評価の視点
われわれは、各政策分野に必要な目配せがなされているかも重視しており、社会保障は国民の福祉という社会保障固有の目的からも、財政面からも極めて重要な課題である。
現行の年金制度は、2つのタイプの課題を抱えている。1点目は、高齢化が進む下での年金財政の持続可能性という課題。2点目は、年金制度を取り巻く環境の変化に合わせ、制度そのものを作り直す制度体系についての課題である。
まず1点目に関しては、2004年に段階的に給付水準抑制を図る仕組みであるマクロ経済スライドが導入されたものの、長引くデフレ経済下、今日まで殆ど機能しておらず、過剰給付が発生している。過剰給付は、積立金の前倒しでの取り崩しとなり、将来世代にツケを負わせることになる。積立金は、本来、将来世代の負担抑制の原資である。マクロ経済スライド確実に機能していくよう見直すことをはじめ、こうした状況の是正が不可欠である。よって、政権公約には、年金受給者の耳に痛い内容が盛り込まれているはずであり、それが将来世代のため、年金制度の持続可能性を維持するために必要なのだということが政治の口から丁寧に説かれなければならない。
2点目については、社会保障制度体系の現代化である。社会保障制度は、家族形態、就業形態、および、人口動態などに関し、暗黙のうちにせよ、一定の前提が置かれている。例えば、現行の公的年金は、正社員のサラリーマンの夫と専業主婦のその妻という夫婦世帯を想定している。第3号被保険者という、直接的に保険料負担せずとも基礎年金の受給権が得られる仕組みがその表れである。しかしながら、今日では、未婚率が上昇し、かつ、既婚者のなかでも共働き世帯が増えており、専業主婦のいる世帯は一般的世帯形態では必ずしもなくなっている。あるいは、就業形態に関しても、非正規雇用の増加に対し、現行の社会保障制度は対応できていない。
医療も、2つのタイプの課題を抱える。1点目は財政問題である。約40兆円の国民医療費は、国、都道府県、市町村による公費、健康保険料、および、窓口自己負担で賄われている。わが国財政が極めて深刻な状況にある下、公費の抑制は今後とも財政健全化を進める上で最も核心的なテーマである。また、高齢者医療費は、公費のほか、現役世代の健康保険料を原資とした財政支援によっても支えられており、今後一段と高齢化が進むもと、現役世代が果たして支え続けていけるのかという問題も抱えている。そのため、給付そのものを効率化していくことが避けられない。2点目は、医療および介護提供体制を、高齢者人口の増加に合ったものへ転換していく必要性があるということである。一般に若年層と異なり、複数の疾病を抱え、しかも、治療というよりもその疾病をコントロールしながら生活する高齢者が増えていく状況下では、自ずと医療・介護提供体制は、人口構成が若かった時代とは異なるものが必要となる。それに合わせ、医療提供体制を作り変えていくという課題である。
この2点目が、民主・自民・公明の三党合意に基づく社会保障・税一体改革における柱の一つであり、具体的には地域医療構想と呼ばれるものである。地域医療構想とは、二次医療圏ごとの2025年における医療提供体制の将来像およびその推進体制であり、旗振り役が都道府県に委ねられている。もっとも容易な作業ではなく、先行きを不安視する声もあり、その意義および見通しについて、これら3党からは国民に向け丁寧な説明がなされなければならない。
各党は、現行の制度をどのように捉え、将来をどのように見通しているのか(課題認識)。仮に現状のままでは持続可能性が確保できないと判断するのであれば、どのような具体的施策を講じるのか(政策手段)。さらに、財源として予定されていた消費税10%への増税は延期された。そのような中で、予算制約をきちんと語った上で、負担の増加、給付の抑制など、国民にとって「痛み」となるような政策を提示しているのか。そして、その再構築プランは、財源の裏付け、実現に向けた工程の両面から見ても妥当性があるのかを判断する。また、テクニカルな議論の多い社会保障において、現状をごまかすことなく国民に対してきちんと説明しているのか、という点も重視していく。
【 評価点数一覧 / 自民党 】
項 目 | ||
形式要件 (40点) |
理念(10点)
|
2
|
目標設定(10点)
|
1
|
|
達成時期(8点)
|
0
|
|
財源(7点)
|
0
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|
工程・政策手段(5点)
|
0
|
|
合計(40点)
|
3
|
|
実質要件 (60点) |
体系性・課題抽出の妥当性(20点)
|
5
|
課題解決の妥当性(20点)
|
1
|
|
政策実行の体制、ガバナンス、指導性と責任(20点)
|
0 | |
合計(60点)
|
6
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合 計
|
9
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【評価結果】自民党 マニフェスト評価 合計 9 点 (形式要件 3 点、実質要件 6 点)
