安倍政権実績評価 個別項目の評価結果 【教育】
評価項目 | 評価 | 評価理由 |
「教育振興基本計画」「新学習指導要領」で恒久的な財源確保、OECD諸国並(5%)の公財政教育支出を目指す |
2 | 閣議決定された基本計画では「OECD諸国など諸外国における公財政支出等教育投資の状況を参考とし」と表現され、明確な数値目標を入れることは断念。下村文科相はその理由について、「財務省から相当の抵抗があった」と述べ、明確な説明はしていない。日本の公的な教育投資をOECD加盟国平均に引き上げるには現在の19兆円から年10兆円の支出増が必要とされる。すなわち、「恒久的な財源を確保」するためには、消費税に換算すれば4%分に当たる財源を確保する必要があるが、下村文科相は個人的な考えと断りながらも「教育目的税」構想に言及し、「目的税に限らず、財源確保の方法について議論を深め、できるだけ早く(方策を)打ち出したい」と述べ、文科省内に検討組織を設置した。この議論は開始したばかりであり、財源確保についての見通しはない。 |
「人間力」「基礎学力向上」で全国一斉の学力テストに戻す他、土曜授業を実現、道徳教育の充実などを行う。 |
5 | ・25年度の全国学力・学習状況調査(全国学力テスト)の概要は平成24年12月7日、民主党政権下で決定した。民主党政権では全国学力調査を悉皆調査から抽出調査に切り換えており、下村文科相はこれを悉皆調査に戻すと表明していたが、平成 25 年度は「きめ細かい調査」として悉皆調査で行うこととなっていたので、自民党政権もそのまま実施。自民党政権による本格的な悉皆化は平成 26 年度からとなるが、すでに25年度予算に準備経費を計上しており、また、「全ての子供の課題把握、学校・教職員の指導改善」に活用して学力向上につなげるという方針も変わっていないので、着実な実施が見込まれる。 ・心のノートと道徳教育については懇談会事務局が以下のように工程を示している。「5月、作業部会の第1回会合を開催し、「全面改訂の基本的考え方」に基づき具体的な改訂作業をスタート→ 「作業部会」での検討の進捗状況については、適時「懇談会」に報告し、意見を得た上で、必要に応じ改訂作業にフィードバックさせながら進める。→おおむね9月末までには作業を終え,原稿を完成させる。→印刷・製本・配送を経て、平成26年4月から使用開始」。このように、実施までの工程は極めて明確である。ただ、J-ファイルには道徳教育についての言及はあるが、それを心のノートによって行うという記載はない。民主党政権時代に事業仕分けの対象となり、PDFで配布されているにとどまっていたものをわざわざ大幅に改定した上で復活させるのであれば、その意義・効果などについて明確に説明すべきであるが、特に説明はない。 ・文部科学省が公立学校の「週6日制」復活を検討する中、今年度、土曜授業を予定する公立小中学校がある自治体は全国で12都府県に上る。教える内容を増やした新学習指導要領の実施に伴い、授業時間の確保などが狙いと見られる。教員の負担増の問題などもあり、現状は上限が月2回など限定的であり、完全に導入するなら教員増などさらに体制を整える必要があるが、実現の方向には向かっている。 |
世界トップの教育立国に向け6・3・3・4制の見直し等「平成の学制大改革」実施 |
3 | 教育再生実行本部第二次提言では、「結果の平等主義から脱却し、社会状況や子どもの実態に応じて学校制度を多様化・複線化する」と強調し、子どもの発達の早期化や、「中1ギャップ」等の課題を踏まえて、義務教育段階をはじめとした現行の学校体系の枠組みを見直す、としている。「世界トップの教育立国」を目指すための制度として、早期選抜によるエリート養成を進める上では適合する手法である。しかし、このような複線型の教育体系は、将来の職業選択に応じた早期の教育ルートの分岐を促す制度であるので、各教育間の移動が確保されない限りは「多様な選択」を保証するものではないが、その構想は明らかになっていない。また、議論している委員会等での進捗は遅く、初等、中等、高等教育を一体的に捉えた政策が打ち出されていない。 |
幼稚園、保育所、認定保育園、家庭での子育て支援を充実、幼児教育の無償化に取り組む |
3 | ・衆院選で掲げていた自民党の公約は、無償化の対象を幼稚園・保育所・認定こども園のすべての3~5歳児としていたが、年7900億円もの財源が必要なことから今回は見送った。今回の案でも財政再建を重視する財務省が難色を示していたが、まずは5歳児からの無償化実現にこぎつけた。 ・幼児教育無償化に関する財源確保に関しては、平成27年度から「子ども・子育て支援新制度」がスタートすること等諸般の状況を踏まえながら、幼児教育の更なる質の向上を図る観点から、新たな財源の確保方策について検討を行う (6月6日、幼児教育無償化に関する関係閣僚・与党実務者連絡会議)としている。 |
