【総合評価】
1年目
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2年目
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3年目
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4年目
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3.3点
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2.8点
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2.3点
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2.4点
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【個別項目の評価】
評価対象の政策 |
2013
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2014
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2015
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2016
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被災現場の実情や将来展望などに合わせた細やかな施策を展開できるように必要な財源確保に努める
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4
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3
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3
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3
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中間貯蔵施設整備や指定廃棄物の処理に、引き続き国が前面に立って取り組む
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2
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2
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2017年3月までに避難指示解除準備区域、居住制限区域の避難指示を着実に解除できるよう、復興の動きと連携した効率的な除染を実施する
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3
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2
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3
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3
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東京電力福島第1原発の廃炉・汚染水対策に、引き続き国が前面に立って取り組む
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3
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3
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1
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1
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国土強靱(きょうじん)化法に基づき事前防災・減災、老朽化対策を強力に推進する
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4
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2
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3
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3
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評価の視点 |
・東北復興のビジョンを描けているか 東日本大震災の復旧・復興において、主に、被災地の復旧事業を早期に実現する政策がどのように動いているのか、そして福島第一原発の廃炉への道筋など、福島の再生をどのように進めようとしているのか、という点が主な焦点となる。 安倍政権は民主党政権の失敗を学び、高台移転、土地区画整理、がれき処理などについてこれまでの目標を適宜見直しながら、加速を図ろうとしてきた。また、東京電力福島第1原発問題では、除染、廃炉、汚染水対策など国主導で対処しようとしてきた。 しかし、震災から5年半以上経過した現在でも、全国の避難者などの数は、昨年から約5万人減ったものので、約13.4万人が避難している。どのような復興ビジョンを描き、その実現に向かってどのように対処していくのか、という大きな方向性は示す必要があると考えるが、そうしたビジョンが明らかになっているのか、検証していく。 