安倍政権2年実績評価【地方再生】評価結果
【地方再生】総論 | 2.0点(5点満点) 昨年:2.2点 |
評価の視点 |
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地方分権は、地域の政策決定権を中央から、住民に身近な自治体に移すことであり、それに伴い必要となる財源を都道府県や市町村に移すことである。こうした分権はいわば中央集権体制の改革であり、主役である住民に地域の経営や将来に責任を持たせ、地域の創意の発揮により地域活性化に繋がる制度設計でなくてはならない。そうした視点で安倍政権の実績を評価する。 自民党が示している「地方出先機関の広域災害対応力の一層の強化」とは地方出先機関を残すということであり、これまで政府が進めてきた地方分権の動きと道州制とは完全に矛盾している。自民党の公約は、これらを整理するとされてきた。道州制の実現に向けて、自民党の道州制推進本部が議論を行い、道州制導入に向けた基本法案の原案をまとめたが、道州制の導入の最終判断は政府に委ね、一方の安倍首相は2014年10月31日の地方創生に関する特別委員会にて、「道州制の導入については、地域経済の活性化や行政の効率化などを目指し、国と地方のあり方を根底から見直す大きな改革であり、現在、与党において、議論を少しでも前に進めるべくさまざまな意見交換が活発に行われている」と答弁しているが、その形跡は見えず、道州制・地方分権についての議論は下火となっていると言わざるをえない。 一方、道州制・地方分権の議論に代わる形で地方創生の議論が熱を帯びてきた。14年9月5日に「まち・ひと・しごと創生本部」が発足し、「まち・ひと・しごと創生法案」及び「地域再生法の一部を改正する法律案」の地方創生関連2法案が11月21日に可決された。衆院解散で日程は後ろ倒しになっているものの、15年度内に地方人口ビジョン、地方版総合戦略の策定を自治体に求めるなど、かなり速いスピードで動き始めた。地方の人口減少を食い止めるために、スピードアップして課題に取り組むという点は評価できる。 しかし、これまで行ってきた地方分権、道州制の議論と地方創生の議論と何が違うのか。安倍首相は国会の答弁で、「道州制と地方創生については、活力ある地域づくりを目指すという共通点はあるものの、いずれかのみで十分というものではなく、それぞれのアプローチからの取り組みを同時並行的に行っていくことが重要である」と別の政策であると答弁しているものの、その違いは曖昧で分かりにくい。 全体的な自民党の政策からは、安倍政権は、国と地方の役割を大きく変えていこうという今までの思想と違い、地方を縛っている規制から地方を開放して、好きなことをやらせよう、という発想である。つまり、地方分権を規制緩和という視点で実施しようとしており、権限を委譲しようという発想にはなっていないと考えられる。 国と地方の役割、地方創生についての定義づけと、今後、両政策をどう進めていくのか、安倍政権は国民に説明する必要がある。 |
【地方再生】個別項目の評価結果
地方出先機関の広域災害対応力の一層の強化と国と地方のあり方と道州制の議論を整理 【出展:2012年衆院選Jファイル】 |
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「地方出先機関の広域災害対応力の一層の強化」により留保された地方出先機関の移管については、市町村の移管反対等、地方側にも様々な意見があり整理・集約されていない状況である。同様に道州制についても、26年3月には賛成派の知事(8)が方円の成立を求める要請書を自民党に提出する一方で、26年4月には慎重派の知事(8)が自民党に、慎重な対応を求める意見書を提出するなど、都道府県レベルでも意見が割れており、事実上動ける状況にない。 また、道州制について安倍首相は「道州制の導入については、地域経済の活性化や行政の効率化などを目指し、国と地方のあり方を根底から見直す大きな改革であり、現在、与党において、議論を少しでも前に進めるべくさまざまな意見交換が活発に行われている」(14年10月31日地方創生に関する特別委)と答弁しているが、政府として何ら取り組んでいない。 |
国から地方への権限、財源等の移譲を促進 【出展:2012年衆院選マニフェスト】 |
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地方分権改革推進委員会答申の積み残し分に合わせ、第30次地方制度調査会答申(平成25年6月25日)で示された都道府県から指定都市への事務・権限委譲等を推進するため第4次一括法が平成26年6月に公布された。この中には看護師などの各種資格者の養成施設等の指定・監督等の事務権限の都道府県への移譲や都市計画区域マスタープランに関する権限の都道県から指定都市への権限移譲が含まれているが、財源措置や地方の事務支援措置、移譲のスケジュールの,明示等、地方が求めている具体的な検討が進んでいない。
また、義務付け・枠付けの見直しに当たっても依然として「従うべき基準」が多用されるなど、地方の望むような見直しになっていない部分がある。さらには、今年度から実施されている「提案募集方式」については、地方に選択権を委ねたという点では評価できるが、実態は構造改革特区方式の焼き直しに過ぎない上に、省庁間の調整においては後退している印象があり、政府の権限・財源等の移譲に対する熱意を感じることはできない。
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一括交付金は廃止し、地域の経済や雇用増のための新交付金制度を検討する 【出展:2012年衆院選Jファイル】 |
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政府はアベノミクスの効果を地方に行き渡らせるため、平成25年度補正予算において、緊急雇用創出臨時特例基金に「地域人づくり事業」を創設し、地域の実情に応じた多様な人材育成を支援するとともに、雇用の拡大・賃金の上昇に取り組んだ。当該事業を含め、基金事業は地方の経済や雇用の下支えを行うための地方の税源不足を補う側面があり、一定の成果と捉えることはできる。
