【総合評価】
1年目
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2年目
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3年目
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4年目
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2.2点
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2.0点
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2.4点
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2.5点
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【個別項目の評価】
評価対象の政策 |
2013
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2014
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2015
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2016
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国の地方機関は特定広域連合へ移管することなく、広域災害対応力の一層の強化を図る
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2
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3
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2
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地方分権の推進、自治体の地域の実情や課題に対応するため、きめ細やかな単独事業を支える地方財源の安定的な確保を図る
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3
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2
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3
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地方に「しごと」と「ひと」を呼び込む政策を実行する
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3
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地方版総合戦略に基づく地方公共団体の意欲的な取り組みを地方創生推進交付金、地方創生応援税制(企業版ふるさと納税)などで積極的に支援する
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2
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2
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3
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3
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評価の視点 |
・主役である住民に地域の経営や将来に責任を持たせ、地域の創意の発揮により地域活性化に繋がる制度設計の実現に向けて動いているのか 自民党が示している「地方出先機関については、特定広域連合に移管することなく、広域災害対応力の一層の強化を図る」としているが、この文脈は国土強靱化の項目で語られており、これまで政府が進めてきた地方分権の動きと道州制との考え方の差異について整理されていない。道州制の実現に向けて、自民党の道州制推進本部が議論を行い、道州制導入に向けた基本法案の原案をまとめたが、地方自治体の理解を得られないとして提出が見送られたまま、実体的な道州制についての議論はなされておらず、道州制・地方分権についての議論は下火となっていると言わざるをえない。 一方、道州制・地方分権の議論に代わる形で登場した地方創生は、地方創生推進交付金の設立や一般財源の確保など、地方版総合戦略の実施のための予算措置については努力の跡が見られ、併せて企業版ふるさと納税の設立など、地方の人口減少を食い止めるために、スピードアップして課題に取り組むという点は評価できる。一方で、我が国の人口減少の加速化しており、東京圏への人口集中のスピードは加速している。これへの対処としての国家的構造改革は進展していない。 しかし、地方創生についても一億総活躍社会という言葉へ変節を見せており、これまでの進められてきた地方分権、道州制の議論、あるいは新地方成長モデルの議論と何が違うのか、説明責任を果たしているとは思えず、その違いは曖昧で分かりにくい。 全体的な自民党の政策からは、安倍政権は、国と地方の役割を大きく変えていこうという今までの思想と違い、地方を縛っている規制から地方を開放して、好きなことをやらせよう、という発想である。つまり、地方分権を規制緩和という視点で実施しようとしており、権限を委譲しようという発想にはなっていないと考えられる。 国と地方の役割、地方創生、あるいは一億総活躍社会について、その定義づけと、今後、これらの政策をどう進めていくのか、安倍政権は国民に説明する必要がある。 |
