安倍政権4年の11政策分野の実績評価【エネルギー・環境】

2016年12月28日

【総合評価】

1年目
2年目
3年目
4年目
2.6点
2.0点
2.2点
2.5点

【個別項目の評価】

評価対象の政策
2013
2014
2015
2016
原子力規制委員会によって新規制基準に適合すると認められた場合には、その判断を尊重し原発の再稼働を進める
エネルギー基本計画を踏まえ、徹底した省エネ、再生可能エネルギーの最大限の導入、火力発電の高効率化などにより、原発依存度を低減させる ※1
-
-
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3段階の電力システム改革を完遂し、エネルギー供給構造の一体改革を推進する
地球温暖化を食い止めるため、パリ協定の実施に貢献する


※1 前回の2つの項目を統合した項目になっている

太陽光や風力などの再生可能エネルギーの最大限の導入、徹底した省エネの推進を図る。
-
エネルギーミックスの将来像を速やかに示す。
-

評価の視点
【エネルギー政策】
・原子力の位置付けと今後の方向性を示したか
・長期的なエネルギービジョンを示したか
【環境政策】
・「カーボン・ニュートラル」に向けて、世界をリードしていくような取り組みをしているか
【共通】
・過去の計画との整合性を保ちながら取り組んでいるか

 これまで原子力発電を基幹エネルギーとして位置付けてきた日本のエネルギー政策は、2011年3月の福島第一原発事故を機に大きな変容を迫られている。2014年4月閣議決定のエネルギー基本計画においては、原子力を「重要なベースロード電源」と位置付けて再評価し、2015年8月には九州電力の川内原子力発電所1、2号機(鹿児島県)が再稼働。2016年12月現在までに合計5基が再稼働している。

 しかし、原発立地自治体の選挙では再稼働に否定的な民意が示される結果が多いように、原子力リスクは多くの国民が感じている。また、現状では新規増設・リプレースが困難なことや、「40年で廃炉」の原則を考えると、中長期的に原子力への依存度を低減していくことは避けられない。

 そこで政権が今後の日本のエネルギー政策において、原子力をどのように位置付け、そのためにどのような取り組みをしてきたのかをまず評価のポイントとする。そこでは、政府が今後の原子力政策についてどのような説明をしているのかを加味していく。

 それと同時に、再生可能エネルギーの普及や、安定的なエネルギー供給のための電力システムの整備も含めた長期的なエネルギー政策のビジョンを描き、それに向かってどのような道筋で進んでいこうとしているのかも確認する。

 一方、環境問題とりわけ地球温暖化対策も重要課題である。第21回国連気候変動枠組み条約締約国会議(COP21)において、1997年採択の京都議定書に代わる2020年以降の地球温暖化対策の新たな枠組みとなる「パリ協定」が採択され、世界は地球温暖化の防止に向けて新たな一歩を踏み出した。その中で「ポスト京都で主導的な役割」を果たすために日本として、どのような目標と貢献策を打ち出しているのかを評価のポイントとする。その際、世界が「カーボン・ニュートラル」に向けて動き出している現状に鑑み、特に石炭燃料に対してどのように向き合っているのかを検証していく。

 さらにエネルギー政策、環境政策両方に共通した評価の視点として、これまで打ち出してきた計画と整合性が取れているかどうかを確認する。例えば、エネルギー分野では「エネルギー基本計画」、環境分野では「環境基本計画」などがあるが、それらにおいても様々な方針が示されている。したがって、しっかりとその路線に沿って政策が動いているのかを確認していく。従来の計画と異なる方向に進んでいる場合では、その修正理由を説明しているかどうかを確認する。


