評価の視点
社会保障における評価の視点は、各党が現状の年金を含めた社会保障制度をどのように捉え、将来をどのように見通しているのか(課題認識)。仮に現状のままでは持続可能性が確保できないと判断するのであれば、どのような具体的施策を講じるのか(政策手段)。高齢化が進む中で、現役世代が高齢者を支えるという制度自体、そもそも成り立たないのであれば、抜本的な改革が必要になる。以上のような視点で評価を行う。
また、問題意識としては、下記が考えられる。
2004年に成立した「年金100年安心プラン」は、①所得代替率が50%を切らないこと、②保険料の上限を決めること、③基礎年金の国庫負担割合の2分の1への引き上げること、④マクロ経済スライドの導入が主な柱となっている。来年は年金財政の将来見通しを示す財政検証結果が出る年であり、ここで所得代替率50%を切るようであれば、「100年安心プラン」の見直しが迫られる。50%を割らないような法改正なり制度改革を行う必要がでてくる。
また、年金制度が維持されたとしても、制度の維持のために年金が削減されると、5年後、10年度、20年後と高齢者の貧困率はどんどん上がっていく。しかし、本当にそれでいいのか。そもそも年金制度は一体なんなのか、そういったことを改めて考える必要がある。そういう視点も踏まえながら、各党は社会保障制度をどのように考えているのか、とういことを国民に明らかにしなければならない。
また、医療分野の視点として、増大する社会保障費をどう抑え込めるのかである。消費税増額だけで対応できないのは明らかであり、自己負担の増額、免責範囲の拡大、あるいは混合診療の導入なども議論上では視野に入り始めている。保険制度を維持するために負担面だけでなく、保険対象となる医療自体に関する提起をどうするのか。
また、医師不足や偏在に対して政治はどう対応すべきか、ということが課題になっている。こうした点について、政党がどのように理解し、対応しようとしているのかについても、ここでは評価の対象にする。
【 評価点数一覧 / 自民党 】
項 目 |
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形式要件 (40点) |
理念(10点)
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4
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目標設定(10点)
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1
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達成時期(8点)
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0
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財源(7点)
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0
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工程・政策手段(5点)
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0
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合計(40点)
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5
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実質要件 (60点) |
体系性・課題抽出の妥当性(20点)
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2
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課題解決の妥当性(20点)
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0
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政策実行の体制、ガバナンス、指導性と責任(20点)
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0 | |
合計(60点)
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2
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合 計
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7
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【評価結果】自民党 マニフェスト評価 合計 7 点 (形式要件 5 点、実質要件 2 点)
【形式要件についての評価 5 点/40点】
「持続的な社会保障制度の確立」を掲げ、「自助」・「自立」を第一に、「共助」と「公助」を組み合わせ、国民の立場に立ち、持続可能な社会保障制度の構築が掲げられている。しかし、自民党が示す「持続可能な社会保障」とは何なのか。そもそも現在の制度についてどのように考えているのか、何ら明らかにされておらず評価できない。
一方で、医療については、国民皆保険を堅持すること、医師の診療科目別・地域別の偏在の是正などが盛り込まれた。しかし、それを実現するためにどのような道筋を描き進めようとしているのか何ら示されておらず、評価できない。
【実質要件についての評価 2 点/60点】
自民党が示す「持続可能な社会保障制度」が何か示されていない以上、社会保障制度改革国民会議でいくら制度を議論したとしても、必要な見直しにはつながらない。現行の社会保障制度についての認識を示さない以上、社会保障制度の絵姿の提示を先送りにしたと評価せざるを得ない。
医療分野についても、自己負担の増額、免責範囲の拡大、混合診療の導入などについては、何ら示されていない。また、医師不足については、課題として認識はしているようであるが、具体的にどのように是正していくのか明らかにされていない。
項 目 | ||
形式要件 (40点) |
理念(10点)
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2
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目標設定(10点)
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0
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達成時期(8点)
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0
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財源(7点)
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0
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工程・政策手段(5点)
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0
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合計(40点)
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2
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実質要件 (60点) |
体系性・課題抽出の妥当性(20点)
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0
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課題解決の妥当性(20点)
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0
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政策実行の体制、ガバナンス、指導性と責任(20点)
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0 | |
合計(60点)
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0
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合 計
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2
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【評価結果】公明党 マニフェスト評価 合計 2 点 (形式要件 2 点、実質要件 0 点)
【形式要件についての評価 2 点/40点】
昨年成立した「社会保障と税の一体改革関連法」により、当面の年金改革は成果を得たとの認識をしめし、今後も包容力のある「共助社会」をめざし、引き続き、年金・医療・介護・子育て支援等の拡充に取り組むとしており、現在の社会保障制度が持続可能だと党の認識を示したことは評価できる。また、社会保障制度として「充実の医療・介護体制の確立」、「年金の機能を強化」、「万全なセーフティネットの強化」が掲げられているが、その目標自体は曖昧で、その財源は何ら示されてはいない。
