2019年参議院選挙 マニフェスト評価(農業)

2019年7月18日

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<評価の視点>

 日本の農業・農村は、農業生産額の減少、基幹的農業従事者の高齢化や耕作放棄地の増加など非常に厳しい情勢にある。こうした状況をいかに克服して活力を取り戻し、持続可能な農業をどうつくっていのか。政治に問われている課題は、5年後、10年後の日本の農業をどうしていくのか、というビジョンや展望をまず説明することにある。そうしたビジョンを前提にして、実現に向けて各党がそのような政策を打ち出しているのか、それが今回の参議院選挙でも問われている。

 現在の日本の農業政策における問題としては、まず農家に対する歪んだ保護政策がある。これまで、米の生産調整(減反)により供給量を抑制し、高い米価が維持される一方で、直接支払という形で補助金などが支払われており、農家は二重に保護されている。言い換えれば、国民は消費者として、納税者として二重の負担を強いられていることになる。この状況は生産調整が廃止された今日においても根本的に変わっていない。こうした状況下で、本当に生産者が自らの経営判断・販売戦略に基づいて需要に応じた生産をすることを促すような政策を打ち出しているのか。そして、「二重の負担」構造を打破したものになっているのかなどを確認していく。

 特に、農業においては大きくわけて2つの課題が存在している。1つは水田作について担い手をどうやって育てていくか。2つ目は、農村の問題である。特に、耕作放棄によって、農村自体が維持できなくなっている。そうした点について、具体策を打ち出しているのか、である。

 今後の農業を担う若い世代の担い手をいかに確保、育成していくかということは喫緊の課題であるが、そのためにどのような具体策を打ち出そうとしているのか。加えて、農業の生産性を高め、競争力を強化していくためには、強い担い手(効率的かつ安定的な農業経営になっている経営体及びそれを目指している経営体)への農地集積と集約化を進め、生産コストを削減していく必要がある。そうした問題意識の下、どのような具体策を打ち出しているのか、を見て行く。


<評価結果>

与党(自民党・公明党)

 自民党・公明党は様々な政策を記載している。その多くは、第2次安倍政権においてすでに動き出している「農業競争力強化プログラム」、農業改革関連法などに基づき行っているものばかりであり、農業が直面している課題については、認識していることが伺える。しかし、例えば、2018年の農業就業人口は175万人で、2017年の181万人、2016年192万人から減少しており、歯止めがかけられているとはいえない。さらに、新規就農者数も2015年の6万5000人をピークに16年は6万人、2018年は5万5000人と減少傾向にある。そうした現状を踏まえながら、政策をスクラッップアンドビルドを行っていく必要があるが、そうした姿勢は見られない。そもそも、自民党、公明党ともに5年後、10年後の日本の農業のビジョンをどう描いているのか、何ら明らかにされていない。

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野党(立憲民主党、国民民主党、日本維新の会、共産党、社民党)

 野党について、立憲民主党、国民民主党共に、過去にバラマキの批判を受けていた全農家を対象とした戸別所得補償をそのまま掲げるなど、旧民主党の政策の焼き増しでしかなく、日本の農業の競争力強化のためのビジョンには何ら触れられていない。減少するコメの担い手の育成や、農村の今後を含めて、農業の未来をどう描いているのかも説明されておらず、当面の所得補償以外、日本の農業の未来をどう考えているのか、有権者には理解できない。

 その他の野党については、農業政策に大きな力点を置いておらず、書かれている政策も願望などにとどまっており、農業政策を真面目に検討しているのかも疑問である。

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主要政党の政策項目数

 
自民党
公明党
立憲民主党
国民民主党
日本維新の会
共産党
社民党
経済
65 55 8 78 13 14 13
財政
8 10 1 13 4 2 2
社会保障 36 34 5 55 15 17 13
外交・安保
38 24 10 40 7 19 10
環境・エネルギー
17
21
7
24
4
8
7
農業
21
8
1
23
0
4
3
憲法改正
3
3
1
14
7
1
1
その他(復興、地方、教育)
94
60
7
86
9
16
14
総計
282
215
40
333
59
81
63