【総合評価】
1年目
|
2年目
|
3年目
|
4年目
|
2.7点
|
2.0点
|
2.25点
|
2.7点
|
【個別項目の評価】
評価対象の政策 |
2013
|
2014
|
2015
|
2016
|
国と地方の基礎的財政収支について、2015年度までに10年度に比べ赤字の対GDP比を半減、20年度までに黒字化、その後の債務残高対GDP比の安定的な引き下げを目指す |
2 |
2 |
2 |
2 |
消費税率10%への引き上げは2019年10月に行う
|
4 |
3 |
3 |
3 |
2019年10月に消費税の軽減税率を導入する
|
- |
- |
3 |
3
|
5年間の集中財政再建期間に、国地方の公務員人件費を年間2兆円削減
|
2 |
1 |
1 |
-
|
評価の視点 |
・財政健全化目標である2020年度のPB黒字化を実現するための手段や考え方は明確になっているか。 内閣府が2016年7月26日に経済財政諮問会議に提出した「中長期の経済財政に関する試算」によれば、日本経済再生に向けた日本再興戦略を柱とする経済財政政策の効果が着実に発現し、中長期的な経済成長率が実質2%以上、名目3%以上となる場合であっても20年度の国・地方の基礎的財政収支(PB)は5.5兆円(GDP比1.0%)の赤字が残ると推計されている。また、経済が足元の潜在成長率並みで将来にわたって推移し、中長期的な経済成長率が実質1%弱、名目1%半ば程度にとどまる場合には、20年度のPBは9.2兆円(GDP比1.7%)の赤字と推計されている。 今後、どの程度の成長率の引上げが実現できるのか極めて不透明であること(安倍政権4年間における年率の経済成長率は実質1.3%、名目2.3%)、成長率がどのように推移するとしてもPB赤字をどのように埋めるのか具体的に示されていないことなどを踏まえると、PB黒字化を人々に確信させる状況になっているとは到底いえない。 財政健全化の最終的な目標設定は20年度以降も続く高齢化の中においても財政の持続性が保たれる財政構造を構築することであるべきであり、20年度という一時点の黒字化を達成すればよいわけでは決してない。とはいえ、現在の政権が責任を持つという意味で極端に遠い将来ではない数年後について、分かりやすい国民との約束であるPB黒字化は極めて重要かつ有効な目標である。 PB黒字化目標を実現する手段とされている経済・財政再生計画(「経済財政運営と改革の基本方針2015」の第3章、15年6月30日閣議決定)は、「デフレ脱却・経済再生」、「歳出改革」、「歳入改革」を3本柱としているが、これまでの取組みは歳出改革に偏重している印象はぬぐえない。歳出面の改革だけでなく歳入面の改革とのバランスを追求すべきところ、経済・財政再生計画では「社会保障制度を維持するため、経済環境を整える中で、消費税率の10%への引上げを17年4月に実施する」としていたが、16年6月1日に安倍首相はそれを19年10月に延期すると発表した。これはそもそも12年夏に成立した税制抜本改革法で15年10月に10%に引き上げると決まっていたものを17年4月に18か月延期し、さらにそれを30か月再延期したものである。首相の判断は尊重されるべきだが、税は民主主義そのものであり、憲法が租税法律主義を規定していることを考えると、約束を繰り返し破棄して必要な国民負担増を回避し続けていることに私達は懸念を抱かざるを得ない。 もちろん、財政収支という意味では税率引上げはタイミングの問題であり、安倍首相は20年度のPB黒字化目標を堅持すると述べている。だが、税収の増加ペースに陰りが見られ、17年度政府予算案が過去最大を更新している。以上を踏まえた上で、PB黒字化の実現、さらにはその先における政府債務残高対GDP比の着実な引下げの実現可能性があるのか、という視点から評価を行った。
|
【財政再建】個別項目の評価結果
国と地方の基礎的財政収支について、2015年度までに10年度に比べ赤字の対GDP比を半減、20年度までに黒字化、その後の債務残高対GDP比の安定的な引き下げを目指す |
2点 3年評価:2点 |