【実質要件についての評価 0 点/60点】
党として、現状の年金制度や医療制度で持続可能であるという認識を示したこと自体は、評価できる。しかし、現行制度を維持していく上で、マクロ経済スライドの発動については重要事項であるが、何ら触れられていない。低所得者への年金加算の拡充、被用者年金の適用拡大、高齢者の高額医療制度について、自己負担の上限額を引き下げるなど、更なる機能強化ばかりが示さており、その財源についても何ら明らかにされておらず評価できない。
項 目 | ||
形式要件 (40点) |
理念(10点)
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3
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目標設定(10点)
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1
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達成時期(8点)
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0
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財源(7点)
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0
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工程・政策手段(5点)
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1
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合計(40点)
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5
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実質要件 (60点) |
体系性・課題抽出の妥当性(20点)
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3
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課題解決の妥当性(20点)
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0
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政策実行の体制、ガバナンス、指導性と責任(20点)
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0 | |
合計(60点)
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3
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合 計
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8
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【評価結果】民主党 マニフェスト評価 合計 8 点 (形式要件 5 点、実質要件 3 点)
【形式要件についての評価 5 点/40点】
「年金・医療・介護をすべての世代で支え合い、信頼できる制度」の確立をめざし、「一人ひとりが、かけがえのない個人として尊重され、多様性を認める「共生社会」の実現が示されている。また、国民皆保険、国民年金の堅持なども示されているが、具体的な中身は示されておらず評価できない。また、公的年金制度の一元化、最低保障年金の創設、歳入庁の創設などが掲げられており、民主党としては現状制度の変更が必要と認識していると判断できる。しかし、掲げられている内容は2009年から2012年まで政権に就いていた時に掲げていた目標の焼き直しに過ぎず、反省を踏まえた改善点などに基づき、つくり直されたものではなく評価するのは難しい。【実質要件についての評価 3 点/60点】
公的年金制度の一元化、最低保障年金制度を掲げるなど、現在の社会保障制度については改善する必要があると考えていると推察される。しかし、現状の年金制度や医療制度、また、現状の制度が直面している課題に対して、党としてどのような認識を持っているのか、明確に示されてはいない。ただ、「非正規雇用が増加する中で、国民皆年金を堅持できるよう」に見直そうとしており、制度が直面している課題については一定程度認識している。しかし、公的年金制度一元化、最低保障年金制度などの手段の内容も抽象的であり、単なるスローガンとしか評価できない。
「こどもから高齢者にわたる、持続可能な社会保障制度を構築」し、消費税引き上げによる増収分は社会保障の増減に使う旨、また、社会保障経費について、「以前の自公政権のように一律に社会保障費はカットしません」と抽象的に明記された。しかし、どの層からどのような基準において社会保障費を削減していくのか何ら明示されていない。
医療分野については、自己負担の増額について、高齢者医療について年齢で差別する保険制度について廃止する旨が明記されているが、現行制度をどのように認識しているのか、ということが示されておらず、表現が曖昧で評価できない。免責範囲の拡大、混合診療の導入などについては、何ら示されていない。また、医師不足に対しては、「医療崩壊を食い止める」ための必要事項とされているが、そもそも党として、医療崩壊をどのようにして受け止め、政策体系を組み立てようとしているのか何ら示されていない。
項 目 | ||
形式要件 (40点) |
理念(10点)
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2
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目標設定(10点)
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2
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達成時期(8点)
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0
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財源(7点)
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0
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工程・政策手段(5点)
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2
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合計(40点)
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6
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実質要件 (60点) |
体系性・課題抽出の妥当性(20点)
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4
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課題解決の妥当性(20点)
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4
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政策実行の体制、ガバナンス、指導性と責任(20点)
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0 | |
合計(60点)
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8
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合 計
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14
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【評価結果】日本維新の会 マニフェスト評価 合計 14 (形式要件 6 点、実質要件 8 点)
【形式要件についての評価 6 点/40点】
「社会保障を賢く強くする」ために、社会保障制度の抜本的改革が必要であるとの認識を示し、公的年金の積み立て方式への移行、医療費自己負担の一律化が提示したことは加点事由である。また、社会保障費の増加について認識をしており、年金の支給開始年齢の段階的引き上げ、医療費自己負担の一律化など、高齢者向け給付の適正化などが掲げられている。しかし、実現のための工程は何ら明記されていない。【実質要件についての評価 8 点/60点】
