評価の視点
社会保障は、大きく二つの課題に直面しており、評価も大きく二つの視点からなされる。
一つは、財政問題としての社会保障である。わが国の社会保障費は119兆円(2015年度)に達し、今後の一段の高齢者人口の増大とともに、増加は必至である。社会保障費は、社会保険料のみならず、国と地方の一般会計などによっても賄われている。国の一般会計の一般歳出58.4兆円のうち、55.6%の32.5兆円が社会保障関係費であり(2017度予算ベース)、現在、多くを赤字国債すなわち将来世代への負担先送りに依存している。よって、わが国の財政健全化を進めるうえで、歳出面においては社会保障関係費の増大を抑えていくことは最大の課題である。財政健全化がなければ社会保障制度も持続可能なものとならない。各党のマニフェストは、こうした一見有権者受けの悪い課題にも真摯に向き合い、抑制すべき項目とその規模を有権者に具体的に示しているか。
もう一つは、社会保障制度の現代化である。社会保障制度は、家族形態および就労形態などに一定の前提をおいて作られている。例えば、年金の第3号被保険者は、正社員の夫と専業主婦の妻からなる世帯を標準的な世帯として作られているが、今日ではそうした世帯携帯はもはや一般的ではなくなっている。あるいは、複数疾患を慢性的に抱える高齢者人口の増大によって、医療にも治療(キュア)のみならずケアがより強く求められるようになっている。医療に対するニーズが変わっており、さらに、医療と介護の緊密な連携が不可欠になっている。このように家族形態、就労形態などは変化しており、社会保障制度もそうした形態に合致させるいわば現代化が不可欠である。各党のマニフェストは、そうした変化を的確に捉え、その上でICT技術の進展なども踏まえながら制度改革のビジョンを提示出来ているか。こうした視点から評価をしていくことにする。
主要8党の評価点(社会保障)
【 評価点数一覧 / 自民党 】
項 目 | ||
形式要件 (40点) |
理念(10点)
|
4
|
目標設定(10点)
|
4
|
|
達成時期(8点)
|
2
|
|
財源(7点)
|
5
|
|
工程・政策手段(5点)
|
0
|
|
合計(40点)
|
15
|
|
実質要件 (60点) |
体系性・課題抽出の妥当性(20点)
|
8
|
課題解決の妥当性(20点)
|
3
|
|
政策実行の体制、ガバナンス、指導性と責任(20点)
|
0 | |
合計(60点)
|
11
|
|
合 計
|
26
|
【評価結果】自民党 マニフェスト評価
合計 26 点 (形式要件 15 点、実質要件 11 点)
【形式要件についての評価 15 点/40点】
自民党はその「政権公約2017」で、社会保障政策に関して「暮らしの安心を守り抜く」という独立した項目を設けている。そこでは、「人生100年時代」を迎えるためには、「子育て・介護」の問題を解決することが不可欠とした上で、「人づくり革命」を断行し、「全世代型社会保障」を目指すことを掲げている。
具体的には、「2020年度までに幼児教育無償化」や、「2020年度までに32万人分の保育の受け皿整備」、「介護職員のさらなる処遇改善」などである。これらの施策を実行するために、消費税10%時の増収分について、社会保障の充実と財政再建のバランスを取りつつ、子育て世代への投資を集中することで、「全世代型社会保障」へと大きく舵を切ること、本年末までに、「人づくり革命」に関する2兆円規模の新たな政策パッケージを取りまとめる、としている。
また、「政権公約2017」には、「自民党政策BANK」という政策集が付属しているが、ここでは「経済再生」や「安全安心」などの項目の中で上記方針を再掲している。
達成時期に関する記述としては、幼児教育無償化と保育の受け皿整備の「2020年度」、財源としては「消費税10%時の増収分」が挙げられている。
【実質要件についての評価 11 点/60点】
まず、一つ目の視点である財政問題について、自民党の公約は問題意識が極めて希薄である。そもそも2013年の第2次安倍政権発足以降、2012年12月の民主・自民・公明3党による社会保障・税一体改革に関する合意(3党合意)の枠組みをなし崩し的に壊す過程であったと言える。今回の自民党公約は、その傾向がさらに強まっている。
