【総合評価】
1年目
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2年目
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3年目
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4年目
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3.2点
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2.8点
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2.8点
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2.7点
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【個別項目の評価】
評価対象の政策 |
2013
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2014
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2015
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2016
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「三本の矢」によって10年間の平均で名目3%、実質2%程度の経済成長を達成し、雇用、所得の拡大を目指す
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3
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3
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2
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2
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物価安定目標2%の早期達成に向け、大胆な金融政策を引き続き推進する
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2
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2
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2
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2
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より弾力的かつ効果的な経済財政の運営を推進し、機動的な政策対応を行い、経済再生に向けて万全を期す
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3
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3
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2
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2
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経済再生と財政再建を両立させながら、雇用や所得の増加を伴う経済好循環のさらなる拡大を目指す
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4
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3
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3
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3
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同一労働・同一賃金の実現により、正規・非正規の格差を是正する
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2
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2
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3
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働き方改革実行計画を今年度内にまとめる
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-
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-
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-
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3
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環太平洋パートナーシップ協定(TPP)の早期発効
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3
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3
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4
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3
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国家戦略特区のさらなる制度拡充を図る
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3
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2
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3
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3
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2015年度から、より広く負担を分かち合う構造に改革することにより恒久財源を確保したうえで法人実効税率の引き下げに着手し、数年で20%台まで引き下げることを目指す
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3
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3
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3
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3
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第5期科学技術基本計画に基づき、「超スマート社会」の実現に向けた科学技術革新を推進するとともに、その裏付けとなる政府研究開発投資の抜本的拡充(5年間総額26兆円)の実現を目指す
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3
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2
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3
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3
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訪日外国人2020年4000万人、旅行消費額8兆円を目指す
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4
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4
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4
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4
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2020年までにあらゆる分野で女性が指導的地位に占める割合を30%以上にする目標を実現する
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2
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2
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2
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2
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日中韓自由貿易協定(FTA)や東アジア地域包括的経済連携(RCEP)などのアジア太平洋における広域経済連携の取り組みや、欧州連合(EU)との経済連携協定(EPA)などを通じた自由貿易を促進する
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4
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4
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3
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3
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国内総生産(GDP)600兆円の実現を目指す
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-
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-
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2
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3
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評価の視点 |
安倍政権の経済政策は、「大胆な金融政策」「機動的な財政政策」「成長戦略」の3本の矢から成る。さらに、アベノミクス3年目の2015年9月には、「アベノミクスは第二ステージに移った」とし、1億総活躍社会をキャッチフレーズに、「名目GDP600兆円」「希望出生率1.8の実現」「介護離職ゼロの実現」を掲げる新3本の矢が公表された。政権発足4年が経過する現時点で、デフレ脱却がどの程度実現したのか、名目成長率3%、実質成長率2%の実現に向けて、3本の矢がどのような効果を発揮したのか、あるいは発揮する道筋がどこまで見えたのか、さらに、少子高齢化、人口減少という構造問題の解決に、新3本の矢がどの程度寄与すると期待できるのかという観点から評価する。 安倍政権は、第1の矢、第2の矢によって成長率を嵩上げしつつ、第3の矢によってゼロ%台前半まで低下している潜在成長率の少なくとも2%以上への引き上げを目指している。