次期総裁の選出方法に関しては、7割が党員参加を希望。
次期首相に求めるのは「コロナ」と「日本経済の復興」、「米中対立への対応」

2020年9月02日

安倍首相退陣を受けての緊急有識者アンケート

 安倍晋三首相の退陣に伴い、新総裁の選出に向けた動きが本格化しています。言論NPOは、これまで継続的に安倍政権の評価を実施しており、現在、最終の評価作業を行っています。その前に各分野の専門家や学識経験者、経営者、公務員などで、言論NPOの議論などに参加経験がある2000人の有識者に緊急のアンケートを実施し、7年8カ月に及ぶ安倍政権の評価、後継首相が背負うべき宿題などについて意見を聞きました。回答者は165氏です。

 まず、次期首相となる党総裁の選出方法について、自民党は9月1日の総務会で「緊急事態にあたる」として党員投票を行わず、両院議員総会の場で国会議員と都道府県連の代表による投票で選出することを決定しました。

 しかし、アンケートでは「総裁選を実施し、国会議員だけでなく党員・党友の投票も合わせて選出すべきである」との回答が68.5%と7割近くにのぼるなど、幅広い党員の意見を集約し、新総裁を決めることを支持する見方が圧倒的となりました。自民党の執行部の方針を支持したのは25.5%です。
また、次期首相が取り組むべき課題は、「コロナの終息」が57%で最も多く、次いで、「日本経済の復興」(47.3%)、「米中対立や世界の自由秩序への対応」(41.2%)の順となっています。コロナ禍の出口に向けた取り組みや、日本経済にも影響する世界の分断という今まさに日本が直面する課題に強い関心があり、有識者はそれらに真っ先に取り組んでほしいと考えています。「政府の統治の信頼性の回復」を挙げた人も22.4%と2割程度います。

 次期首相が、一刻も早く総選挙を行うべきかでは、「そう思わない」という否定的な見方が50.9%と半数を超えています。ただ一刻も早く解散すべきも29.1%と3割近くあります。

第二次安倍政権には、「国民への説明能力」や「首相を支えるチーム」で厳しい評価

 第二次安倍政権の全般的な評価は、「評価する」が48.5%、「評価しない」が49.1%とそれぞれ半数近くとなり、見方は拮抗しています。また、安倍首相の資質に関する評価(5点満点)では、平均が2.7点と第一次安倍政権からの歴代の政権と比較して相対的に高い評価ですが、「首相を支えるチームや体制づくり」が2.4点、「国民へのアピール度、説明能力」は2.2点と厳しい採点となりました。
各政策分野に関する実績評価(5点満点)では、有識者は「外交・安全保障」を3.4点と特に高く評価していることが分かりました。一方、「財政再建」(1.8点)と、「政治・行政・公務員制度改革」(1.7点)は1点台となり、多くの有識者が厳しい評価をしていることも明らかとなりました。

 安倍政権で最も印象に残ったことでは、「森友学園、加計学園、桜を見る会などの問題」が49.1%と最も多く、「トランプ大統領との緊密な関係」が41.8%で続いています。なお、次期総理に期待しているのは石破茂氏が29.7%と最も多く、続いて河野太郎氏が21.8%、岸田文雄氏が10.9%、菅義偉氏は9.7%でした。


【安倍首相辞任表明の評価】

 まず、安倍首相の辞任表明についての評価を尋ねたところ、「政権運営に支障が生じる前に身を引いたことは責任ある対応だと思う」との評価が59.4%と6割近く、「第一次政権時と同様に政権の投げ出しであり、無責任だと思う」という厳しい見方の17.6%を大きく上回っています。

8月28日、安倍晋三首相は持病の再発を理由として辞任を表明しました。任期途中での辞任となりましたが、あなたは、安倍氏のこうした姿勢についてどのように考えますか。(単数回答)

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【自民党総裁の選出方法】

 次に、次期首相となる自民党総裁を、どのように選出すべきだと思うかを尋ねました。

 自民党は9月1日の総務会で、総裁選挙について、「緊急事態にあたる」として党員投票を行わず両院議員総会の場で国会議員と都道府県連の代表による投票で選出することを決定しました。しかし、68.5%と7割近くの有識者は、「総裁選を実施し、国会議員だけでなく党員・党友の投票も合わせて選出すべきである」と回答しており、幅広い党員の意見を集約して新総裁を決めるべきとの見方が圧倒的です。自民党執行部の方針を支持している回答は25.5%でした。

