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言論NPOと中国国際出版集団は、第11回日中共同世論調査の結果を公表しました
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認定NPO法人言論NPO(代表:工藤泰志)と中国国際出版集団(総裁:周明偉)は、2015年10月24日・25日に開催する「第11回東京-北京フォーラム」に先立ち、「第11回日中共同世論調査の結果」を、北京で公表いたしました。
今年実施した日中の共同世論調査から、両国における相手国に対する印象は悪化のピークを脱しつつある一方で、両国関係に関する認識では、特に中国において、改善に足踏みがみられました。この背景には、直接交流の度合いが高まっている一方で、戦後70年に関連して中国国内で厳しい議論が行われていたことがあると考えられます。また、日中の領土問題に関しては両国内で落ち着いた見方が増えている一方で、日本とアメリカの安全保障上の連携が進む中、中国国内で日本に対する脅威がアメリカを上回ったことがわかりました。さらに、アジアの将来のために目指すべき価値観について、両国民ともに「平和」を最も重視していることがわかりました。
この調査は、2005年から毎年日中の主催者が共同で行っているもので、今年は8月から9月にかけて日本全国と中国では北京、上海、成都など10都市で実施され、日本では1000人、中国では1570人の回答を集計し、分析しました。
なお、この調査結果を踏まえ、言論NPOと中国国際出版集団は共同で「第11回東京-北京フォーラム」を10月24日~25日に北京・中国大飯店で開催します。両国の有識者が、国民間の感情対立をどのように乗り越えることができるか、安全保障上の問題をどうするかなど、中国経済の構造改革や課題をどうするかなど、日中間の課題について解決に向けて公開の場で議論を行います。
第11回日中共同世論調査結果
▼相手国に対する「良くない印象」は、両国ともに悪化のピークを脱し、また、日本に「良い印象」を持っている中国人は昨年から10ポイント増加
日本人の中国に対する印象は「良くない」は依然として高水準だが、最も悪かった昨年(93.0%)よりはやや改善し、88.8%となった。中国人の日本に対する印象は、「良くない印象」が昨年の86.8%から78.3%へと改善し、8割を切った。特に、最も悪かった2013年(92.8%)から見ると14ポイントも改善している。さらに、「良い印象」(「どちらかといえば良い印象」を含む)を持っている中国人は、昨年の11.3%から今年は21.4%と約10ポイント増加している。
▼現在の日中関係を「悪い」と判断している日本人は昨年から10ポイント以上大幅に改善している。中国人では、「悪い」という認識は最悪のピークは脱したが、昨年からは改善が止まっている
現在の日中関係を「悪い」と判断している日本人は71.9%だが、昨年の83.4%からは10ポイント以上大幅に改善している。中国人では、「悪い」という判断が67.2%で、最も悪かった2013年(90.3%)からは改善している。
今後の日中関係の見通しについては、日本人では、「変わらない」という見方が42.5%(昨年34.7%)で昨年同様最も多いが、今後も「悪くなっていく」と考えている人は、昨年の36.8%から24.7%へと大幅に減少した。さらに、「良くなっていく」との見方も、昨年の8.0%から12.7%に増加しているなど、楽観的な見方が出始めている。中国人でも、「悪くなっていく」が昨年の49.8%から41.1%へと減少している。ただ、「良くなっていく」との見方は増えておらず、中国人は日本人ほど日中関係の改善についてまだ確信を持つことができていない。
▼中国の中で日本と聞いて「南京大虐殺」を思い浮かべる人が大幅に増加し、再び「歴史」認識がクローズアップされている
中国人が日本について「思い浮かべるもの」は、「釣魚島」が50.6%(昨年46.6%)で、昨年と同様に最も多かった。「南京大虐殺」は、昨年と同様に2番目だが、35.5%から47.9%へと大幅に増加し、再び歴史認識がクローズアップされている。ただ、「桜」(35.0%、昨年は28.2%)など、政治的な問題に関係しないものの中にも増加傾向は見られる。
また、日中関係と歴史問題についての設問では、中国人では「歴史問題が解決しなければ、中日関係は発展しない」と考える人が、昨年の31.4%から大きく増加して47.0%と半数近くになっている。それに伴い、昨年34.1%で最も多かった「中国と日本の関係が発展するにつれ、歴史問題は徐々に解決する」という楽観的な見方は、7ポイント減少して27.6%になるなど、日本とは逆に歴史問題の解決を重視する見方が増えている。
▼日中関係と対韓関係の重要性の比較では、日本人では「日韓関係がより重要」と考える人が減少し、1割に満たない。一方、中国人では「中韓関係がより重要」と考える人が3割を超えている
日中関係と日韓関係の重要性の比較では、日本人の54.3%(昨年47.0%)が「どちらも同程度に重要」と回答している。「日中関係がより重要」は23.5%と昨年の15.6%から増加したが、「日韓関係がより重要」は6.3%と昨年の12.4%から減少している。
中国人でも、「どちらも同程度に重要」との見方が43.2%(昨年43.5%)で最も多いが、「中韓関係がより重要」がそれに続き、35.5%(昨年33.3%)となり、「中日関係がより重要」の9.0%(昨年6.5%)を大きく上回っている。
▼日本と中国はそれぞれ相手国に対して最も強い軍事的な脅威を感じている。特に、中国にとっては「日本」が「米国」を抜いて最多となった
