総論
【政治改革】
2012年秋、議員定数の削減について、自民党・公明党・民主党の3党が合意した。3党の合意文書では、議員定数の削減を「次期通常国会終了までに結論を得た上で必要な法改正を行う」とされていた。ところが、その通常国会で決まったのは、衆院小選挙区の「一票の格差」を是正するため、議席数を5つ削減して定数は増やさない「0増5減」という調整策だけであった。
そのような中、2012年衆院選の「1票の格差」について、最高裁が「違憲状態」との判決を出したことを受け、11月、自民、公明、民主3党は、衆院選挙制度改革は、現行の小選挙区比例代表並立制を維持し、先に定数削減から進める方針を確認した。したがって、目標実現に向けた動きはある。
ただ、定数削減の方法について各党の考えが大きく食い違う状況が続いている。協議は難航が予想され、今後の道筋も見えない。
そもそも、なぜ定数削減をする必要があるのか、という理由についても、各党から聞こえてくるのは「議員自身が身を切る改革を必要がある」というものばかりである。議員を減らすことで、一人ひとりの負担が重くなり、国会が機能不全に陥る可能性がある。議員の数を減らし、かつ、政治の質を向上させようとするなら、衆参二院制の仕組み、選挙制度の仕組みなどを変える必要があるが、そういった視点からの議論はないのが現状である。
【行政改革】
行政改革は、変容する国民ニーズへの対応、危機的な財政状況、社会保障・税一体改革(消費税増税)を前提とした「身を切る改革」などの現下の課題を踏まえると、行政機能や政策効果を最大限向上させ、政府に対する国民の信頼を得るためにも、きわめて重要な取組みとなる。
現在、安倍政権は、首相官邸に行政改革推進会議を設置し、「行政の無駄撲滅」「特別会計改革」「独立行政法人改革」の3つのテーマについて議論が進めている。
とりわけ「独立行政法人改革」は、現自民党政権は今回の改革を「集大成」として位置づけ、これまで議論と廃案を繰り返してきた独立行政法人改革に終止符を打つことを目指している。そして、文部科学省所管の財務経営センターと大学評価・学位授与機構の統合、厚生労働省所管の国立健康・栄養研究所と医薬基盤研究所を統合するなど6独立行政法人を三つに再編する方針を固めたように大きな動きがある。
ただ、今回の独法改革の中で、大きな争点になった、「研究開発法人」では、改革の結果制度が複雑になったし、「UR都市機構」については大胆な改革に踏み込めなかったなど、課題は残されている。
なお、中央省庁改革については特段の進捗はない。
【公務員制度改革】
第1次安倍政権下で成立した国家公務員制度改革基本法は、官僚主導から政治主導への転換、各省縄張り主義の打破、キャリア制度の廃止を三本柱とし、幹部人事の内閣一元管理などを打ち出していた。この基本法は改革の枠組みを定めたものであり、実際の改革には、国家公務員法等の個別法の改正が必要である。しかし、基本法の成立からほぼ5年が経過したが、麻生政権以降、関連法案の提出と廃案を繰り返した結果、いまだに基本法の具体化は実現に至っていない。
第2次安倍政権では、中央省庁の幹部人事を一元管理する「内閣人事局」を新設する国家公務員制度改革関連法案を13年秋の臨時国会に提出していたが、他の法案審議が優先されたため、成立には至らなかった。しかし、法案は衆院で継続審議となり、来年の通常国会での早期成立を目指し、2014年の5月の大型連休後に内閣人事局を設置する方針は変えていない。内閣人事局の設置に向けて、一定の動きはあるといえる。
しかし、審議に入っている国家公務員制度改革関連法案では、意見聴取という形で人事院が内閣人事局に関与する余地が残っており、府省庁の幹部人事を官邸主導で一元管理することができるか、制度運用の面で不透明な部分もある。
ただ、今、なぜ公務員改革が必要なのか、ということについて、もっと国民に説明する必要がある。
安倍政権1年実績評価 個別項目の評価結果 【政治・行政改革】
評価項目 | 評価 | 評価理由 |
衆院議員定数の削減は次期通常国会終了までに結論を得た上で必要な法改正を行う |
2 | 昨年衆院選の「1票の格差」について、最高裁が「違憲状態」との判決を出したことを受け、自民、公明、民主3党は、衆院選挙制度改革は、現行の小選挙区比例代表並立制を維持し、先に定数削減から進める方針を確認した。 ただ、定数削減の方法について比例定数30削減を掲げる自公両党に対し、民主党は小選挙区定数も含めた削減を主張している。また、小選挙区制を廃止し定数の大幅削減を主張するみんなの党や、削減自体に反対の共産、社民両党など、各党の考えが大きく食い違う状況が続いている。協議は難航が予想され、今後の道筋も見えない。 |
「行政改革推進会議」を設置し、省庁改革を政治主導で実行。発足から1年以内に改革計画を立案、3年以内に立法措置 |