【地方】個別項目の評価結果
国の地方機関は特定広域連合へ移管することなく、広域災害対応力の一層の強化を図る |
2点 3年評価:2点 |
自民党が2012年の衆院選のJファイルで示した公約は、「地方出先機関の広域災害対応力の一層の強化と国と地方のあり方と道州制の議論を整理する」ことであり、「地方出先機関の強化」と本来矛盾する「道州制」との議論を整理することが公約の趣旨であった。ところが、この整理に何ら手を付けないまま、自民党の2016年参院選Jファイルでは、「国の地方出先機関については、特定広域連へ移管することなく、広域災害対応力の一層の強化を図る」と掲げる一方で、「道州制の導入に向けて、国民的合意を得ながら進める」と矛盾する2つの公約を掲げている。この2つの矛盾する公約を、どう連動させて進めるのか不明である。 個別には、2016年3月22日にまち・ひと・しごと創生本部決定した「政府関係機関移転基本方針」では、移転見送りとなった中小企業庁など4庁については、代わりに自治体が要望していた出先機関の機能強化が盛り込まれたが、その他に目立った動きはない。一方、道州制について自民党は2016年4月に道州制推進基本法案の骨子を基に、地方創生との相乗効果等検討することとして党内論議を再開したものの、議論の内容はホームページなどを通じても明らかにされていない。本来であれば、国民的議論が十分に行われるよう、今なぜ道州制なのか、道州制の理念や姿が具体的かつ明確に示し、今後、道州制の推進に対してどう取り組んでいくのか説明する必要があるが、そうした説明はなされていない。 この公約は、地方の再生において何を目的としているのかが見えないために、公約自体の実行が実質的に動かない状況に陥っていると判断せざるを得ない。 |
地方分権の推進、自治体の地域の実情や課題に対応するため、きめ細やかな単独事業を支える地方財源の安定的な確保を図る 地方分権改革の推進、自治体の地域の実情や課題に対応するため、きめ細やかな単独事業を支える地方財源の安定的な確保を図る【出典:2016年参院選公約】 |
3点 3年評価:2点 |
第2次安倍政権では、地方分権改革有識者会議を中心に分権改革を進めようとしており、地方から国への提案を中心にした分権スタイルである「提案募集方式」が2014年度から導入されている。そして、地方公共団体等からの提案等を踏まえた「平成27年の地方からの提案等に関する対応方針」を閣議決定(2015年12月22日)し、2016年5月13日に「第6次地方分権一括法」が成立した。2016年分の地方分権改革に関する提案募集を行い、地方から提案のあった196件の改革要望のうち、76.5%の150件について各府省が「対応可能」とし、提案募集方式3年目の今年度、もっとも高い実現率を達成した。さらに、政府は12月20日の閣議で、幼保連携型認定こども園に関する基準の見直しや認定権限の委譲や障害児・障害者支援事業者に係る権限委譲など、こども・子育てや高齢者・障害者への支援と言った喫緊の課題に対して地域実情に応じた対応が可能となるような地方分権改革の対応方針を決め、次期通常国会に法律を提案することになった。地方の要望を踏まえるボトムアップ型の地方分権が浸透し、一定程度の進展が見られる点は評価できる。 次に、財源措置について2017年度予算では、地方税や交付税など自治体が自由に使途を決められる一般財源総額について、社会保障の充実分の確保も含め16年度を0.4兆円上回る62.1兆円を確保、そのうち17年度に地方自治体に配分する地方交付税の総額は16.3兆円が確保されるなど一定の評価はできるが、今後も継続して予算を確保できるかは不透明である。 これまでの分権改革のように、統治機構の観点から国と地方の在り方を整理し、国から地方へ権限や財源を移譲し、国と地方の役割を大きく変えていこうという今までの思想とは違い、地方分権によって、何を実現しようとしているのか十分に説明がなされていないために、これからどのような方向に進もうとしているのか、現時点では判断できない。 |
地方に「しごと」と「ひと」を呼び込む政策を実行する 地方に「しごと」と「ひと」を呼び込む政策を実行する【出典:2016年J-ファイル】 |
2点 3年評価:3点 |
2014年12月27日に閣議決定された「まち・ひと・しごと創生総合戦略」において、①2020 年までの5年間の累計で地方に 30 万人の若い世代の安定した雇用を創出、②東京圏から地方への転出4万人増加、地方から東京圏への転入6万人減少(2020 年時点、2013 年比)、③安心して結婚・妊娠・出産・子育て出来る社会を達成していると考える人の割合を40%以上にすることが目標として掲げられている。この目標を実現するために、国はもとより全地方自治体が各地の実態に応じた「総合戦略」を策定し、この戦略に基づいて地方創生のための交付金等を活用しながら人口減少対策に取り組み始めた。しかし、2015年時点でそれぞれ①9.8万人、②年間12万人の転入超過、③19.4%(2013年)となり、現時点では目標達成は非常に難しいのが現状だ。但し、出生率は全国平均で1.42(2014年)、1.45(2015年)と年々増加傾向にあり、中でも沖縄(1.96)は希望出生率1.8を越え、宮崎(1.71)、鹿児島(1.70)も目標圏内に入る等、地方で出生率が上がる傾向にあり、今後、こうした状況が続いていくかが地方創生の鍵となる。 こうした状況も踏まえながら、政府は16年12月22日に「総合戦略」の改訂版を閣議決定し、東京への一極集中を是正するため、東京での大学の新増設を抑制し、地方移転を促進するための抜本的な対策を検討して、来年夏を目途に基本的な考え方を取りまとめること、また、地方経済の活性化につなげるため、全国の商店街にある空き店舗の状況を調査して、空き店舗の活用に向けた施策を来年の春を目途に取りまとめる方針を示した。 しかし、こうした方針の具体化は先送りされており、そうした施策の実行によって、地方に「しごと」「ひと」を呼び込むことができるか、現時点では判断できない。 |
