共産党の公約説明
笠井亮:共産党政策委員長
一体、日本の政党は、日本が直面する課題を真剣に考えているのか、その解決に本気で向かい合おうとしているのか、さらに、選挙目当てで甘い話に逃げていないか。 主要5党の政策責任者にマニフェストからは読み解けない疑問点を直接ぶつけ、議論した模様をお届けします。
共産党からは、政策委員長の笠井亮氏にご参加いただきました。
第一部:共産党は何を訴え、選挙に臨むのか
工藤:今日は共産党の政策委員長の笠井亮さんに言論NPO事務所に来ていただきました。今回は、共産党が今回の選挙で何を唱えたいのかを話してもらい、私たちは評価の視点から、いろいろと質問させていただきます。よろしくお願いします。
選挙の一番の争点は、憲法破壊など安倍政権の暴走への是非
笠井:こんにちは、日本共産党政策委員長の笠井亮です。私たちは、今度の総選挙で、「市民+野党で力を合わせて、未来を切り拓く」という形で選挙政策をまとめています。今度の選挙の一番の争点は、5年近くにわたる安倍政権の暴走をこのまま続けさせていいのかということです。実際に皆さんも感じているが、安倍政権になっていろいろなことが行われました。一つは、やはり、憲法破壊が大きかった。特定秘密保護法の強行、戦争法、安保法制の強行、共謀罪法の強行、このような形で、憲法を壊す法律を無理やり通したという問題。
さらに、民意無視ということが非常に色濃く出た5年間でした。昨日も、ちょうど沖縄でまた、米軍ヘリが墜落しましたが、こういう事件が重なって、オスプレイも落ちるということになっても、安倍政権はあくまで新しい基地を辺野古につくるということで、沖縄の民意を無視して強行する。それから、福島第一原発事故から6年半経ちますが、いまだに6万8000人の方が避難生活しています。事故も収束していません。国民の半分以上が原発は要らないと言っているのに、安倍政権は、あちこちで再稼働を進めていくという、民意の無視が目立ちました。
極めつけは、安倍首相のお友達のために特別な配慮をするということです。森友、加計の問題です。総理自身も疑惑の渦中にありながらも、丁寧に説明せず、解散総選挙を強行することで疑惑隠しを行いました。つまり、国政の私物化だ。このような安倍政治を続けさせても良いのかということが大きな争点です。
私たちはこのような安倍政治にストップをかけます。私も国会で18年仕事をし、10人の首相と論戦をしてきました。その中で、安倍首相ほど、憲法も国民も踏みつけにするという総理大臣は他にはいませんでした。ここで安倍政治にさようならを突き付けて、新しい政治をつくるという選挙を実施していきたいと思っています。では、どうやって政治を変え、日本をつくるかが具体的な問題です。我々には10項目あるが、まず時間の関係で5点ほど強調したいと思います。
戦争は絶対ダメ。米朝の直接対話による解決を目指し、外交力を発揮する
一つは外交です。東アジア、北朝鮮との関係でいろいろな紛争が絶えない。そのような状況に、軍事ではなく、平和の外交力によって解決をするという日本をつくるべきだと思っています。北朝鮮の核開発は絶対に許されない暴挙だと思います。これをどうやって止めるかが問われていますが、ここで一番の起点は、いま米朝間で緊張が高まっているということです。「こんなことをやる北朝鮮は完全に破壊するんだ」ということをトランプ大統領は言って脅かす、ツイッターでも言う。それに対して北朝鮮は、「そんなことをするのなら、今度は太平洋で水爆実験する」と言って脅かし合う。こんなことでは、偶発的な衝突が起きた場合、核戦争につながっていきます。戦争だけは絶対にダメです。
ではどうするか、今、国連安保理でも各国首脳が、北朝鮮に経済制裁を強化することと一体に、対話による平和的解決が欠かせないと言って声を上げている状況です。日本こそ、憲法9条があるのでその先頭に立つべきだと思いますが、安倍首相はといえば、「対話のための対話は意味がない」と言って、圧力、圧力の一辺倒です。しかも、トランプ大統領が「軍事も踏まえたあらゆる選択肢がある」と言っている中で、「その全ての選択肢を応援する」と国連で表明したのは安倍総理ぐらいだと思います。そのなかで、トランプが軍事の選択肢を取ったとき、安保法制により、日米間では、米軍の艦船に給油をしたり、護衛したりということが、国民の知らないうちに起こっています。こういった形で、アメリカと一緒に戦争に参加する仕組みが動いている。これは非常に危険です。そういう形ではなく、米朝間の直接対話によって解決を見出していくということと、戦争法を廃止して、平和による外交力を発揮していくということが一点目です。
アベノミクスで広がった格差を、大企業への増税を財源に是正する
