2019年7月12日(金)
出演者:
鈴木準(大和総研政策調査部長)
小黒一正(法政大学経済学部教授)
中田大悟(創価大学経済学部准教授)
司会者:
工藤泰志(言論NPO代表)
今回の座談会のテーマは「財政」です。政府は昨年、基礎的財政収支(プライマリーバランス)の黒字化目標年次を2020年から2025年に先送りしました。今回の与党の選挙公約を見ても、財政健全化への決意は後退する一方です。また、野党の多くには、そもそも財政問題自体を公約で取り上げない姿勢が見られます。
財政健全化は、本当に後回ししていい問題なのか。そうではないのであれば、日本の財政を立て直すために本当に必要な改革とは何なのか。議論は財政政策の枠を超え、日本の経済や社会保障システム全般の構造変革にまで及びました。
司会を務めた言論NPO代表の工藤泰志はまず、今年度予算が100兆円を超す大規模なものとなり、歳出拡大の歯止めがなくなっている現状を問題視。その一方、今回の各党の公約では「財政再建」が主要な項目から外れ、財政が選挙の大きな争点になっていない、と疑問を投げかけ、この状況をどう見ればいいのか、意見を求めました。
財政赤字の問題は、人口減少、高齢化、低成長、貧困化に対処する
政策パッケージが示さていないことの裏返し
鈴木氏は、内閣府が昨年実施した「国民生活に関する世論調査」で、現状の生活に対する国民の満足度が74.7%と、1960年代以降で最高になっていることを紹介。一方、将来の見通しを楽観している国民は1割しかいないことに触れ、その一因として「財政の持続性」への不安があるのではないか、と指摘しました。そして、「この秋10%に上がる予定の消費税だが、本来、10%より先の姿を議論しないと、なかなか展望は開けない。また、野党は10%への引き上げ自体に反対しているが、そもそも今の野党議員の多くが政権の座にあった2012年当時の『三党合意』で、10%までの増税に全議員の8割が合意している。それを覆すというのは、意味が分からない」と、政治に厳しい注文をつけました。
小黒氏は、財政赤字の問題は「日本が抱える構造的な三つの問題の裏返しだ」と解説します。「第一は人口減少と高齢化。日本の人口は今後100年間で半分に、つまり毎年60万人のペースで減っていく。また、日本の国土のうち、2050年時点で、2010年に比べて人口が半減する地域が6割に上る。人口が半減するということは、例えば地方の水道料金などは1人あたりの負担を2倍にしないと帳尻が合わなくなるが、この状況をどうするのか。また、第二の問題は経済の低成長。直近20年間の名目GDP成長率は、0.5%くらいしかなく、いろんな対策をやっているけれど、どうしても成長率が上がらない。足元では景気拡大の中で税収が増えている部分はあるが、今後のことを考えると、税収はなかなか伸びない。その中で、高齢化により社会保障費が伸びていくことになる」と問題提起します。
第三の問題として小黒氏が挙げたのは、高齢者を中心とする貧困化の現象です。「65歳以上の人のうち生活保護受給者が占める割合は、1995年の1%台から現在は約3%へと増え、このままでは2050年には6%くらい、約200万人になる。しかも、今、生活保護対象者のうち実際に受給しているのは2割にすぎず、つまり潜在的な受給者はその5倍くらいいる。2050年時点で、75歳以上の人口は約2500万人だが、そのうち2割が貧困だとすると、500万人規模になる」と、小黒氏は将来の見通しを示します。そして、「この問題を年金で解決しようと思っても、低年金の人が多いことが問題だ。『老後2000万円問題』で話題になった金融審議会の報告書は、夫婦2人で年間240万円、一人あたりだと120万円の年金をもらっている世帯をモデルとしている。しかし、実際は、一人あたり120万円以下しかもらっていない人が47%くらい、年間84万円以下しかもらっていない人に限ると27%くらいいて、このボリュームがどんどん増えていく」と、深刻な事実を明らかにするのでした。
