「成長で富を創出」に関してそのメニューはまだはっきりしていないなど全体的な展望はまだ見えてこないものの、安倍首相が強いリーダーシップを発揮しており、実行に向けて強い意思を示している。また、実際に名目3%以上の経済成長を達成する方向で動いてもいる。 |
5年間の集中改革で、世界で一番企業が活動し易い日本経済と雇用所得の拡大、ハイブリッド経済立国化を進める。 |
4 | ハイブリッド経済立国については、骨太の方針ではその位置づけがやや修正されているものの、依然として実行の意思はあり、説明もなされているが、現時点では判断できない。 |
2%の物価目標を設定し、日銀法の改正も視野に政府日銀が連携し、大胆な金融緩和を行う(第一の矢)。 |
4 | 異次元の金融緩和を実施したが、その政策の効果として想定された、実質金利の低下、金融機関のポートフォリオのリバランス、期待に伴う資産価格の上昇で現時点で実現しているのは、この最後の「期待」の変化だけで、実質金利は下がらず、ポートフォリオのリバランスもまだ現時点では始まっていない。アベノミクスに対する期待は株価の急上昇や急激な円安を一時生み出し、資産効果に伴う個人消費の上昇で1~3月期の成長率の上昇に寄与したが、その実体は現時点では、海外の投資家の期待に火はつけたものの、国内の持続的な期待の上昇として表れたとは言いがたい。ただこれを失敗とみるのは早計であり、その後 マーケットの調整からか株価の減少や不安定化が進んでいるが、むしろこれらは選挙後のスピード感を伴った経済成長への動きを促しているとみるべきで、2%の物価目標自体が2年間で実現するかは、現時点では判断できない。 |
財務省、日銀、民間参加の「官民協調外債ファンド」を創設、基金の外債購入等の方策を検討 |
3 | この公約は撤回され、着手もされなかった。ただ、首相が説明したように、日銀の異次元の金融緩和のもとでは必要性は少なくなったのも事実であり、為替介入に国際的な批判を避けるためにも、取り下げは現実的な判断だと考えられるので公約は撤回したが、その判断は妥当と評価する。 |
今後2,3年は景気の落ち込みや国際リスクに対応できる弾力的な財政運営を推進(第二の矢) |
3 | 「15ヶ月予算」は、アベノミクスのカンフル剤としての役割を果たし評価されるが、現時点で政府が今後2、3年で弾力的な財政運営をすることまでコミットしていたわけではない。第4の矢として説明される財政再建目標と両立した財政運営のシナリオは選挙後に明らかにされるとなっており、現時点で財政運営がどうなるのか判断できない。むしろ、成長戦略の観点からは競争力を高める政府支出のあり方問われるが、国土強靱化に伴う全国的な公共事業拡大が自民党マニフェストでは提起されており、その整合性がわかりにくい。 |
「第一次緊急経済対策」を断行し大型補正と新年度予算で切れ目ない経済対策を行う |
4 | 24年度補正予算と25年度当初予算を合わせた規模は100兆円を超え、15ヶ月予算として切れ目のない財政出動になった。アベノミクスの第2の矢としてカンフル剤の役割を果たしたほか、大型補正等の執行も6月末には95%が実施済みとなっており、今年度の実質GDPの押し上げに大きく寄与している。ただ、大型財政の反動は翌年に顕在化することになり、公共事業主体の弾力的な財政出動と財政健全化のバランスが今後問われることになる。 |
産業競争力会議を設置し成長産業育成に向けたターゲッティングポリシーを推進、戦略目標と集中投資と制度改革 |
4 | まず、産業競争力会議は公約通り設置した。次に、ターゲッティングポリシーという言葉自体は消えたものの、重点分野は定めた。ただし、まだ具体化はされていないため、今後どのように進むのか、その方向性や、実効性については現時点では判断できない。 |
戦略分野ごとに企業の活動のし易さを世界最先端にするための「国際先端テスト」を導入する。 |
3 | 国際先端テスト自体は予定通り実施されているものの、その内実は小粒なものばかりであり、「世界最先端」という目標にはほど遠いのが現状である。ただし、実現の意思はあり、今後さらなる取り組みがなされる可能性もある。 |
世界で勝ち抜く製造業の復活に向けて「産業競争力強化法」を制定 |
4 | 秋に法案提出の方針であり、また、思い切った投資減税を行うと首相が表明しているため、実現の方向に向かっていると評価できる。ただ、それが「世界で勝ち抜く製造業の復活」という目標につながり得るものなのかは現時点では判断できない。 |
日本の立地競争力の復活でイノベーション基盤の強化や法人税の思い切った引き下げを行う |
4 | 法人税の思い切った引き下げについては、自民党が参院選のマニフェストに盛り込んだものの、政府としてはいまだ着手していない。しかし、立地競争力、イノベーション基盤の強化については、日本再興戦略において、手段の提示がなされた。ただし、具体化は秋以降となるため、その実効性については現時点では判断できない。 |
2020年までにあらゆる分野で女性が指導的な地位を占める割合を30%以上とする目標を実現 |
4 | 首相発言などから政権として改善の意欲があることは示されているが、直接的な政策手段の提示はない。保育所の整備による待機児童の解消をはじめとして周辺環境の整備などに対策がとどまっている。 |
国際経済戦略会議を設置、戦略的海外投資や経済連携、国際資源戦略を展開 |
4 | 国際経済戦略会議は設置されていないが、代わりに官邸に経協インフラ戦略会議を設置し、インフラ・システムの海外展開や、エネルギー・鉱物資源の海外権益確保など国際戦略展開について議論し、戦略的かつ効率的な実施を図っている。首相によるトップセールスが行われるなどリーダーシップも見られる。 |
「聖域なき関税撤廃」を前提にする限りTPP交渉参加反対 |
4 | 3月15日、安倍首相は交渉参加を決断、7月の会合に参加することになる。米など重要な農産物5品目を聖域とし、例外化を求める方針で、条件付き参加のこの公約は一応守られたことになる。ただ、この公約は自民党の支持基盤を意識したものであり、国民に対しては、これらの方針が守られない場合、TPP参加がどうなるのか、また、成長戦略の中でこのTPP参加で日本経済がどう変わるのか、説明がなされたわけではない。成長戦略でもTPP参加を軸に経済成長の道筋が見えない。 |
判断基準
1点:未着手、または断念 2点:着手したが、実現の展望がなかったり、既に修正が行われているにもかかわらず、 そのことが国民に説明されていない 3点:着手し、予定通り進んでいないが、一定の成果を上げている 4点:着手し、予定通り進んでいるが、目標を達成できるかは現時点では判断できない 5点:着手し、予定通り進んでおり、実現の方向に向かっている各分野の点数一覧
安倍政権通信簿は2.8点(5点満点)
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