言論NPOは、日本の政治・民主主義に関する 世論調査結果を公表いたします

2018年8月02日

 非営利シンクタンク言論NPO(東京都中央区、代表:工藤泰志)は、2018年8月2日に「日本の政治・民主主義に関する世論調査」の結果を公表いたします。この世論調査は、言論NPOが、2018年5月19日から6月3日にかけて実施したもので、18歳以上の男女を対象に訪問方式で全国で無作為に行われたもので、1000人が回答しました。結果の要旨は以下の通りです。
 報道関係者の皆様には、この調査結果をぜひ報道いただきますよう、お願い申し上げます。
 ※詳細な結果は、言論NPOのホームページで15時頃公開します。


【今回の調査結果のポイント】
 多くの人が日本の民主主義や政治の在り方に強い疑問を持っていることが明らかに

 今回の調査結果から、日本の国民の3割以上が、日本の民主主義は機能していない、と考えており、現在の国会の議論の在り方、政党の機能、首相の姿勢を問う声が多くなっています。

 日本の将来を悲観視する声は昨年調査よりも高まっており、今年の調査では6割近くになりました。その8割を超える人がその理由を、「急速に進む高齢化と人口減少に有効な対策が提示されていない」と考えており、「安心できる社会保障や年金制度がない」とする人も6割を超えています。

 ところが、こうした日本が直面する課題の解決を日本の政党に「期待できない」と考える国民は6割近くにもなっています。

 また日本の民主主義を支える仕組みでは、有権者が選挙で選び、国民を代表するはずの「政党」や「国会」を「信頼していない」と回答する人は7割程度にもなっており、また「政府」や「首相」、そして「メディア」も半数以上が「信頼していない」と答えています。

 これに対して、6割を超える国民が最も「信頼している」と答えたのは、選挙とは無関係で実行力を持つ「自衛隊」や「警察」、さらには政治とは独立するはずの「司法・裁判所」となっています。


「日本の政治・民主主義に関する世論調査」の概要

 日本側調査は、全国の18歳以上の男女を対象に5月19日から6月3日まで、訪問留置回収法により実施され、有効回収標本数は1,000です。回答者の最終学歴は小・中学校卒が9.0%、高校卒が44.5、短大・高専卒が20.3%、大学卒が22.6%、大学院卒が1.5%でした。

【ご取材のお願い】
代表・工藤へのインタビューなどのご要請がありましたら、積極的に対応させて頂きます。


「日本の政治・民主主義に関する世論調査」結果

6割近くの日本人が日本の将来を「悲観的」に見ており、 その理由として、8割が高齢化と人口減少に有効な対策がないと回答

 今回の世論調査結果からは、日本人の57.3%と6割近くが自国の将来を「悲観的」に見ていることが明らかになりました。その割合は昨年に比べて9ポイント増加しています。

 将来に悲観的な理由として、最も多い回答は「急速に進む高齢化と人口減少に関して、有効な対策が提示されていないから」で、85.2%(昨年91%)と8割を超えて昨年同様突出している。

 昨年からの増加が目立ったのは、「安心できる社会保障制度や年金制度がないから」が24ポイント増、「政治家や政党自体に課題解決の能力を期待できないから」が23ポイント増となった。逆に、減少幅が大きかったのは、「中国の台頭や朝鮮半島の問題など先行きがみえないから」という回答で、昨年から13ポイント減少するなど、北東アジア情勢を懸念材料と考える人は減少している。


日本が直面している課題解決を政党に期待していない人が6割に迫り、
当選すること自体を目的化している政党と政治家の姿勢に対して厳しい目が向けられた

 そうした中、日本が直面している課題の解決を日本の政党に「期待できる」との回答は17.1%にとどまり、「期待できない」(59.0%)と考える人は6割に迫り、多くの人は日本の政党に期待していません。その理由として、「選挙に勝つことが自己目的化し、政治家が課題解決に真剣に向かい合っていない」(38.0%)と「政党が政策を軸にして集まっておらず、選挙に勝つための野合に過ぎない」(37.1%)を挙げる人が、それぞれ4割に迫る勢いで拮抗しており、当選すること自体を目的化している政党と政治家の姿勢に対して厳しい目が向けられている。また、「政党の選挙公約が形骸化し、国民に向かい合う政治が実現していない」も30.8%と3割を超えている。


日本の民主主義について、3割以上が「機能していない」と回答し、
「首相の姿勢」、「政党の機能不全」、「国会の議論の形骸化」を問う声が多い

 日本の民主主義が「機能している」と考えている日本人は43.2%(昨年43.3%)と4割程度にすぎない。これに対して「機能していない(「どちらかといえば」を含む)」が33.4%(昨年36.2%)と3割を超えている。

 民主主義が「機能していない」と考える理由で最も多いのは「首相の姿勢」の42.2%となり、以下、「政党の機能不全」(39.5%)、「国会の議論の形骸化」(34.4%)と続くなど、現在の政治のあり方を理由として挙げる人が多い。ただ、「選挙の低投票率」(32%)、「有権者の無関心さ」(28.1%)など、有権者側の姿勢を問うものも3割前後見られる。


「政党」「国会」「政府」に対する国民の信頼は2割台にとどまり、
逆に7割程度が「自衛隊」と「警察」を信頼している

 民主主義体制を支える機関の中で、「信頼している」との回答が最も多かったのは「自衛隊」(72.7%)で、2番目に信頼されているのが「警察」(67.1%)と実力組織が上位となり、「司法・裁判所」(65.7%)が続きます。