安倍首相は2014年11月18日の記者会見において、15年10月に予定していた消費税の10%への引き上げを17年4月に先送りする考えを示すと同時に、財政健全化の指標である国・地方の基礎的財政収支(プライマリーバランス、PB)を20年度に黒字化する目標を堅持し、2015年夏までに、達成に向けた具体的な計画を策定する旨を表明し、解散に踏み切った。その後、2016年の参議院選挙において、2017年4月の消費税率引き上げを再度2019年10月まで先送りすることを発表する一方で、2020年度までに国と地方を合わせたプライマリー・バランス(PB)を黒字化する従来の目標は堅持した。その参議院選挙後の所信表明演説(9月26日)においても、「消費増税が延期された中にあっても、2020年度の財政健全化目標を堅持します」と発言しており2020年度のPB黒字化目標は堅持している。 しかし、消費税10%への引き上げを延期したことを踏まえて、内閣府が7月22日に公表した「中長期の経済財政に関する試算」では、実質2%以上、名目3%以上の成長率を見込む経済再生ケースであっても2020年度の国・地方のPBは5.5兆円(GDP比1.0%)の赤字が残る試算となっている。実質1%弱、名目1%半ば程度という現状に近い成長率を想定したベースラインケースでは、20年度のPBは9.2兆円(GDP比1.7%)の赤字と推計されている。今後、どの程度の成長率の引上げが実現できるのか極めて不透明であること、民間の成長率予測等に照らすと経済再生ケースはかなり楽観的に映ることなどを踏まえると、PB黒字化の姿を定量的に描ききれているとは到底いえない。 また、2016年12月22日に閣議決定された2017年度予算は、一般会計の歳出・歳入総額が97兆4547億円と過去最大を更新する予算となり、政府は「経済再生と財政健全化の両立を象徴する予算」と命名した。しかし、その内訳をみると、税収増や国債利払い費の減額、外為特会からの繰り入れ額の増加(2.5兆円)などの計算で工面することで、国債の発行額を前年度並みに抑えているのが現状。高齢化による社会保障費の伸びを5000億円の目標内にとどめたものの、団塊の世代が75歳以上の後期高齢者となっていく2020年度以降の中長期の社会保障費の膨張を抑える制度改革は手つかずの状態が続き、今後、さらなる歳出増に対応できていない。 特に税収については、16年度予算(57兆6040億円)から1080億円を積み増し、57兆7120億円を想定しているが、16年度の税収は円高による企業業績悪化のため、55兆8600億円と1兆7440億円の下方修正しており、2016年度第3次補正予算(12月22日閣議決定)において、1兆7512億円の赤字国債を追加発行によって財源不足の穴埋めを行っている。そうした中で、更なる税収上積みを行った予算編成を行うことは楽観的と言わざる得ず、政府は説明すべきだと考える。 さらに、決算ベースで安倍政権成立後、合計25.4兆円の補正予算(2012年度10兆円、13年度 5.5 兆円、14年度 3.1兆円、15年度3.3兆円、16年度3.5兆円(予算ベース)で)が組まれており、財政再建に本気で取り組むのであれば、当初予算に加えて、補正予算についても何かしらの枠を加えて支出を抑制していくことが急務であると考える。そうした点で、安倍政権が財政再建に本気で取り組もうとしているのか、その姿勢は不明確であり、現時点では目標達成は非常に困難な状況だと考えざるを得ない。 |
消費税率10%への引き上げは2019年10月に行う 消費税率10%への引上げは2年半延期し、2019年10月に実施する。その間、赤字国債に頼ることなく安定財源を確保して可能な限り社会保障の充実を行う。 |
3点 3年評価:3点 |
安倍首相は、2016年の参議院選挙において、2017年4月の消費税率引き上げを再度2019年10月まで先送りすることを表明した。その直後の所信表明演説(16年9月26日)において、「消費税率10%への引き上げを30カ月延期」し、「2019年10月の実施に向け、軽減税率導入へ準備を進める」こと、「それまでの間、逆進性対策として、所得の低い世帯への給付を行う」旨を表明した。 本来、消費税率の10%への引き上げを延期するのであれば、引き上げによって得られる税収を財源とした社会保障の充実策も見送られなければならない。