米外交問題評議会(CFR)掲載コメント G7サミット:成果の一方で不確実性も

2024年6月21日

 米・外交問題評議会(CFR)のウェブサイトに、イタリアのプーリアで開かれたG7サミットについての代表・工藤のコメントが掲載されました。



 私が、イタリア・サミットに期待したのは、G7がルールに基づく国際秩序の擁護者であり、平和秩序の修復の担い手であることへの世界の期待を回復できるかという点である。

 今回のサミットを評価できるのは、この目標に向け、イタリア・サミットは真正面から取り組んだように見えたからだ。 議長国・イタリアはアフリカの開発や難民問題の解決を主導し、ウクライナ支援では、G7がロシアの凍結資産の運用益をもとにした融資を年末までに行うことを決定した。ガザではバイデン大統領の即時停戦などの提案を支持し、2国家解決につなげる和平につなげる道筋で足並みを揃えている。これまでにない中身の伴った行動である。戦争の終結などでG7の結束が、これまで以上に示されたことは間違いない。

 だが、西側の行動をダブルスタンダードだと批判する世界の声に対し、今回のG7がどれだけ意味あるメッセージとなったかはまだ疑わしい。ガザ紛争でもイスラエルはラファ侵攻をまだ諦めたわけではないが、イスラエルへの批判のトーンは弱い。ウクライナ戦争では対ロシアへの対応で中国の協力を求めながら、中国の過剰生産能力の問題で対抗色を強めている。国際的なルールを侵害する中国への懸念は広がっているが、それに制裁関税で対応する欧米の動きにG7としてどう対応するかは、示されなかった。

 グローバルサウスの発言力が高まっているのは、過度の地政学対立が世界の協力を後退させているからだ。その対立と分断の構造は今回もより強化されたままだ。

 G7が主張する価値観は、単に西側の利益だけではなく、より普遍性を持っている。西側の価値に対してのグローバルサウスの国々からの共感がなければ、西側はその指導的な地位を回復できない。

 今回のサミットに出席した多くの首脳は国内の支持を失っており、次回は顔ぶれが一変する可能性もある。G7の復権と世界からの信頼回復は、今後、それぞれの国がルールに基づく秩序と国際協調の修復にどの程度本気で取り組むかにかかっている。それこそ、私たちシンクタンクの役割だと信じたい。

言論NPO代表 工藤泰志
原文は、米外交問題評議会のウェブサイトにて公開しています。



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