また、福島県の復興、特に福島県原発周辺地域では帰還できる条件になく、仮に早期に帰還したとしても、病院や学校、スーパーなど生活の基盤整備などはまだまだ不十分だと言わざるを得ない。一方で、福島の各自治体が復興計画を作っているが、本来であれば県や国、各自治体間が協力して被災地のなどが、この地域でどういう生活が成り立つか、ということを考えていく必要があるが、そうした状況が示されているとはいえない。そうした視点から、福島の復興については評価していく。 次に、原発事故からの復興についてである。もちろん、前述したとおり、除染、廃炉、汚染水対策に対して国主導で対処しようと表明し、それぞれの対策は進んでいる。 しかし、原発の事故という歴史的にも未曽有の事故により、福島第1原発事故に伴う廃炉、賠償などの費用の総額が当初見込んでいた11兆円から倍増し、21.5兆円に上るとの試算を公表するなど、今後の状況次第では、更なる積み増しの可能性も存在している。こうした負担を誰が負担していくのか、政府は説明する責任があると考える。 また、福島の避難地区では雇用機会としての原発及び関連産業が失われ、広域生活圏の中心である自治体の帰還が困難な状況にあり、広域的な経済基盤・生活基盤が崩壊してしまった。現在進めている除染と東電による補償金対策を進めても簡単な復興・再生は難しいかもしれない。仮に復興・再生ができたとしても、もともと基盤が弱かった農業・畜産・特用林産物・漁業がなどの地域産業は風評被害も手伝って復興のめどが立っていないのが現状である。 そういった現実を踏まえながら、やはり国は原発事故に見舞われた福島の復興ビジョンをどのように描き、進めようとしているのかを示すと同時に、国民に説明されているかについて評価していく。 |
【復興・防災】個別項目の評価結果
被災現場の実情や将来展望などに合わせた細やかな施策を展開できるように必要な財源確保に努める |
3点 3年評価:3点 |
震災から5年9カ月、被災地の現状とは安倍政権成立後、政府は民主党政権時代から復興予算の6兆円の上積みを行い、25.5兆円を確保した。さらに、15年6月24日の復興推進会議で、16年~20年度の復興予算の歳出規模は6.5兆円を確保することを決定し、同時に国が事業費を全額負担する制度を見直し、被災自治体にも総額220億円の負担を求めた。これで、10年間の復興期間の予算総額は32兆円となった。日本の厳しい財政状況を鑑みると、最大限の予算措置がとられていると評価できる。 2016年12月時点で、高台移転(防災集団移転)の99%、災害公営住宅の98%が着工し、16年10月時点での高台移転完成は55.5%、災害公営住宅は71.4%となっている。2018年度末の住まいの確保に関する事業の完了に向けて進んでいる。 産業では、被災した3県の製造品出荷額等は震災前の水準まで回復し、津波被災農地は83%で営農可能、水産加工施設は88%で業務を再開し、グループ補助金交付先企業の45%が震災直前の売り上げ水準まで回復している。しかし、売り上げ回復は建設業の8割に対して、水産・食品加工業は3割にとどまっており、対策が必要になっている。 震災復刻を契機に「新しい東北」をつくる、という方向性は評価できるが、実現に向けた具体策を早急に示すべき「新しい東北」について政府は、2012年12月26日の安倍政権の初閣議にて閣議決定した「基本方針」の中で、「単なる『最低限の生活再建』にとどまることなく、創造と可能性の地としての『新しい東北』をつくり上げる」との方針を示した。これに伴い、復興庁では2013年から「新しい東北」先導モデル事業を実施したり、民間の人材・資金・ノウハウの活用するために大手企業から122人を派遣したり、ビジネスコンテストで優良な取り組みを発掘したりするなど、様々な取り組みを実施してきた。 そして、震災から5年の節目である2016年3月11日、政府が閣議決定した「『復興・創生期間』における東日本大震災からの復興の基本方針」の中に、これまで被災地において、国・自治体に加えて、企業・大学・NPOなどと行ってきた先進的な取り組みで蓄積したノウハウを用いて、被災地での展開・普及を図り、「新しい東北」の創造を行っていくことを再度盛り込んだ。 東日本大震災の被災地では、これまでも、人口減少、高齢化、産業の空洞化といった、全国の地域が抱える課題が特に顕著に表れている中で、単に震災前の状態に復旧するのではなく、震災復興を契機として、こうした課題を克服し、我が国や世界のモデルとなる「新しい東北」を創造していく、という施策は非常に重要であり、その方向性は評価できる。しかし、これまで行ってきた事業の取り組みや成果は紹介されているが、そうした事業を通じて培ってきたノウハウをどのように活用し、活かしていくのか、具体的なアクションは何ら提示されておらず、目標の方向性は評価できるが、その目標を達成するための手段は見えず、5年間で「地方創生」のモデルとなるような「新しい東北」の実現が達成できるか、現時点では判断できない。 |
中間貯蔵施設整備や指定廃棄物の処理に、引き続き国が前面に立って取り組む 中間貯蔵施設整備や指定廃棄物の処理については、引き続き国が前面に立って取り組む |
2点 3年評価:2点 |
福島で中間貯蔵施設整備は始まったが、最終処分場の目途は立たず「日本環境安全事業株式会社法の一部を改正する法律案」が2014年11月19日に成立した。この法律には、中間貯蔵を確実かつ適正に実施するため、法律において中間貯蔵施設に関する国の責務を規定し、「中間貯蔵開始後30年以内に、福島県外で最終処分を完了するために必要な措置を講ずる」旨が明記されている。 福島県内の汚染土壌・廃棄物などを最長で30年間にわたり保管、管理する中間貯蔵施設の整備は、同県双葉町と大熊町にまたがる建設予定地で既に始まっており、環境省は2017年度秋ごろに貯蔵を開始する方針を示している。これに伴い、17年度の指定廃棄物の搬入量は、16年度の15万立方メートルの3倍越えとなる50万立方メートルの搬入を予定している。こうした中間貯蔵施設整備が動き始めたことは、福島県内の復興を実現していく上で1つの契機ともなり評価できる。