そうした中、今の社会保障支出は年金が56兆円、医療が40兆円、介護が10兆円、全体で121兆円となり、GDPの21.5%分くらいを占めています。しかし、2040年にはこれが合計190兆円に膨らみ、GDP比の24%を占めるようになります。「GDP比にしてプラス2.5ポイントというのは、今のGDPで考えれば14兆円くらい。だから、軽減税率を除いた消費税で5%分くらいの財源を調達しないと賄えないことになる」と述べる小黒氏。「消費税を10%に上げた後、どうしていくのか。財政赤字の問題は、人口減少・高齢化、低成長、そして貧困化というこれからの問題の裏返しであり、これに対応するビジョンが見えないと、なかなか解けない問題だ」と、財政の議論に必要とされる視点について話しました。
与野党はせめて、財政再建の道筋を正直に語るべき
この問題の解決に必要な、社会保障や経済政策全般の根本的な再設計が遅々として進まない中、せめて最低限、今回の選挙で各党が国民に明らかにすべきことは何か。
中田氏は、「財政の持続可能性をどうやって担保するか、という道筋を正直に示してほしい」と語ります。中田氏はまず与党の政策について、「消費税を財源として実施される予定の、幼児教育や保育の無償化だが、保育需要を膨らませるような政策を行うということは、それに対応して保育の供給能力を高める必要があり、それは財政拡大につながっていく。また、増税の短期的な痛みの対処策である軽減税率やポイント還元も、そうした施策自体は長期的に続き、財政を悪化させることになる」と、矛盾点を指摘。
一方、野党に対しても、「消費税を上げないという目先の議論だけに執着し、自分たちはどういうビジョンで財政の持続可能性を担保していこうというのか、その姿勢が見えない。野党は本当に政権を取る気があるのだろうか。与党に対しての代替手段として自分たちをアピールする能力があるのだろうか」と批判。そして、「民主党政権時代の年金改革はめちゃくちゃだったが、末期になって、ようやく一部の議員が現実的な改革案を出してきた。そのように、人々が改革をあきらめたころに出されてももう遅いので、まだ人々が野党に期待を抱けるかもしれないこの時期に、プランを出してもらいたい」と要望しました。
非現実的な前提のもと、本気で財政再建に取り組もうとしていない政府
この「道筋」という観点から、工藤は、昨年の「骨太の方針」で2020年から2025年に先送りされた基礎的財政収支(プライマリーバランス、PB)の黒字化に向けた取り組みは、今どうなっているのか、と問いました。
経済財政諮問会議で歳出改革プランの評価・分析に携わっている鈴木氏は、「2016年からの3年間で、歳出の全ての分野について必要な改革事項を工程表化した。ただ、これは時間のかかることで、いきなり『何兆円削減』のような効果が出る話ではなく、なおかつ、消費税引き上げの先送りや、新しい政策メニューの追加があった関係で、PB黒字化は25年度に先送りされた」と説明。「内閣府の中長期試算では、25年時点で、『ベースラインケース』では6.8兆円、『経済再生ケース』でも1.1兆円のPB赤字が残ることになるが、それに対して、どういう改革をしていけばいいかということは、詰めている最中だ」と率直に語りました。
一方、小黒氏は、こうした政府の目標設定自体の問題を指摘します。「内閣府の中長期試算では二つのシナリオを出しており、『経済再生ケース』では2027~28年度ころの名目GDP成長率が4%弱、『ベースラインケース』では名目GDP成長率が1.数%になる。ここ10~20年間の実際の成長率を見れば、後者の方が現実に近いのだが、『25年度のPB黒字化』という目標は、経済再生ケースの方を前提としている。それ自体がそもそもズレていて、経済成長できれば一番いいのだが、そうとは限らないので、本気で財政再建するのであれば、比較的慎重な経済成長率を前提としないといけない」と小黒氏。
さらに、単年の収支だけでなく、1000兆円を超える累積の債務残高をどうしていくのかという点もついて、「PBのほか、それに国債の利払い費などを加えた『財政収支』という指標があるが、成長率が上がることは国債の金利が上がっていくことを意味するので、内閣府の試算ではそもそも財政収支が黒字化していない。具体的には、経済再生ケースでは2023~24年ころに財政赤字が最も縮小するが、その後悪化していくトレンドになる。ベースラインケースに至っては、27~28年度くらいに、財政収支の赤字がGDP比2.7%くらいまで拡大する」と指摘。「そういう状況の中で、財政再建をどうするのか、ということについては、答えていない。そこは政策の整合性が全然取れていないので、財政再建の本当の持続可能性を考えた道筋を示すのであれば、それをどう縮小するのか、ということに答えないとダメだ」と、各党の公約に決定的に欠けている点を突く小黒氏でした。