現状の社会保障について、社会保障制度の抜本的な改革が必要であることを明確に示し、受益(給付)と負担(保険料)の明確化を示していることは評価できる。しかし、具体的に公的年金の積み立て方式への移行が示されているが、積み立て方式への移行は、現行制度と新制度の二重負担を強いることになるが、そこについては何ら言及がなされていない。また、医療費自己負担の一律化についてどのように進めていくのかも明らかにされていない。項 目 | ||
形式要件 (40点) |
理念(10点)
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2
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目標設定(10点)
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2
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達成時期(8点)
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0
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財源(7点)
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0
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工程・政策手段(5点)
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2
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合計(40点)
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6
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実質要件 (60点) |
体系性・課題抽出の妥当性(20点)
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4
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課題解決の妥当性(20点)
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4
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政策実行の体制、ガバナンス、指導性と責任(20点)
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0 | |
合計(60点)
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8
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合 計
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14
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【評価結果】みんなの党 マニフェスト評価 合計 14 点 (形式要件 6 点、実質要件 8 点)
【形式要件についての評価 6 点/40点】
「子どもからお年寄りまですべての国民が安心して暮らせるような社会をつくっていくために、次代に即した制度づくりを進めていく」ことを掲げているがその内容は抽象的である。税と社会保険料の一元的管理をする歳入庁の導入、年金の積み立て方式への移行など、改革が必要であることを示しており、一定程度目標を提示している。しかし、その実現に向けた道筋は何ら明らかにされていない。また、毎年増えていく社会保障費の支出の抑制のために、「医療介護一体化保険制度の創設」、「健康保険料及び年金保険料の月収上限を撤廃」、「医療保険財政の健全性を保つため、健康づくり、予防医療、重要化予防に力を入れる」などが提示されている。しかし、その実現に向けた具体的な道筋は明らかにされていない。【実質要件についての評価 8 点/60点】
現状の社会保障についてどのような認識を明確には示していないものの、現状の制度に限界があることは、社会保険料の一元的管理をする歳入庁の導入、年金の積み立て方式への移行など、改革が必要であることを示しており、現役制度が高齢者を支える制度では持たない、ということを示している。しかし、制度改革の実現に向けて具体的な道筋を描き、国民に説明しているとは言えず、単なるメニューの羅列に過ぎない。特に、年金の積み立て方式への移行は、現行制度と新制度の二重負担を強いることになるが、そこについては何ら言及がなされていない。項 目 | ||
形式要件 (40点) |
理念(10点)
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2
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目標設定(10点)
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2
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達成時期(8点)
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0
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財源(7点)
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0
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工程・政策手段(5点)
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0 | |
合計(40点)
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4
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実質要件 (60点) |
体系性・課題抽出の妥当性(20点)
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0
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課題解決の妥当性(20点)
|
0
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政策実行の体制、ガバナンス、指導性と責任(20点)
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0 | |
合計(60点)
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0
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合 計
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4
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【評価結果】共産党 マニフェスト評価 合計 4 点 (形式要件 4 点、実質要件 0 点)
【形式要件についての評価 4 点/40点】
「社会保障の大規模な削減路線と対決し、現役世代も、高齢者も安心できる制度に再生・拡充」することが掲げられている。その手段として、年金削減政策の中止、最低保障年金の創設、医療費窓具口負担や国保料の軽減、後期高齢者医療制度の廃止など、社会保障の拡充のメニューが羅列されている。しかし、これらを実現するための特に財源、達成時期、実現のための工程や政策手段は何ら明記されておらず、評価できない。【実質要件についての評価 0 点/60点】
共産党は、年金支給額の削減、医療費の負担増などに明確に反対の意思を示しており、党としてのスタンスは明確にされている。しかし、それに伴う国の負担をどのような財源を用い実現しようとしているのか、政策実行の体制や責任などについても何ら明らかにされていない。項 目 | ||
形式要件 (40点) |
理念(10点)
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2
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目標設定(10点)
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2
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達成時期(8点)
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0
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財源(7点)
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0
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工程・政策手段(5点)
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0 | |
合計(40点)
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4