 これに対して、最も「信頼していない」との回答が多かったのは「政党」(71.2%、昨年64.1%)で、「国会」(67.4%、昨年55.9%)、「宗教団体・組織」(66.9%)、「政府」(61.2%)が続きます。さらに、健全な世論形成において大きな役割を期待される「メディア」(55.5%、昨年50.5%)についても「信頼していいない」との回答が多数となっています。


投票の義務化については、「望ましい」との回答が6割を超える

 日本における投票の義務化について、「望ましい」という回答は60.8%と6割を超え、「望ましくない」の17.9%を大きく上回り、日本人は概ね義務投票制を好意的に捉えているといえる。


約4割の日本人が、市民の主権者たる姿勢の回復が強靭な民主主義を作り出すと回答

 4割近くの日本人は、強靭な民主主義をつくり出すためには、エリート層ではなく、「市民が現状の課題に真剣に向かい合い、主権者としての姿勢を回復させること」(38.8%)と、まず市民自身の姿勢を問い直すべきだと考えている。「強靭な民主主義を作り出すことは難しい」は6%にすぎず、日本人は自らの努力によって民主主義を強靭なものとすることは十分に可能であると考えている。


半数近くは民主主義を望ましい政治体制と考えるが、確信を持てない層も半数存在する

 日本人の47.1%(昨年45.7%)と半数近くが「民主主義はどんなほかの政治形態より好ましい」と回答している。しかし、「一部の環境や状況によっては、非民主的な政治形態が存在しても構わない」という回答も17.1%(昨年18.9%)存在し、これと「どんな政治形態でも構わない」の5.1%(昨年3.1%)を合計すると、非民主的政治形態を容認する意見は2割を超える。さらに「わからない」の30.2%(昨年31.5%)も合わせると、民主主義に対して確信を持つことができていない人が半数を超えている。


民主主主義の世界の動向を楽観視する人は4割存在するが、一方で、同じく4割は判断しかねている

 現在の世界の民主主義の状況について、「民主主義における問題は頻出しているが民主主義自体を否定する大きな問題ではない」との見方が33.2%で最も多い。これと「一部の国・地域を除いて、世界の民主主義は磐石である」の10.1%を合計すると4割超が楽観的に見ていることになる。一方で、「わからない」という人も39.8%と、判断しかねている人も同程度存在している。

 これに対して悲観的な見方は、「ポピュリズムの台頭や、民主主義自体を否定したり、その機能が後退するなど民主主義は危機的状況にある」(6%)、「民主主義はほとんどの国で十分に機能しておらず、民主主義自体に懐疑的な見方が高まっている」(10.2%)の2つを合計しても16.2%と2割に満たない。


半数が問題を抱える民主主義の将来を楽観視しているが、3割が今後を判断しかねている

 民主主義の今後について、「問題は頻出しているが、民主主義自体を否定する大きな流れにはならない」の35.9%だった。そして、「民主主義に代わる仕組みはなく、民主主義は今後も世界の中心的な制度として機能する」という見方が17.7%であり、合計すると民主主義という政治システムが今後も存在し続けると考えている人は、53.6%と半数を超える。

 これに対し、「先進国でもポピュリズムが一般化し、民主主義は信頼を失い退潮していく」(3.1%)、「民主主義は魅力的な仕組みではなくなっており、権威主義など民主主義を否定する仕組みにとって代わられる」(2.6%)という民主主義の衰退・滅亡を予測する見方はそれぞれ1割に満たない。「民主主義はそもそも完成した仕組みではなく、強靭なものにするため改革が行われる」と何らかの調整が入ることを予測する見方も5.2%にとどまっている。

 もっとも、「わからない」と判断しかねている人が34.7%いることには注意を要する。


約4割の日本人が、市民の主権者たる姿勢の回復が強靭な民主主義を作り出すと回答

 4割近くの日本人は、強靭な民主主義をつくり出すためには、エリート層ではなく、「市民が現状の課題に真剣に向かい合い、主権者としての姿勢を回復させること」(38.8%)と、まず市民自身の姿勢を問い直すべきだと考えている。「強靭な民主主義を作り出すことは難しい」は6%にすぎず、日本人は自らの努力によって民主主義を強靭なものとすることは十分に可能であると考えている。


【言論NPOとは】

 言論NPOは、「健全な社会には、当事者意識を持った議論や、未来に向かう真剣な議論の舞台が必要」との思いから、2001年に設立された、独立、中立、非営利のネットワーク型シンクタンクです。2005年に発足した「東京-北京フォーラム」は、日中間で唯一のハイレベル民間対話のプラットフォームとして13年間継続しています。また、2012年には、米国外交問題評議会が設立した世界25ヵ国のシンクタンク会議に日本から選出され、グローバルイシューに対する日本の意見を発信しています。この他、国内では毎年政権の実績評価の実施や選挙時の主要政党の公約評価、日本やアジアの民主主義のあり方を考える議論や、北東アジアの平和構築に向けた民間対話などに取り組んでいます。

 また、2017年には世界10カ国のシンクタンクを東京に集め、東京を舞台に世界の課題に関する議論を行う「東京会議」を立ち上げ、会議での議論の内容をG7議長国と日本政府に提案する仕組みをつくり出しました。


本件に関するお問い合わせ:
言論NPO事務局 宮浦・和田
TEL:03-3527-3972 FAX:03-6810-8729 MAIL:info@genron-npo.net