【形式要件についての評価 3 点/40点】
社会保障政策に関して、自民党の今回の公約では社会保障政策に関して、「安心安全」という枠組みの中の、「持続的な社会保障制度の確立」という小見出しのもとに項目が設けられている。
これまでも公約に掲げられていた通り、「『自助』・『自立』を第一に、『共助』と『公助』を組み合わせ、税や社会保険料を負担する国民の立場に立つ」ことを理念として、掲題の持続可能な社会保障制度の構築を実現することを謳っており、どのような社会保障制度を目指そうとしているのかについての方向性は理解できる。
そのほか、「国民皆保険の堅持」医師の偏在の是正」「介護基盤を50万人増やす」など様々な項目が記載されており、目標が記載されているものいくつか存在しているが、その達成時期、財源、工程などは何も明らかにされていない。
年金について、社会保障給付の半分を占める年金について、記述が一切ない。
【実質要件についての評価 6 点/60点】
年金は、2004年の年金改正で導入されたマクロ経済スライドが、2015年度に一回発動されたのみであり、本来、いかなる物価状況下でも確実に発動されていくよう見直すことが、年金財政の持続可能性を確保するうえで、最も優先度の高い課題であった。2013年8月に公表された社会保障制度改革国民会議の報告書でも、その旨が記載された。
2016年3月に国会に提出された年金改正法案では、確かに、マクロ経済スライドの見直しが盛り込まれてはいるが、当初想定されていた内容より大きく後退し、デフレあるいは物価上昇率が低いもとでは全くあるいは十分には機能しないものとなっている。
具体的には、未調整のスライド調整率のキャリーオーバー案と呼ばれる。公約には、「持続的な社会保障制度の確立」という小見出しがあるのだから、年金財政の持続可能性をいかに確保していくのかがここで明記されるべきだ。なぜ、マクロ経済スライド見直しの当初案ではなく、キャリーオーバー案になったのか。
キャリーオーバー案で果して大丈夫なのか、これらが十分に説明されるべきである。
医療についても、地域医療構想について一切記述がないのが注目される。
三党合意に基づく社会保障・税一体改革の柱は、社会保障に関しては医療提供体制の改革であり、具体的には地域医療構想にある。これは、都道府県が二次医療圏ごとに2025年度の必要病床数をはじめとした医療提供体制のあり方を描き、その実現に向けた旗振り役となるものである。入院医療の効率化を進め、財政健全化と高齢者人口増大のもとのでの医療ニーズに応えることが目的といえる。
本来、公約のなかでは、この地域医療構想について充分な説明がなされるべきであろう。
自民党の公約は、こうした課題の具体的な説明がないまま、単に「国民皆保険を堅持します」という抽象的な表現が羅列されている。
新三本の矢で「介護離職ゼロ」や「希望出生率1.8」を打ち出した点については、わが国の社会保障給付が、先進諸外国と比べ高齢者向けに偏っている点を鑑みれば、妥当である。しかし、これらは、国民1人ひとりの幸せを追求した社会保障政策というより、人口政策、労働供給を促すための経済政策という色彩が強い。
加えて、これらは財源を要するものであるにもかかわらず、増税あるいは他の歳出カットという恒久財源の裏付けがないまま、アベノミクスによる税収の上振れを活用するというのでは、全く説得力にかけるといわざるを得ない。
【 評価点数一覧 / 公明党 】
項 目 | ||
形式要件 (40点) |
理念(10点)
|
2
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目標設定(10点)
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0 | |
達成時期(8点)
|
0
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|
財源(7点)
|
0
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|
工程・政策手段(5点)
|
0
|
|
合計(40点)
|
2
|
|
実質要件 (60点) |
体系性・課題抽出の妥当性(20点)
|
5
|
課題解決の妥当性(20点)
|
3
|
|
政策実行の体制、ガバナンス、指導性と責任(20点)
|
0 | |
合計(60点)
|
8
|
|
合 計
|
10
|
【評価結果】公明党 マニフェスト評価 合計 10 点 (形式要件 2 点、実質要件 8 点)
【形式要件についての評価 2 点/40点】
公明党は重点政策において、社会保障政策に関して、「安心できる社会保障実現へ」として、福祉人材の確保、健康・活動寿命の延伸を実現していくことが明記されている。
具体的には、保育や介護従事者の待遇改善、地域包括ケアシステムの構築、無年金者対策の推進、低所得の年金受給者穂の支援強化、被用者年金の適用拡大など、2014年の公約で掲げられているような項目が並んでいる。
