【プレスリリース】国際シンポジウム「戦後70年 東アジアの『平和』と『民主主義』を考える」開催
北東アジアの平和とアジアの民主主義の発展に向け2015年の「言論外交」が本格始動

2015年3月21日

 認定NPO法人 言論NPO(代表:工藤泰志)は、3月20日・21日の2日間にわたり都内にて国際シンポジウム「戦後70年、 東アジアの『平和』と『民主主義』を考える」を開催し、「平和」と「民主主義」について多国間での議論を行いました。20日は、穏健派イスラム主義の最大国であり、アジアの民主主義大国であるインドネシアと「アジアの民主主義をどう発展させるのか」をテーマに議論を行い、「2つの民主大国がアジアの民主主義の発展に協力し合い、この対話を今後も継続させる」ことで一致しました。21日には、アメリカ、中国、韓国、インドネシアとの有識者と「北東アジアの平和は誰が構築できるのか」について議論が行われました。その中で民間外交の役割が話し合われ、言論NPOが提唱した、建設的な世論を形成し、多くの市民が課題解決や平和に向かうための環境づくりを行う「言論外交」に多くの賛同が寄せられました。そして、多くの市民が参加し、日本やアジアの将来のビジョンを語っていくことが、様々な課題解決に向けた基礎工事になるということで意見が一致しました。今回のシンポジウムには、それぞれ100人以上の聴衆が参加し、議論を見守りました。

 また、シンポジウムの開催に先立って行われた有識者アンケートの結果が、議論の中で紹介され、民間が「北東アジアの平和な秩序づくりに向けて」取り組むことに賛同する有識者が4割を超えるなど、民間外交に対する期待の高さが明らかになりました(概要は2ページ目をご覧ください。)。


 今回のシンポジウムは、言論NPOが戦後70年の節目となる今年、継続的に取り組んでいく「言論外交」のスタートになります。今年6月には韓国との間で「第3回日韓未来対話」を東京で、夏には北京で「第11回 東京-北京フォーラム」を開催する予定で宇。さらにアメリカなどを含めた多国間での議論にも取り組んでいきます。また、国内においては他国との対話を行いながら、民主主義について継続的に議論を行い、デモクラシーを日本の中でより強いものにする提案を年内にまとめる予定です。言論NPOの今後の取り組みにぜひご注目ください。


20日「アジアの民主主義をどう発展させるか」元外相などインドネシア有識者と議論

 議論の前半では、300の民族、300の言葉がある多民族国家であるインドネシアが民主化に向けてどのような発展してきたのか、民主主義を機能させるためにどのような取り組みを行っているのかなど広範な議論が行われました。後半では、民主主義国における自由のあり方やアジア特有の民主主義の発展など踏み込んだ意見も出されるなど、インドネシアと日本の有力者がアジアの民主主義について公開の場で議論する初めての取り組みとなりました。最後に、「2つの民主大国がアジアの民主主義の発展に協力し合い、この対話を今後も継続させていく」ことで一致しました。

 この日の会議には、インドネシアから元外務大臣のハッサン・ウィラユダ氏、 バリデモクラシーフォーラムのクトゥト・プトラ・エラワン氏など有識者4氏、日本からは元国連事務次長の明石康氏、前インドネシア大使の鹿取克章氏、岩手県立大学総合政策学部准教授の見市建氏、ジェトロ・アジア経済研究所地域研究センター副主任研究員の川村晃一氏が参加しました。


21日「北東アジアの平和構築に向け、民間の役割は何か」日米中韓インドネシアの有識者で議論

 北東アジアでの不安定な平和的環境をどう克服するのか、日米中韓インドネシアの有識者で議論が行われました。その中で、平和で安定的な環境をつくるために政府外交だけではなく、民間が外交でどのような役割を持つのか議論になり、「世論との関係で政府が動けない状況になった場合に、半歩、一歩先の議論を行い、世論を作り出すことができる」との意見が出されるなど、外交問題についても市民一人ひとりが考えられるような材料を提供し、世論を形成していくことが重要だとの意見などが出されました。また、言論NPOが進める「言論外交」に多くの賛同が寄せされ、多くの市民が参加し、日本やアジアの将来のビジョンを語っていくことが、様々な課題解決に向けた基礎工事になるということで意見が一致しました。