財政健全化に本当に必要な政策は何なのか
財政健全化の見通しが全く立っていない現状について工藤は、「消費税引き上げを見送った前回の参院選で、政府・与党は『選挙が終わったら財政再建のプランを出す』と言っていたが、結局出さず、国会でそういう議論すらしなかった。また、せっかく三党合意をして消費税を8%まで上げたのだが、その経済的な悪影響を和らげるために同じくらいの支出を行っていて、何のための増税なのか、上位の目的が全く分からなくなっている」と糾弾します。
そして、「政府の議論の立て方は『経済再生なくして財政再建なし』、つまり財政再建自体を目的にするのではなく、経済成長による税収増加の結果だ、というロジックになっている。公約の中でも、財政再建というイシューの優先順位がかなり後退してしまっている」と改めて指摘。財政再建に真に必要な政策は何か、という点を問いかけました。
これに対し3人の専門家からは、「経済成長だけで財政再建ができる」という見立てを真っ向から否定する発言が相次ぎます。
中田氏はまず、「財政だけで議論を完結させず、社会保障と財政の整合性をどう取っていくのか、例えば、社会保険の財政的な自立性を高め、財政の方は低所得者対策に重点化する、というようなビジョンを同時に描かないと、長期的な見通しは立てられない。その中で、財政をどのようにスリム化するか、そこに自助、共助をどうやって組み込んでいくかを、本来議論しなければいけない」と指摘。
そして、「自公連立政権という常態化したシステムは、本質的には小さな政府を目指そうとする自民党と、歳出拡大を強く志向する公明党という組み合わせでできている。すると、社会保障に関してワイズ・スペンディング(賢い支出)を促すような政策を、本来は公明党が提案しなければいけないが、彼らの議論は、軽減税率のような非常に短期的で安直な話がものすごく多い」と述べ、「これが是正されるのであれば、もう少し長期的な視野を持った、財政と社会保障の議論ができるのでは」と話しました。
貧困に陥らない人を増やしつつ、税による再分配の役割を本来の姿に戻す。
社会保障、統治構造の改革なくして、持続的な財政への道は開けない
小黒氏は、日本の財政の深刻な状況を、「今、一般会計が101兆円くらいになっているが、そのうち社会保障の国が支出している分だけで、34兆円くらい。加えて、国債の元本の支払いと利払いで23~24兆円ある。一方、税収はどうかというと、所得税とか消費税とか法人税が基幹財源で、ここから地方に仕送りする地方交付税を除くと、30数兆円で、それがほとんど社会保障に回ってしまっている。政策経費の4分の1くらいは、これに充てる税収がない状態だ」と具体的に報告。
さらに、名目GDP成長率と財政赤字の対GDP比がともに一定であれば、将来のGDP比の債務残高は一定値に収束するという「ドーマー命題」」を紹介。「分子の財政赤字は、今は国と地方を合わせてGDP比2.7%だが、今後のトレンドとしては3%くらいに悪化していく。一方、分母の名目GDP成長率は、今の0.5%から少し頑張って0.8%になるとしても、前者を後者で割ると将来の債務はGDP比300%を超えてしまう。これは持続可能なはずがない」と警鐘を鳴らしました。
では、現実問題として、財政をどう再建するのか。小黒氏はまず、労働市場の二極化や企業のグローバル化の中で、所得税や法人税を大きく上げる余地は少ないという見解を提示。そして消費税について、「本来、2%の増税で5.6兆円くらいの歳入増になるところ、軽減税率を入れたことで1兆円ちょっと減収してしまう」と話します。
そして、「所得が高い人も低い人も恩恵を受ける」と言う軽減税率の問題点に言及しつつ、「一番の問題は、社会保障をどうするかという話だが、今、社会保険には国庫負担という形で、公費がどんどん入っている。保険の一番重要な基幹財源は社会保険料であり、その目的は、年金なら寿命の不確実性、医療なら疾病リスクというリスク分散だ。税は、本来は所得の再分配で、本当に保険料の支払いや医療の自己負担が難しい人に配分する機能に特化しないといけないのに、今、年金であれば、基礎年金に2分の1、公費が入っている。すごく収入が高くて、厚生年金とか企業年金をたくさんもらっている人にも、公費が入っている」と小黒氏。「そのような分配の仕方がいいのか。保険と税、リスク分散機能と再分配の機能とを切り分けていかないと、この問題は解けない。今後、低成長で貧困化していくのだとすると、本当に困っている人に税財源を集中投下して、困っていない人には、増税するとか支出を配分しないようにする、というのが本来あるべき姿だが、現状はそれに反している」と指摘しました。