一体改革の枠組みとは、大まかにいえば2015年までに消費税率を追加的に5%引き上げ、うち1%を基礎年金財源に、1%を社会保障の充実にそれぞれ充てた上で、残り3%を将来世代への負担先送りとなっている現状是正に向け、一般会計の穴埋めに使うというものであった。それでもなお、2020年度の基礎的財政収支黒字化すら見込めず(真に必要なのは財政収支の黒字化)、さらなる歳入増と歳出抑制が必要であるというのがコンセンサスとなっていた。
安倍政権は、発足後、消費税率を8%までは引き上げたものの、さらなる2%の引き上げは、2度先送りし、さらに今回の公約では、2019年に2%引き上げたとしても、本来であれば多くが将来世代への負担先送り是正に使われるべきところを、「子育て世代への投資」に集中させ「全世代型社会保障」へと大きく舵を切るとしている。「全世代型」といえば聞こえは良いが、将来世代へ負担先送りの上に成り立つものであり、欺瞞でしかない。
しかも、その使途として掲げられる「幼児教育無償化」には使途として極めて問題が多い。現在でも、低所得者に対しては保育料等の減免が既にある。公約では保育園のみならず幼稚園についても無償化すると掲げている。幼稚園へ通う子どもの場合、その親は中高所得層も多く含まれると考えられ、財政状況が極めて深刻である中、財源の使途として優先されるのか疑問がある。子どもに関していえば、市町村が実施主体となっている母子保健や予防接種の自己負担軽減などがむしろ使途として優先されるべきであろう。社会保障とは外れるが、公約で掲げられる高等教育の無償化についても、無償化以前に、まずは高等教育の中身そのものの改革が先決であろう。幼児教育にせよ高等教育にせよ、無償化政策は、必要なはずの供給側の改革を遅らせ、非効率さを残すだけの帰結ともなりかねない。
二つ目の社会保障の現代化についても、やはり自民党の公約は、問題意識が極めて希薄であり、ほとんど記述がなされていない。例えば、年金の第3号被保険者は、女性の就労行動を歪める「130万円の壁」としてもかねてより問題視されてきているが、そうした問題を幅広く認識し、処方箋を示すといったことが全くなされていない。
そのほか、医療については、近年では抗がん剤オプジーボに代表される高額医療技術の登場を契機に、国民皆保険を危ぶむ声が一段と強まるなか、今後も続々と登場が予想される高額医療技術を引き続き保険給付の範囲に含めていくのか、それとも負担にも限界があることを考えれば給付対象からは外さざるを得ないのか、政党としての哲学や政策が示されて然るべきであろう。
公約では、介護人材の確保に向け、介護人材の処遇改善を図ると掲げられてはいるものの、財源をはじめ具体策が提示されている訳ではない。
【 評価点数一覧 / 公明党 】
項 目 | ||
形式要件 (40点) |
理念(10点)
|
2
|
目標設定(10点)
|
3 | |
達成時期(8点)
|
2
|
|
財源(7点)
|
4
|
|
工程・政策手段(5点)
|
0
|
|
合計(40点)
|
11 | |
実質要件 (60点) |
体系性・課題抽出の妥当性(20点)
|
6
|
課題解決の妥当性(20点)
|
4
|
|
政策実行の体制、ガバナンス、指導性と責任(20点)
|
0 | |
合計(60点)
|
10
|
|
合 計
|
21
|
【評価結果】公明党 マニフェスト評価
合計 21 点 (形式要件 11 点、実質要件 10 点)
【形式要件についての評価 11 点/40点】
公明党の「重点政策」においては、社会保障に関して「人を育む政治の実現へ」という理念を掲げた大項目の下に、「所得の少ない低年金者への支援」、「介護保険料の軽減」、「待機児童の解消など子育て支援の充実」、「保育や介護従事者の賃金引き上げなど処遇改善、キャリアアップ支援」、「地域包括ケアシステムの構築」など様々な政策を掲げている。また、「教育負担の軽減へ」という大項目でも「2019年までに幼児教育無償化の実現(0~5歳児すべて)」を挙げている。
達成時期に関しては、幼児教育無償化の「2019年」、財源としては、同じく幼児教育無償化に関して「消費税の使途について、10%引き上げ時の財源の配分割合を変更し、教育の無償化等にも充当」するとしている。
【実質要件についての評価 10 点/60点】
財政問題について、公明党の公約は問題意識が希薄である。まず、自民党の公約と同様に、「幼児教育無償化」には消費税増税分の使途として極めて問題が多い。しかも、公明党の公約では自民党の公約より1年前倒しの2019年が目標期限であり、さらに、自民党が「0~2歳児」は低所得世帯に限っているのに対し、公明党は「0~5歳児すべて」が対象である。財政に与えるインパクトの大きさも問題だが、連立与党内でこうした違いをどうすり合わせるのか、その方針も明らかではない。