【エネルギー・環境】個別項目の評価結果


原子力規制委員会によって新規制基準に適合すると認められた場合には、その判断を尊重し原発の再稼働を進める。

原子力規制委員会によって世界最高レベルの新規制基準に適合すると認められた場合には、立地自治体など関係者の理解と協力を得つつ、原発の再稼働を進める
【出典:2016年参院選公約】
原子力規制委員会によって新規制基準に適合すると認められた場合には、その判断を尊重し原発の再稼働を進める。【出典:2014年衆院選マニフェスト】
原子力の安全性は規制委員会による専門的判断を優先、原発の再稼働は順次判断し、3年以内の結論を目指す。【出典】2012年衆院選マニフェスト、2013年参院選マニフェスト

3点

3年評価:
2年評価:2点
1年評価:3点

 原発の安全対策を強化した原子力規制委員会(規制委)の新規制基準が施行から3年を迎え、これまでに16原発26基が安全審査を原子力規制委員会に申請し、5原発10基が合格した。このうち実際に稼働したのは九州電力川内原発の1号機、2号機、四国電力伊方原発3号機、関西電力高浜原発の3号機、4号機の合計5基である。

 しかし、関西電力高浜原発の3号機、4号機は今年1月に一旦再稼働したものの、滋賀県内の住民29人が運転の差し止めを求めた仮処分申請で、大津地裁が3月に住民側の申し立てを認める決定を出したため、関電は停止させた。このため12月時点で稼働しているのは3基のみである。

 さらに、10月の新潟県知事選では、再稼働に慎重な姿勢を示している米山隆一氏が当選。また、7月の鹿児島県知事選でも再稼働に慎重だった三反園訓氏(ただし、当選後に再稼働を事実上容認する姿勢に転じた)が当選するなど、原発立地自治体の民意は再稼働に否定的なものが多い。

 再稼働はある程度進んでいるといえるが、原発に対して国民が信頼ができるような状況にはなっておらず、今後も再稼働が進んでいくかどうかは現段階では判断できない。

 そもそも、「なぜ再稼働すべきなのか」ということを政治が語っていない。とりわけ、安倍首相は、原子力発電の将来像について、相変わらず明確な見解を表明していないが、これは説明責任の観点から問題がある。

エネルギー基本計画を踏まえ、徹底した省エネ、再生可能エネルギーの最大限の導入、火力発電の高効率化などにより、原発依存度を低減させる

エネルギー基本計画を踏まえ、徹底した省エネ、再生可能エネルギーの最大限の導入、火力発電の高効率化等により、原発依存度を低減させる。【出典:2016年参院選公約】
再エネの導入状況、原発再稼働の状況、地球温暖化に関する国際的議論等を見極めつつ、エネルギーミックスの将来像を速やかに示し、新しい「エネルギー基本計画」に基づいた責任あるエネルギー政策を構築する。【出典:2014年衆院選マニフェスト】
遅くとも10年以内には将来にわたって持続可能な「電源構成のベストミックス」を確立する
【出典】2012年衆院選マニフェスト

2点

3年評価:-
2年評価:-点
1年評価:-点

 前提条件として、最適なエネルギーミックスは、社会状況や地政学、技術の進展などにより常に変動するものであり、将来に亘ってエネルギーミックスを固定化できるものではないことを念頭に置くべきである。原子力については、現時点でも再稼働が進んでいない状況であり、どこまで国民の理解を得られるかは不透明である。再生可能エネルギーについては、ネットワーク管理技術の向上により、現時点で電力各社が設定している「接続可能量」を超える導入は可能である。また、発電コストも削減することが可能である。化石燃料に関しては、産出国の政情やわが国との関係などの地政学的な要因が調達可能量を大きく左右する。価格も国際情勢によって大きく左右される。また、地球温暖化対策の観点から、更なる使用量の抑制も必要となる可能性がある。このように、エネルギーミックスを形成するための境界条件は常に変動している。そのため、固定的なエネルギーミックスを確立することではなく、不断の見直しを行う姿勢が重要である。