しかし、目標設定や達成時期、財源、工程、政策手段は何ら明らかにされていない。
【実質要件についての評価 8 点/60点】
年金に関しては、触れられているものの、社会保障・税一体改革で、消費税率が10%になった際に実施するとされていた年金受給資格期間の短縮、低年金者への年金生活者支援給付金の早期実施を掲げており、財政面の裏付けがないことから無責任といわざるを得ない。一方、マクロ経済スライドの見直しといった、年金財政持続可能性にとって不可欠な項目については一切触れておらず、この点について、無責任である。
医療については、地域包括ケアや地域医療構想を進める上でのツールとして準備された地域医療介護総合確保基金などについて触れており、自民党や民進党に三党合意の当事者意識が皆無なのに比べれば、評価できる。その他、医療に関して、がん対策などの個別項目が並んでおり、いずれも重要な項目といえるが、高齢者人口が増える中での医療提供体制の根本的見直し、医療保険財政の持続可能性確保などといった問題点に対し、ビジョンを示していない。
慢性的な人手不足の中、人材確保のために介護職員・障害福祉従事者の待遇改善を求めている。様々な社会保障制度の充実には、それを支える「人」がいてこそ安心できる制度の基盤が構築される旨指摘しているが、その実現に向けて、どのような財源をもとに、対策をとっていくのか何ら示されておらず、評価は低いといわざるを得ない。
【 評価点数一覧 / 民進党 】
項 目 | ||
形式要件 (40点) |
理念(10点)
|
2
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目標設定(10点)
|
0 | |
達成時期(8点)
|
0
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|
財源(7点)
|
0
|
|
工程・政策手段(5点)
|
0
|
|
合計(40点)
|
2
|
|
実質要件 (60点) |
体系性・課題抽出の妥当性(20点)
|
4
|
課題解決の妥当性(20点)
|
1
|
|
政策実行の体制、ガバナンス、指導性と責任(20点)
|
0 | |
合計(60点)
|
5
|
|
合 計
|
7
|
【評価結果】民進党 マニフェスト評価 合計 7 点 (形式要件 2 点、実質要件 5点)
【形式要件についての評価 2 点/40点】
今回の公約では、「幸せに年を重ねることができる社会の実現」が理念として掲げられ、「シニア世代の安心を守る」ことが謳われている。
具体的には「年金のかさ上げと受給資格の拡大」「年金積立金の安全運用」「医療・介護などの自己負担の軽減」「介護職員等の給与引き上げと介護の充実」などの政策が掲げられている。
しかし、これらを実現する具体策は示していない。また、財源確保の見通しについて何ら触れられておらず、どのようなプロセスで実現するのかも不明である。
負担増や給付の抑制という発想は一切見られず、毎年増大を続ける社会保障関係費をどのように削減していくのか、という日本が直面している課題に正面から向かい合っているとはいえない。
【実質要件についての評価 5 点/60点】
自民党とは異なり、年金について触れているものの、その中身については、社会保障・税一体改革で、消費税率が10%になった際に実施するとされていた「低年金者への年金かさ上げ」、「年金受給に必要な保険料支払い期間の25年から10年への短縮」といった政策を、消費税の引き上げを待たずに実施することを掲げるなど、財政放漫的な政策といわざるを得ない。
また、旧民主党では、「年金」について、最低保障年金、や公的年金の一元化などの方針が示されていたが、そうした制度論については言及されず、現行の年金制度を前提にしており、政策転換の説明が必要ではないか。
日本では、少子高齢化が急速に進んでおり、今後、団塊の世代が高齢者となり、高齢者人口が急速に増える。そうなれば、慢性疾患を抱え、それを完全に治すというより、コントロールしながら生活するということへ、医療提供体制を大きく変えていく必要がある。加えて、財政健全化を進め、現役に負荷のかかる保険料を抑制していくためにも、医療費を抑えていくことが必要であるが、そうした課題認識は示されておらず、課題に向かい合おうとしているとは思えない公約といわざるを得ない。
慢性的な人手不足の中、人材確保のために介護職員・障害福祉従事者の月給を1万円引き上げようとしているのは理解できるが、その財源をどうするかは何も明示されていない。また、旧民主党の2014年の公約では、医療と介護の連携を図り、人材供給を促すという方針が示されていたが、そうした政策への言及も一切ない。
全体として、負担増と給付の抑制など、社会保障の各制度が抱える構造的な問題にメスを入れるのではなく、バラまき的な政策ばかりで、公約としては低い評価といわざるを得ない。
【 評価点数一覧 / おおさか維新の会】
項 目 | ||
形式要件 (40点) |