年金に関しても、給付水準の抑制という発想ではなく、低所得者への年金加算の拡充など財政拡大の方向性を示している。社会保障関係費が年々増加する中で、どうしてもこれらが必要不可欠というのであれば、その財源をどうするのか、ということを説明すべきであったが、何ら明らかにされていない。全体的に歳出拡大志向が強いが、その効果について十分に示されているとはいえない。
社会保障制度の現代化という観点からは、随所にICTの積極活用を謳っていたり、地域包括ケアシステムの構築や、地域医療構想の実現に向けた取り組みを支援するとしているあたり、課題抽出はできているものと評価できる。もっとも、2018年度診療報酬・介護報酬同時改定について、「必要な改定を行う」としているが、その財源確保の見通しは示していないため、政策実行の指導性は不透明な公約となっている。
【 評価点数一覧 / 希望の党 】
項 目 | ||
形式要件 (40点) |
理念(10点)
|
2
|
目標設定(10点)
|
4 | |
達成時期(8点)
|
0
|
|
財源(7点)
|
4
|
|
工程・政策手段(5点)
|
0
|
|
合計(40点)
|
10
|
|
実質要件 (60点) |
体系性・課題抽出の妥当性(20点)
|
1
|
課題解決の妥当性(20点)
|
1
|
|
政策実行の体制、ガバナンス、指導性と責任(20点)
|
0 | |
合計(60点)
|
2
|
|
合 計
|
12
|
【評価結果】希望の党 マニフェスト評価
合計 12 点 (形式要件 10 点、実質要件 2 点)
【形式要件についての評価 10 点/40点】
希望の党は「政策パンフレット」において、「消費税増税凍結」という独立した項目を設けてその中で、「消費税 10%への増税は、一度立ち止まって考えるべき」としている。そして、「政策パンフレット」に付属している「政策:私たちが目指す『希望への道』」では、税率引き上げの大前提として、議員定数・報酬の削減、一院制実現など国会改革、ワイズ・スペンディングの観点から不要不急のインフラ整備の徹底的見直しなどを掲げるとともに、増税凍結の代替財源として約300兆円もの大企業への内部留保課税を検討するとしている。
そして、個別の社会保障政策については、「政策パンフレット」で「雇用・教育・福祉の充実」という項目を設け、「保育園・幼稚園の無料化」や、「医療、介護、障害福祉についての毎月の自己負担額を合算し、上限額以上の負担をしなくてよい『総合合算制度』を導入」することなどを掲げている。
さらに、「政策:私たちが目指す『希望への道』」では、「雇用・教育・福祉に希望を~正社員で働ける、結婚できる、子どもを育てられる社会へ~」という項目の中で、上記方針を再掲するとともに、「基礎年金、生活保護、雇用保険等を BI(ベーシックインカム)に置き換えることを検討」することや、「待機児童ゼロの法的義務付け」などを追加している。
達成時期や工程が示された政策はなく、財源としては「内部留保課税」がそれに該当するものと思われる。
【実質要件についての評価 2 点/60点】
一つ目の財政問題として社会保障について、希望の党の公約では、消費税増税凍結が掲げられつつ、公平性や効率性など租税原則に照らし妥当な代替財源の提示もなされていない。財政健全化なくして社会保障の持続可能性もないことから考えると、無責任な公約である。
基礎年金はじめ既存の所得保障諸制度のベーシックインカムへの置き換え、待機児童ゼロ、幼児保育・教育の無償化、総合合算制度の導入などが掲げられるものの、給付水準や財源規模など定量的な情報もない。
二つ目の社会保障の現代化について、希望の党の公約のうち、「雇用・教育・福祉に希望を」の一部が「社会保障」に該当するが、「幼児保育・教育の無償化」と「ペット殺処分ゼロ」が並列されるなど、羅列的、部分的であり、わが国の直面する課題の抽出がほとんどなされていないし、軽重の判断もなされていない。
【 評価点数一覧 / 立憲民主党 】
項 目 | ||
形式要件 (40点) |
理念(10点)
|
2
|
目標設定(10点)
|
3 | |
達成時期(8点)
|
0
|
|
財源(7点)
|
3
|
|
工程・政策手段(5点)
|
0
|
|
合計(40点)
|
8
|
|
実質要件 (60点) |
