言論NPOが2月23日に行った有識者アンケートでは、51.0%と半数を超える有識者が、2016年度予算案を「評価していない(「どちらともいえない」を含む)」と回答し、さらに、安倍首相が今回の予算案を「経済再生、財政健全化を同時に達成するのに資する予算となった」と述べているものの、半数を超える有識者が、「経済再生と財政再建のどちらも十分取り組んだ予算案とはいえない」と回答する等、厳しい見方が多数となりました。
また、今回の予算案で日本の財政再建が可能かと尋ねたところ、「このままでは難しい」が42.6%(昨年60.0%)、「すでに困難」が38.3%(昨年25.0%)となり、昨年の3月に行った同様の調査に続き、日本の財政再建については、厳しい見方が8割を超える結果となりました。
調査の概要
今回の調査結果は、2月22日深夜から23日のお昼までインターネットを活用して緊急に行われ、94人が回答しました。
調査の詳細は以下の通りです。
2016年度予算案についての有識者の評価は厳しいものに
まず、今回の予算案についての評価を尋ねたところ、半数を超える有識者が「評価していない(「どちらともいえない」を含む)」(41.0%)と回答し、「評価している(「どちらともいえない」を含む)との回答は、27.6%にとどまりました。
さらに、今回の予算案について安倍首相は昨年同様、経済再生、財政健全化を同時に達成するのに資する予算になったと述べているものの、半数を超える有識者は「経済再生と財政再建のどちらも十分取り組んだとは思えない」(52.1%)と回答し、その割合は昨年3月に実施した同様の調査から9.1ポイント上昇しており、昨年に比べて、今回の予算案について厳しい見方が増える結果となりました。
次に、安倍政権が昨年打ち出した目玉施策である「1億総活躍社会」関連予算として「GDP600兆円(2020年頃)」に約0.7兆円、「希望出生率1.8(2020年代半ば)」に約1.5兆円、「介護離職ゼロ(2020年代初頭)」に約0.2兆円を充てています。こうした予算配分についての評価を尋ねたところ、6割を超える有識者が「そもそも政策目標がはっきりせず、選挙対策のバラマキにすぎないと思う」(60.6%)との回答が最多となり、「不十分な内容であり『1億総活躍社会』は実現できないと思う」(20.2%)との回答を加えると、8割を超える人が、「1億総活躍社会」に関して、厳しい見方をしています。
今回の予算案では財政再建は難しいとの回答が8割を占める
次に、今回の予算案で日本の財政再建が可能かと尋ねたところ、「このままでは難しい」(42.6%)、「すでに困難」(38.3%)と厳しい見方が8割を超える結果となり、「可能だと思う」との回答は5.3%と1割にも満たない結果となりました。
財政再建計画と持続可能な社会保障制度の改革をセットで望む声が多数
多くの有識者が、日本の財政再建について厳しい見方を示している中で、日本が財政再建をするために必要なことは何かを訪ねたところ、「2020年以降、今後の日本の人口減少も見据えた長期的な財政再建計画を立てること」(59.1%)が最多となり、「給付と負担を見直し、社会保障を抜本的に改革すること」(53.8%)が5割を超えて続くなど、急速に進む少子高齢化の中で、財政再建計画と持続可能な社会保障制度の改革をセットで望む声が多数となりました。
加えて、「仮に税収が増加した場合には、支出ではなく財政再建に使うこと」(44.1%)、「政府が財政再建に向けた覚悟を決めること」、「2020年の黒字化目標を達成するための具体的で明確な財政再建計画を出すこと」が40.9%となり、政府の財政健全化に対する姿勢を問いただす回答が続きました。
消費税率の延期もやむを得ないとの回答が多数
安倍政権は、2014年の衆議院選挙時、2015年10月の消費税率の8%から10%への引き上げを、2017年4月に延期することにしました。この引き上げを予定通り実行すべきかを尋ねたところ、「リーマンショックのようなことが起これば延期すべきだと思う」(34.0%)との回答が最多となり、「すでに経済状況が不安定化しており、現状でも延期すべきだと思う」(23.4%)、「そもそも引き上げるべきではない」(12.8%)を加えると、引き上げ延期を容認する声が70.2%となり、消費税率の延期もやむを得ないとの回答が多数となりました。
「どのような経済状況でも実行すべきだと思う」との回答は26.6%にとどまっています。
特例公債法の改正については、「反対」の声が6割を超える
最後に、2012~15年度まで当初予算の範囲内で赤字国債を自動的に発行することを認めてきた特例公債法を、20年度まで延長する改正案が国会で審議され、成立の見通しとなっています。こうした状況については、「国会のチェックが十分でなくなり、財政規律が緩むので反対である」(63.8%)と反対の回答が6割を超え、賛成との声を大きく上回りました。