非営利シンクタンク言論NPO(東京都中央区、代表:工藤泰志)は、7月13日から、日本の民主主義に対する信頼を立て直すため、議論を再開します。
コロナウイルスの感染の脅威はまだ続いており、世界でも劇的な収束が期待できないことがはっきりしています。
東京ではコロナウイルスの感染者数が200人を超え、第二波の様相を呈する中、今回のコロナウイルスの深刻な影響は、日本政府自体の危機管理の在り方や、民主主義下における政府の信頼の問題を浮き彫りにしました。
そこで、私たちは議論の再開にあたって、日本の危機管理の問題から議論を始めます。日本が将来に向けた困難を解決するためには、危機感を市民と政治が共有できるかにかかっていますが、言論NPOが実施した有識者調査結果では、政府に対する信頼は低下していることが明らかになっています。
言論NPOはこれから再開する議論を通じて、解決すべき様々な課題を明らかにし、その解決に多くに人が力を合わせていくための取り組みを始めます。
報道関係者の皆様には、ぜひとも私共が再開する議論にご期待いただくと同時に、ご取材いただければ幸いです。
なお、詳細な議論等の内容は、言論NPOのホームページをご覧ください。
議論の再開にあたって、代表の工藤がコメントを発表しました(抜粋)
コロナウイルスの感染の脅威はまだ続いており、当分、劇的な収束が期待できないことがはっきりしてきた。東京では自粛の解除後、感染者が急増しているが、回復はこうした危機を繰り返しながら、かなり長期化するだろう。これまでの多くの危機がそうだったように、コロナ後の世界はこれまでとは全く異なる世界を生み出す可能性がある。
それでも、私がその行方を期待しているのは、世界のほとんどの人がこの危機を実際に経験し、家族や友人の命を心配し、社会を持続させる多くの仕組みや人たちの大切さを感じたからである。
この日本も未来に向けて変われるのではないか。そうした手ごたえを感じているのは私だけではあるまい。もちろん、そのためには相当の努力が必要である。今回のパンデミックだけではなく、異常気象や社会的な困難に私たちはこれからも断続的に直面するだろう。
しかし、もはやそれは、他人事ではなく、無関心を決め込むことはできないのである。
再開にあたって公開したコンテンツ1
「コロナ危機の世界史的な意味と世界の今後をどう見るか」と題して、五百旗頭真(ひょうご震災記念21世紀研究機構理事長)、古城佳子(青山学院大学教授)、下斗米伸夫(神奈川大学特別招聘教授)、納家政嗣(上智大学国際関係研究所客員研究員)の4氏が議論
今回のコロナ対策における危機管理について、民主主義よりも強権的に動ける権威主義体制の方が有利だ、との見解に対しては、民主主義の弱点は危機が起きた瞬間に、権威主義体制のように大胆な対策はとれないが、政府が市民に信頼できる情報を提供し、市民との相互作用の中で危機に対応する民主主義国は政府の信頼を回復していること、さらに科学的な専門家との知見と政府が連携する民主主義の成熟さも評価すべきとの見方が示されました。
また、今回のコロナ危機において、国際協調そのものの限界が言われる中で参加者は国際協調こそが必要との見解で一致。しかし、現状ではWHO等の国際機関の在り方、さらに各国の国内格差などから生じる国内の「分断」から国際協調が非常に困難な状況に陥っており、今後、新しい国際協力の仕組みを模索していく必要があるとの認識が示されました。
再開にあたって公開したコンテンツ2
「危機管理の文化」の不在が初動の遅れを招いたとして、政府の新型コロナウイルス感染症対策専門家会議で副座長を務めた尾身茂氏と、1987年から95年まで官房副長官を務め、阪神大震災で危機管理対応に当たった石原信雄氏が政府のコロナ対応を総括しました