体系性・課題抽出の妥当性(20点)
|
1
|
課題解決の妥当性(20点)
|
0
|
|
政策実行の体制、ガバナンス、指導性と責任(20点)
|
0 | |
合計(60点)
|
1
|
|
合 計
|
9
|
【評価結果】立憲民主党 マニフェスト評価
合計 9 点 (形式要件 8 点、実質要件 1 点)
【形式要件についての評価 8 点/40点】
立憲民主党は「国民との約束」において、「生活の現場から暮らしを立て直します」という大項目の中で、「直ちに、消費税率10%に引き上げることはできない」として、2019年10月の増税には反対している。その一方で、「所得税・相続税、金融課税をはじめ、再分配機能の強化」を打ち出している。
その上で、社会保障に関するものとして、「保育士・幼稚園教諭、介護職員の待遇改善・給与引き上げ、診療報酬・介護報酬の引き上げ、医療・介護の自己負担の軽減」、「正社員の雇用を増やす企業への支援、赤字中小企業・小規模零細事業者に対する社会保険料負担の減免」などの方針を掲げている。
達成時期や工程に関する言及はない。
【実質要件についての評価 1 点/60点】
財政問題について、消費税は「直ちに引き上げることはできない」として、将来的な10%増税への含みを持たせている。しかし、公約では財政再建に関する問題意識が皆無であり、本当に上げる意思があるのか疑問が残る公約となっている。羅列されている社会保障政策も、膨張を続けている社会保障関係費をさらに膨らませていくようなものであるが、それを賄う財源の確保手段としては「所得税・相続税、金融課税をはじめ、再分配機能の強化」を挙げている。しかし、果たしてこれだけで財政放漫的な政策に対応できるのか、こちらも疑問が残る。負担増や給付抑制などの視点は一切見られず、したがって、指導性や責任が感じられない公約と言わざるを得ない。
社会保障の現代化については、公約からは特にそういう視点は見受けられない。
【 評価点数一覧 / 日本維新の会】
項 目 | ||
形式要件 (40点) |
理念(10点)
|
1
|
目標設定(10点)
|
4
|
|
達成時期(8点)
|
0
|
|
財源(7点)
|
3
|
|
工程・政策手段(5点)
|
0
|
|
合計(40点)
|
8
|
|
実質要件 (60点) |
体系性・課題抽出の妥当性(20点)
|
5 |
課題解決の妥当性(20点)
|
4
|
|
政策実行の体制、ガバナンス、指導性と責任(20点)
|
0 | |
合計(60点)
|
9
|
|
合 計
|
17
|
【評価結果】日本維新の会 マニフェスト評価
合計 17 点 (形式要件 8 点、実質要件 9 点)
【形式要件についての評価 8 点/40点】
日本維新の会は、「2017維新八策」において、表紙及び巻頭言で大々的に「消費増税凍結」を掲げている。そして、「身を切る改革で財源を生み出す」とし、議員報酬・議員定数の削減、国家公務員の人件費・人員削減などを打ち出している。
その上で、社会保障に関しては「2017維新八策」における「機会平等社会のための教育無償化」の中で、「幼児教育から私立高校、大学に至るまでの完全無償化」や、「保育士の待遇改善」を、「"働く"を支援する生涯活躍改革」の中では、「高齢者の雇用創出、年金支給年齢の段階的な引き上げ等年金制度の再構築」、「社会保険としての受益と負担を均衡させる」、「世代間再配分から世代内再配分へ」、「公的年金制度を賦課方式から積立方式に移行」などを提示している。
そして、後掲の「維新が変える改革メニュー13」の中では、上記方針の他に「医療費の自己負担割合につき、年齢で負担割合に差を設けるのではなく、所得に応じて負担割合に差を設ける」ことや、「診療情報の登録を推進し、ビッグデータの活用で医療費の抑制と医療の質の向上を同時に実現する」、「地域における医療と介護の切れ目ないサービス提供。がん患者の緩和ケアはじめ、わが家で療養できる在宅医療の基盤を整備する」などとしている。
達成時期が示された政策はない。財源は上記の「身を切る改革」で生み出すとしている。
【実質要件についての評価 9 点/60点】
まず、財政問題について、行財政改革に対する強い姿勢には一定の評価ができるが、超高齢社会における社会保障財政の持続性確保という課題に対して割り当てる政策として妥当であるか(膨張を続ける社会保障関係費を賄えるのか)は疑問が残るところはある。それというのも、議員報酬・議員定数の削減等によって、質と量の両面でどれだけの歳出改革になるのか定量的な目標等は十分には示されていないし、また、国・地方の公務員総人件費については、2割、5兆円の削減を公約としているが、その期限や公務員給与の適正化を実際にどのように行うのか明らかにしていないからである。