3 | 行政改革推進会議は予定通り設置し、議論は「骨太の方針」にも反映されている。 「行政の無駄撲滅」に関しては、行政事業レビューの判定のうち、「廃止」が「抜本的見直し」に統合されたことで、府省に対する削減圧力が後退し、顕著な削減効果には至っていない。 「特別会計改革」については、2014年度に国の特別会計を現在の18から15に減らす特別会計改革関連法案が参院本会議で可決した。 「独立行政法人改革」では、行政改革推進会議が、6独立行政法人を三つに再編する方針を固めた。 ただ、最先端の研究開発を担う公的機関を新たな法人体系に移行する「研究開発法人」については、行革会議の作業部会は反対し、安倍内閣の閣僚間でも意見が割れた結果、監督官庁が2つになるなど複雑な制度になった。また、UR問題については、ワーキング・グループを創設し、議論したものの、内容はURの統治機構を維持したまま、賃貸部分をリースするという折衷案に留まるなど、改革の行方が不透明だったり、実質的な進捗のないものもある。安倍政権は、行革会議が年末に独法全体の組織改革案をまとめるのを受け、来年の通常国会に関連法案を提出する方針である。 また、中央省庁改革については特段の進捗はない。 |
「国家公務員制度改革基本法」を踏まえ改革を断行する |
3 | 国家公務員制度改革関連法案が、国会に提出されたが、衆議院において継続審議となっている。政府は来年春に内閣人事局を設置する方針は変えず、来年の通常国会での早期成立を目指し、内閣人事局は5月の大型連休後にも設置される見通しである。 ただ、内閣人事局には、意見聴取という形で人事院が関与する余地が残った。関与の範囲は曖昧で、実際の制度運用がどうなるか不透明な部分もあるため、基本法に即した改革になるか現時点では判断できない。 さらにいえば、公務員制度改革法案はこれまで何度も国会に提出されたものの、すべて廃案になっているが、この間、政権交代が二度もあり、政官関係は、基本法制定以前とは変わってきている。そのような中、そもそも何のために公務員改革をしようとしているのか、ということについての説明も不足している。 |
各分野の点数一覧
経済再生
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財政
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復興・防災
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教育
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外交・安保
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社会保障
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エネルギー
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地方再生
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農林水産
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政治・行政改革
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憲法改正
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実績評価は以下の基準で行います
・未着手
・着手後、断念したが、その理由を国民に対して説明していない |
0点 |
・着手後、断念したが、その理由を国民に対して説明している
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1点 |
・着手し、一定の動きがあったが、目標達成はかなり困難な状況になっている
・政策目標を修正した上で着手したが、その修正理由を国民に説明していない |
2点 |
・着手し、現時点では予定通り進んでいるが、目標を達成できるかは判断できない
・政策目標を修正した上で着手したが、その修正理由を国民に対して説明している |
3点 |
・着手し、現時点では予定通り進んでおり、目標達成の方向に向かっている
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4点 |
・この一年間で実現した。もしくは実現の方向がはっきりと見えてきた
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5点 |