「Do-Tank」の実現に向けて、大きく前進した「東京会議2025」ー「東京会議2025」夕食会報告

2025年3月04日

⇒「東京会議2025」これまでの記事

 3月3日に開幕した「東京会議2025」。2日目の3月4日午後に開催された公開フォーラム終了後、「東京会議」評議会主催の歓迎夕食会が催されました。

 司会は、言論NPO国際部長で、「東京会議」ディレクターを務める西村友穂が務めました。


206A4017.jpg

 冒頭、評議会を代表して、日本生命保険相互会社代表取締役社長・社長執行役員の清水博氏が開会の挨拶を行いました。まず清水氏は、2017年から毎年開催されている「東京会議」が創設以来、世界中から注目を集めていることに触れ、世界の人々が、互いの協力なくして未来を描くことが出来ないという局面にいること、そうした中で分断が進む世界を繋ぎ止める上で日本の役割への期待が一層高まっている証左だと指摘。その上で、「解決すべき課題が山積する昨今、民間企業が果たすべき役割の重要性も増しており、社会的課題の解決に向けて、一層注力していく必要がある」と力強く語りました。

 そして、清水氏は、「世界は『相互協力・相互理解』が必要な局面でありながら、多くくの課題で力を合わせられず、各地での対立も深まっている状況にある」と指摘した上で、評議会としても、民主主義の国にどのような努力が求められているかというテーマについて、この日本で真剣な議論が行われたことを、極めて重要な成果だと述べ、今後の「東京会議」への期待を示しました。


206A4038.jpg

 続いて、乾杯の挨拶に登壇した住友商事株式会社取締役会長の兵頭誠之氏は、東京での降雪の影響も踏まえ、自身の発言を短縮すると語り、今回の「東京会議2025」に参加した世界10カ国のシンクタンクの代表、ゲストスピーカーとして訪日した国際機関などのパネリストに謝意を示すと同時に、夕食会に参加している評議会のメンバーを紹介しました。その上で、「国際社会が非常に厳しい状況に向かう中で、「東京会議」が世界の未来にとって、非常に大きな役割を果たし、さらに意味あるものに発展させていく覚悟を、皆さんと共有する」と今後の「東京会議」の発展に決意を示し、乾杯の発声を行いました。


206A4098.jpg

 その後、国会の予算採決の関係で参加できなかった石破茂・内閣総理大臣が、今回の「東京会議2025」にビデオメッセージを寄せました。その中で石破氏は、日本は80年前の敗戦以降、対話や協力を重んじ、法の支配に基づく自由で開かれた国際秩序のもとに多様な国が平和のもとに共存共栄する世界を目指すために、「2度と戦争の惨禍を繰り返さないと決意をし、ひたすらに平和国家としての道を歩み、国際社会にその役割を果たしてきた」と強調。そうした姿勢は国連創設の理念と通じるものがあるとしました。一方で、現在の国際情勢が、先人たちが国連創設に託してきた未来からはかけ離れているとの認識を示し、100年に一度ともいわれる歴史の岐路に立たつ今、国際社会の平和を守るために必要なこと、そうした中で、日本が果たすべき役割として、「抑止」「対話「改革」の3点について語りました。

 まず、石破総理は、「世界のパワーバランスが大きく変化する中で、力の不均衡による不安定を招かないためには、抑止が不可欠」との認識を示した上で、日本が「自らの能力を高めるとともに、日米同盟の更なる発展、同盟国・同志国との連携の拡大、深化」が必要だと強調しました。一方で、抑止力の強化には対話も欠かすことができないとし、「その国の歴史、文化、そして我が国との関わり、そういうことをきちんと真摯に探求し理解」した上で、各国との対話を重ね、相互信頼を深めていくとの姿勢を示しました。

 最後に、国連創設時と世界の様相が全く異なる状況に至った段階では、「新たな時代にふさわしい改革が必要だ」との見方を示した石破総理は、国際社会の現実を反映した安保理改革等を含め、日本自身が求められている責務を果たす能力があるのか、と問いかけつつも、機能する国連の実現に向けて役割を果たしたいとの決意を示しました。

 そして、世界が分断を乗り越え、争いのない時代の実現に向けて、「東京会議2025」での議論が、国際社会を担う政策決定者に有益な示唆を与えるものになることに期待を寄せ、挨拶を締めくくりました。


206A4119.jpg

 その後、今年のG7議長国である駐日カナダ大使のイアン・マッケイ氏が挨拶しました。マッケイ氏はアメリカがカナダに対して始めた貿易戦争に触れつつも、50年を迎えるG7について、大規模な地政学的な紛争や危機に対して長年、中心的な役割を果たしてきたと振り返りました。その上で、今年のG7についても、共通の利益を持つ各国が協力する形で、国民と世界のパートナーに具体的な成果をもたらし、協力の余地がある共通の優先事項に焦点を当て、重点的な課題を推進してきたいとの意気込みを語りました。

