東京会議のイベントとして、WORLDシンクタンクD-10(WTD10)会議「世界の民主主義国は国際協調と自由秩序の修復でどう連携すべきか」が開催されました。
米国のバイデン政権は、「国際協調と民主主義の修復を図る」としていますが、その修復は本当に可能なのか、可能とするためには世界の民主主義国はどのような努力が求められているのかについて、このセッションでは議論が行われました。
今回のコロナ危機は世界の国際協調の重要なテストとなったものの、その結果は世界が国際協調を失いつつあるということであり、その修復を世界は期待するが、修復ができるか現時点で答えを出すことは難しい、という点で合意しました。
その背景には米中対立や米国と欧州の協調問題があり、利害が相反する課題では協調できる分野は限られること、その中でリーダーシップを発揮できる国はなく、国家を軸とした国連システム自体の限界が明白になっている、と多くのシンクタンクは指摘します。
ただ、今後の国際協調を進める上で国家だけではなく、個人、企業、地域といったセクターに期待するする見方や、国際協調の象徴である国連を使いこなす努力を指摘する声、国際協調に地政学的な対立を持ち込むことへの反対の声も相次ぎました。
民主主義の後退が深刻化していることは、参加したシンクタンクの共通の認識です。
世界の多くの民主主義国で制度や原理が信頼を失い始めていることが指摘され、またそうした原理への攻撃が続いていることも報告されました。ただ、先進国の民主主義国は魅力を失っているが、途上国は民主主義や人権保障、法の支配を求めているとし、「民主主義を魅力的に見えるように努力することは民主主義国の責務」との意見も出されました。
「民主主義の後退は放置すべきではない」が、この会議での10カ国のシンクタンクのご合意です。これに対してはそれぞれの国が自国の民主主義の修復への努力を始めることと同時に、民主主義国の競争力の問題として民主主義の価値への攻撃に連携して対応するなどの、意見が出されました。
会議には、アメリカからジェームズ・リンゼイ(外交問題評議会(CFR)シニアバイスプレジデント)、ドイツからフォルカー・ペルテス-(国連スーダン特別代表・国連スーダン統合移行支援ミッション代表、ドイツ国際政治安全保障研究所(SWP)ノンレジデント・シニアフェロー)、インドからサンジョイ・ジョッシ(オブザーバー研究財団(ORF)-理事長)、フランスからトマ・ゴマール(フランス国際関係研究所(IFRI)所長)、イギリスからジョン・ニルソン=ライト(英王立国際問題研究所シニアフェロー)、イタリアはエットーレ・グレコ(イタリア国際問題研究所(IAI)副理事長)、カナダからロヒントン・メドーラ(国際ガバナンス・イノベーション(CIGI)-総裁)、ブラジルからカルロス・イヴァン・シモンセン・レアル(ジェトゥリオ・ヴァルガス財団(FGV)-総裁)、シンガポールからオン・ケンヨン(シンガポール・ラジャトナム国際研究院(RSIS)所長、副理事長)、日本からは工藤泰志(言論NPO代表)の10氏が出席し、工藤が司会を務めました。