言論NPOは、7月10日投開票の参議院選挙に向けて、6月22日から6月26日の期間で有識者アンケートを実施しました。
まず、今回の参議院選挙は、どのような意味や目的を持つ選挙だと思うか尋ねたところ、3割が「安倍政権の3年半を信任するかの選挙」と回答し、さらに、2割が「改憲勢力で憲法改正を発議するための3分の2の議席を獲得できるかの選挙」と回答しています。
次に、今回の選挙に対する各党の公約を読んだか尋ねたところ、「読んだ」と「読んでない」が半数近くで拮抗しています。
さらに「読んだ」と答えた人に、その感想を尋ねたところ、「国民との約束といえるべき内容」であると評価する考える人は1割未満にとどまり、逆に半数前後の人が、「相変わらず、スローガンや政策の羅列に過ぎず、実現性が全く不明」、「国民が負担すべき痛みを避けており、日本の現状や将来を正直に説明していない」と回答するなど厳しい評価をしています。
続いて、今の日本では選挙を軸に国民に向かい合う民主主義が機能していると思うかと尋ねたところ、「機能していない」と回答した人が過半数を超えました。
ただ、この状況を打開し、日本の民主主義を機能させ、この国が将来課題に向かって真剣に動き出すために、何が必要かということについては、6割近くの有識者の人が「有権者自身が当事者意識をもち、課題に向き合うこと」と、有権者自身の変革を求めています。
今回の調査結果は、言論NPOの活動にこれまで参加していただいた全国の有識者約6000人を対象に、2016年6月22日から6月26日の期間でアンケートの回答を依頼し、回答のあった294の回答内容を分析しました。
今回の参議院選挙が持つ意味とは、
「安倍政権の信任」「憲法改正発議可能な3分の2を獲得するか」との見方が2割を超える
今回の参議院選挙は、どのような意味や目的を持つ選挙だと思うか尋ねたところ、最も多くの人が「安倍政権の3年半を信任するかの選挙」(28.2%)と安倍政権の評価を挙げ、「改憲勢力で憲法改正を発議するための3分の2の議席を獲得できるかの選挙」が25.2%で続きます。
この他、「直面する日本の課題や日本の将来を有権者が考える第一歩となるべき選挙」との回答も13.9%と1割程度見られます。
各党の公約を読んだ人と読んでいない人が拮抗
今回の選挙に対する各党の公約を読んだか尋ねたところ、「読んだ」(45.9%)と「読んでない」(46.2%)の回答が拮抗する結果となりました。
各党の公約について、厳しい評価を下す
続いて、各党の公約を読んだ人に、読んだ感想を尋ねたところ、「国民との約束といえるべき内容」であると評価する人は7.9%と1割未満にとどまりました。
これに対して、半数前後の人が、「相変わらず、スローガンや政策の羅列に過ぎず、実現性が全く不明」(51.8%)、「国民が負担すべき痛みを避けており、日本の現状や将来を正直に説明していない」(48.9%)と回答し、多くの有識者は政党が、日本が抱える課題に対して正面から向かい合っていないことに懸念を示していることが分かります。
「現時点で投票できる政党が見えない」との回答が2割を超える
今回の参議院選挙で比例区ではどの党に投票するつもりかを尋ねたところ、「民進党」(26.9%)が最多となり、これに「自民党」(24.1%)、「共産党」(9.2%)と続きました。ただ、「現時点で投票できる政党が見えない」との回答も24.1%と2割を超えています。
安倍政権の今後に期待を抱かない回答が過半数を超える
安倍政権にこれからの日本のかじ取りを期待できるか尋ねたところ、「期待していない」(「どちらかといえば」を含む)との回答が59.1%と6割に迫り、多くの有識者が安倍政権の今後に期待感を持っていないことが明らかになりました。
与野党が消費税10%引き上げ先送りで足並みを揃えたことに半数が反対
2017年4月に予定されていた消費税の10%への引き上げについて、与野党が足並みを揃えたことへの賛否を尋ねたところ、「反対」(「どちらかといえば」を含む)が52.7%と半数を超え、「賛成」(「どちらかといえば」を含む)の35.7%を大きく上回る結果となりました。
3割近くが「政党の基本的な公約」、「党首の発言、資質」を投票の参考に
今回の選挙で何を参考に投票する予定か尋ねたところ、「政党の基本的な公約」(31.0%)と「党首のこれまでの発言や資質」(28.2%)に回答が集中しました。今回の選挙の判断材料として、選挙に対する各党の公約とともに、選挙以外での党首の言動から資質を判断しようという考えに分かれる結果となりました。
8割近い人が、将来課題と日本の将来像を争点にすべきと回答
今回の参議院選挙において、政治が国民に説明すべき争点は何かと尋ねたところ、8割近い人が「急速に進む人口減少や少子高齢化への全体的な対応や目指すべき日本の将来像」(78.2%)と考え、7割近くの人が「財政再建への具体的な道筋」と考えていることが明らかになりました。
この他、4割を超えた人が説明すべき争点と回答したのは、「急速に進む高齢化に耐えられるような医療介護、年金制度の具体化」(48.3%)、「消費税10%への引き上げの是非や、それを見込んだ財政再建や社会保障への取り組みや、そのための財源」(44.9%)、「経済成長を実現するための具体的な取り組み」(42.9%)、「子育て支援や働き方改革などの少子化対策」(42.2%)、「若者の正規雇用化や大学教育の改革など、将来世代の働き方や貧困回避のための取り組み」(41.2%)といずれも人口減少、少子化、財政再建といった将来課題への取り組みを求めるものに集中しました。
今の日本における民主主義を機能不全とする意見が過半数を超える
今の日本では選挙を軸に国民に向かい合う民主主義が機能していると思うかと尋ねたところ、「機能していない」(「どちらかといえば」を含む)と回答した人が、56.5%と過半数を超えました。
消費税10%引き上げにおいて結果的に与野党が足並みを揃えたことや本来争点とされるべき、人口減少、少子高齢化、財政再建など日本の将来課題に政治が向き合っていないことへの不満を持っている人が多数を占めていることがわかりました。
有権者自身が政党任せにせず、当事者意識を持つことを訴える見解が多数
日本の民主主義を機能させ、この国が将来課題に向かって真剣に動き出すために、何が必要な局面かという問題について、59.2%と6割近くの有識者が「有権者自身が当事者意識をもち、課題に向き合うこと」と、有権者自身の変革を求めていることが明らかになりました。
この他、「知識層が沈黙せず、日本の課題解決に向けた声を上げていくこと」(22.1%)、「言論界が政治を監視するという役割を果たしていくこと」(22.1%)、「政党自身の変革」(21.4%)、「長期的な視野にたち、様々な言論の舞台である論壇をつくること」(20.4%)、「経営者、ジャーナリスト、学者、市民が横断的に協力していく仕組み作り」との回答が続き、政党任せにせず、「言論」がその役割を発揮していくべきとの見方が多く見られました。
有権者に政治を変える力があるとの見方が6割を超える
課題に向きあわない現状の政治を変える力が有権者にあると思うかとの問いに、61.2%と6割を超える人が「有権者に政治を変える力はあると思う」との見方を示しました。一方で、「期待はするが、有権者に政治を変える力はない」との回答も3割近く(27.6%)存在しています。