 また、カナダと日本の関係について、マッケイ氏は、貿易投資、防衛協力、人的交流等を挙げ「今まで以上に大変良好な関係になっている」と語りました。その理由として、カナダと日本の両国の視点視座、特に世界について他国間主義、自由で公正なルールに基づく貿易、そしてルールに基づく国際秩序に対しての支持等を挙げ、「カナダと日本のパートナーシップは、平和で強靭な安全なインド太平洋の構築に向けた相互の取り組みにもつながる」と表明。 カナダのインド太平洋戦略を通じて、この地域における防衛や安全保障のプレゼンスを大幅に強化し、海洋における安全保障、またエネルギー安全保障におけるリーダーシップを発揮し、インド太平洋全域にわたる貿易サプライチェーンの強靭性に対する取り組みについて、カナダと日本が対応していくと表明し、挨拶を締めくくりました。


206A4157.jpg

 続いて、国連開発計画(UNDP)総裁補兼アフリカ地域局長のアフナ・エザコンワ氏は、日本の食事があまりに美味しく「日本からの招待は絶対に断らない」とユーモアたっぷりに第一声を発しました。その上でエザコンワ氏は、主催者の工藤に始めた会った際に、「私たちはシンクタンクではなく、Do-Thankだ」と語っていたことに触れ、我々は考えるために集まっているのではなく、議論し、意見を出し合い、リーダーを動かすアクションをとって、よりよい世界に移行することが「東京会議」の源流にあるのだということを、今回、会議に参加して感じたと語りました。

 続けて、エザコンワ氏は、国連創設時はアフリカの加盟国は4カ国しか存在していなかったものの、現在は55カ国が加盟していることに触れ、石破総理の発言を引用し、多様性が拡大したにも関わらず、国連における地位は非常に低く、包摂的なシステムが必要だという点に賛意を示しました。そしてエザコンワ氏は、G7とG20に加盟している日本は、そうした会議を通して、ルールに基づく国際秩序について主張し続けて多国間主義への新しい実効性のある扉を開けてほしいと期待を示しました。


c75c024b-b458-4a36-833f-edd857868c27.jpg

 前ポーランド軍参謀総長のライムンド・トマシュ・アンジェイチャク氏は、過去の歴史を振り返りながら、古代ギリシア世界で最強の重装歩兵軍を掘ったスパルタが負けた理由として、戦闘のシステムあるいはパフォーマンス、戦略がダメだったのではなく、「裏切り」によるものだ、との見方を示しました。今回の「東京会議2025」は、我々は歴史を繰り返したくないという点について、参加者の見解を聞ける場で非常に勉強になった、信頼関係が築けたとの見方を示しました。

 そして最後に、今回の会議の主催者である言論NPO代表の苦悩に感謝の意を示し、挨拶は終了しました。


206A4210.jpg

 最後にスピーチに立った元インドネシア大統領のスシロ・バンバン・ユドヨノ氏は、自身も30年にわたって軍に所属し、その後政治家になったことに触れ、 政治と軍での大きな違いとして、軍の世界において敵は明確なものの、政治においては真の友人が誰かわからない点だ、との見方を披露しました。一方で、今回の「東京会議」に参加しているスピーカーからは、示唆に富んだソリューションを聞くことができたとし、価値を重視し、純粋にコミットすることで、全ての世代においてより良い将来が、より良い世界が残るようにしていく必要があるとの見方を示しました。

 最後にユドヨノ氏は、インドネシアと日本の協力がさらに強化されることは、将来的に重要であるとの希望を語りました。今まで以上に協力し、インフラの開発、あるいはセキュリティ、食の安全およびエネルギーセキュリティについても対話を持つ。さらに、国防や安全保障の分野、気候の危機や、世界の貧困の問題についても乗り越えていくために、日本とインドネシアが手を携えればできることがいろいろあるとの認識を示し、挨拶を締めくくりました。


 歓談の後、「東京会議」評議会を代表して、日立製作所取締役会長・代表執行役の東原敏昭氏が閉会の挨拶を行いました。

 まず東原氏は、ユドヨノ氏を始め、多くのパネリストやシンクタンクの代表が遠くから東京に集まっていただいたことに感謝の意を表明しました。そして、1日の議論を振り返り、トランプ大統領の動きの背景などについて、示唆的な意見を聞けたことは非常に有意義だったとの見方を示しました。その上で、目先の短期的な見方ではなく、いかに中長期に物事を考えていくかということの重要性を改めて感じたと語りました。その中で、G7だけではなく、G20あるいはグローバルサウスの見方や価値観を理解し、共有することが重要だとの意見に共感したと述べました。

 続けて東原氏は、日本の国民一人ひとりが世界のことを自分事として捉え、何ができるのかということを考えながら世論形成をしていくことが、言論NPOを「Do-Tank」として飛躍させるための一つの仕組みなのではないか、との見方を披露。そして、来年の「東京会議」の際には、言論NPOが「Do-Tank」として生まれ変わっていくために、評議員一同頑張っていきたいとの意気込みを語り、閉会の挨拶を締めくくりました。

206A4267.jpg