政権誕生後5カ月になる米国のバイデン政権は、前トランプと政権とやり方が異なるが、基本的に「アメリカファースト」路線が継続しており、来年の中間選挙を意識していることで、中間層の利益につながる外交を取るために、自由貿易への復帰は期待できない、と米国の状況に詳しい3氏が見ていることが、言論NPOが行った座談会で明らかになりました。
また、中国への強硬な対抗姿勢は、米国内の世論の反中意識の高まりに支えられているとの見方で3氏は一致していますが、米政権の対中政策が強硬の一本調子と考えることは危険で、米国も是々非々の対応になるとの意見も出されました。
この座談会は、バイデン政権の実像に関して5月末に行われたもので、中曽根平和研究所理事長で駐米大使も務めた藤崎一郎氏、上智大学総合グローバル学部教授の前嶋和弘氏、ノーステキサス大学准教授の前田耕氏の三氏が出席し、司会は言論NPO代表の工藤泰志が務めました。
議論の中ではまず藤崎氏が、トランプ政権とはやり方は異なるものの、バイデン政権でも依然として「アメリカファースト」路線が継続していると指摘。前嶋氏も、国際協調への復帰などの懸案も世論の支持なくしては取り組めないため、「ミドルクラスのための外交」を掲げ、まずは米国人の職を取り戻すためのアメリカファースト外交を展開していると分析しました。
対中外交については、トランプ前政権と同様に、バイデン政権も中国に対して強硬な姿勢で臨んでいることについて、その背景には人権問題を重視するリベラルな民主党支持層の反中意識の高まりがあると前田氏が分析。もっとも藤崎氏は、「米国は中国に是々非々で臨んでおり、対中政策が一本調子だとは思ってはいけない」とし、前嶋氏も米中のデカップリングは本格化するとしつつ、すべてをデカップリングするのではなく、分野ごとの是々非々の対応になる、との見方を示しました。
バイデン大統領が掲げる国際協調への復帰については、米国社会の分断がいまだ著しい中では中間選挙を意識せざるを得ないために、やはり国内から仕事を奪うような取り組み、とりわけ自由貿易への復帰は期待できないとの見方が各氏から相次ぎました。
中でも藤崎氏は、こうした状況を見て「バイデン政権のグローバリズムとは、自分たちの得になるグローバリズム」だと表現しました。
最後に、日本に求められる対応について議論が及ぶと、前田氏は、日本は「米国から安定したパートナーだと好意的だと見られている」とし、大使人事に一喜一憂する必要はないと指摘。前嶋氏は、米国が自由主義的国際秩序に戻ってくるにしても、そのベクトルの勢いは弱まるとし、日本が「民主主義国のリーダーとして、米国の負担を肩代わりする必要が出てくる」と語ると、藤崎氏は、「日本は人権問題で完全に米国と歩調を合わせず、自分たちのやり方で行えばいい」と提言しました。
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