「東京会議2021」の最後のセッションは、世界で未だ収束の出口が見えない新型コロナウイルスの問題について、「人類の危機に世界はなぜ対応を間違えたのか」をテーマに、日本、米国、欧州、中国の世界保健機関(WHO)に勤務経験がある感染症の専門家など5氏(1名はビデオメッセージ)が参加し、今回の新型コロナウイルスの被害が世界的に拡大した理由や、次の危機を防ぐためにどういう取り組みが必要か等について突っ込んだ議論が行われました。司会は、言論NPO代表の工藤泰志が務めました。
まず、今回の対応については、国際的な連帯は存在せずに、多くの国がそれぞれの対応を行っただけだとし、WHO自体も、世界各国から情報を収集し、教訓を共有し、有効な対策に対するコーディネート役を求められていたにも関わらず、こうした本来期待された役割を果たしてこなかった、と厳しい見方が出されました。
また、2003年のSARS後、感染症に対する体制や能力を構築すべき責任を負った各国で、多くの国がそれに取り組まず、その脆弱な構造の中でコロナ感染が世界を襲ったこと、さらに先進民主主義国でも政治リーダーが感染症の脅威を過小評価し、渡航制限に頼るだけで国内の体制づくりや感染をいかに抑えるかに頭が向かっていなかったこと、病院の病床や医師、看護師、検査技師などの医療提供体制が十分ではないところも多く、それらの連携も十分ではなかったこと、専門家もメディアでものを言うだけしか役割を果たせなかったなど国内の取り組みに関しても厳しい評価が下されました。
ただ、人類の脅威である感染症では、国際協調が唯一の手段で、各国が連帯していくことが重要であり、それは今からでも遅くないとの認識が出席者から示されました。
さらにWHOの機能強化でもWHOから政治的な影響力を排除していくような改革が必要だとの意見が出されました。