高校授業の無償化は所得制限に転換 |
5 | 「真に公助が必要な方々のための制度」になるようにするという趣旨、所得制限を導入して確保した財源を、低所得層への支援の充実や、公立と私立の教育費の格差是正に振り分けるというJ-ファイルで掲げた方針は予定通り。ただ、所得制限の導入時期については、財務省、与党と協議し同意が必要。地方自治体への事前の周知徹底、法改正も伴うため、何年度からのスタートになるかは不明であるが、実現には向かっている。 |
大学の9月入学促進と大学生の体験活動の必修化や評価単位化で採用プロセスに活用 |
2 | ・下村文科相は「東大をはじめ秋入学を検討している大学を国がバックアップしたい」と述べた。しかし、大学セクターの現状と課題を鑑みれば、9月入学を最優先課題とする必要性は低い。そもそも、9月入学を最初に提起したのは東京大学であるが、就職問題などを解決できず、6月19日に秋入学への移行を当面見送ることを発表した。また、9月入学を促進するに当たっては、産業界を中心に学生の採用時期等を一体的に改革していく必要があるが、議論の進展は見られず、経済産業省や厚生労働省との調整も停滞している。 ・教育再生実行会議第三次提言では、秋入学に伴う留学に関する奨学金に関して、「国は、企業や個人等との協力による給付型奨学金等を含めた留学費用の支援のための新たな仕組みを、寄附促進の仕組みも含め創設し」とあり、財源の目途は立っていない。 |
教科書検定基準の抜本的改善と近隣諸国条項の見直し |
3 | 自民党内での検討作業は進められており、そこでは具体的な方向性も定められている。ただ、今後中国・韓国等近隣諸国との関係改善を図っていく外交方針に転換するのであれば、安倍首相に中間取りまとめ案を提出しても、政府内での動きが加速するかどうかは不透明。 |
首長が議会の同意で任命する「常勤」の「教育長」を教育委員会の責任者とするなど、教育委員会制度を抜本改革 |
4 | 法案提出の方針は固まっているが、教育委員会制度の改定には国が3分の1、地方が3分の2を負担する義務教育費など国と地方自治体の関係も議論する必要もある。また、教育政策全般において、「国の責任」を強調している方針といかなる関係にあるのか。国と地方の責任は必ずしも対置して捉えるべきではないものの、両者の責任の範囲が不明瞭である以上、政策実行の際の混乱も予想される。 |
大学力の強化のため、大学ビックバンを行うほか、世界トップレベルの大学は特区化し諸規制を撤廃 |
2 | J-ファイルで掲げた大学ビッグバンのうち、「大学強化のための設置基準の見直し」については、「仕組みを構築する」、「学長のリーダーシップを強化」については、「体制の整備を進める」などのような表記にとどまり、現時点では特に具体策を提示しているわけではなく、その他の項目と同様、改革を促すための財源の裏付がない。「大学教育の質の保証徹底を義務化」に関しては言及すらない。「特区化」については、6月14日閣議決定された産業競争力会議の成長戦略に盛り込まれている「地域を限って大胆に規制を緩和する国家戦略特区」を活用して取り組んでいくことが明記されているものの、ここでも具体的な制度設計は明らかになっていない。/td> |
「いじめ防止対策基本法」を成立させ、総合的ないじめ対策を行う |
4 | 安倍政権はいじめ対策において、緊急対策と中長期対策の二段構えで対応している。緊急対策としては、これまで十分に機能していなかった加害児童・生徒を出席停止にする制度の活用を、政府の教育再生実行会議が首相に提言。これを受けて、安倍首相はこの提言内容をスピード感を持って取り組むよう、下村博文文部科学相に指示した。中長期的な対策の一つとしては、いじめ防止対策推進法を制定し、今秋に施行する。以上のように、いじめ対策への取り組みは早く、また、政治のリーダーシップも強く発揮されている。ただ、いじめ対策に絶対的な正解がない以上、「いじめを無くし、一人ひとりを大切に」という目標をどこまで達成できるかは現時点では未知数な部分も多い。 |
判断基準
1点:未着手、または断念 2点:着手したが、実現の展望がなかったり、既に修正が行われているにもかかわらず、 そのことが国民に説明されていない 3点:着手し、予定通り進んでいないが、一定の成果を上げている 4点:着手し、予定通り進んでいるが、目標を達成できるかは現時点では判断できない 5点:着手し、予定通り進んでおり、実現の方向に向かっている各分野の点数一覧
安倍政権通信簿は2.8点(5点満点)
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