しかし、法律で定められた通り、保管した汚染土は30年以内に県外に運び出さなければならないが、最終処分先についての目途は全く立っていない。 福島以外の11都県では、指定廃棄物の処分場の建設は困難か加えて、東京電力福島第一原子力発電所事故で発生した指定廃棄物は福島県以外にも、11都県で発生しており、特に発生量が多い宮城、栃木など5県で、放射性物質を含む下水汚泥などの指定廃棄物の処分場建設を国が計画しているが、地元の反対などでいずれも建設のめどが立っていない。 ただし、指定廃棄物が一番多い福島県では、国有化した富岡町の管理型処分場で最終処分する計画を巡り、富岡町、搬入路にある樽葉町が計画受け入れを決定し、環境省は2016年6月に両町との間で安全協定を締結した。しかし、搬入路がある楢葉町の繁岡、上繁岡両行政区と、搬入を始める条件とした安全協定を結べておらず、周辺の改修などの準備工事に着手できていない。これを受けて環境省は16年12月17日に、当初目指していた年内の搬入開始を事実上、断念した。全体的に着手して動いてはいるが、現時点で目標達成は困難な状況と言わざるをえない。 |
2017年3月までに避難指示解除準備区域、居住制限区域の避難指示を着実に解除できるよう、復興の動きと連携した効率的な除染を実施する 平成29年3月までに避難指示解除準備区域、居住制限区域の避難指示を着実に解除できるよう、復興の動きと連携した効率的な除染を実施する【出典:2016年参院選公約】 |
3点 3年評価:3点 |
避難指示の解除は進むが、生活の基盤整備は不十分政府が2015年6月12日、福島の復興指針の改定を閣議決定し、16年度末までに、居住制限区域と避難指示解除準備区域の解除を目指す方針を決めた。福島原発事故で全住民が避難している7町村のうち、事故から4年半を経た2015年9月、樽葉町では避難指示解除がなされ、16年6月には葛尾村と川内村、7月に南相馬市でそれぞれ避難指示が解除され、17年3月末には川俣町と飯舘村での解除を決定した。一部地域では年度内の避難指示の解除は難しくなっているが、概ね目標に向けて動いていると評価できる。しかし、15年9月に避難指示解除がなされた樽葉町の小中学校の再開は2017年4月、16年6月に解除された葛尾村では、17年4月の学校再開が村民の反対によって18年4月に延期されるなど、仮に早期に帰還したとしても、病院や学校、スーパーなど生活の基盤整備などはまだまだ不十分だと言わざるを得ない。 帰還困難区域の「復興拠点」整備の予算を含めた具体化を国民に示すべき一方で、政府は2016年12月20日の閣議において、福島県内の帰還困難区域の一部で、来年度から始める除染の費用を東京電力には請求せず、国が負担すること、2017年度から帰還困難区域の一部に除染やインフラ復旧を優先的に進める「復興拠点」を整備することなどを盛り込んだ「原子力災害からの福島復興の加速のための基本指針」を閣議決定し、5年後をめどにした避難指示解除を目指す方針を示した。併せて、国費投入の除染事業を復興予算内の「復興拠点内環境回復事業」と位置付けて309億円を2018年度予算に計上し、道路整備など本格的な復興拠点を確立するための公共施設などのインフラ整備については、福島再生加速化交付金(総額807億円)を活用する。福島県内のインフラ整備も国主導で一体的に進めることを示すなど、国が前面に立って福島の復興に取り組む姿勢を示したことは評価できる。 但し、「復興拠点」の整備、避難指示解除のめどは2021年度となっているが、復興庁、並びに復興予算は2020年度までの限定となっており、1年分の予算をどうするのか、明らかになっていない。加えて、「復興拠点」に関する今回の予算計上は具体的な整備事業の見通しを踏まえたものではなく、今後、「復興拠点」の整備が具体化し、各市町村の計画が出された時、国が必要な事業費を確保できるかが課題となり、現時点では復興拠点の整備が順調に進むか、判断できない。 |
東京電力福島第1原発の廃炉・汚染水対策に、引き続き国が前面に立って取り組む 福島第一原子力発電所の廃炉・汚染水対策については、引き続き国が前面に立って取り組む【出典:2016年参院選公約】 |
1点 3年評価:1点 |
廃炉に向けた作業が進められているが、工程表通りの進展は難しい状況が続く福島第一原子力発電所の廃炉については、東京電力福島第一原発の廃炉に向けた「中長期ロードマップ」(廃炉工程表)が2015年6月12日に改訂された。この中で、廃炉完了は「30~40年後(2041~51年)」とする全体目標のもと、1~3号機の使用済み核燃料プールからの燃料取り出し時期を、最大3年程度遅らせた。プール内の燃料の回収開始時期を、最も早い3号機で「15度上期」から「18年1月」に、1、2号機についても「17年度上期」「17年度下期」としていたが、それぞれ「21年3月」「20年8~11月」に延期した。2016年11月10日に、1号機の使用済み燃料プールからの燃料取り出しに向けて、原子炉建屋を覆っていたカバーの撤去作業が完了し、放射性物質の飛散などを防ぐ屋根カバーの搬入作業を開始しているが、全体的な工程が遅れており、17年度中の取り出し開始は難しい局面になっている。 汚染水対策や廃炉にどれぐらいの期間、いくら費用がかかるか、政府は国民に説明する必要がある次に汚染水について、東電は2020年内に汚染水処理の完了をめざし、地盤を凍らせて地中に氷の壁を作ることで地下水の流れをせき止める凍土壁と、地下水をくみ上げて原子炉のある建屋に流れ込むことを防ぐサブドレンの2つの方法が汚染水の増加を防ぐための対策がとられている。完成した一部の凍土壁の遮水効果を見極めながら、原子力規制委員会が全面凍結に向けた認可を判断することになっているが、その判断は2017年以降となり、現時点で、凍土壁が有効な手段かどうか判断できない。一方で、汚染水を減らすため、2016年12月14日、東京電力は福島第1原発事故で核燃料が溶けた1号機の原子炉を冷やすため続けている注水を、毎時4.5トンから4トンに減らし、来年1月までに3トンに減らす計画を示すなど、汚染水対策については一定程度の対策がなされている。