第1の矢による円安・株高によって、企業業績が回復し、これが賃上げの実現、設備投資の拡大に結び付く「経済の好循環」実現を図っているが、これはどの程度うまくいっているのか、第2の矢による計6次にわたる経済対策・補正予算の編成は、持続的な景気押し上げにどの程度寄与したのか、中長期的な財政健全化との整合性がどの程度確保されたのか、第3の矢はどの程度実行され、どの程度潜在成長率の押し上げに作用しているのか、名目GDP600兆円の実現可能性はどの程度か、出生率1.8への引き上げ、介護離職ゼロが実現できる可能性はどの程度か、これら新目標を達成するための政策手段は十分といえるのか、等々、様々な観点から評価する。 結論を先取りすれば、3本の矢は、第1、第2の矢に偏重し過ぎた結果、潜在成長率の引き上げには結び付かず、成長率目標、2%物価目標の達成はなお道半ばと言わざるを得ない。それどころか、円安による物価押し上げは、企業の仕入れコストの増加や家計の実質所得の減少を通じて個人消費を下押しするといった副作用が顕在化するなど「経済の好循環」発揮は、力不足な状況に止まっている。株価押し上げを狙ったコーポレートガバナンス強化も所期の効果を発揮するに至っていない。第2の矢の乱発は、財政健全化に逆行し、日銀による国債大量購入と相まって、財政規律の緩みをもたらしたことは疑いない。さらに、第3の矢である成長戦略の実行は観光、農業などある程度進捗している分野もみられるが、法人税改革など進捗が不十分な分野も多く、全体的に実行スピードが遅いこともあって、経済全体を力強く押し上げるまでには至っていない。 新3本の矢関連施策も、一定規模の予算積み上げが実施されたものの、タブーを排した本格的な構造改革には踏み込んでおらず、目標達成が確実視される状況とは程遠い。 第1の矢、第2の矢に対する過度の偏重を改め、第3の矢の実行スピードを上げていくこと、財政や社会保障の改革を含めた構造問題に対する抜本的な取り組みが不可欠であり、今後、安倍政権がそうした意思を内外に示し、実行に向けて舵を切っていくことが出来るのかどうかがアベノミクスの成否を左右するため、今後の展開を見極めていく必要がある。 |
【経済再生】個別項目の評価結果
「三本の矢」によって10年間の平均で名目3%、実質2%程度の経済成長を達成し、雇用、所得の拡大を目指す |
2点 3年評価:2点 |
アベノミクスで改善した経済指標安倍政権は発足後から、①大胆な金融緩和、②機動的な財政運営、③成長戦略の3本の矢から成るアベノミクスを打ち出した。この政策は、市場や家計、企業の期待に働きかけることによって、デフレ脱却を目指すと同時に、規制改革などの構造改革によって潜在成長率の引き上げを目指すものである。 まず第一の矢、金融の異次元緩和によって為替の円安や株価上昇をもたらした。上場企業の2016年4~9月期の純利益は前年同期比で11%減ったものの、2017年3月期の純利益は2年ぶりに増加する見通しとなるなど、企業業績を改善させた点で一定の効果を発揮したと評価できる。 他方で、企業業績の改善により、雇用情勢も近来にない改善振りを示している。16年10月の有効求人倍率は1.40倍、失業率は3.0%、完全失業者数は195万人と、21年8カ月ぶりに200万人を切るなど、労働需給は引き締まった状態となっている。こうした労働需給の引き締まりを反映して、16年10月の従業員1人当たり平均の現金給与総額(名目賃金)は前年同月比0.1%増の26万6658円となり、雇用増加や賃金上昇につながていることは評価できるものの力不足は否めない。 アベノミクスが掲げた名目3%、実質2%の経済成長の達成は難しい一方、ミクロ面の成果に対して、マクロ経済のパフォーマンスは芳しくない。安倍政権が成立してから3年間の実質成長率は、13年度:2.0%、14年度▲1.0%、15年度1.3%となり、名目成長率も13年度1.7%、14年度1.5%、15年度2.8%となっている。また、16年12月8日に内閣府が発表した同年7~9月期の国内総生産(GDP)改定値は、物価変動を除いた実質で前期比0.3%増、年率換算では1.3%前後の名目成長率と予想されている。設備投資については、財務省が16年12月1日に発表した7~9月期の法人企業統計によると、金融業・保険業を除く全産業の設備投資は前年同期比1.3%減の10兆3521億円と低調だった。 こうした基本的背景として、アベノミクスが副作用や反動影響が出る金融・財政政策に過度に依存し、経済の体質を強化する成長戦略の歩みが遅いことが指摘できる。「10 年間の平均で名目 3%程度、実質2%程度の経済成長を達成し、雇用・所得の拡大を目指す」ためには、イノベーションや設備投資の本格的な拡大によって、生産性の大幅な上昇を図る必要があるが、そうした展望は現時点では見通しがつかず、10 年間の平均で名目3%程度、実質2%程度の経済成長率の達成は難しいと考えざるを得ない。 |
物価安定目標2%の早期達成に向け、大胆な金融政策を引き続き推進する 大胆な金融緩和でデフレから脱却する |
2点 3年評価:2点 |
2%の物価目標は事実上断念黒田日銀総裁の当初の約束は2%の物価目標を2年程度で達成することだった。その実現に向けて、資金供給量(マネタリーベース)を積み増す「量的・質的金融緩和」を導入したものの、2年経過しても物価目標は達成できず、目標年次を先送りしながら、マネタリーベースの上積み(2014年10月31日)、マイナス金利の導入(2016年1月29日)など、様々な追加の緩和を行ったが、現時点で2%の物価目標は達成できていない。 そうした中、日銀は16年9月21日の金融政策決定会合で、金融緩和強化のための新しい枠組みとして、①10年物国債利回りをゼロ%にくぎ付けすること、②消費者物価の実績が安定的に2%を超えるまで、マネタリーベースを拡大することを柱とする「長短金利操作付き量的・質的金融緩和」の導入を決定した。これにより、日銀がこれまでの金融政策運営が失敗であったことを暗に認めると共に、大胆な金融緩和を行うことを事実上断念したということができる。さらに、16年11月1日の金融政策決定会合では、物価2%目標の達成時期を「17年度中」から「18年度ごろ」に先送りし、少なくとも黒田東彦総裁の任期中の目標実現は難しくなった。 合理的期待形成ではなく、適合的期待形成が実証された期待インフレ率に関しては、日銀の大胆な金融政策実施に伴う心理面への影響は一時的に止まり、むしろ、消費者は現実の物価上昇率に影響される側面がより強く、現実の物価上昇率の鈍化に歩調を合わせる形で期待インフレ率も0%台前半に低下している。このことは、マネタリストが暗黙の前提としている合理的期待形成はあまり働かず、期待が現実の動向の影響を受けるという適合的期待形成がなされていることが実証されたことを意味する。この点を考えると、景気拡大が続き、需給ギャップがプラスに転じてそのプラス幅が拡大し、現実の物価が上昇するにつれて期待インフレ率も上昇するという状況にならない限り、2%目標達成は極めて困難であるといえる。 |