理念(10点)
|
3
|
目標設定(10点)
|
2
|
|
達成時期(8点)
|
0
|
|
財源(7点)
|
0
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|
工程・政策手段(5点)
|
0
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|
合計(40点)
|
5
|
|
実質要件 (60点) |
体系性・課題抽出の妥当性(20点)
|
2
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課題解決の妥当性(20点)
|
1
|
|
政策実行の体制、ガバナンス、指導性と責任(20点)
|
0 | |
合計(60点)
|
3
|
|
合 計
|
8
|
【評価結果】おおさか維新の会 マニフェスト評価 合計 8 点 (形式要件 5 点、実質要件 3点)
【形式要件についての評価 5 点/40点】
おおさか維新の会は、その公約において「忘れ去られた『社会保障改革』を、維新の手で!」とあり、「若者は、自分の将来の年金が大丈夫か、不安に思っている」という問題認識を示している。社会保障の受益と負担をバランスさせる、年金は積み立て方式への移行、年金の支給開始年齢の引き上げ、医療費の自己負担については所得に応じて負担割合に差を設けるなど、様々な政策を列挙している。しかし、達成時期や財源には何ら触れられておらず、評価は低くなる。
【実質要件についての評価 3 点/60点】
各党の中で、おおさか維新だけが、唯一正しい認識を示しており、課題の抽出は妥当だと考えるし、課題解決に向けての方策も一定程度妥当だと考える。しかし、政策の列挙となってしまっており、どのように実現していくのか、ということをもっと打ち出す必要がある。
【 評価点数一覧 / 共産党 】
項 目 | ||
形式要件 (40点) |
理念(10点)
|
2
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目標設定(10点)
|
2
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|
達成時期(8点)
|
0
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財源(7点)
|
2
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工程・政策手段(5点)
|
0 | |
合計(40点)
|
6
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実質要件 (60点) |
体系性・課題抽出の妥当性(20点)
|
3
|
課題解決の妥当性(20点)
|
0
|
|
政策実行の体制、ガバナンス、指導性と責任(20点)
|
0 | |
合計(60点)
|
3
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合 計
|
9
|
【評価結果】共産党 マニフェスト評価 合計 9 点 (形式要件 6 点、実質要件 3 点)
【形式要件についての評価 6 点/40点】
共産党は税金の使い方を変え、「社会保障、子育て、若者に優先して税金を使う」とし、「社会保障削減を中止し、拡充へ転換」「認可保育所の緊急増設、子供医療費の無料化」などを掲げている。そうした財源について、消費税の10%への引き上げは断念するものの、富裕層や大企業を優遇する不公平税制など、税制改正などにより22.3兆円の確保、平均2%台の成長による税収増により40兆円を確保すると、実現可能かは別にして財源は示している。
しかし、これらを実現するための手段は何ら明記されておらず、達成時期、工程など明示されていない。
【実質要件についての評価 3 点/60点】
共産党は、これまでの公約にも掲げられていたが、年金支給額の削減、医療費の負担増などに明確に反対の意思を示しており、党としてのスタンスは明確にされており、一貫している。
今回は消費税の10%への引き上げは断念するものの、富裕層や大企業を優遇する不公平税制など、税制改正などにより22.3兆円の確保、平均2%台の成長による税収増により40兆円を確保すると、実現可能かは別にして財源は示している点は評価できるが、きわめて大きな変革を迫るものであるにも関わらず、どのようなプロセスで実現するのかを示していないため、政策実行の指導性に疑問がある。
しかも、「2%台の名目成長」の実現を示しているが、どのような経済政策で実行しようとしているのは不明であり、財源を示したという点では、これまでの公約に比べると評価できるが、総じて見通しはも甘いといわざるをえない。
【 評価点数一覧 / 社民党 】
項 目 | ||
形式要件 (40点) |
理念(10点)
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1