一方、金融審議会の報告書でも提案された、iDeCo(個人型確定拠出年金)やNISA(少額投資非課税制度)の利用者を増やすことを例に、「困らない人をなるべく増やしながら、本当に困っている人を税制の再分配で救っていく」という、経済や社会保障全体の構造変革の必要性を強く訴える小黒氏でした。
鈴木氏も、「財政再建で最も重要なポイントは社会保障改革」とした上で、「経済成長すればするほど、財政再建も同時にやらないと、大変なことになる」と逆説的に語ります。
「経済成長をある程度しないと、必要な給付抑制とか負担増はやっていけない。しかし、経済成長で物価が上がれば、それにより政府支出の額も増える。実質成長というと、介護や医療で働く人の実質賃金を上げないといけないので、財政再建にならない」と述べ、結局、経済成長しても財政再建のために必要なことは変わらない、と強調しました。
「日銀の国債引き受けによる財政再建不要論」の嘘
また、近年話題になっている、「日銀が国債を全て引き受けられるのであれば、財政支出を無制限に拡大しても問題ない」という言説に対しては、小黒氏が反論。
「日銀が持っている国債は、元をただせば我々国民の預金だ。個人金融資産が民間銀行に預けられていて、銀行はそれを融資に使い、残りのお金で国債を買っている。銀行が保有する国債を日銀が買うことは、銀行が日銀に預けている預金である日銀当座預金の残高が増えることを意味する。日銀にとっての負債は日銀当座預金、資産は国債となり、これでバランスしているという関係だ。そうすると、国債の金利が上がったときに、日銀当座預金の金利が上がらないと、我々の金融資産の利回りがカットされているわけで、それはおかしい」と解説します。「日銀というのは政府から見れば子会社で、日銀当座預金は、政府からすると超短期の国債のようなもの。子会社が親会社の社債を買ったときに、子会社が代わりに社債を出しているだけで、何も変わらない。だから、『日銀が何かするから財政の問題が解決される』ということはない」と結論づけました。
そして、「今後金利が上昇したときに、日銀と政府を一体でみると、金利が1%上がったら累積債務1000兆円の1%である10兆円、利払い費が増えるわけで、これは今からちゃんと対応しておかないと、金利が上昇したときのインパクトが非常に大きくなっている」と、近い将来に待ち受ける危機の芽についても言及する小黒氏でした。
有権者が留意すべき、公約の根底にある各党の「哲学」
財政を考えるための様々な論点が出されたここまでの議論を受け、工藤が「では、今回の選挙で各党の公約をどう読み解けばいいか」と尋ねました。
中田氏は「点数をつけるのは非常に難しい」と前置きした上で、「とりあえず、与党の公約は一文だけでも『財政再建する』と言っているが、何をどういう道筋で、ということは分からない。一方、国民民主党などを除けば、野党は軒並み、財政に関しては何も触れない。これは話にならないのではないか」と指摘します。
続いて、より具体的に、「財政と社会保障は一体だが、年金の『2000万円問題』が出た後に、財政検証の数値の公表が遅れてしまった。その理由は定かではないが、これについて与党は無責任であって、『年金制度の安心と給付の安心は別だ』という詭弁めいたことも言っている。野党はより無責任で、『年金積立金があればマクロ経済スライドなど要らないのだ』という、2004年の制度改革以前の話をしようしている。公約にもそれが表れていて、立憲民主党や共産党、社民党は『歳出をどんどん出せる』、そして財政再建の道筋は出さない。野党の中でも国民民主党は、一生懸命書かれているが、残念ながら要所要所で実現可能性のないものが混じっている。そこをもっと詰めてもらいたい」と分析しました。
小黒氏も採点については難しいとした上で、公約に表れた各党のカラーの違いを次のように指摘します。