他方、高齢者向け給付の適正化などが盛り込まれているように、高齢化対応への意識が明確であるのは評価すべき点である。
制度体系の現代化に関しても、制度そのものを根本から作り変えるべく、将来世代の負担に目を配り、社会保険における受益と負担の明確化を打ち出すなど論理的である。現行の社会保障制度が行き詰まり、かつ、運営者たる政府がそれをガバナンスできていない現状をしっかりと見据えながら課題を抽出できているのは好印象である。
もっとも、それぞれの政策のハードルは低くないにもかかわらず、実現に向けた具体的道筋は描かれていない。特に、高齢者の負担増に関しては、それを実際に高齢者に説明して納得を得なければならないが、政治的には非常に難しい課題となる。
掲げられている理想が高いだけに、なおさら実現までの道筋をある程度明らかにする必要があるが、それがないため結局、政策実現に向けた指導性は感じられない公約となってしまっているのは減点要素である。
【 評価点数一覧 / 共産党 】
項 目 | ||
形式要件 (40点) |
理念(10点)
|
3
|
目標設定(10点)
|
4
|
|
達成時期(8点)
|
0
|
|
財源(7点)
|
4
|
|
工程・政策手段(5点)
|
0 | |
合計(40点)
|
11
|
|
実質要件 (60点) |
体系性・課題抽出の妥当性(20点)
|
1
|
課題解決の妥当性(20点)
|
1
|
|
政策実行の体制、ガバナンス、指導性と責任(20点)
|
0 | |
合計(60点)
|
2
|
|
合 計
|
13
|
【評価結果】共産党 マニフェスト評価
合計 13 点 (形式要件 11 点、実質要件 2 点)
【形式要件についての評価 11 点/40点】
共産党は「2017総選挙政策」の中で、「消費税10%増税の中止」を掲げた上で、「社会保障・教育の財源は、消費税にたよらずに確保できる」と銘打ち、6ページにも渡って「二つの改革」による財源提案を行っている。そこでは、一つ目の改革として「富裕層や大企業への優遇をあらため、『能力に応じた負担』の原則をつらぬく税制改革や、歳出の浪費をなくす改革をすすめます」とし、大企業優遇税制の見直しや富裕税の創設、大型公共事業・軍事費・原発推進など歳出の浪費をなくすことなどによって当面の財源として17兆円、将来分も含めた合計として23兆円を確保するとしている。
さらに、二つ目の改革「国民の所得を増やす経済改革で、税収を増やします」では、大企業への内部留保を活用した賃上げ要請、残業割り増し賃金の引き上げ、ブラック企業への規制強化、社会保障や教育の充実などにより、「国民の所得を増やせば、それが消費につながり、経済を安定的な成長の軌道に乗せることができます。そうすれば、10 年程度先には、国・地方あわせて 20 兆円前後の税収増が見込めます」と展望を描いている。
その上で、個別の社会保障政策としては、「社会保障削減を中止し、拡充へと転換」の方針の下、「年金削減をストップ。最低保障年金制度をめざす」、「国民健康保険料の値下げ、医療費の窓口負担の引き下げ、後期高齢者医療保険料の値上げ中止」、「診療報酬の引き上げ」、「介護施設を増設、介護保険給付を拡充、介護報酬引き上げ」、「生活保護の改善・強化」、「幼児教育・保育の無償化」、「30万人分の認可保育所を緊急増設、保育士・保育所職員の賃上げ」など、多岐に渡って拡充を主張している。
達成時期などについては示されていないが、財源については上記の通り、累計17~23兆円を確保する税制・歳出改革案が提示されている。
【実質要件についての評価 2 点/60点】
財源確保手段として、詳細な提案を示している点は評価できるが、日本の税制や経済に対して極めて大きな変革を迫るものであるにも関わらず、どのようなプロセスで実現するのかを示していない。
また、財源は明確に示しているが、その一方で社会保障における諸々の給付増や待遇改善については、その水準や財源規模などについての定量的な情報は示していないため、実際に「累計17~23兆円」で賄えるのかどうかは判断できない。少なくとも、社会保障関係費がさらに増大していく将来において、この枠に収めることは極めて困難であると思われる。そうしたことから、政策実現に向けた指導性は感じられない公約となってしまっている。さらに言えば、富裕層の負担増を徹底している同党の発想から言えば、給付に所得制限をかけてもよさそうなものであるが、それが一切ない理由も判然としない。