しかし、2020年内の汚染水処理の完了できるかどうかは、現時点で判断できない。 こうした状況に対して、世耕弘成・経済産業相は溶け落ちた核燃料(デブリ)の取り出しについて「技術や研究の面で国の役割がまだまだ必要だ」として、今後も国が支援していく考えを示した。一方で、福島第1原発の事故処理費用をめぐり、政府は当初、11兆円の費用を見込んでいたが、12月9日に示した新たな試算では、廃炉・汚染水対策に8兆円、賠償に7兆9,000億円かかるなどとし、総額が21兆5,000億円と、これまでの2倍に膨らんだことを公表した。これに対して、世耕氏は「予見できない要因で(費用が)増加することがありうる」と説明しており、今後も状況次第では、更なる上積みも予想される。しかし、今後の費用の増加と国民負担について、さらには廃炉の工程の遅れや、汚染水対策の遅れについて、政治からの説明は限られており、国が前面に立っているとは言い難く、減点対象となる。 |
国土強靱(きょうじん)化法に基づき事前防災・減災、老朽化対策を強力に推進する 「国土強靱化基本法」に基づき事前防災・減災、老朽化対策を強力に推進する【出典:2016年参院選公約】【出典:2014年衆院選マニフェスト】 国土強靭化基本法や「首都直下型」と「南海トラフ」地震の措置法を制定し、事前防災や減災対策に取り組む【出典:2012年衆院選マニフェスト】 |
3点 3年評価:3点 |
政府は、2013年末に施行された国土強靭化基本法を基に大規模災害に備えた耐震化など、インフラ整備を進める国土強靭化基本計画を2014年6月3日に閣議決定し、その達成目標時期を定めたアクションプランを国土強靭推進本部で決定した。(2014年6月3日、2015年6月16日、2016年5月24日) 国土強靭化に向けた取り組みを可視化し、財源を明らかにすべき直近で決定された「国土強靭化アクションプラン2016」では、国土強靱化アクションプラン2015の進捗状況などを踏まえ、各プログラムの推進計画を見直し、最近の大規模災害を踏まえた取り組みの充実、民間の主体的な取り組み、地方創生に繋がる取組、地域計画の作成・支援の促進により実効性を確保する等が行われている。 安倍首相も、2016年9月27日の本会議などで、国土強靭化はわが国にとって焦眉の急であること、施設の耐震化や老朽化対策など、国民の命と暮らしを守るための防災・減災対策を重点的に進めること、そして、国、地方、民間が一体となって国民運動として進めていくこととして、オールジャパンで協力に進めていく方針を示している。 8月3日に就任した松本純国土強靱化・防災担当相も、今後、発生が予想されている南海トラフ巨大地震と首都直下地震に備え、国の国土強靱化基本計画・行動計画に基づくハード・ソフト一体となった防災・減災対策を着実に推進する方針を表明した。 それに伴い、2014年度3.3兆円、2015年3.8兆円、2016年度3.7兆円、2017年度3.7兆円と、かなり高額な予算が確保されており、強力に進めようとしていることは伺える。 しかし、日本の財政が毎年100兆円を超えて推移する中で、全てを実現するためには巨額の予算が必要になるが、その財源などはしめされておらず、現時点では計画が実現するかどうかは判 |
各分野の点数一覧
経済再生
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財政再建
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社会保障
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外交・安保
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エネルギー・環境
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地方再生
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復興・防災
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教育
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農林水産
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政治・行政・公務員改革
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憲法改正 |
評価基準について
実績評価は以下の基準で行いました。
・すでに断念したが、国民に理由を説明している
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1点 |
・目標達成は困難な状況
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2点 |
・目標を達成できるか現時点では判断できない
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3点 |
・実現はしていないが、目標達成の方向
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4点 |
・4年間で実現した
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5点 |
※ただし、国民への説明がなされていない場合は-1点となる
新しい課題について
3点
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新しい課題に対する政策を打ち出し、その新しい政策が日本が直面する課題に見合っているものであり、かつ、目的や目標、政策手段が整理されているもの。または、政策体系が揃っていなくても今後、政策体系を確定するためのプロセスが描かれているもの。これらについて説明がなされているもの |