地方版総合戦略に基づく地方公共団体の意欲的な取り組みを地方創生推進交付金、地方創生応援税制(企業版ふるさと納税)などで積極的に支援する 地方版総合戦略に基づく地方公共団体の意欲的な取組みを地方創生推進交付金、地方創生応援税制(企業版ふるさと納税)等で積極的に支援する【出典:2016年参院選公約】 |
3点 3年評価:3点 |
地方版総合戦略は、各自治体が国の長期ビジョンや国の総合戦略を勘案しつつ、各自治体における人口の現状、将来の展望を提示する人口ビジョンを策定し、今後5年の目標や施策の基本的方向、具体的な思考をまとめたものである。そして、各自治体が策定した地方版総合戦略に基づき、地方創生の取り組みを深化させるため、2015年度当初予算において「地方創生推進交付金」1,000 億円が計上された。この交付金は国2分1の負担であるが、地方負担分についても地方財政措置が講じられることとなった。また2017年度の予算においても当初予算を上回る1,170億円が要求されており、交付金に対する地方の期待は極めて高く、それに応える予算措置に取り組んでいることは評価に値する。今後は、地方自治体ごとの交付額の上限設定やソフト施策と一体となった施設等の整備事業への交付に関する制約についての要件緩和など、地方との対話を行うことで、より使いやすく、地域産業の振興や地域社会の活性化など交付金の目的に沿った形での拡充や弾力的運用が望まれる。 また、2016年度税制改正において創設された「地方創生応援税制(企業版ふるさと納税)」について、企業が寄附を通じて地方創生に参画できる仕組みであり、地方創生を継続的に取り組んでいくために、民間資金を活用して、地方版総合戦略を進めていくというもので評価できる。しかし、寄附を行う企業への代償としての経済的利益の供与の禁止などモラルハザードとならないように留意しつつ、地方の自主性と主体性を尊重し、実効性のある制度運用についての検討が必要である。 地方版総合戦略の実現に向けて、積極的な支援の枠組みが整ったと評価できるが、これから、5年かけて各自治体がKPIやPDCAを回しながら計画を見直し、自治体自身が政策能力を高めていけるか、さらに、自治体間で生まれる政策能力の差をどのように埋めていけるかが、今後の課題であり、地方版総合戦略の実行によって、地方での雇用創出、東京圏への人口流出の食い止め、③安心して結婚・妊娠・出産・子育てができる社会が実現するかは、現時点では判断できない。 |
各分野の点数一覧
経済再生
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財政再建
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社会保障
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外交・安保
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エネルギー・環境
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地方再生
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復興・防災
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教育
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農林水産
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政治・行政・公務員改革
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憲法改正 |
評価基準について
実績評価は以下の基準で行いました。
・すでに断念したが、国民に理由を説明している
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1点 |
・目標達成は困難な状況
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2点 |
・目標を達成できるか現時点では判断できない
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3点 |
・実現はしていないが、目標達成の方向
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4点 |
・4年間で実現した
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5点 |
※ただし、国民への説明がなされていない場合は-1点となる
新しい課題について
3点
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新しい課題に対する政策を打ち出し、その新しい政策が日本が直面する課題に見合っているものであり、かつ、目的や目標、政策手段が整理されているもの。または、政策体系が揃っていなくても今後、政策体系を確定するためのプロセスが描かれているもの。これらについて説明がなされているもの |