今後は地方の裁量権を拡大し、さらに使いやすい制度設計が望まれている。また、本来的には、地方が地域経済や雇用増に継続的に取り組むことができるように、案的的な恒久財源での措置が必要であることに留意する必要があることから、高い評価は難しい。 現時点では、人口減少対策として平成25年度補正予算で措置された「地域少子化対策強化交付金」等が創設されているが、これらは子育て環境の整備や女性の活躍支援等に使途が限られていることから、今後創設される地方創生に係る交付金への期待が高まっている。しかしながら、その規模や創設の時期についてはもとより不明であったが、さらに今回の衆院解散によって混迷を極めることとなり、地方の財政計画に反映が難しくなっている。 |
新地方成長モデルを確立するため、都道府県の産学官が決定の事業に当面5年は国が支援 【出展:2012年衆院選マニフェスト】 |
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13年の「日本再興戦略」で各地域に設置された地方産業競争力協議会が設けられ、各地方の特性に合わせてた地域版成長戦略が取りまとめられた。その後、14年4月21日に地域の成長戦略に関する意見交換会を経て、14年6月の「日本再興戦略・改訂版」に「ローカル・アベノミクス」が明記され、アベノミクス効果の全国への波及や人口急減問題に積極的に取り組む姿勢が強調された。地域ごとに直面する課題は違い、課題の優先順位も異なることから、ボトムアップで地方自ら地域の成長戦略を策定し、地方の活性化を図ろうとした点は評価できる。しかし、新成長戦略に盛り込まれた地方の活性化策は総花的で、具体化の道筋も不明確なものが多く実現性は不透明であり、新地方成長モデルを確立は現時点では判断できない。
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魅力あふれる地方を創生し、地方への人の流れをつくり、経済の回復を全国津々浦々で実感できるようにしていく 【出展:まち・ひと・しごと創生本部】 |
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政府は、2014年9月3日の閣議決定により、人口急減・超高齢化という我が国が直面する大きな課題に対し政府一体となって取り組み、各地域がそれぞれの特徴を活かした自律的で持続的な社会を創生できるよう、内閣に、まち・ひと・しごと創生本部を設置した。その後、11月6日に将来の方向性を提示した「長期ビジョン」骨子(案)、それに基づく5カ年計画である「総合戦略」骨子(案)を12月中に政府決定し、「地方人口ビジョン」、「地方版総合戦略」の策定準備に入る予定だった。しかし、衆議院解散によって延期されている。一方、「まち・ひと・しごと創生法案」及び「地域再生法の一部を改正する法律案」の地方創生関連2法案が可決し、14年11月21日に成立した。しかし、り魅力ある地方の創生、地方への流れをつくり出せるかなどの目標達成に向けた具体化はこれかであり、現時点で目標達成の判断はできない。
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「コミュニティー活動基本法」を制定。NPO等新しい主体との協働を図る 【出展:2012年衆院選マニフェスト】 |
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コミュニティ活動基本法の制定について特段の動きはない。また、それに対しての説明もなされていない。
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各分野の点数一覧
経済再生
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財政
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復興・防災
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教育
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外交・安保
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社会保障
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エネルギー
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地方再生
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農林水産
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政治・行政改革
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憲法改正
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評価基準について
実績評価は以下の基準で行いました。
・未着手、断念
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1点 |
・着手して動いたが、目標達成は困難な状況になっている
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2点 |
・着手して順調に動いているが、目標を達成できるかは判断できない
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3点 |
・着手して順調に動いており、目標達成の方向に向かっている
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4点 |
・この2年間で実現した。もしくは実現の方向がはっきりと見えてきた
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5点 |
※理由を国民へ説明していなければ1点減点としました。
【評価の視点】・主役である住民に地域の経営や将来に責任を持たせ、
地域の創意の発揮により地域活性化に繋がる制度設計の実現に向けて動いているのか