核問題に関する日本を代表する専門家三氏は、今の世界は核不拡散、核軍縮、軍備管理の動きが停滞どころか逆行し、むしろ、大国間の対立や地域の競争の中で通常の軍事力だけではなく、核兵器が使われるリスクもかつてよりも高まっている、と警鐘を鳴らします。
言論NPOがこの1月から開始している「国際協調の現場を点検する―核問題」の作業の中で3氏が強調したもので、一橋大学法学研究科教授の秋山信将氏、前軍縮会議特命全権大使の髙見澤將林氏、日本国際問題研究所主任研究員の戸崎洋史氏が参加し、司会は言論NPOの工藤泰志が務めました。
3氏は、世界の核問題が逆行している理由として、国際社会の分断と大国間の協調体制の揺らぎが核問題にも影響し、核軍縮は大国間の対立や戦略的な競争が激しくなるもとで進める環境になく、核保有国がリーダーシップを取りづらいこと、すでに核不拡散のNPT条約のプラットフォーム自体に対立があり合意形成は難しくなっており、行き詰まる中で核兵器禁止条約が成立し、保有国とその同盟国、この条約の推進国間で亀裂が深まっている、などを挙げています。
さらに、トランプ政権のアプローチが失敗に終わった北朝鮮の核問題や、イランの核合意問題も含めて、核拡散の問題もそれぞれが深刻な課題だが、バイデン政権になったから急に回復する状況ではない、との意見も出されました。
バイデン政権がまず取り組めることは二国間に関わることで、「そこに力に注がないと全体が動かず、小さな成功を作ることで、全体の動きに繋げて行くしかない」という見方も三氏はほぼ共通しています。その一つの試金石になるのが、2月に期限を迎える新STARTの延長やイランの核合意への米国の復帰で、そこで米国がどのような姿勢を示すかが、今後の展開を見る上でも重要との見方が示されました。
この核問題では、今や核保有国となった北朝鮮と米国の再交渉や中国をどのように核軍縮に取り組んでいくのかなど、様々な問題があり、会議ではそれらも大きな議論になりました。バイデン政権は現時点では、北朝鮮には優先度を置いているようには見えておらず、こうした問題が動き出すのはかなり時間がかかるという点で3氏は一致しています。
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