 経済産業省は昨年7月、2030年度の望ましい電源構成(ベストミックス)を盛り込んだ「長期エネルギー需給見通し」を決定した。

 ただ、原子力を20~22%としたが、原発の運転期間40年の原則にのっとれば、2030年には15%程度となる。その5~7%差の部分は、最長20年の運転延長、または新増設やリプレース(建て替え)を行わないと確保できない。

 この点、運転延長に関しては、今年に入り、申請通りに、福井県の関西電力高浜原発1、2号機、美浜3号機と相次いで3基の老朽原発の運転延長が認可されるなど、進んでいるといえる。ただ老朽化のリスクを重く見るのであれば、運転延長の審査は通常の原発に比べても厳しいものであるべきだが、規制委の審査にはそうした形跡は見られない。そうした状況の中で、現行の原子炉等規制法では例外的に可能性を認めた「60年運転」が常態化しつつあるのは問題である。

 また、老朽化によるリスクを最小化する上では、最新鋭の設備を使用することが重要となるが、日本の原発設備は最新鋭とはほど遠い。全体の半分(22基)を占める沸騰水型原子炉では、最新鋭の改良型沸騰水型軽水炉(ABWR)が4基存在するが、残りの半分(21基)の加圧水型原子炉では最新鋭の改良型加圧水型軽水炉(APWR)や米ウエスチングハウスが開発した最新鋭原子炉「AP1000」は皆無である。

 一方、新増設やリプレースはさらにハードルが高く、ベストミックスを議論した「長期エネルギー需給見通し小委員会」では全く議論していない。このように政府は真正面からの議論を回避し、小手先の運転期間延長という方策のみを追求している。こうした進め方は「無責任な原発回帰路線」と言わざるを得ない。

 そもそも、仮に最新鋭原子炉の導入やリプレースが進んだとしても、それは「原発依存度を可能な限り低減させる」との方針とは矛盾するものとなる。

 再エネ電源を2030年に22~24%とするという目標については、経済産業省は12月、固定価格買取制度(FIT)における再生可能エネルギー発電設備の導入状況(8月末時点)を公表したが、それによるとFIT開始(2012年7月)後、認定容量は8821万kW(うち太陽光は8027万kW)になり、2030年度の想定導入量6400万kWを数字の上ではすでに超えている。さらに、月間ベースでみると、5月には水力も含めた再生可能エネルギー電力の割合が約21%に達した。5月は水力発電や太陽光発電の発電量が多い月であるとはいえ、電源構成のベストミックスに関する2030年目標の「22~24%」に迫っている。

 しかし、これは元々の目標設定が低すぎるためである。再エネについては高コストとされているが、今後普及に伴いコストは低下し、さらなる積み増しは可能なので、それを見込んだ内容とすべきであろう。しかも、再エネについて、これまで水力は別枠扱いしてきたが、基本計画はその水力を含めた形となっている。そこで、水力以外の太陽光・風力・地熱・バイオマスなどの新電源だけで見ると15%にも満たず、さらに低水準に陥る。

 加えて、固定価格買取制度の見直し等を行う改正FIT法が成立したり、原発の廃炉費用のための賦課金を新エネルギー事業者にも課すなど、再エネ導入を阻害する政策的な動きが見受けられ、エネルギー基本計画の「再生エネの導入を最大限加速」という方針には沿っていない。

 省エネについては、資源エネルギー庁が11月に発表した2015年度のエネルギー需給実績(速報)によると、国内の最終エネルギー消費量は前年度から1.8%減って、2011年度から5年連続で縮小し、この結果、1990年度の水準を初めて下回った。

 エネルギーを消費する場所を企業・運輸・家庭に分けてみると、全体の6割以上を消費する企業部門の削減量が大きく、2010年度から5年間で9.0%減って、1990年度と比べても4.5%少ない。

 一方で家庭部門と自動車や鉄道を中心とする運輸部門では、震災前よりもエネルギー消費量は減っているものの、まだ1990年度の水準は上回っている。家庭部門は11.3%増、運輸部門は2.3%増の状態にある。「日本再興戦略2016」では、各部門での省エネの徹底が掲げられているが、社会全体でエネルギーを大量に消費する構造を変えるには時間がかかるため、省エネの「徹底した推進」に向けて着手して順調に動いているものの、目標を達成できるかは現時点では判断できない。