二つ目は、暮らしの問題です。私たちは、暮らし、経済では、1%の大金持ちや、大企業の偉い人のための政治ではなくて、99%の国民のための政治を実現したいということを訴えています。アベノミクスを5年間やってきましたが、その間に安倍政権が言わない数字があります。一つは、働く人の実質賃金が年間で10万円下がる。それから、家計消費、個人消費で言うと、年間で22万円下がっています。方や、大企業は空前の利益を上げて、その中で内部留保を400兆円まで増やしてしまいました。また、資産家の上位40人の資産は、このアベノミクスで2倍に増えています。したがって、格差拡大が現実です。その中で、広がった格差を正していくというのが大きな課題です。
私たちはその点で4つの改革を提案しています。一つを紹介すると、税金の改革は大きな柱です。その点では、国民の暮らし、経済を壊すような消費税の10%への増税は中止すべきだと言っています。そして、それに頼らずに財源提案をしているのが、我々の政策の一つの特徴だ。今、富裕層が株取引をするときに、減税の恩恵を1兆円分受けています。大企業は、研究開発減税などで4兆円の減税を受けています。1兆と4兆で5兆円、これで儲かったところから応分に払ってもらう。このように税制を改めれば、5兆円というのは消費税の2%分なので、増税をしなくても、教育、子育てなど、安倍さんが言っていることを具体的にやっていけるだろうというのが我々のポイントになっています。
それから、予算の改革という意味では、安倍首相は、全世代型の社会保障というわけですが、実際には、安倍政権の下で自然増で増えてくる社会保障費は1兆4600億円です。その中で、医療、介護、生活保護などが切られてきた。その点では、全世代にわたって、社会保障がボロボロにされてきました。そこで、社会保障予算を、削減から充実へ、教育、子育て、若者へということで、具体的に格差と貧困を正す政策を打ち出している。
三つ目の働き方の問題では、安倍政権の狙ってきた残業代ゼロ法案はきっぱりやめさせます。長時間労働についても、過労死ラインまでOKというのはとんでもない話で、電通の過労自殺問題もありましたが、長時間労働と過労死は法律できちんと根絶するということが大きな課題になります。非正規から正規への流れを作って、最低賃金も引き上げます。そして、8時間働けば普通に暮らせる社会をつくるのが共産党の改革の三点目です。
四つ目に、地域経済の再生が大きな課題になります。日本経済を本格的に支えている中小企業を支援するということで、大企業の下請け単価もきちんと引き揚げさせることで正当に払うようにさせます。中小企業の支援の予算も1兆円まで増やすということが大事だと思います。それから、農業は、農産物に対する価格、所得補償を抜本的に強化することで、安心して続けられる農業を実現します。食料自給率が3割まで下がっていますが、それを5割まで引き上げるというのは、国として当然やるべきです。経済の改革という点で、我々は四つ提案し、財源の裏付けを持っていますが、我々がそのような提案ができるのも、財界からの献金を受け取っていないということで、誰にも遠慮せず、ズバッと国民の立場で実現するからです。そのためにも、共産党を伸ばしていただきたいというのが願望です。
新規制基準では原発事故を繰り返す恐れがある
三つ目は原発問題です。原発ゼロ、再生可能エネルギーの日本ということを特に訴えています。この原発ゼロの試金石は、原発の再稼働を認めるかどうかです。福島の事故から6年半経ちましたが、いまだに福島県民は県外に避難生活をしていて、つい最近も、(国と東京電力の責任を問うた)生業訴訟ということで、県民が賠償を求めて裁判を起こし、裁判でも一部勝訴で賠償をという話にもなりましたが、まだまだです。事故の検証も、収束もまだ終わっていない状況です。しかし、安倍政権は、「新しい規制基準は世界一の基準だから」という理由で原発を再稼働するという態度です。基準と言ってもいろいろありますが、基準の中には、避難計画がありません。それなしに福島の原発を再稼働させて、ひとたび事故が起こったら大問題です。再稼働はしなくていいし、しなくても電気は足りているというのが、日本国民の体現してきたことです。
これからも世界でも進んでいきますが、再生可能エネルギーなど、豊かな資源があるので、それを進める先進国にするということで、政策を掲げました。だから、再稼働中止と、原発ゼロの日本を実現する。あの事故から、金曜日には、官邸前行動があり、私もずっと前から参加してきました。全国でもそのような声が上がっていますが、そのような皆さんと一緒に、共産党を伸ばし、市民と野党の共闘で、福島の事故を繰り返させない、希望ある政治にしていきたいと思う。