より弾力的かつ効果的な経済財政の運営を推進し、機動的な政策対応を行い、経済再生に向けて万全を期す 今秋にも、速やかに経済対策を断行し、切れ目のない対応をとる【出典:2016年参院選公約】 |
2点 3年評価:2点 |
4年間で6回にわたって行われた経済対策・補正予算安倍政権誕生以来、アベノミクス第2の矢である「機動的な財政政策」と銘打って、大規模な経済対策と補正予算が組まれてきた。安倍首相自身、2013年1月28日の衆議院本会議において、「財政出動をいつまでも続けるわけにはいきません」と発言しているものの、過去4年間で、6次にわたる経済対策・補正予算が組まれてきた。確かに切れ目のない対応がとられてきたとはいえるが、その規模は膨大である。いわゆる真水にあたる国費投入額は、総額26.9兆円、政府保証や政府系金融機関などの融資などを含む事業規模総額は実に累計で66.9兆円に達している。対策の中身は、復興・防災対策、災害復旧、21世紀のインフラ投資と位置付けた公共投資の拡大を中心に、成長力強化、暮らしの安全、地域活性化、生活者・事業者支援、一億総活躍関連、TPP関連など多岐にわたっているが、その経済効果は、対策の規模対比でみて、さほど大きいとは言えない。名目公共投資の増加により、13年度は0.5%成長率を押し上げたものの、2014年度は0%、2015年度は▲0.1%と景気押し上げ効果は次第に減衰している。 財政政策は成長戦略の効果が発揮されるまでの繋ぎの政策そもそも第2の矢である機動的な財政政策については、景気の下振れリスクへの対応が目的であり、この効果は本来一時的である。財政の持続可能性確保の観点からも、毎年継続して行うべきかどうかは慎重に吟味されなければならない。しかも、大規模な財政支出は、財政制約面から持続不能であり、現実にも財政政策の効果が切れると大きな需要の反動減が生じている。こうした意味で、本来、第2の矢である財政政策は、第3の矢の成長戦略の効果が発揮されるまでの繋ぎの政策に他ならず、同時に財政規律を緩ませるリスクを冒すものであることに留意が必要である。今年も補正予算が閣議決定されたが、民需中心の経済への明確な道筋が見えていない。 |
経済再生と財政再建を両立させながら、雇用や所得の増加を伴う経済好循環のさらなる拡大を目指す 新三本の矢を放って、「成長と分配の好循環」を創り出す【出典:2016年参院選公約】 |
3点 3年評価:3点 |
アベノミクスの第1と第2の矢である金融政策と財政政策によって円安・株高を実現し、第3の矢である成長戦略によって企業の業績が回復し、民間設備投資が拡大することで、賃金上昇による持続的な個人消費の拡大に結び付ける。そうして拡大した「経済のパイ」を分配し、さらなる成長につなげていくことが、アベノミクスが目指した「成長と分配の好循環」である。こうした好循環を実現する鍵は、成長戦略の着実な実行によって、民間企業のリスクテイクを促すとともに、企業業績の回復による賃上げ、そして、個人消費の拡大という形での景気回復メカニズムが実現できるかどうかにある。そうした点では、課題設定は正しい。 好転してきた経済指標上場企業の2016年4~9月期の純利益は前年同期比で11%減ったものの、2017年3月期の純利益は2年ぶりに増加する見通しとなった。他方で、企業業績の改善により、雇用情勢も近来にない改善振りを示している。16年10月の有効求人倍率は1.40倍、失業率は3.0%、完全失業者数は195万人と、21年8カ月ぶりに200万人を切るなど、労働需給は引き締まった状態となっている。こうした労働需給の引き締まりを反映して、16年10月の従業員1人当たり平均の現金給与総額(名目賃金)は前年同月比0.1%増の26万6658円となった。 アベノミクス1年目は株価上昇による家計のマインド改善から、消費動向指数は2012年12月(39.0)を境に、1月は43.1と4.1ポイントも上昇している。その後、2年目に入って消費税増税前後(2月~5月)は37.0~39.8と低迷を続けたものの、その後、改善方向に転じ、16年9月には安倍政権1年目と同水準の43.0まで上昇した。しかし、その後10月(42.3)、11月(40.9)は徐々に下がってきており、消費者心理に陰りが見えてきている。 「経済の好循環」の実現に向けた端緒はところどころで散見できるが、そうした好循環が本格化できるかは、成長戦略の実行スピードにかかっており、経済の好循環の更なる拡大は現時点では判断できない。 景気回復局面における財政出動は問題他方で、安倍政権は「経済再生と財政再建を両立」という点については、財政規律が弛緩したことは明らかである。過去4年の6次の対策のうち、国債発行による財源調達は、最初の1回目「日本経済再生に向けた緊急経済対策(2013.1.11)と直近の6回目「16年度第2次補正予算(2016.8.24)」の2回に止めてはいるが、合計で10.9兆円もの国債が発行されている。また、13年度から15年度までの決算ベースでみると、3年間で合計9.7兆円もの税収上振れが生じたが、歳出はこれを上回る13.8兆円も拡大しており、増えた税収増を上回る金額を景気対策に投入してきたと言える。しかも、こうしたアベノミクスの果実(税の自然増収)は、16年度第3次補正予算(12月22日閣議決定)において、1兆7512億円の赤字国債を追加発行によって財源不足の穴埋めを行っている。 景気回復局面における財政出動は、政権が掲げる「経済再生と財政再建の両立」という観点からも問題だと考える。 |
「同一労働同一賃金」の実現により「正規・非正規の格差」を是正する 同一労働・同一賃金の実現により、正規・非正規の格差を是正する【出典:2016年参院選公約】 |
3点 3年評価:2点 |