|
目標設定(10点)
|
1
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|
達成時期(8点)
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0
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|
財源(7点)
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1
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工程・政策手段(5点)
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0 | |
合計(40点)
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3
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実質要件 (60点) |
体系性・課題抽出の妥当性(20点)
|
1
|
課題解決の妥当性(20点)
|
0
|
|
政策実行の体制、ガバナンス、指導性と責任(20点)
|
0 | |
合計(60点)
|
1
|
|
合 計
|
4
|
【評価結果】社民党 マニフェスト評価 合計 4 点 (形式要件 3 点、実質要件 1 点)
【形式要件についての評価 3 点/40点】
社民党は公約において、「アベノミクスによる国民生活の破壊を許さず、くらしと雇用を再建する」ことを目的に掲げ、その中で、年金については「最低保障年金制度の創設」「マクロ経済スライドによる調整の中止」など、医療については「医療従事者の増加」「継ぎ目のない『地域包括ケアシステム』を住民目線で実現していく」など、介護については「介護従事者の待遇改善」などの政策を列挙している。
財源に関しては、「社民党の財源確保の考え方」という項目の中で、「経済や金融のあり方を変える」「税の抜本改革」「無駄遣いをやめて使い道を変える」とし、財源確保の方策を列挙していが、どのように行っていくか、具体策は不明である。また、達成時期や工程なども示していない。
【実質要件についての評価 1 点/60点】
党としてのスタンスははっきりと打ち出している。さらに、最低保障年金の創設に言及していることから、現行の各制度に対する問題意識はあると見られる。
しかし、これらを実現する具体策は示していない。また、財源確保の見通しについても、実現可能性の薄いものばかりであるし、きわめて大きな変革を迫るものであるにも関わらず、どのようなプロセスで実現するのかを示していないため、政策実行の指導性にも疑問がある。そもそも、実効的な成長戦略を示していないのに「ボトムアップの家計支援を通じた景気回復による税収増」をあてにしているなど、見通しも甘い。
負担増や給付の抑制という発想は一切見られず、毎年増大を続ける社会保障関係費をどのように削減していくのか、という日本が直面している課題に正面から向かい合っているとは言えない公約となっている。
【 評価点数一覧 / 生活の党と山本太郎となかまたち 】
項 目 | ||
形式要件 (40点) |
理念(10点)
|
1
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目標設定(10点)
|
0
|
|
達成時期(8点)
|
0
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|
財源(7点)
|
0
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工程・政策手段(5点)
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0 | |
合計(40点)
|
1
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実質要件 (60点) |
体系性・課題抽出の妥当性(20点)
|
1 |
課題解決の妥当性(20点)
|
0
|
|
政策実行の体制、ガバナンス、指導性と責任(20点)
|
0 | |
合計(60点)
|
1
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合 計
|
2
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【評価結果】生活の党と山本太郎となかまたち マニフェスト評価 合計 2点 (形式要件 1 点、実質要件 1 点)
【形式要件についての評価 1 点/40点】
「生活が第一」との理念の下、最低保障年金の創設や年金の一元化などに言及していることから、現行の各制度に対する問題意識はあると見られる。