社会保障の現代化については、公約からは特にそういう視点は見受けられない。
【 評価点数一覧 / 社民党 】
項 目 | ||
形式要件 (40点) |
理念(10点)
|
3
|
目標設定(10点)
|
3
|
|
達成時期(8点)
|
0
|
|
財源(7点)
|
4
|
|
工程・政策手段(5点)
|
0 | |
合計(40点)
|
10
|
|
実質要件 (60点) |
体系性・課題抽出の妥当性(20点)
|
2
|
課題解決の妥当性(20点)
|
2
|
|
政策実行の体制、ガバナンス、指導性と責任(20点)
|
0 | |
合計(60点)
|
4
|
|
合 計
|
14
|
【評価結果】社民党 マニフェスト評価
合計 14 点 (形式要件 10 点、実質要件 4 点)
【形式要件についての評価 10 点/40点】
社民党は「衆議院総選挙公約2017」において、社会保障に関しては「くらし 支えます」という大項目の下、「憲法を活かした安心の社会保障」という項目を設けている。そこでは、「憲法25条の生存権を具体化する方向で、持続可能な安心の社会保障制度をめざします」とした上で、「社会保障と税の一体改革」をやり直し、負担のあり方を見直すことや、「社会保障費の自然増の『3年で1.5兆円』への抑制を許さない」としている。
その下に掲げられている個別の政策としては、「『年金カット法』の見直し。基礎年金をマクロ経済スライドの対象外とする。将来的に、『最低保障年金』制度をつくる」ことや、「医師や看護師など医療従事者の数を増やす」、「後期高齢医療制度に代わる新制度創設」、「医療・介護・住まい・生活支援・福祉など、谷間のない『地域包括ケアシステム』を実現」、「介護の自己責任化に反対」、「計画的に特別養護老人ホームを増設」、「診療報酬・介護報酬のあり方を抜本的に見直し」、「介護従事者の賃金の引上げなど処遇改善」などを打ち出している。
達成期限に関する言及はないが、財源に関しては、「社民党の財源確保プラン」という項目の中で、消費税増税(5.6兆円)の代わりの財源確保プランとして、復興特別法人税の復活(0.8兆円程度)、法人税率の引き上げ(2.4兆円程度)、金融所得課税の強化(0.5兆円程度)などの税制改革と、防衛費縮減など歳出見直し(1兆円程度)で賄うとしている。
【実質要件についての評価 4 点/60点】
公約からは負担増や給付の抑制という財政問題に関する問題意識は一切見られない。また、財源確保の見通しについても、実現可能性の薄いものばかりであるし、極めて大きな変革を迫るものであるにも関わらず、どのようなプロセスで実現するのかを示していないため、政策実行の指導性にも疑問がある。そもそも、実効的な成長戦略を示していないのに「ボトムアップの経済政策による税収増」をあてにしているなど、見通しも甘い。その結果、毎年増大を続ける社会保障関係費をどのように削減していくのか、という日本が直面している課題に正面から向かい合っているとは言えない公約となっている。
社会保障制度の現代化については、医療・介護・住まい・生活支援・福祉など、谷間のない「地域包括ケアシステム」を実現していくという方向性自体は妥当だが、医療でも介護でも並んでいる政策は大幅な歳出拡大を伴うものばかりであり、どういったビジョンを持って制度改革を主張しているのかは判然としない。
主要政党のマニフェスト評価
32点
|
23点
|
18点
|
10点
|
16点
|
18点
|
12点
|
||||||||||
経済 |
38 |
34
|
19
|
9
|
13
|
16
|
9
|
|||||||||
財政 |
23 |
14
|
9
|
0
|
13
|
16
|
2
|
|||||||||
社会保障 | 26 |
21
|
12
|
9
|
17
|
13
|
14
|
|||||||||
外交安全保障 |
53 |
31
|
29
|
14
|
21
|
29
|
22
|
|||||||||
エネルギー環境 | 21 |
17
|
23
|
18
|
17
|
15
|
14
|
|||||||||
※上記点数は全て100点満点の点数です | ||||||||||||||||