格差是正に向けた法案化の流れを作り出したことは評価できる安倍首相は、2016年9月26日の所信表明演説において、「同一労働同一賃金を実現します。不合理な待遇差を是正するため、新たなガイドラインを年内を目途に策定します」との目標を掲げた。同日、政府は働き方改革の実現を目的とする実行計画の策定などに係る審議を行うために、内閣総理大臣決裁によって「働き方改革実現会議(以下、実現会議)」が設置された。そして、12月20日の実現会議において「同一労働同一賃金ガイドライン案」が提示された。ガイドラインでは、正規と非正規との不合理な待遇差を例示し、基本給や賞与、手当などについて格差是正を促した。例えば、基本給は①職業経験や能力、②業績・成果、③勤続年数の3要素の基準を設定した。また、賞与に関しても業績への貢献が同じであれば正規・非正規にかかわらず同額を支給し、貢献度合いに違いがあればそれに応じた額を支給するとした。今後、このガイドラインを基に、法改正が想定される。 こうした格差是正を行うという問題設定は正しく、法案化に向けた流れを作り出したことは評価できる。 同一労働同一賃金という手段が自己目的化してしまったしかし、2つの面で問題がある。1つは、2016年6月2日に閣議決定された「ニッポン一億総活躍プラン」では、「正規労働者と非正規雇用労働者の賃金差について、欧州諸国に遜色のない水準を目指す」との目標を掲げているが、今回示されたガイドラインでは、格差是正と言いながら、いつまでに、どこまで格差を是正するかということが示されなかった。もう1つは、本来の意味での「同一労働同一賃金」とは、労働市場の処遇を決める方針であるということだ。例えば、記者であれば正規だろうが非正規だろうが同じ賃金になるが、日本は同じ仕事でも正規、非正規で賃金を決める仕組みになっている。つまり、今回、安倍政権は同一労働同一賃金を、正規労働と非正規労働の格差を是正するための論理立てに使ったに過ぎず、本来の意味で「同一労働同一賃金」を目指すのであれば、わが国の雇用システムのあり方を抜本的に変えるところまで踏み込む必要があった。しかし、そうした労働市場の全体的なビジョンの設計、それに向けた改革に踏み込まなかったために、同一労働同一賃金という手段が自己目的化してしまい、中途半端になったために目標が曖昧になったと言わざるを得ない。その結果、現時点で格差の是正が本当に行われるかどうかは判断できない。 |
「働き方改革実行計画」を今年度内にまとめる 【出典:9月26日所信表明演説】 |
3点 3年評価:-点 |
個別問題を解決するためにも、雇用システムの構造問題にメスを2016年9月26日、政府は内閣総理大臣決裁によって、働き方改革の実現にむけて、実行計画の策定などについて議論する「働き方改革実現会議(以下、実現会議)」を開催することを決定し、これまでの5回の会議を行ってきた。そして、働き方改革実行計画自体は2016年度内にまとまるものとみられる。 この実現会議において、長時間労働是正、正規・非正規の格差是正などが議論されたが、こうした個別の問題を解決しようとする課題設定は正しい。しかし、働き方改革で目指すものとは、最終的には長時間労働是正や正規・非正規の格差是正などの個別問題の解決であるにしても、そうした問題を生み出しているわが国の雇用システムの構造問題にメスを入れなければ実効性のある解決にはつながらない。そうした構造問題を解決する雇用システム総体がどのようなものとなるかのビジョンを示し、その実現に必要な改革に取り組む、というスタンスが必要である。 加えて、現在、日本では少子高齢化が急速に進むが、これから2025年に向けて、団塊の世代が75歳以上の後期高齢者になり、医療費や保険料負担の増加、30万人の介護士不足といった課題に直面し始める。そうした中で、長時間労働の是正や正規・非正規の格差是正、シニアの活躍など個別の課題認識は正しいとしても、介護士の増員や介護施設の拡充など、これから直面する問題やその解決手段の全体像が見えなければ、多くの人たちが介護離職に陥りかねない。そうした様々な課題が連動している中、政府は個別課題の目標とともに、今後の日本の将来やビジョンを示し、課題解決に向かうための働き方改革を議論をしていく必要がある。政府の課題認識は正しいと考えるが、働き方改革実行計画が出されていない現時点では、課題解決に向かっていけるのか判断できない。 |
環太平洋パートナーシップ協定(TPP)の早期発効に努力を重ねる 速やかにTPP協定の国会承認をいただき、立法府を含めた日本の固い決意を世界にしっかり発信するとともに、TPPの意義を米国に粘り強く訴えていく |
3点 3年評価:4点 |
TPPに何とか踏みとどまったことは高く評価できるアメリカの次期大統領であるトランプ氏は、2017年1月20日の大統領就任式での環太平洋経済連携協定(TPP)からの離脱を表明している。そうした状況を考えると、TPPの発行自体が難しくなるが、安倍首相がリーダーシップを発揮して、TPPと関連法を16年12月9日に成立させたことは高く評価できる。 しかし、トランプ氏がTPPからの離脱を宣言していることを考えれば、TPPの発効自体は難しくなっていることから、TPPの早期発効を実現したという満点の評価にはならない。ただし、現時点で日本政府ができる最大限のことを実現したと評価できる。また、今回、法案を通したことで、今後は、アメリカを説得するための材料になるし、TPP交渉の中で、知的財産権の保護、政府調達、国有企業の改革などで新たにルール作りが進んだことで、今後の日本の通商政策の枠組みを作っていく上でも、様々な検討の余地が広がるなど高い評価となる。 |
国家戦略特区の更なる制度拡充を図る 【出典:2016年参院選公約】 |
3点 3年評価:3点 |
岩盤規制を突破する特区になり得るか国家戦略特区は、産業の国際競争力の強化及び国際的な経済活動の拠点の形成に関する施策の総合的かつ集中的な推進を図るため、2015年度までの期間を集中取組期間とし、いわゆる岩盤規制全般について突破口を開いていくものと位置付けられている。 安倍政権の4年間を通じて、第一次指定地域として、2014年5月1日に、東京圏(東京都、神奈川県、千葉県成田市)、関西圏(大阪府、兵庫県、京都府)、新潟県新潟市、兵庫県養父市、福岡県福岡市、沖縄県の6地域が指定され、その後も、15年8月28日に第二次指定地域として、秋田県仙北市、宮城県仙台市、愛知県の3地域が追加され、さらに、16年1月29日には、第三次指定地域として、広島県・愛媛県今治市、千葉市(東京圏の拡大)、北九州市(福岡市に追加)の3地域が追加され、特区数は当初の6地域から12地域(既存特区に追加されたものを除けば10地域)に拡充されている。 特区内における規制緩和も都市再生、創業、外国人材、観光、医療、介護、保育、雇用、教育、農林水産業、近未来技術など11分野、45項目と大幅にメニューが拡充されている他、認定事業数も216事業に拡大し、着々と制度拡充が進んでいることは素直に評価できる。 国家戦略特区は、いわゆる岩盤規制の突破口と位置付けられており、特区での規制緩和を全国展開していくことが想定されている。ただし、45項目中、全国展開を進めているのは21項目と半分以下にとどまっており、農業や医療、労働分野などの岩盤規制とされているものについては、特区内での実施にとどまっているものが多く、改善を要する。また、農業特区の中で兵庫県養父市のように岩盤規制に風穴をあけて市外から11の企業が参入し、農業生産法人を設立するなど、それなりの成果が出ている特区もある一方、大多数の特区は、具体的プロジェクトがスタートして間もないところが多く、目立った成果に結びついていない地域も少なくない。これは、国家戦略特区諮問会議や区域会議など意思決定機関や利害関係者が多く、事業計画の認定までにかなりの時間を費やしていることに起因している。また、東京圏などでは外資系企業の特区への参入が期待されているものの、法人税の問題などもあり、目立った動きが生じていないのが実情である。 |