あなたは、次期首相となる自民党総裁を、どのように選出すべきだと思いますか。(単数回答)

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【"暫定政権"の可否】

 次期政権を本格的な政権ではなく、選挙管理内閣としての「暫定政権」とすることについては、53.3%の有識者が「賛成である」と回答しています。

あなたは、次期政権を本格的な政権ではなく、衆議院議員の任期が切れるまでの「暫定政権」とすることについて、どのように考えますか。(単数回答)

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【次期首相はすぐに衆院解散すべきか】

 一方、次期首相が早期に衆議院を解散することに対しては、有識者の50.9%と半数が否定的な見方をしています。ただ、解散すべきとの回答も29.1%と3割近くあります。

あなたは、次期首相は一刻も早く衆議院を解散すべきだと思いますか。(単数回答)

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【次期首相に力を入れて取り組んでもらいたい政策分野】

 続いて、次期首相に特に力を入れて取り組んでもらいたいと考えている政策分野について質問しました。その結果、最も多い回答は「コロナの終息」で、57%と6割近くの有識者がこれを選択しています。また、「日本経済の復興」(47.3%)、「米中対立や世界の自由秩序への対応」(41.2%)も4割を超えています。「政府統治の信頼性の回復」(22.4%)も2割程度の有識者が選択しています。

あなたが、次期首相に対して、特に力を入れて取り組んでもらいたいと考えている政策分野は何ですか。(3つ回答)

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【第二次安倍政権の総合評価】

 続いて、安倍政権の総合的な評価を尋ねたところ、「評価する(「強く」と「やや」の合計)」との回答が48.5%、「評価しない(「あまり」と「全く」の合計)」との回答が49.1%となり、評価が二分される結果となりました。

あなたは、第二次安倍政権の約7年8カ月を評価していますか。(単数回答)

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【安倍首相の資質に関する評価】

 次に、安倍政権の評価各論として、首相の資質に関する評価を5点満点で尋ねました。その結果、全項目の平均点は2.7点となりました。第一次政権以降の歴代内閣と比較しても、相対的に高い評価となりましたが、「政権を支えるチームや体制づくり」は2.4点、「国民に対するアピール度、説明能力」は2.2点と厳しい採点となりました。

第二次安倍政権のこれまでの約7年8カ月を振り返って、首相の資質に関して以下の(ア)から(ク)の項目をあなたはどう評価しますか。(それぞれ単数回答)

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【各政策分野に関する実績評価】

 各政策分野に関する実績評価についても、5点満点で評価してもらいました。その結果、「外交・安全保障」が3.4点で突出した高評価となりました。次いで、「経済再生」(2.9点)、「復興・防災」(2.7点)までが半分の2.5点を超えています。

 一方、「財政再建」(1.8点)と、「政治・行政・公務員制度改革」(1.7点)は1点台となり、多くの有識者が厳しい評価をしています。

あなたは、第二次安倍政権の約7年8カ月を振り返って、各政策分野の実績をどのように評価していますか。(それぞれ単数回答)

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【第二次安倍政権で最も印象に残ったこと】

 第二次安倍政権で印象に残ったこととしては、「森友学園、加計学園、桜を見る会などの問題」が49.1%で最も多い回答となっています。以下、「トランプ大統領との緊密な関係」(41.8%)、「アベノミクス」(40%)の順となっています。

第二次安倍政権の約7年8カ月を振り返って、あなたが最も印象に残ったことは何ですか。(3つ回答)

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【次期首相になってほしい人物】

 最後に、次期首相になってほしい人物を挙げてもらいました。その結果、「石破茂・元幹事長」が29.7%で最多となりました。2番目に多かったのは、本調査の後に出馬見送りを表明した「河野太郎・防衛相」で21.8%。「岸田文雄・政調会長」は10.9%。首相就任が有力視される「菅義偉・官房長官」は9.7%でした。

あなたが、次の首相になってほしいと特に期待している人物は誰ですか。(単数回答)

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