言論NPOが10日行った有識者アンケートで9割以上の有識者が、現在の欧米主導の国際秩序は「不安定化している」と不安を募らせ、半数以上が、その背景に、ISなどの国際テロの拡大や、イランとサウジアラビアの対立など、中東の地域秩序などの混乱や中国の台頭や中国経済の失速、さらには米国の力に低下がある、と考えていることが明らかになりました。
また、今後の世界の行方に関しても、「アメリカを軸とした秩序は維持されるが、対応力は後退し、世界的な秩序は不安定化に向かう」との回答が48.5%と5割に迫っています。
この調査は、言論NPOが10日に有識者会議「ワールド・アジェンダ・カウンセル」(WAC)の設立に合わせて行ったもので、9日深夜から10日のお昼までインターネットを活用して緊急に行われ、132人が回答しました。
調査の詳細は以下の通りです。
まず、現在の世界の国際秩序を「不安定化していると思う」との回答したのは92.4%と有識者の圧倒的多数が現状を厳しく見ています。
次に、世界やアジアの国際秩序を考える上で関心がある課題として最も多いのは、「ISなどの国際的なテロの問題」(68.2%)と「中国の台頭」(66.7%)が6割を超えて並んでいます。これに、「アメリカの力の低下」(56.1%)、「イランとサウジアラビアの対立を始めとする中東地域での秩序の混乱」(52.3%)、「中国経済の失速と世界経済への波及」(52.3%)、「難民問題」(47.7%)、「北朝鮮の核・ミサイル問題」(46.2%)などが5割前後で続いています。
続いて、現在の国家秩序を形成するアメリカの評価を尋ねました。その結果、「アメリカの力は後退しており、大統領選挙の結果にかかわらず、影響力の低下は今後も避けられない」との見方が最も多く、56.1%と6割に迫っています。
これに対して、「基本的に、アメリカを軸とした秩序の構造は変わっていない」(6.1%)、「アメリカの力は後退していないが、そうした認識が世界で広がっている」(12.9%)は合わせても2割に届きません。
今後の国際秩序に関しては、「アメリカを軸とした秩序は維持されるが、対応力は後退し、世界的な秩序は不安定化に向かう」との回答が48.5%と5割に迫っています。
「世界的な秩序の牽引国がない、いわゆる『G0』状態になり、不安定化が深まる」は、22.0%、「中国の影響力が増し、アメリカとの二極体制が中心となっていく」という「G2」は3.8%にとどまりました。
「その他」の回答
- 以前のアメリカのような影響力を持ちたいとする国が増えるけれども、それに伴う責任を負うことは拒否するだろうから、無責任な覇権主義の国が増えていくことによって、混沌とすることになると思う。(男、30代、学者・研究者)
- 国連が世界統一に重要な役割をする。(男、50代、その他 )
- 現在と変わらない。(男、40代、会社員)
最後に、アジアや世界の秩序が大きく変化する中で、日本はどのような立ち位置を継続すべきかを尋ねました。
その結果、「(米国に加え)中国など多様な国との関係を構築することで、平和的な秩序の土台をつくっていく」が32.6%で最も多く、これに「日米同盟を更に強化し、アメリカを軸とした体制を補完する」が25.8%で続いています。
「地域紛争や様々なグローバルイシューに対して、積極的平和主義の立場から、独自の外交政策を進めていく」(12.9%)、「国連を中心とした平和維持活動をより積極的に行っていく」(10.6%)はそれぞれ1割程度でした。「世界の問題よりも、日本の国の発展を優先させて、世界の問題には当面取り組まない」はわずかに2.3%でした。