 石炭火力については、26%と現状からほとんど増やさない形になっている。しかし近年、石炭火力発電所の新設計画が相次いでいる。新設するには既存の発電所を廃止する必要があるが、どう調整するのか示されていない。また、地球温暖化対策において、石炭規制は世界的な潮流となりつつある。例えば、欧州の場合、電力会社に対し、石炭から出るCO2の1トン当たりの課税額を高くするケースが多い。イギリスは982円と日本の3.4倍で、高い税負担で収益が悪化し、石炭火力が次々と閉鎖に追い込まれている。中長期的に大幅なCO2の削減を確実にするためには、日本でも石炭火力の規制を含めた制度の導入は避けられなくなる可能性が高い。すなわち、世界の潮流を見ると石炭も高コストのエネルギーになり、そういう状況の中での石炭依存の方針にはリスクがあり、これまでのマニフェストで示してきたように「持続可能な」「責任ある」エネルギー政策にはつながらない可能性が高い。

 なお、「長期エネルギー需給見通し」にも今回の電源構成案の実現には不明な点もあるとして今後、少なくとも3年ごとに電源構成を見直すことも明記された。

3段階の電力システム改革を完遂し、エネルギー供給構造の一体改革を推進する

三段階の電力システム改革を完遂し、エネルギー供給構造の一体改革を推進することにより、エネルギーの安定供給を確保して国民生活の安全・安心を実現する
【出典:2016年J-ファイル】
三段階の電力システム改革を完遂し、エネルギー供給構造の一体改革を推進する。
【出典:2014年衆院選マニフェスト】
電力システム改革を断行する【出典】2013年参院選マニフェスト

3点

3年評価:
2年評価:3点
1年評価:3点

 政府は第5次電力システム改革を三段階で進めてきた。まず、2015年には「電力広域的運営推進機関」や「電力・ガス取引監視等委員会」の設立が行われ、今年4月からは小売りの全面自由化が実施された。そして、2020年4月には発電と送配電の分離(発送電分離、東京電力は2016年4月に先行実施)が行われる。

 4月に小売りが全面自由化されて以降、小売り事業には300社以上が参入し、関東や関西など大都市圏を中心に顧客の獲得を激しく競っている。都市ガスや石油、携帯電話など、電力以外の企業が自社の商品やサービスと電気を組み合わせて売り始めたり、太陽光や風力など再生可能エネルギーを重視した電力を売るメニューも登場したりするなど、新しい付加価値を待ったエネルギーサービスが生まれる土壌ができつつある点は評価ができる。

ただ、新電力などへの契約切り替えの申込件数は234万4600件(11月末時点)で、全国の一般家庭向け契約数(約6250万件)のわずか3.7%にすぎない。

 今回新たに家庭向けに参入した新電力は、発電施設を持っていなかったり、持っていても自前の発電量が乏しいところが多い。顧客を呼び込み、ビジネスを拡大していく上では、外部の電気を調達しやすい環境が必要だが、既存の卸市場で取引される電気は全体の2~3%にとどまる。大手電力が市場に供給する電気の量が少ないためで、新電力側にとっては不公正な競争条件となっていた。また、このような取引量が少ない状況は、ある特定の者による市場価格の恣意的な操作を容易にしてしまっている。東京電力エナジーパートナー(株)は、「市場相場を変動させることを目的として市場相場に重大な影響をもたらす取引を実行すること」に該当するとして電力・ガス取引監視等委員会から業務改善勧告をうけた。電力・ガス取引監視等委員会が市場監視の役割として機能していることは評価できるものの、そもそもとして、このように1社により市場相場が操作できてしまうような取引量しか確保できていない市場に問題があり、取引量を増大させることが急務である。