2015年度から、より広く負担を分かち合う構造に改革することにより恒久財源を確保したうえで法人実効税率の引き下げに着手し、数年で20%台まで引き下げることを目指す 法人税改革を推進する【出典:2016年J-ファイル】 |
3点 3年評価:3点 |
法人税減税は1年前倒しで20%台に引き下げられたが、以後の見通しはない法人実効税率は、2015年度にそれまでの34.62%から32.11%に引き下げられ、2016年度には29.97%と目標とする20%台まで1年前倒しで引き下げられたことは評価に値する。ただし、その先については2018年度29.74%とわずかに低下するだけであり、29%以下への引き下げの移行の姿が描かれていない点は、評価を下げる要因である。その理由として、これまでの法人税改革が「税収中立」の名の下に、税率の引き下げと減価償却費や引当金の見直し、外形標準課税の範囲拡大など課税ベースの拡大とセットで実行されたためである。2017年度税制改正大綱においては、法人課税関係では所得拡大促進税制、研究開発税制の見直し、機械設備の固定資産固定資産税減税措置が盛り込まれたものの、法人税や法人事業税については、今後の改正の方向性すら盛り込まれず、安倍政権としての今後のスタンスが曖昧なまま放置されている。換言すれば、これまでの法人税の枠内で税収中立を前提とする法人税改革は完全に行き詰っているといえる。 法人税減税の目的とは他方、法人実効税率引き下げの目的が設備投資の拡大なのか、立地競争力の強化なのかについて、十分な説明責任が果たされていない。設備投資や研究開発投資の拡大が目的ならば、投資減税措置や研究開発促進税制の強化の方が法人実効税率ひきさげよりも少ない財源でより直接的な効果をもたらすため(設備投資や研究開発投資をする企業のみが減税対象となる)、これまでの法人税実効率を引き下げながら、設備投資減税や研究開発減税を縮小する改革措置は、当初の目的に反する。また、立地競争力の強化で外国企業の対日直接投資を促すことが目的ならば、29%台という税率はすでにOECD諸国の平均税率が25%、アジア諸国の平均は22%台であることを考えると、中途半端である。2015年末の対日直接投資残高は20兆円と2020年目標の35兆円からは乖離があり、現時点では法人税の減税の見通しがないため、目標を達成できるかは判断できない。 |
「第5期科学技術基本計画」に基づき、「超スマート社会」の実現に向けた科学技術イノベーションを推進するとともに、その裏付けとなる政府研究開発投資の抜本的拡充(5年間総額26兆円)の実現を目指す 【出典:2016年参院選公約】 |
3点 3年評価:3点 |
「第5期科学技術基本計画」を閣議決定2001年1月の中央省庁再編に伴い内閣府に設置された「総合科学技術会議」は、内閣府設置法の一部を改正する法律によって、「総合科学技術・イノベーション会議」に改組された。同会議の専門家会合で政府は、16年度から5年間の科学技術政策の基本方針を示す「第5期科学技術基本計画(以下、基本計画)」の素案を公表し、16年1月22日に閣議決定している。その中で、「持続的な成長と地域社会の自律的な発展」、「国及び国民の安全・安心の確保と豊かで質の高い生活の実現」、「地球規模課題への対応と世界の発展への貢献」及び「知の資産の持続的創出」を目指すべき国の姿として定めた。その実現に向けて科学技術イノベーション政策を推進するに当たり、大変革時代において、先を見通し戦略的に手を打っていく力(先見性と戦略性)と、どのような変化にも的確に対応していく力(多様性と柔軟性)の両面を重視し、政策を推進していくこととした。 この計画の中で、名目国内総生産(GDP)比で1%、5年間に約26兆円の研究開発費を投じる数値目標を明記した。また、投資や政策の成果を評価する指標として、世界的に影響力のある論文の割合を10%に高めたり、40歳未満の大学教員数を1割増やしたりするなど、8つのKPIを初めて盛り込んだ。さらに、基本計画を着実に実施するため、同会議が総合戦略を毎年作成し、年内に答申としてまとめ、年明けに閣議決定するなど、同会議の機能強化に向けた制度整備に努めていると評価できる。 研究開発費の戦略的配分と基礎研究・応用研究、実用化のプロセス強化が重要一方、第二次安倍政権の発足以来、成長戦略の一環として毎年「科学技術イノベーション総合戦略」を策定し、閣議決定している。位置づけとしては、基本計画に定めた中長期的な政策の方向性の下、その年度に重きを置くべき取り組み等については、毎年の状況変化を踏まえ科学技術イノベーション総合戦略において示すこと、基本計画と総合戦略を一体的に運用することで、政策のPDCAサイクルを確実なものとし、実効性ある科学技術イノベーション政策を推進することとされた。16年も5月24日に「科学技術イノベーション総合戦略2016」を閣議決定した。その中で、16年度から17年度に向けて取り組むべき施策として、①Society 5.0の深化と推進、②若手をはじめとする人材力の強化、③大学改革と資金改革の一体的推進、④オープンイノベーションの推進による人材、知、資金の好循環システム、⑤科学技術イノベーションの推進機能の強化を挙げた。日本経済の潜在成長率を引き上げるには、画期的なイノベーションが次々と生まれる仕組み作りが重要であり、国の研究開発費の戦略的配分に加えて、基礎研究から応用研究、実用化に至るまでのプロセスをより強化する「ナショナル・イノベーション・システム」の構築が求められる。しかし、そうした動きはまだ緒に就いたところであり、現段階での評価は難しい。 |
訪日外国人2020年4000万人、旅行消費額8兆円を目指す 【出典:2016年参院選公約】 |