日本人の68.3%が、中国人の60.3%が、自国にとって軍事的な脅威だと感じる国・地域が「ある」と答えている。「ある」と答えた人に対してその具体的な国・地域を尋ねたところ、日本人では「北朝鮮」が75.0%で最も多く、これに「中国」が68.1%で続き、この2つが突出している。中国人では、「日本」が81.8%で最も多く、昨年最多だった「米国」(73.8%)を抜いた。
▼領土問題を巡る解決方法について、中国人では「両国間ですみやかに交渉して平和的解決を目指す」が昨年から10ポイント以上増加
日本人では、日中両国の領土をめぐる対立の解決方法について、「両国間ですみやかに交渉して平和的解決を目指す」が46.2%(昨年48.4%)で昨年同様最も多い。これに対して中国人では、「領土を守るため、中国側の実質的なコントロールを強化すべき」との回答が58.2%で最も多いが、昨年の63.7%からは減少している。「両国間ですみやかに交渉して平和的解決を目指す」が、昨年の32.6%から43.6%へと10ポイント以上増加している。
また、尖閣諸島をめぐる領土の対立を契機として、日中間で軍事紛争が勃発する可能性について、中国人では「将来的には起こる」と「数年以内に起こる」の合計は、昨年の53.4%からは12ポイント減少し、逆に「起こらないと思う」との見方は昨年の27.4%から39.2%へと12ポイント増加している。
▼両国民の東アジアの将来のために目指すべき価値観は、「平和」と「協力発展」で一致
東アジアの将来のために目指すべき価値観として、日中両国民が最も重要だと考えているのは「平和」で、日本人では72.0%、中国人では59.6%とそれぞれ高い水準にある。続いて、日本人の41.6%、中国人の39.6%が「協力発展」が重要だと考えており、日中両国民
の認識は一致している。
調査結果の詳細については、言論NPOのHPをご覧ください。
日中共同世論調査とは
言論NPOと中国国際出版集団は、日中の両国民を対象とした共同世論調査を今年8月から9月にかけて実施した。この調査は、最も日中関係が深刻だった2005年から日中共同で毎年行われているものであり、今回は11回目となる。調査の目的は、日中両国民の相互理
解や相互認識の状況やその変化を継続的に把握することにある。
この調査は2005年から2014年まで10年間継続して実施してきたが、今後10年間調査を継続し、「東京-北京フォーラム」の議論の題材として取り上げることで、言論NPOと中国国際出版集団は合意している。
「第11回日中共同世論調査」概要
日本側の世論調査は、全国の18歳以上の男女(高校生を除く)を対象に9月4日から9月28日、訪問留置回収法により実施され、有効回収標本数は1000である。回答者の最終学歴は中学校以下が8.8%、高校卒が46.5%、短大・高専卒が17.6%、大学卒が23.0%、大学院卒が2.0%だった。これに対して、中国側の世論調査は、北京・上海・広州・成都・瀋陽・武漢・南京・西安・青島・鄭州の10都市で18歳以上の男女を対象に、8月21日から9月7日の間で実施され、有効回収標本は1570で、調査員による面接聴取法によって行われた。回答者の最終学歴は中学校以下が11.5%、高校・職業高校・専門学校卒が40.7%、大専卒が25.7%、大学卒が20.8%、大学院卒が1.2%だった。
なお、この調査と別に、言論NPOと中国国際出版集団は、有識者へのアンケート調査を世論調査と同じ内容で実施した。日本では、これまで言論NPOが行った議論活動や調査に参加していただいた国内の企業経営者、学者、メディア関係者、公務員など約2000人に質問状を送付し、うち627人から回答をいただいた。回答者の最終学歴は、大学卒が67.5%、大学院卒が24.4%で合わせて91.9%となる。また、有識者は一般の日本人の傾向とは異なり、79.9%が中国への訪問経験があり、76.4%が、会話ができる中国人の知人を持っている。
中国では、零点研究コンサルティンググループが、これまでのプログラムや、顧客との繋がりを通して、企業関係者、政府関係者、メディア関係者、専門家、公益団体関係者からなる専門家リストを有しているため、そこからサンプルリストを作った。8月20日から9月24日までの間に調査を行い、400人から回答を得て、その回答内容を中国有識者として分析した。
言論NPOとは
言論NPOは、「健全な社会には、当事者意識を持った議論や、未来に向かう真剣な議論の舞台が必要」との思いから、2001年に設立された、独立、中立、非営利のシンクタンクです。言論NPOは、議論の力で、「強い民主主義」と「強い市民社会」をつくり出すことをめざし有権者が政治や政策を判断し、民主政治を機能させるために質の高い議論づくりや政策評価に取り組んでいます。
また、民間外交を担うトラック2として、私たちが行う議論はアジアにも広がっており、特に中国との間では2005年より「東京-北京フォーラム」を過去10回開催しており、ハイレベルの民間対話を実現しています。
更に、2012年3月には米国外交問題評議会(CFR)が設立した国際シンクタンク会議カウンシル・オブ・カウンシルズ(CoC)の常設メンバーに選出されており、日本の課題のみならず、世界の課題に対して提言を行っています。
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+ 認定特定非営利活動法人 言論NPO 担当:吉崎洋夫(プレスオフィサー)
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