四つ目に柱としているのは憲法問題です。憲法を守り、生かしていこうということで、このことを広く打ち出しているのが共産党です。安倍首相は、5月3日に、憲法9条に自衛隊を書き込む、それを2020年までに施行する、そのことを打ち出して提案するということを宣言しました。自民党も公約の中で、9条を含む改憲を公約に掲げ、希望の党も、維新の会も、9条を含めた方向で改憲の議論を進めていくと言っています。9条に関しては、そのような中で初めての総選挙になります。ただ、その問題について、9条に自衛隊を書き込むのは、何も、災害救助のために頑張っている自衛隊を書き込む、追認するにとどまらない重大な意味を持っています。9条1項に戦争の放棄、9条2項に戦力の不保持、交戦権の否認があり、それと別に自衛隊を書き込んだとしたら1、2項にも関わらずに自衛隊が存在するということになります。戦力の不保持、交戦権の否認と別個に自衛隊の存在を認めると、ある意味で無制限に海外での武力行使ができる自衛隊を憲法上認めるということになります。
同時に、これは市民と野党の共闘の中でも大いに議論になっていますが、やはり、憲法違反である集団的自衛権の行使容認については、安保法制を強行し、今、そういう自衛隊になってしまっています。すでに、南スーダンで駆け付け警護などをやっていますが、そのような自衛隊の活動をやる、違憲の安保法制を憲法上合憲であるというように上書きすることになる。これは大問題なので、改憲ストップの審判を下したい。日本国民310万人、アジアでは2000万人の犠牲を出した先の戦争の悲劇を繰り返させないように、その中でできた世界の宝である憲法9条を守り、生かすということです。我々は結党95年になりますが、反戦平和を貫いてきた我々に託していただいて、改憲は許さない。あの時に日本国民が戦争へのストップをかけたと、誇りを持って言えるような結果を出したいと考えています。
五点目に、核問題です。核兵器禁止条約が7月に国連で採択されましたが、この条約に署名する政府、政治にしていこうという訴えです。つい先日、ICANという、核兵器廃絶のNGOがノーベル平和賞を受賞し、内外で喜びにあふれている状態だと思います。とても素晴らしいことです。やはり、被爆者が長年声を上げてきた、市民社会と努力してきたという点では、みんなが受賞してきた平和賞だと思いますが、その中で日本の政治が問われています。
核兵器禁止条約をつくる国連会議が3月7月に開かれましたが、日本政府は残念ながらそこにいませんでした。その中で、共産党は志位委員長をはじめとして、私も広島の被爆2世として、参加して、活動してきました。ICANとも連携して活動してきました。そんな中で、世界は今、大国の言いなりにならない、そういう国が主流になっています。核保有国も核兵器禁止条約に参加して、核兵器のない世界に進もうではないか。そういう形で条約を作ったが、それに対して安倍政権は背を向けて、署名はしない、そして、核兵器についてはアメリカと同じ態度を取って核の傘に頼っています。日本は唯一の戦争被爆国として、このような世界を変えていく、そのような国にする総選挙にしようという訴えです。
「自公+希望」と「野党と市民の共闘」の二極対決だ
最後に、では今度の総選挙で、どのような議員が増えれば安倍政権は変わるのかということです。よく「三極対決」と言われます。しかし、我々は実際には三極ではなく二極対決だと思っています。自公政権に対して、希望の党が出てきました。テレビ討論でやりとりをしましたが、この党がどういう党かというと、結局のところ、安倍政権がやって来た安保法制には賛成だし、9条改憲も賛成という人たちの集まりです。そうすると、安倍政権とあまり変わりないではないか。小池都知事が「違いはどこか」と問われて、受動喫煙の規制があるかないかの違いだ、ということを言っていたので、これは安倍政権を助ける者に過ぎない。こう考えると、三極ではなく、「自公とそれを助ける勢力」対「市民と野党の共闘」という二極だ。
その点で、この間、市民と野党の共闘ということで努力し、参議院選挙、新潟県知事選挙と仙台市長選挙で勝利するということで大きな力を発揮してきました。この力で政治を変えようということで、289の小選挙区のうち249で市民と野党の共同の候補が立候補しています。我々はその大義のために準備もしてきましたが、(立憲民主党などとの一本化のため)67人の候補が取り下げるということになりました。共産党は「とにかくかっこいいね」と言われることもありますが、市民と野党の共闘をさらに高めるために、共産党を選んでいただいて、政治を変えたい。文字通り、「力を合わせ、未来を切り開く」ということでの結束になりますが、そういう形で皆さんと一緒に世直しをしていきたいと考えています。