地球環境問題を様々な角度から見ている専門家3氏は、アメリカのバイデン新政権のパリ協定への復帰、さらに昨年、日本、中国、韓国など主要国が2050年前後のゼロカーボン達成目標を掲げたことについて一定の評価をしたものの、すでに世界は産業革命以前よりも1.2度上昇し、このままの政策ではパリ協定の目標の1.5度に抑えるという目標は難しい、との見解で一致しました。
さらに、世界各地で起こっている異常気象について、まだ「序の口」であり、さらなる異常気象へのトリガーが引かれる前に、温暖化を止めることが重要であり、気候変動の問題において、今、世界は非常に大きな岐路にあるとの見方が示されました
これは、言論NPOが1月から開始している「国際協調の現場を見る」と題して行われた座談会で示されたもので、地球環境戦略研究機関都市タスクフォースプログラムディレクターの藤野純一氏、国立環境研究所社会環境システム研究センター長の亀山康子氏、国立環境研究所地球環境研究センター副研究センター長の江守正多氏が参加し、司会は言論NPO代表の工藤泰志が務めました。
パリ協定で設定された目標である1.5度の気温上昇の抑制達成は現時点では不可能だとする要因として、目標達成は毎年CO2排出量を7%削減していく必要があり、コロナ禍で人の移動や、経済活動が抑制された結果、2020年はこの目標を達成したものの、毎年、この排出量を削減していかなければいけないことや、今までの政策の単純な延長では難しいため、ゼロエミッションの住居や、ビル、車等に移行する必要があるにも関わらず、産業構造の大転換は直ぐには難しいこと、また先進国・発展途上国が共に達成する必要がありながら、これから経済発展を目指し電力需要が増えている発展途上国では火力発電所の建設が進められ、発展途上国はパリ協定の目標達成に向けたバスにすら乗れていないことなど、が挙げられました。
3氏は、既に起こっている異常気象への危機対応について、さらなる異常気象へのトリガーが引かれる前に、温暖化を止めることが重要だと指摘。今、世界各地で起きている異常気象はまだ「序の口」であり、このまま温暖化が進行していくと、過去最高という記録的な現象が頻繁に起こるなど、今以上のトリガーが引かれる状況が迫っている、世界はその手前で温暖化を止められるかどうかの大きな岐路に立っている、と警鐘を鳴らしました。
さらに、バイデン政権下では排出量削減だけではなく、気候変動の影響を安全保障の問題(climate security)として対応し始めているが、日本ではそうした議論があまり見らないため、今後、国民をいかに議論に巻き込んでいくことが重要だとの認識を示しました。
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