言論NPOと東アジア研究院は「第3回日韓共同世論調査」の結果を公表しました
言論NPO(代表 工藤泰志)は、2015年6月21日に開催する「第3回日韓未来対話」に先立ち、「第3回日韓共同世論調査の結果」を公表いたしました。この調査は、言論NPOと韓国の東アジア研究院(East Asia Institute, EAI)が2013年から毎年共同で行っているもので、今年は4月から5月にかけて実施しました。
世論調査結果からは、日本人の5割、韓国人の7割が相手国に対して「良くない」印象を持っており、現在の日韓関係を「悪い」と考える人は、日本人で6割と昨年よりはやや改善したものの、それでも6割超存在し、韓国人では8割近くになっている。日本と韓国の国民感情や日韓関係の現状に対する認識は昨年、急激に悪化したが、国交正常化50年の今年もその状況は基本的に変わっていないことが明らかになりました。
また、日本人の55.7%が現在の韓国を「民族主義」の国、韓国人の56.9%が現在の日本を「軍国主義」の国と見るなど、相手国に対する基礎的な理解が欠如しています。さらに、韓国人の58.1%が「日本」を軍事的脅威と感じ、37.8%が日韓間で軍事紛争が起こると予想していました。しかし、日本国民の67.8%、韓国国民の67.2%が日韓両国の関係が悪い状況に対して「望ましくない」、「問題であり、改善すべき」という認識を持っており、今回の調査で唯一明るい材料ということができます。
この調査結果を踏まえ、言論NPOとEAIは共同で「第3回日韓未来対話」を6月21日に東京で開催し、両国の有識者が、両国が北東アジアや世界の課題に対してどのような役割を担っていくべきなのか、どのような将来像をお互いに描けるのかなど、公開の場で議論を行います。対話の概要はこちらよりご覧いただけます。
第3回 日韓共同世論調査結果
相手国に対する印象について
≪日本人の5割、韓国人の7割が、依然として相手国に対して良くない印象を持つ≫
昨年悪化した日本人の韓国に対する「良くない」印象(昨年54.4%、一昨年37.3%)は、今年は52.4%と引き続き5割を超えた。韓国人では、日本に対する印象を「良くない」と回答した人が、72.5%(昨年70.9%、一昨年76.6%)となり、依然として7割が日本に対して良くない印象を持つ。
≪良くない印象の理由は、韓国は「歴史問題」「領土対立」、日本は「韓国側の日本批判」を挙げる人が大半≫
日本人が韓国に対して良くない印象を持つ理由は「歴史問題等で日本を批判し続けるから」が74.6%、これに「領土対立」が36.5%と続く。他方、韓国人が日本に良くない印象を持つ理由は「韓国を侵略した歴史について正しく反省していないから」が74.0%と最も多い。これに「領土対立」が69.3%と続く。
≪日韓両国民の約7割が悪化する国民感情の現状を「望ましくない」、「問題だ」と認識している≫
両国民間の国民感情が依然として悪い状況を、日本人の29.0%が「望ましくない状況であり、心配している」、38.8%が「問題であり、改善する必要がある」と回答しており、この2つを合わせると約7割(67.8%)の日本人が国民感情の現状に対して問題意識を感じている。韓国人も国民感情の現状を「望ましくない状況であり、心配している」が26.4%、「問題であり、改善する必要がある」が40.8%となり、こちらも7割近く(67.2%)の人が問題視している。
相手国に対する基礎的理解
≪日本人の半数以上が韓国を「民族主義」、韓国人の半数以上が日本を「軍国主義」と認識している≫
「相手国の現在の社会・政治体制」について、韓国を「民族主義」と考えている日本人は、55.7%で最も多く、昨年の44.8%から約10ポイント増加した。これに対して、韓国人は、現在の日本を「軍国主義」と考える人が56.9%と、昨年の53.1%を上回り、最も多い。日本を「民主主義」の国と見る人は22.2%で2割程度である。日本人、韓国人ともに相手国を「平和主義」とみる見方はそれぞれ6.6%、4.2%と1割にも満たない。
日韓関係の現在と将来に対する認識
≪両国民はともに「竹島・独島問題」「従軍慰安婦問題」を日韓関係発展の障害と捉える≫
日韓関係の発展を妨げるものとして、日本人で最も多いのは「竹島・独島問題」の62.0%である。韓国人でも、この「竹島・独島問題」を88.3%(昨年92.2%)と9割近くの人が選択した。また、「従軍慰安婦問題」は、日本人では58.0%、韓国人では63.5%が関係発展の障害として回答し、両国ともに2番目に多い回答となった。
≪日韓関係が「重要である」と考える日本人は6割を超え、韓国人では9割に迫る≫
日韓関係を「重要である」と考える日本人は65.3%と最も多い。一方、韓国人では、87.4%となり、9割近くになっている。これに対して、日韓関係が「重要ではない」と考える日本人は15.7%、韓国人は9.1%にすぎない。
≪韓国人は「日本」よりも「中国」に親近感を抱き、韓中関係がより重要は44.8%≫
日韓関係の重要性を、日中、韓中関係との比較で答えてもらうと、日本人では「どちらも同程度に重要である」が49.1%と最も多い。韓国人も46.6%と半数近くが「どちらも同程度に重要である」と回答しているが、「韓中関係がより重要」が44.8%と並んでいる。また、韓国と中国でどちらにより親近感を感じるか尋ねたところ、日本人は「どちらにも親近感を覚えない」が34.5%で最も多い。韓国人では「中国により親近感を覚える」が41.0%で最も多く、「日本により親近感を覚える」との回答は11.1%しかない。