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2014年の公約から目標値を倍増させ、野心的な目標を掲げた自民党は2016年の参議院選挙の公約において、14年に掲げた「2020年訪日外国人旅行者数2000万人」という目標を倍増させ、「2020年4000万人」という野心的な目標を掲げた。日本政府観光局が16年12月21日に発表した1月~11月の訪日外国人旅行者数は、前年同期比22.4%増の2198万8000人となり、過去最高を記録した。紅葉シーズンの到来や展示会等のイベント開催に加え、東アジアにおける航空路線の新規就航・増便、クルーズ船の寄港増加、そして、これまでの継続的な訪日旅行プロモーションなどが、増加要因として挙げられる。 一方で、もう1つの目標値である「旅行消費額8兆円」については、15年の訪日旅行消費額は、14年に比べて71.5%増の3兆4771億円となり、増加の傾向にある。16年も、これまでの指標を見る限り1~3月:9305億円(前年同期比31.7%増加)、16年4~6月:9533億円(前年同期比7.2%増加)、16年7~9月:9717億円(前年同期比2.9%減少)となり、今年も、前年度を更新する方向で動いており、訪日外国人、旅行消費額共に増加傾向にある。現段階では、実現はしていないが、2020年の東京オリンピックによる観光客増も含め、目標達成の方向に向けて動いていると評価できる。 目標達成に向けて課題も明らかに一方で、課題も明らかになってきた。訪日外国人の増加により、現在でも、東京都や大阪府などの都市部のホテルでは、稼働率が80%を超える状況が続き、今後、目標の引き上げなどによりホテル不足が更に激しくなる可能性がある。一方で、地方の旅館などは利用が伸び悩んでおり、いかに都市部の宿泊施設を確保しつつ、外国人観光客を地方に誘導するかが重要な政策課題となる。 こうした課題に対して、政府は本格解禁のための新法において、年間営業日数の上限を設定し、年間180日とする方針を固める一方で、各自治体が条例で上限日数を少なくすることも可能とした。こうした法案を、2017年の通常国会に提出する方針を示している。しかし、現在でも民泊は全国で約3万カ所に上るとされるが、近隣住民とのトラブルなどが社会問題化しつつある。そうした問題について、どのように対処するかコンセンサスは得られていない。 |
2020年までにあらゆる分野で女性が指導的地位に占める割合を30%以上にする目標を実現する 指導的地位に占める女性の割合を3割程度にすることを目指す【出典:2016年参院選公約】 |
2点 3年評価:2点 |
第4次男女共同参画基本計画で現実的な目標値に変更政府は2015年12月25日、第4次男女共同参画基本計画を閣議決定した。その中で、2020年度末までに国や自治体、民間企業などの各分野で指導的地位の女性の占める割合を国家公務員の本省課室長相当職に占める女性の割合を7%(15年7月時点3.5%)、都道府県(市町村)の本庁課長級が15%(20%)(同8.5%(14.6%))、民間企業の課長級で15%(同9.2%)という数値目標を設定した。当初から、2012年、2014年のマニフェストで掲げていた「2020年度までに30%以上」という目標の実現は困難だと考えられていたことからすると、現実的な目標値に変更し、実現に向けて政策を打ち出したことは評価できるが、これにより、当初掲げた目標は事実上断念し、現実的な目標の達成に向けてシフトする形となった。 2015年8月28日、女性管理職の割合に数値目標を義務付ける「女性活躍推進法」が成立し。2016年4月1日より施行された。これに基づき、国・地方公共団体、301人以上の大企業は、①自社の女性の活躍に関する状況把握・課題分析、②その課題を解決するのにふさわしい数値目標と取組を盛り込んだ行動計画の策定・届出・周知・公表、③自社の女性の活躍に関する情報の公表を行う義務を生じるようになった(300人以下の中小企業は努力義務)。 女性の活躍推進のため、管理職比率を高めるという目標設定が妥当なのかしかし、本法律には罰則規定がなく、数値目標も各企業や自治体に委ねている。また、行動計画の届出時に、女性の活躍推進に関する取組の実施状況が優良な企業については、申請により、厚生労働大臣の認定を受けることができるが、用途としては認定マークを商品などに付することができる程度にとどまっている。さらに、2014年10月10日に政府がとりまとめた「すべての女性が輝く政策パッケージ」では、女性登用に積極的な企業への補助金付与や公共調達での優遇措置などが明記されていたが、今回成立した「女性活躍推進法」には盛り込まれていない。 その後、内閣人事局が16年12月20日に公表した国家公務員幹部に占める女性の比率は、今年7月時点で4.1%。前年同月より0.6ポイント増えたが、国家公務員全体の女性比率(17.9%)を大きく下回っている。第4次男女共同参画基本計画で掲げた目標を上回ったのは、厚生労働省(10.0%)、文部科学省(8.8%)、経済産業省(8.3%)の3省のみであった。 そもそも、女性の活躍推進のために、管理職比率を高めるという目標設定が果たして妥当なのか、それを企業に半ば強制することが妥当なのかが問われてしかるべきで、長時間労働の是正など、女性の働く環境改善によりプライオリティーを置くべきとの議論もあることにも留意が必要であるが、現時点で目標の達成は難しいと言わざるをえない。 |
日中韓FTAや東アジア地域包括的経済連携(RCEP)などのアジア太平洋における広域経済連携の取組みや、EUとの経済連携協定などを通じた自由貿易化を促進する 【出典:2016年J-ファイル】 |
3点 3年評価:3点 |