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実質要件 (60点) |
体系性・課題抽出の妥当性(20点)
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0
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課題解決の妥当性(20点)
|
0
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政策実行の体制、ガバナンス、指導性と責任(20点)
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0 | |
合計(60点)
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0
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合 計
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4
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【評価結果】社民党 マニフェスト評価 合計 4 点 (形式要件 4 点、実質要件 0 点)
【形式要件についての評価 4 点/40点】
「社会保障は置き去り、消費税増税のみが「一体改革」ではなく、国民本位の社会保障改革に取り組む」ことを掲げ、世界に誇る国民皆保険の堅持、後期高齢者医療制度の廃止、最低所得補償を備えた年金制度改革、年金給付水準の引き下げを止める、などが示されるなど、現行制度は持続可能ではないことの認識の下に政策が組み立てられている。しかし、その実現に向けて、達成時期や財源、工程などは示されていない。また、示された政策の殆どは給付増につながるものだが、その財源の提示もなされておらず、工程などを示しているものはない。【実質要件についての評価 0 点/60点】
「社会保障は置き去り、消費税増税のみが「一体改革」ではなく、国民本位の社会保障改革に取り組む」ことを掲げており、後期高齢者医療制度の廃止、年金給付水準の引き下げなど、社民党としてのスタンスははっきりしている。しかし、それに伴う国の負担をどのような財源を用い実現しようとしているのか、政策実行の体制や説明責任などは果たされていない。また、毎年増える社会保障関係費をどのように削減していくのか、ということには何ら触れられておらず、日本が直面している課題に正面から向かい合っているとは言えない。項 目 | ||
形式要件 (40点) |
理念(10点)
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2
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目標設定(10点)
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0
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達成時期(8点)
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0
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財源(7点)
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0
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工程・政策手段(5点)
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0 | |
合計(40点)
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2
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実質要件 (60点) |
体系性・課題抽出の妥当性(20点)
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1 |
課題解決の妥当性(20点)
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0
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政策実行の体制、ガバナンス、指導性と責任(20点)
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0 | |
合計(60点)
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1
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合 計
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3
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【評価結果】生活の党 マニフェスト評価 合計 3 点 (形式要件 2 点、実質要件 1 点)
【形式要件についての評価 2 点/40点】
「格差をなくして国民が助け合う仕組みをつくる」ことを掲げ、「社会保障制度を見直し、公平・公正な所得再分配を行うこと」、「税財源の最低保障年金と社会保険の所得比例年金の構築による年金制度の一元化」が掲げられており、現状の社会保障を改革する必要があると認識を示したことは評価できる。しかし、これらの政策をどのように実現していくか、何ら明らかにされていない。毎年増えていく社会保障費の抑制や、負担増については何ら触れられていない。また、医療分野についても「地域医療基本法の制定」、「医療・介護制度の充実」が掲げられているが、どのような認識の下、これらの政策が掲げられているか明らかにされておらず、どのように進めていくのか不明である。【実質要件についての評価 1 点/60点】
現在の社会保障制度については改善する必要があると考えていると推察されるどのように実現していこうとしているのか明確に示されてはいない。また、最低保障年金や社会保険の所得比例年金の構築などを掲げてはいるが、小沢氏が民主党時代に提示していたものの焼き増しにか過ぎず、実現の方策にについて何ら明らかにされていない。項 目 | ||
形式要件 (40点) |
理念(10点)
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1
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目標設定(10点)
|
0
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達成時期(8点)
|
0
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財源(7点)
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0
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工程・政策手段(5点)
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0 | |
合計(40点)
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1 | |
実質要件 (60点) |
体系性・課題抽出の妥当性(20点)
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0
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課題解決の妥当性(20点)
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0
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政策実行の体制、ガバナンス、指導性と責任(20点)
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0 | |
合計(60点)
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0
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合 計
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1
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【評価結果】みどりの風 マニフェスト評価 合計 1 点 (形式要件 1 点、実質要件 0 点)
【形式要件についての評価 1 点/40点】
「誰もが納得できる負担と給付のバランスのとれた社会保障制度」の確立を掲げている。しかし、単なるスローガン的な項目を述べているだけであって、具体的にどのようなプロセスで政策を実現していこうとしているのか何ら明らかになっていない。【実質要件についての評価 0 点/60点】
現状の社会保障制度が改革する必要がある、と認識していることは推察される。しかし、具体的にどのような制度設計を行っているのか。負担と給付のバランスのとれた社会保障制度どは何か示されておらず、全体的に全て抽象的で、評価できない。