政府間外交と軍事・安全保障
≪両国民ともに8割以上が日韓の首脳会談を必要だと回答、韓国人の約7割が「急ぐ必要はない」≫
日韓首脳会談に関しては、両国民ともに合わせると8割を超える人が必要だと考えている。ただ、「急ぐ必要はない」が日本人では43.5%、韓国人では69.9%であり、それぞれ最も多かった。
≪首脳会談で議論すべき課題は、日本では「広範な話し合い」、韓国では「歴史認識」と「領土」≫
首脳会談で議論すべき課題について、日本人では、「両国の関係改善に向けた広範な話し合い」が45.3%で最も多く、昨年の35.6%を大きく上回った。これに対し、韓国人では、「歴史認識問題と従軍慰安婦問題」が77.7%(昨年76.3%)で最も多く、これに「独島問題」が69.6%(昨年70.3%)で続き、「歴史認識」と「領土」を重視する姿勢が強い。
≪韓国人の約6割が「日本」が軍事的脅威と感じ、約4割が日韓間で軍事紛争が起こると予想している≫
日本人が、軍事的脅威と見なしている国は「北朝鮮」が71.6%で最多、「中国」が64.3%で続く。韓国人が考える軍事的脅威は「北朝鮮」が83.4%で最も多いが、それに続くのは「日本」の58.1%であり、昨年の46.3%から大幅に増加し、「中国」の36.8%(昨年39.6%)を引き離している。また、日韓間の軍事紛争の可能性について、日本人では「起こらないと思う」が65.7%で、軍事紛争を懸念する人は9.3%に満たない。一方、韓国でも「起こらないと思う」が48.2%で最も多いが、「数年以内に起こると思う」が5.3%、「将来的には起こると思う」が32.5%で、合計で37.8%が日本との軍事紛争を予想している。
その他の調査結果の詳細については、言論NPOのHPをご覧ください。
「日韓未来対話」「日韓共同世論調査」とは
「日韓未来対話」は、言論NPO東アジア研究院(EAI)が、日韓に民間対話の力が必要と考え韓国の対話に取り組むために、2013年5月に共同で創設したものです。日韓には、国民間に強い相互不信があり、基礎的な相互理解も不足しており、それが、日韓関係をさらに悪化させています。この状況を対話の力で乗り越えようと考え、世論調査で国民の認識の動向を絶えず把握しながら可能な限りオープンに議論するという、新しい対話を日韓の間で立ち上げ、両国の未来に向けた議論を始めました。
昨年はソウルで「第2回日韓未来対話」を開催し、政府間の困難を乗り越えるために民間が先んじて取り組むことなどを合意した「共同アピール」を発表しました。今年は6月21日(日)に「第3回日韓未来対話」を東京で開催いたします。
「第3回日韓共同世論調査」概要
日本側の世論調査は、全国の18歳以上の男女(高校生を除く)を対象に4月9日から4月30日、訪問留置回収法により実施され、有効回収標本数は1000です。回答者の最終学歴は高校卒が45.5%、短大・高専卒が18.3%、大学卒が23.2%、大学院卒が2.1%でした。これに対して、韓国側の世論調査は、全国の19歳以上の男女を対象に、4月17日から5月8日の間で実施され、有効回収標本は1010で、調査員による対面式聴取法によって行われました。
なお、この世論調査と別に、言論NPO及び東アジア研究院は日韓の有識者へのアンケート調査を4月下旬から5月中旬にかけて両国国内で実施しました。日本側は、過去に言論NPOが行った議論活動や調査に参加していただいた国内の有識者など約6000人に対して、世論調査から抜粋した19問の質問状を送付し、うち634人から回答を得ました。
韓国側も、約5000人の有識者に日本と同じく、世論調査から抜粋した19問のアンケートをメールで送付し、うち310人から回答を得ました。
言論NPOとは
言論NPOは、「健全な社会には、当事者意識を持った議論や、未来に向かう真剣な議論の舞台が必要」との思いから、2001年に設立された、独立、中立、非営利のシンクタンクです。言論NPOは、議論の力で、「強い民主主義」と「強い市民社会」をつくり出すことをめざし有権者が政治や政策を判断し、民主政治を機能させるために質の高い議論づくりや政策評価に取り組んでいます。また、言論NPOが行う議論はアジアにも広がっており、中国との間では2005年より「東京-北京フォーラム」を10回開催しており、ハイレベルの民間対話を実現しています。 更に、2012年3月には米国外交問題評議会(CFR)が設立した国際シンクタンク会議カウンシル・オブ・カウンシルズ(CoC)の常設メンバーに選出され、世界の課題に対して発信を行っています。
東アジア研究院(EAI, East Asia Institute)
地域が抱える問題について政策提言を行うことを目的に、独立シンクタンクとして創設しました。研究者セミナー、フォーラム、教育プログラム、そして多様な出版物を通じて影響力のある成果を生み出しています。東アジア研究院の調査活動は、外交安全保障プログラム、ガバナンス研究プログラムの二本柱から成り、これらのプログラムが5つの研究センターよって行われています。また、研究タスクフォースを用いて、喫緊した重要な問題にも取り組んでいます。卓越した研究者と政策立案者が協働し、東アジア研究院は革新的で政策論議を反映した研究成果を想像する中心に立っています。韓国で卓越した研究所の一つとして、米国、中国、台湾、その他多くの国々との共同研究を通じ、北東アジアにおける知識ネットワークを創造しています。
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