 このため経産省の有識者会合「電力システム改革貫徹のための政策小委員会」は12月、は安定供給(ベースロード)電源としている原発などの電気について、2020年度をめどに大手電力に新電力が求める需要の3割ほどの電力供給を義務づける「ベースロード電源市場」をつくる方針を示した。大規模設備による発電なので、価格は安くなる可能性が高く、契約切り替えを促すものとなり得る。

 ただ、同委員会では電力市場の整備と称して、「ベースロード電源市場」の他にも「容量メカニズム」や「非化石価値取引市場」など、システム改革の根幹にかかわる新しい制度の導入も並行して議論されているが、一般消費者から見ればテクニカルな議論だし、明確な論点や数値も経産省から提示されていないなど、説明責任の観点からは問題がみられる。加えて、このように電源別に市場を分ける事が、再生可能エネルギーの利用が阻害するような固定的な電源市場をつくり上げる懸念もある。自由化および再生可能エネルギーの利用で先行する諸外国においては、既に「ベースロード電源」という概念自体が存在せず、再生可能エネルギーが基幹電源となっている国もあるので、そのような方向性も見据えた市場設計が必要である。

 さらに、大きな電力改革の流れから見れば、今回の小売り自由化は通過点にすぎない。何より重要なのは、2020年の発送電分離であるが、今次改革の発送電分離は「法的分離」にとどまった。すなわち、大手電力会社から送配電部門を切り離し別会社化するが、子会社または持株会社によるグループ会社として電力会社が保有するなど資本関係は残る。その結果、例えば、送配電事業者が高い託送料金を設定し、その送配電網で得た利益を配当金として100%株主たる電力会社に還元し、それが投資源泉となることにより、電力会社が新規参入側に対して競争優位に立つということも起こり得る。また、グループ会社として送配電事業者が電力会社と同じビル内に存在することにより、新規参入者と比べ密な関係が維持されることになり、公平な競争を保つことは困難となる。この対応も考える必要がある。

 本来であれば、資本関係も断絶する「所有権分離」が中立性の観点からは望ましい。それがより多くの新規市場参入を促し、発電事業と小売事業が競争市場になり、価格とサービスの両面で電力消費者利用者にとってのメリットにつながると考えられるが、「法的分離」にとどまったため、今次改革が「エネルギー供給構造」を実効的に変えるものになるかは、現段階では判断できない。少なくとも、これまで以上の透明性の確保が求められることは明白である。そのためには送配電事業者自らが、送配電網の利用状況データを含めた積極的な情報公開を行っていく必要がある。

地球温暖化を食い止めるため、パリ協定の実施に貢献する

地球温暖化を食い止めるため、昨年取りまとめたパリ協定の実施に貢献する。 【出典:2016年参院選公約】
わが国の2020年以降の約束草案をできるだけ早期に提出する等、2015年に合意予定のポスト京都議定書の国際枠組みづくりに貢献する。同時に、わが国の最先端の環境技術を国際社会において普及させる等「攻めの地球温暖化外交戦略」を推進する。
【出典:2014年衆院選マニフェスト】
ポスト京都で主導的な役割を主導、温室効果化ガスの長期目標は堅持、中期は目標再設定で現実実効的政策を推進【出典】2013年Jファイル

2点

3年評価:
2年評価:1点
1年評価:2点

約束草案は提出したが、2030年の削減目標において環境基本計画と矛盾

 政府は昨年7月、日本の温室効果ガス排出量を2030年度に2013年度比26.0%減(2005年度比25.4%減)の水準にするとの約束草案を決定し、国連気候変動枠組条約事務局に提出した。  ただ、日本は2012年に閣議決定された第4次環境基本計画の中で、「2050年80%削減」という目標を掲げているが、2012年から2050年まで直線的に80%の排出削減を進めると仮定した場合、2030 年時点では約38%の削減になっている必要があるが、今回の約束草案は、2012年度比では約25%の削減にとどまり、環境基本計画との整合性が取れていない。