しかし、これらを実現する具体策は示していない。また、財源確保については何ら触れておらず、達成時期や工程なども何ら明示していない。
【実質要件についての評価 1 点/60点】
現在の社会保障制度については改善する必要があると考えていると推察されるが、どのように実現していこうとしているのか明確に示されてはいない。また、党首の小沢氏が民主党時代に提示していた最低保障年金や社会保険の所得比例年金の構築などを掲げてはいるものの、民主党時代の焼き増しでしかない。そもそも、政権与党の時代に財源確保がネックとなり、具体的な制度設計を示すことができなかったものであるにもかかわらず、それをどのように実現していくのか、ということが何ら明らかにされていないため、政策実現に向けた指導性が感じられない。
また、財源に関する言及は一切ないし、最大の課題である毎年増えている社会保障関係費について、生活の党として国民に負担を強いていくのか、それとも負担増は避け、給付をカットしていくのか、ということも何ら明らかにされておらず、単なるメニューの羅列でしかなくなっている。
【 評価点数一覧 / 日本のこころを大切にする党 】
項 目 | ||
形式要件 (40点) |
理念(10点)
|
3
|
目標設定(10点)
|
1
|
|
達成時期(8点)
|
0
|
|
財源(7点)
|
0
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工程・政策手段(5点)
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0 | |
合計(40点)
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4 | |
実質要件 (60点) |
体系性・課題抽出の妥当性(20点)
|
2
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課題解決の妥当性(20点)
|
0
|
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政策実行の体制、ガバナンス、指導性と責任(20点)
|
0 | |
合計(60点)
|
2
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合 計
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6
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【評価結果】日本のこころを大切にする党 マニフェスト評価 合計 6 点 (形式要件 4 点、実質要件 2 点)
【形式要件についての評価 4 点/40点】
日本のこころを大切にする党は、「生涯に わたり安心して暮らせる社会保障制度を構築することを」目的とし、医療制度、公的年金制度、介護制度等の改革を行うことを掲げている。
その中の個別的な目標としては、「混合診療の解禁、医療費自己負担割合の一律化」、「給付付き税額控除の導入」、「生活保護制度を見直し、給付付き税額控除制度の導入による最低所得 保障と一体化を図る。また、生活保護者への医療制度の改革、「介護従事者の待遇改善」」などを打ち出している。
しかし、それらの実現のための財源や達成時期、工程や手段については示されていない。
【実質要件についての評価 2 点/60点】
世代間格差に着目し、高齢者向け給付の適正化(医療費自己負担割合の一律化など)が盛り込まれているように、高齢化対応への問題意識に示していることは課題抽出として適切であり、評価できる。
しかし、実現に向けた具体的道筋は描かれていない。例えば、高齢者の負担増に関しては、それを実際に高齢者に説明して納得を得なければならないが、この作業は相当地道で大変なはずである。掲げられている理想が高いだけに、なおさら実現までの道筋をある程度明らかにする必要があるが、それがないため政策実現に向けた指導性は感じられない。
主要政党のマニフェスト評価
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33 | 27 |
25 |
28 |
23 |
24 |
20 |
23 |
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30 | 28 |
15 |
18 |
11 |
4 |
4 |
8 |
|||||||||
28 | 11 |
14 |
16 |
13 |
2 |
1 |
3 | |||||||||
9 | 10 |
7 | 9 |
8 |
4 |
2 |
6 |
|||||||||
51 | 29 |
31 |
26 |
27 |
17 |
6 |
17 |
|||||||||
21 | 20 |
15 |
12 |
17 |
12 |
10 |
16 |
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