自民党と公明党については、「官僚機構を使えるので、今まで議論してきた政策がけっこう入っている。消費税はちょっと増税し、『全世代型社会保障』という形で歳出もちょっと増やす、という路線。長期的な財政の持続可能性が担保できているかは分からない」。
国民民主党は、「高所得者にも恩恵がある軽減税率には反対で、そうではなく、ちゃんと低所得者にもお金を向けていく、だから消費税反対だ、というロジックだ。そういう意味では、歳出を拡大させないような、ワイズ・スペンディングの方向を少し示しているような感じも見受けられる」。
日本維新の会は「もう少し極端なケースで、小さな政府を目指している。増税は一切しなくて、規制緩和と経済成長で、あとは徹底的に歳出削減をするようなイメージで書かれているので、目指している社会像はかなり違うのだと思う」。
他方で、立憲民主党とか共産党などは、「財源をどのように確保するかはいろいろ書いていて、それは本当に可能かどうか分からないけれど、今より大きな政府を目指すような感じで書かれている」。
小黒氏はこう分析した上で、「まず、その路線を十分よく理解する必要がある。その中で、公約に『財政再建』というワードが書いてあるのは与党と国民民主党、維新の会」と総括。加えて、「増税して、その分を財政再建とか、本当に困っている人に集中投下するのか。そうではなく、『兵糧攻め』のような形で、増税しないであとは歳出をカットしていくという形を目指すのか」と述べ、こうした路線の違いを見比べるにあたっては個々の価値観も絡んでくるのではないか、という認識を示しました。
鈴木氏はこうした各党の違いを考えるにあたり、「フィロソフィー(哲学)」という観点を提示。「自助・共助・公助という言い方をするが、各党の哲学として、政府がお金を配って国民の生活を全面的に支えるという政策なのか、それとも、自助といっても全て自己責任ではなく、NISAやiDeCoへの税制優遇のように、インセンティブを与えて頑張る人を増やすのが政府の役割なのか。そこをどのように考えているのかが公約からどう浮き出てくるのかを見て、投票すればいい」と述べました。
「将来」を見据えたメッセージを、政治は正直に語っているか
最後に工藤が改めて、「今回の選挙で財政を考える視点はこれだ、と一言で語ってほしい」と、3人に求めました。
中田氏は、「各党が目先のことだけを語ろうとしているのか、『痛み』も含めて将来を見通したメッセージをちゃんと発しているのか。ここを見定めてほしい」。
小黒氏は、「痛みを正直に伝えているのかは非常に重要だし、財政の問題は非常に深刻な問題なので、これにちゃんと向き合っているかどうか。ただ、そのときに方向性はいくつかある。社会保障を維持するために大きな政府でいくのか。あるいは、今の路線を微修正してうまくやっていくという方向性なのか。それとも、もっとドラスティックに、より小さな政府、規制緩和をして、社会保障を含めて相当抑制していくという路線なのか。それを本気で書いているかどうかを含めてよく見た上で、投票することが重要だ」と発言。
鈴木氏は「財政に対する向き合い方が非常に薄い」と強い懸念を示した上で、任期が長く解散もないため、長期的な道筋の議論に適している「参議院」の選挙だということを強調。「やはり、長期的なビジョンをどれだけ持っているのか。今年、来年の話だけをしているというのは、相当深刻だ。先をきちんと見ているのかどうかを見定める必要がある」とコメントしました。
最後に司会の工藤が「今日の議論で一致したのは、痛みを含めて、長期的な課題に真剣に立ち向かうという姿勢が大事だということだ」と振り返り、「しかし、公約からはそういうメッセージがなかなか伝わってこない。マニフェストが日本に導入される以前と比べても、今回の公約は『根拠のない再分配』という傾向が非常に強まっている。日本が直面する大きな困難を正直に説明せずに、『何となくお金はあるのだから、いろんなことをやります』という昔の公約に戻ってきているような印象がある」と、強い憂慮の念を表明。
「逆に言うと、政治家は『そうした甘い言葉を語れば、有権者が投票してくれる』と思っている可能性がある。そうではなく、『本当のことを正直に語っている政治家の方が信頼できる』という目を、有権者は政治に向けていく必要がある」と述べ、議論を締めくくりました。