しかし、実際には年金受給資格期間の短縮化が税率引上げに先行して行われ、16年12月22日に閣議決定された17年度予算では、⼀億総活躍社会の実現に向けた施策として、保育⼠等や介護⼈材の処遇改善を実施するために952億円の国費が投入されている。他方で雇⽤保険への国庫負担を3年間に限って引き下げるなど(国庫負担引下げによる財政効果額は1080億円)テクニカルな措置もみられる。 安倍首相が、今度こそ19年10月に税率引上げを行うという約束の頑健性を示すためには、どのような経済状況になった場合には例外的に増税を行わないのかということを明確にしておくことが求められる。2回目の延期の前まで安倍首相は、リーマン・ショック級や大震災級の事態が発生しない限り予定通りに増税すると国民に説明していたが、そうした定性的な条件提示ではなく、出来る限り数字でその基準を示しておくのが望ましい。20年度のPB黒字化のために今後追加的に必要となる手段を示していくべきという意味でも、そうした工夫がなされていない点は大きな課題である。しかし、本国会での安倍首相の消費税引き上げに関する発言は12回と少なく、次回の消費税引き上げについての意欲は小さいと受け止めかねられず、現時点では消費税の引き上げな行われるかは、不透明と言わざるを得ない。 |
2019年10月に消費税の軽減税率を導入する 消費税率引上げに伴う低所得者への配慮として、2019年10月に消費税の軽減税率制度を導入する。軽減税率制度を混乱なく円滑に導入するため、万全の準備を進める。導入に当たっては財政健全化目標を堅持するとともに、「社会保障と税の一体改革」の原点に立って歳入及び歳出における安定的な恒久財源を確保する。 |
3点 3年評価:3点 |
2015年12月16日、自民党と公明党は、2017年4月に消費税率を10%に引き上げるのに合わせ、「酒類、外食を除く食品全般」と「新聞」の税率を8%に据え置く軽減税率を導入することを盛り込んだ2016年度与党税制改正大綱を決定し、2015年12月24日の「2016年度税制改正大綱」において政府も閣議決定を行った。その後、2016年参議院選挙で、安倍首相が消費税の引き上げを2019年10月に延期することを表明し、軽減税率も増税延期に合わせて導入を先送りした。 その中で、酒類、外食を除く食料品全般という広範囲に軽減税率の導入が決定されたが、税収が1兆円規模で減ることになるにもかかわらず、その安定財源についてはメドがたっていない。政府の2016年度税制改正大綱では、2016年度税制改正法案において、2016年度末までに歳入及び歳出における法制上の措置等を講ずることとされたが、現時点で財源に関する説明は政府からなされておらず、評価を下げざるをえない。 そもとも、軽減税率制度に対しては、十分な低所得者対策にならず目的と効果がはっきりしない、線引きが困難な商品があったり企業の生産活動に歪みを与えたりする、今後の軽減範囲の設定等が政治的利権となりかねない、などの指摘が多くの専門家からなされており、その目的や必要性において十分に国民の理解を得たといえるか疑問である。また、軽減税率はその対象となる財・サービスの品目と対象外の品目との線引きが困難であること等、非効率な制度であることから、給付付き税額控除での対応を含め、2年半延期したことを踏まえ再検討が必要と考える。 |
各分野の点数一覧
経済再生
|
財政再建
|
社会保障
|
外交・安保
|
エネルギー・環境
|
地方再生
|
復興・防災
|
教育
|
農林水産
|
政治・行政・公務員改革
|
憲法改正 |
評価基準について
実績評価は以下の基準で行いました。
・すでに断念したが、国民に理由を説明している
|
1点 |
・目標達成は困難な状況
|
2点 |
・目標を達成できるか現時点では判断できない
|
3点 |
・実現はしていないが、目標達成の方向
|
4点 |
・4年間で実現した
|
5点 |
※ただし、国民への説明がなされていない場合は-1点となる
新しい課題について
3点
|
新しい課題に対する政策を打ち出し、その新しい政策が日本が直面する課題に見合っているものであり、かつ、目的や目標、政策手段が整理されているもの。または、政策体系が揃っていなくても今後、政策体系を確定するためのプロセスが描かれているもの。これらについて説明がなされているもの |