 この日の会議では、ハッサン元外相など前日のインドネシア有識者に加え、韓国から元外交通商部長官の柳明桓氏、中国から中国大使館公使参事官の栄鷹氏、アメリカから米国社会科学評議会のナンシー・スノー氏、日本からは国際戦略研究所理事長の田中均氏、前アメリカ大使の藤崎一郎氏、元中国大使の宮本雄二氏が参加しました。


「戦後70年、東アジアの『平和』と『民主主義』を考える」有識者アンケート

 アジアの民主主義と北東アジアに関する有識者258名の意見を公開
言論NPOは、シンポジウムに先立ち、これまで言論NPOの活動に参加した全国の有識者約6000人を対象に有識者アンケートを3月15日から19日の期間で実施し、回答のあった258人の回答内容を分析しました。分析結果の概要は下記の通りです。

アジアの民主主義に関する調査結果

アジアにおけるデモクラシーの展開について「発展していく」との回答が最多

 「アジアの民主主義の衰退」が指摘される中、日本の有識者は、今後のアジアにおけるデモクラシーの展開をどのように予想しているのか。最も多かった回答は「発展していくと思う」の42.6%で、「衰退していくと思う」の10.1%を大きく上回った。ただ、「どちらともいえない」との回答も32.9%と3割程度あり、アジアにおけるデモクラシー発展の可能性について、慎重な見方も一定数存在している。

デモクラシーで最も重要な基準は「個人の基本的な人権の尊重」

 デモクラシーの中で、最も重要な基準は何かを尋ねたところ、最多の回答は「個人の基本的な人権の尊重」で34.5%だった。これに「政治的な自由」14.3%、「表現・結社・信教の自由」12.8%、「法の下の平等」10.5%と続き、「基本的人権の尊重」を特に重要視していることが浮き彫りとなっている。

アジアの民主主義国の課題とは

 アジアの民主主義国の課題について尋ねたところ、「政治・行政などに腐敗が存在し、国民の信頼が形成されていないこと」(36.8%)と、「国内での貧富の格差が大きく、改善に向けた政治の取り組みが進んでいないこと」(33.7%)の2つが3割を超えた。「個人の基本的な人権が十分に保障されていないこと」を選んだ回答が23.3%と一定数あり、「一部の国では軍の政治介入が正当化されていること」を選択した有識者も21.3%と2割程度見られた。

北東アジアの平和に関する調査結果

北東アジアに「不戦の誓い」を広めていくことに「賛成」との回答が8割を超える

 北東アジアで不安定な状況が続く中、言論NPOは一昨年の「第9回 東京-北京フォーラム」において中国との間で「不戦の誓い」を合意した。言論NPOは今後、こうした動きを北東アジアの平和な秩序づくりに向けて広めていく予定だが、これについての賛否を尋ねたところ、「賛成(「どちらかといえば」を含む)」が86.0%と圧倒的多数を占めた。

アジアの将来において、目指すべき価値観や理念として最多の回答は「民主主義」

 アジアの将来を考えた場合に、目指すべき価値観や理念は何かを尋ねた。その結果、「民主主義」(26.0%)と「平和」(22.5%)の2つが2割を超えて並んでおり、有識者の中でも、この2つの価値観が重要との認識が広がっている。これに「不戦」(14.0%)と「人権」(12.0%)が続く構図になっている。

