まず、世界の世論は、自国の政府の新型コロナ対応をどう評価しているのか。
調査対象国の約7割が「政府は適切に対応」と評価、一方日本は厳しい自己評価
ドイツ調査会社のダリア・リサーチが6月15日に発表した、53カ国・地域での世論調査 によれば、調査対象国の約7割が自国政府の新型コロナ対応におおむね満足している。53ヵ国中34ヵ国が、「自国の政府は新型コロナをうまく対応した」と回答している。自己評価の高い国には、中国、ベトナム、マレーシア、台湾、韓国など東アジアの国々が並ぶ。
上記のグラフから顕著なのは、東アジア地域で日本の自己評価が圧倒的に低い点だ。
政府の新型コロナウイルスに満足している日本国民は52%で調査した53ヵ国の中でも最低クラスの評価である。日本同様に評価が低いのは、世界最大の感染者数になっている米国の53%やブラジル34%である。
同じ傾向は、他の調査でも見られる。日本リサーチセンター/ギャラップ・インターナショナル・アソシエーションが7月14日に発表した世界19か国・地域の世論調査 では、調査国の平均での61%が「適切に対応している」と回答している。同調査でも際立つのが日本の厳しい自己評価である。日本で「適切に対応した」と評価しているのはわずか34%に過ぎず、これは19か国・地域中最下位である。
政府やリーダーへの信頼が低い日本
では、コロナ禍で自国政府やリーダーへの信頼がどの程度変化したのか。
興味深いのは、米国の大手PR会社・エデルマンが6月9日に発表した主要11ヵ国での世論調査結果である。本年1月との比較で、日本を除く10ヵ国では、政府への信頼度は回復している。さらに、カナダ、韓国、ドイツ、イギリスなどの6ヵ国では、政府への信頼が二桁も上昇している。
ここで顕著になってくるのも日本人の政府への信頼度の低さである。日本の場合、政府への信頼は38%、11ヵ国の中で最も低い結果である。また、今年一月との比較で日本のみ5ポイントのマイナスとなり、パンデミックの中、政府への信頼がさらに下がっている状況である。
さらに、戦略的PRコンサルティング会社Kekst CNCの調査 では、6月に日本、米国、イギリス、ドイツ、スウェーデン、フランスの合計6,000人を対象に、コロナ禍において、政府、首脳、保健省、WHO、メディア、医療従事者、NGOなどの13の機関が機能したかについて調査している。
13の機関の内メディアを除き、大半の機関が「機能した」とのプラスの評価となっている。が大半である。ただ、この中で、日本の場合は政府・首脳への評価が著しく低い。安倍首相(マイナス33%)、厚生労働省(マイナス27%)、日本政府(マイナス17%)である。世界最大の感染者数を出し、トランプ政権のコロナ対応が批判されている米国でも中央政府の評価はマイナス12%のため、日本の首相や政府への評価がいかに低いか明白である。
逆に、パンデミックの中で、評価が高いのは、医療従事者、エッセシャル・ワーカー、オンライン小売業者であり、これは6ヵ国の中で共通している。感染拡大の中でも人の命を救い、社会基盤を支え続けた人たちへの支持がどの国でも圧倒的に高くなった。
具体的事項への政府対応への評価
次は、政府の対応別での国民の評価を比較したい。前述のエデルマンによる調査では、経済対策、医療・検査体制など各国政府がコロナ禍で行った14の対応についての評価を聞いている。
10ヵ国平均で「政府はよく対応した」との回答が最も多いのは、「有効且つ正確な情報の提供」で半数が評価している。対して、10ヵ国平均で最も低いのは、「検査体制の拡充」(39%)である。
ここでも際立つのは、日本国民の評価だ。情報提供、医療体制の整備、経済的弱者への支援、検査体制の拡充など全14項目において、その対応を評価する国民はわずか10%前後に過ぎない。政府対応を個別で評価しても、日本国民の厳しい意見が際立った形である。
なぜ日本はここまで評価が低いのか
では、なぜ日本国民はここまで自国政府の新型コロナ対応に対し、厳しい評価なのか。一つは、経済対策への不満や将来への不安である。
Kekst CNCの調査では、調査国5か国の中で、「政府は、企業が必要としている経済支援を行っている」と回答するのは、イギリス、フランス、ドイツなどの欧州の国々では、約半数程度に及んでいる。これに対し、日本では「支援を提供している」との回答は、他の国の半数程度の20%のみである。また、経済支援がきちんと企業にわたっているかとの問いでも、「必要な支援が届いている」日本はわずか11%。これは、他の先進国、フランス51%、英国42%、ドイツ38%に比べ圧倒的に低い。
その結果か日本では、「仕事を失うかもしれない」と思っている割合は一番高く(32%)、「会社が倒産するかもしれない」と思っている人の割合も調査国の中で一番高い34%である。
また、日本の場合は、将来への見通しも厳しい。日本リサーチセンター/ギャラップ・インターナショナル・アソシエーションの調査では、「自国の生活全般が今年中に通常に近い状況まで戻る」との回答は11%しかない。これは19ヵ国の中で最低であり、平均の42%と比べても圧倒的に低い数値である。
パンデミックでの米中両大国の行動-米国より中国を評価する声が多数
最後に、米中両大国への見方である。パンデミックの中、米中対立はより深刻化した。コロナ危機の中で米国、中国それぞれの行動を世界はどのように評価しているのか。
前述のダリア・リサーチが行った調査で、「米国、或いは中国は、新型コロナ危機を適切に対応したか」と53ヵ国の国民に尋ねている。その中で、「米国は適切に対応した」との数値が中国より高いのは、日本と米国の二か国である。米国以外の国で、米国の対応を中国より評価しているのは日本だけである。
他51ヵ国は「中国は適切に対応した」との回答が大きく上回っている。韓国や台湾などの東アジアの国々は米中共に低い評価を下しているが、ロシア、ギリシャ、イタリア、フランスなど欧州の国での米中で圧倒的な差があり、米国の対応の不適切さを指摘する声が多い。
一方で、ヨーロッパの国々で必ずしも中国への評価や信頼が上がっているわけではない。
欧州外交問題評議会(ECFR)が6月に公表したアンケート調査結果では、ドイツ、フランスなどヨーロッパ9カ国でこのコロナ危機の間に中国の印象が「悪化した」と回答した人の比率が平均48%になっている。逆に「改善した」との声は、9ヵ国平均でわずか12%である。3月に感染が爆発的に拡大し、中国が医療物資を積極的に提供したイタリアでさえ、「中国のイメージが悪化」との回答は37%、「改善した」との回答の21%を上回っている。
将来への見方―64%が前向きな変化を期待
最後に、コロナ後の世界をどう見るか、前述のエデルマンの調査結果を紹介したい。11ヵ国の平均で64%が新型コロナ危機が「価値のあるイノベーションや良い方向への変化」につながると見ている。これは、「パンデミックからは何も良い結果は生まれない」という悲観的見方の36%より高くなっている。
日本でも3分の2の64%が前向きな見方を支持していており、米国、ドイツ、フランスなどの先進国や中国よりも高い。
NHKが7月14日に発表した最新の世論調査では、新型コロナウイルスをめぐる政府の対応について、「大いに評価する」、「ある程度評価する」の合計が50%、「あまり評価しない」、「まったく評価しない」の合計は45%で評価が拮抗している。内閣支持率については、支持が36%、支持しないが45%と「支持する」が過去最低水準に近づいている。民主主義の基盤に重要な国民の信頼をどう回復するのか。言論NPOでも今後も議論していきたい。