言論NPOが実施したインタビューの中で、尾身氏は、「リスクコミュニケーションや危機管理を皆で醸成していく文化が、日本にはなかった」と総括。感染症対策の要諦として、「平時からの不断の準備」と「初期対応のスピード」を挙げた上で、今回のコロナ対応を振り返り、政府の危機管理体制の整備や地方、専門家との連携が前もって実行されない中で、政府はダイヤモンドプリンス号に忙殺され、専門家もかつてのインフルエンザと異なる感染傾向を持つ新しい脅威に、危機感から「半歩進んで」向かうしかなかったなどと述べました。
石原氏は、現在では改善されているとしながらも、当初は政府全体のコロナウイルスの危険性に対する認識が十分でなかったことが初動の遅れにつながったとの見方を示し、またその後の対応を見ても内閣が一体として取り組んでいるようには見えなかった、と内閣の危機管理体制にも疑問を提起しました。
再開にあたって公開したコンテンツ3
有識者アンケートでは65.8%の人が「日本政府の危機管理対応」を評価せず
言論NPOが7月13日に公表した有識者調査「コロナ禍の世界と日本」では、今回の日本政府の危機管理対応について、6割を超える人が「評価しない」と回答しました。その理由としては、「首相と首相側近の思いつきの行動やそれに対する忖度が目立ち、省庁間との協力関係が十分に機能しなかったこと」という回答が半数近くに上っています。
さらに今回のコロナ対応の評価について、安倍政権に対する否定的な見方が7割を超え、日本政府に対する信頼についても6割を超える人が「信頼していない」と回答するなど、厳しい見方が多数となりました。
再開にあたって公開したコンテンツ4
「第16回 東京-北京フォーラム」は11月下旬にテレビ会議を通じての開催で中国側と合意
言論NPOは、これまで15回にわたって開催してきた「東京-北京フォーラム」を、11月末をめどに開催することで、中国側の主催者である中国国際出版集団(外文局)と合意しました。
コロナウイルスによるパンデミックが世界中に大きな影響を与える中、世界の先行きに不安が高まり、アジアでも中国の様々な行動が議論を呼んでいます。こうした状況だからこそ、両国がまず民間を舞台に率直に議論し、お互いの相互理解を進め、世界が協調して対応に当たらなければならない大きな課題の解決に向けて対話を行う予定で、今回はテレビ会議を導入し開催予定です。
なお、7月16日には日中両国の実行委員長などが参加する事前協議が行われ、開催に向けた動きが加速します。フォーラムの準備の状況は、適宜、言論NPOのホームページで発信していきます。
今後の議論の予定
以下の議論は、全てWeb座談会として公開します。お申し込みは、言論NPOのホームページからお願いいたします。なお、メディアの皆様からも参加費を頂戴いたします。あらかじめご了承ください。
テーマ:「有識者調査 ―政府の信頼はなぜ低下したのか」
出演者:岩井奉信(日本大学法学部教授)
内山融(東京大学大学院総合文化研究科教授)
吉田徹(北海道大学大学院法学研究科教授) ⇒ 詳細・お申込みはこちら
テーマ:「アジアでの行動を加速させた中国とどう付き合うべきか」
出演者:梶谷懐(神戸大学大学院経済学研究科教授)
倉田徹(立教大学法学部政治学科教授)
高原明生(東京大学公共政策大学院教授) ⇒ 詳細・お申込みはこちら
テーマ:「アメリカ大統領選はバイデンで決まったのか」
出演者:石原亮
(みずほ銀行 ワシントンD.C.駐在員事務所所長)
中山俊宏(應義塾大学総合政策学部教授)
前嶋和弘(上智大学総合グローバル学部教授) ⇒ 詳細・お申込みはこちら
【言論NPOとは】
言論NPOは、「健全な社会には、当事者意識を持った議論や、未来に向かう真剣な議論の舞台が必要」との思いから、2001年に設立された、独立、中立、非営利のネットワーク型シンクタンクです。2012年から米国外交問題評議会が主催する世界25ヵ国のシンクタンク会議に日本を代表して参加し、世界の課題に対する日本の主張を発信しています。このほか、国内では毎年政権の実績評価の実施や選挙時の主要政党の公約評価、日本やアジアの民主主義のあり方を考える議論や、北東アジアの平和構築に向けた民間対話などに取り組んでいます。