東アジアに平和的な秩序をつくり出すための枠組みとして、アメリカの参加がポイントに

 東アジアで平和的な秩序をつくり出すための枠組みとして、どのようなものに期待しているのか尋ねた。その結果、「日中韓など北東アジア各国にアメリカなどを加えた多国間協議」が38.0%と、最多となった。これに「日中韓など北東アジア各国による多国間協議」が21.7%で続いている。有識者は多国間の枠組みを重視しているが、その際、アメリカの参加をポイントとして見ていることが浮き彫りとなった。

3/20・21開催概要 「戦後70年 東アジアの『平和』と『民主主義』を考える」

20日/ 「アジアの民主主義をどう発展させるのか -インドネシアとの対話」

◇日   時:2015年3月20日(金)14時30分~17時30分
◇場   所:ホテルオークラ東京 本館2階「エメラルド」
◇プログラム:
    第1セッション 「日本とインドネシア、二つの民主主義を再考する」
    第2セッション 「アジアの民主政治のための言論と民間の役割」
◇司   会:工藤泰志(言論NPO代表)
◇パネリスト:
【インドネシア】
    ハッサン・ウィラユダ(元外務大臣)
    クトゥト・プトラ・エラワン(平和民主主義研究所所長)
    ラヒマ・アブドゥラヒム(ハビビセンター所長)
    フィリップ・ベルモンテ(インドネシア国際戦略研究所 政治国際関係部長)
【日本】
    明石 康(国際文化会館理事長、元国連事務次長)
    鹿取 克章(前駐インドネシア特命全権大使)
    川村 晃一(ジェトロ・アジア経済研究所 地域研究センター副主任研究員)
    見市 建(岩手県立大学総合政策学部准教授)


21日/ 「北東アジアの平和は誰が構築できるのか―日米中韓インドネシア、5カ国対話」

◇日   時:2015年3月21日(土)13時30分~17時00分
◇場   所:ホテルオークラ東京 本館1階「曙の間」
◇プログラム:
    第1セッション 「戦後70年 北東アジアは平和へ動き出せるか」
    第2セッション 「言論外交はアジアの平和構築に寄与できるか」
◇司   会:工藤泰志(言論NPO代表)
◇パネリスト:
    韓国:柳 明桓 (元外交通商部長官)
    中国:栄 鷹(中国大使館公使参事官、元中国国際問題研究所副所長)
    米国:ナンシー・スノー(米国社会科学評議会 安倍フェロー)
    インドネシア:ハッサン・ウィラユダ(元外務大臣) 他
    日本:田中 均 (日本総合研究所国際戦略研究所理事長、元外務省政務担当外務審議官)
    藤崎 一郎(上智大学特別招聘教授、前駐米大使)
    宮本 雄二(宮本アジア研究所代表、元駐中国特命全権大使)


言論NPOとは

 言論NPOは「健全な社会には、当事者意識を持った議論や、未来に向かう真剣な議論の舞台が必要」との思いから、2001年に設立された、独立、中立、非営利のシンクタンクです。言論NPOは、議論の力で「強い民主主義」と「強い市民社会」をつくり出すことをめざし、有権者が政治や政策を判断し、民主主義を機能させるために質の高い議論づくりや政策評価に取り組んでいます。

 また、健全な世論形成をめざす民間外交として、議論はアジアにも広がっています。具体的には、中国との間で2005年より10年に渡り、世論と連動したハイレベルの民間対話を行っています。また、2013年5月には韓国との間にも民間対話の場を創設し、継続して開催しています。2013年12月には、2国間の民間対話の実施体制を一体化するために「新しい民間外交イニシアティブ」を創設し、東アジアにおいて課題解決に向かうための世論形成の取り組みを強化しています。他方で、2012年3月には米国外交問題評議会(CFR)が設立した国際シンクタンク会議カウンシル・オブ・カウンシルズ(CoC)の常設メンバーに選出され、世界の有力なシンクタンクと連携を強化するとともに、世界の課題に対して提言を行っています。


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言論NPO編集局プレス・オフィサー 吉崎洋夫
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