約束の背景である電源構成にも、再エネや原発の見込みに問題

 前提としてのエネルギーミックスにも再エネや原子力発電の見込みに問題がある。再エネ電源を2030年に22~24%とするという目標は、現時点で固定価格買取制度の設備認定をされている再生可能エネルギー発電設備の総計をわずかに上回るレベルにすぎない。再生可能エネルギーについては高コストとされているが、今後普及に伴いコストは低下するので、それを見込んだ内容とすべきであろう。  原子力発電比率については20~22%が目標だが、原発の運転期間40年の原則にのっとれば、2030年には15%程度となる。その5~7%差の部分は、最長20年の運転延長、または新増設やリプレース(建て替え)を行わないと確保できないが、現在の原発再稼働を巡る混乱を見ると、2030年までにこの数字が実現できるかはきわめて疑わしい。

化石燃料重視の方針は、世界の流れに逆行

 再エネが伸びず、しかも想定通り原発が稼働しない場合、化石燃料を使い続けるしかないが、石炭発電の使用電力量当たりのCO2排出量は、超々臨界圧のような最新型の技術でも液化天然ガス火力発電(コンバインドサイクル)の2倍以上である。そうすると石炭火力を26%としたことはCO2排出量を考慮すると過大である。しかも、石炭火力発電所新設の動きが相次いでいる。そもそも、世界が「カーボン・ニュートラル」に向けて動き出す中、その流れに逆行するかのような化石燃料重視の方針は、日本の存在感を著しく低下させることにつながる。化石燃料に依存しないエネルギーシステムを構築し、カーボン・ニュートラル社会実現に向けた方向性を世界に向けて示さなければ、「ポスト京都」で主導的な役割を果たしていくことは難しい。  さらに、COP22における交渉の場でも日本の存在感は薄い。安倍首相は臨時国会の所信表明でパリ協定に言及せず、さらに、批准の手続きの締め切りである10月19日までに協定批准が間に合わなかった結果、11月15日の第一回締約国会議では、オブザーバー参加に甘んじた。そんな中、アメリカ大統領選では、パリ協定の脱退をほのめかすドナルド・トランプ氏が当選した。パリ協定の行方に影が差し込みはじめた中、日本としては実効的な「パリ協定の実施に貢献する」ための方策を打ち出す必要があるが、協定発効に貢献できなかった国がどこまで影響力を発揮することができるのか、きわめて疑わしい状況である。


各分野の点数一覧

経済再生
財政再建
社会保障
外交・安保
エネルギー・環境
地方再生
2.7
(昨年2.8点)

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2.7
(昨年2.25点)

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2.4
(昨年2.25点)

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3.3
(昨年3.6点)

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2.5
(昨年2.2点)

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2.5
(昨年2.4点)

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復興・防災
教育
農林水産
政治・行政・公務員改革
憲法改正
2.4
(昨年2.3点)

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2.8
(昨年2.8点)

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2.4
(昨年2.6点)

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2.7
(昨年2.7点)

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2.0
(昨年2.0点)

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評価基準について

実績評価は以下の基準で行いました。

・すでに断念したが、国民に理由を説明している
1点
・目標達成は困難な状況
2点
・目標を達成できるか現時点では判断できない
3点
・実現はしていないが、目標達成の方向
4点
・4年間で実現した
5点

※ただし、国民への説明がなされていない場合は-1点となる

新しい課題について

3点

新しい課題に対する政策を打ち出し、その新しい政策が日本が直面する課題に見合っているものであり、かつ、目的や目標、政策手段が整理されているもの。または、政策体系が揃っていなくても今後、政策体系を確定するためのプロセスが描かれているもの。これらについて説明がなされているもの
(目標も政策体系が全くないものは-1点)
(現在の課題として適切でなく、政策を打ち出した理由を説明していない-2点)