各協定足踏み状態が続き、今後、合意に至るかは現時点では判断できない安倍政権は、2013年の日本再興戦略の中で、「2018年までにFTA比率70%を目指す」ことを掲げ、RCEP(東アジア包括経済連携協定)、日欧EPAについては15年末までに合意する目標を掲げていたが、一向に交渉が進んでいなかった。しかし、15年10月5日にTPPが大筋合意されたことで、TPP以外の経済連携協定の交渉加速が期待されていたが、いずれも足踏み状態が続いており、今後、合意に至るかは現時点では判断できない。 RCEPについては、アメリカがTPPの離脱を表明して以降、16年12月6日から10日まで、ジャカルタだ始まった。米国抜きのRCEP交渉の加速に前向きとされるのが、参加国全体の国内総生産(GDP)に占める比率が約5割と最も大きい中国である。一方で、TPPにも参加する日本やオーストラリア、ニュージーランドは国有企業改革や知的財産の分野で、TPP並みの高い水準での合意を主張し始めており、TPPの12カ国よりも多く、関税撤廃の水準をめぐる議論も続く中、当初の15年中の合意を16年中まで延期したものの、更に2017年の合意に再延期を行った。現段階では、来年の合意に至るか見通せない。 日EU・EPAについても、2016年内の合意を目標としていたが、EU側はチーズや豚肉など、日本側は自動車の完成車と部品などで関税撤廃を求めたものの、溝を埋め切れず、企業と国家の紛争解決の枠組みなどルールを巡る分野でも隔たりが残った。来年1月に速やかに交渉を再開することで一致したものの、2017年はフランス大統領選など欧州主要国で重要な選挙があり、欧州側の政治決断は難しくなり、現時点では非常に難しと判断せざるをえない。 日中韓FTAについては、2016年10月29日、日中韓の経済貿易相が交渉加速化に向けて更なる努力を行っていくことで一致し、日中韓首脳会談に報告することとされたが、韓国の朴槿恵大統領の弾劾訴追案が可決されるなど、年内の日中韓首脳会談は先送りされており、現時点では合意に至るかは判断できない。 |
GDP600兆円の実現を目指す 【出典:2016年参院選公約】 2020年頃にGDP600兆円を達成する(新第一の矢) |
2点 3年評価:2点 |
息の長い取り組みが必要になる日本再興戦略2016では、600兆円経済実現に向けて、①潜在需要を掘り起こし、600兆円に結び付く新たな有望成長市場の創出・拡大、②人口減少社会・人手不足を克服するための生産性の抜本的向上、③新たな産業構造への抜本的転換を支える人材強化、の3つの課題を掲げている。こうした課題認識自体は正しいといえるが、問題はその実行手段である。①については、第4次産業革命の実現、世界最先端の健康立国へ、エネルギー・環境制約の克服と投資拡大など、「600兆円に向けた官民戦略プロジェクト10」を掲げ、具体的な付加価値創出額の目標を設定している点は評価されるが、サービス産業の生産性向上、スポーツの成長産業化など実効性が疑わしいものも含まれており、期待先行の感はぬぐえない。この他、生産性向上を実現するために、規制・制度改革の推進、イノベーション・ベンチャー創出、経済連携協定締結促進などによる海外需要の取り込みが掲げられているが、これらの進捗の歩みは遅く、そもそも成果が短期的に期待できるものではない。腰を据えた息の長い取り組みが必要である。 GDPはかさ上げされたが、現実的には相当あん困難を伴う目標GDPを新アベノミクス第1の矢に位置付けている。本数値目標が発表された時点での2015年度の名目GDPは、500.6兆円で、600兆円達成には、16年度以降の5年間の平均で3.7%とアベノミクスの目標値(名目3%程度)を大きく上回ることになり、非現実的な目標設定だった。しかし、内閣府は16年12月18日に2015年度の名目GDP確報値を532.2兆円と発表した。これは改定前の数値から31.6兆円嵩上げされており、その主因は、これまで費用計上されていた研究開発費を設備投資にカウントしたためという技術的な要因によるものである。この場合、600兆円目標を達成するために必要な2020年度までの平均成長率は2.4%となったが、実質成長率は、2013年度:2.0%、14年度▲1.0%、15年度1.3%となり、名目成長率も13年度1.7%、14年度1.5%、15年度2.8%となっており、現実的には相当な困難を伴う目標であり、目標達成への道筋が描かれたとはいえない。 |
各分野の点数一覧
経済再生
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財政再建
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社会保障
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外交・安保
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エネルギー・環境
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地方再生
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復興・防災
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教育
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農林水産
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政治・行政・公務員改革
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憲法改正 |
評価基準について
実績評価は以下の基準で行いました。
・すでに断念したが、国民に理由を説明している
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1点 |
・目標達成は困難な状況
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2点 |
・目標を達成できるか現時点では判断できない
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3点 |
・実現はしていないが、目標達成の方向
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4点 |
・4年間で実現した
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5点 |
※ただし、国民への説明がなされていない場合は-1点となる
新しい課題について
3点
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新しい課題に対する政策を打ち出し、その新しい政策が日本が直面する課題に見合っているものであり、かつ、目的や目標、政策手段が整理されているもの。または、政策体系が揃っていなくても今後、政策体系を確定するためのプロセスが描かれているもの。これらについて説明がなされているもの |