ワシントンで開催されている米外交問題評議会の国際諮問会議(CoC)に、世銀のロバート・ゼーリック総裁と米国務省の経済・エネルギー・農業担当国務次官のロバート・D・ホーマッツ氏がゲスト・スピーカーとして出席。言論NPOの工藤などCoCのメンバーやCFR会員らとの間で率直な意見交換がなされた。
ゼーリック総裁は、中国国務院シンクタンクとの共同研究レポート(中国:2030) の意義に触れ、世銀として開発途上国への支援のみならず、中国を含む中所得国との間でも、将来を見据えた経済の構造改革や成長戦略について協議していることの意義を強調した。
工藤は、本年後半に予想されている中国指導部の交代という時期に、あえてこのようなレポートを公表した狙いや、2030年の人民元とドルの位置について問うたが、ゼーリック総裁は、このプロジェクトを次期首相と目されている李克強氏と直談判して決めた経緯や、中国にも世銀の専門家を多数送り込んでおり、中国側の理解、協力が得られていることを明らかにした。
将来、人民元がドルと並び立つ世界の基軸通貨になる可能性については、経済の構造改革を進めることが優先され、人民元の調整問題には時間をかけて取り組むのではないかという見通しをあきらかにした。
米経済・エネルギー・農業担当国務次官のロバート・D・ホーマッツ氏は、40年前と現在の世界の有り様が根本的に変わっていることに触れ、かつては存在すらまれであった民間のNGO、NPO団体が外交分野でも大きな役割を果たす時代に入っていると述べた。
さらに工藤の質問に答える形で、新興国への対応で欧州・日本の政府との対話が後回しになってきたと率直に認めた上で、日米関係を軽視しているわけではないとした。さらに、これからは政府間の関係強化は当然ながら、民間レベルの対話を重視していきたいと発言。米国の対日米外交政策の質的転換を示唆した。