デビッド・フェイス
(米「ウォールストリートジャーナルアジア版」論説委員)
工藤:2016年、関心があるのはどのようなテーマでしょうか。
アメリカのアテンション不足が、 アジア地域のみならず、世界的な繁栄に大きな影響を与える
デビッド・フェイス:アジアというのは、これまでずっと、ポスト第二次大戦の70年間、自由とか、法の支配というところがきちんと守られたがゆえに、この地域はものすごく平和で、繁栄してきたというのが、この70年間だったと思います。
一方、中国はその繁栄に対してチャレンジを投げかけているというところが、今一番気になっているところです。特に航海の自由を始めとする、中国のやっている活動についての懸念です。
次に、世界の他地域の状況というのを見てみると、中国がそれをやりやすくしているような環境があると思います。プーチンがヨーロッパに働きかけていること、ISの中東での動きやイラン問題もそうですが。今そうした状況が各地域で見られています。
本来であれば、アメリカ合衆国がアジア地域でもっとアテンションしていかないといけない。これを放っておくと、この地域のみならず、世界的な繁栄に大きな影響を与えるかもしれませんが、しっかりとアテンションできていないという状況について、一番注目しています。
工藤:それは、アメリカをベースにした秩序形成がかなり弱まっているという事なのでしょうか。仮に、弱まっているとして、それは本質的に弱まっているのか、一時的に弱まっているのか、政治的な状況でどういう風に見ていますか。
アメリカが形成してきた秩序は本当に弱まったのか
デビッド・フェイス:本質的に弱まっているかはまだ分からないといる状況です。ただし、これまで、アメリカが形成してきた秩序に対する挑戦を受けている状況だと思います。特に、中国は確実に挑戦をしていますが、その結果として、これまでの秩序が弱体化につながるのか、維持されるのかというのは、どちらもあり得ると思います。
ただ、アメリカがそのほかの同盟国に対して提供してきたこともそうですし、航行の自由や国際法というのはビジネスにおいても重要ですが、そこがチャレンジを受けているという所だけは間違いないと思います。今後どうなるかというのは、これから見て行かないといけないと思います。
工藤:最後に、一言だけ。今、日本に対して期待している事は何ですか。
世界の秩序を維持していくためにも、日本の役割は大きい
デビッド・フェイス:日本に期待している役割ですが、期待しているというよりは、これは安倍首相も言っている事ですが、日本がこの自由秩序、世界の秩序に果たせる役割というのは非常に重要ですし、今後もっと重要になっていくのだと思います。アメリカも今後今の秩序を維持するのであれば、この地域内での同盟国からの協力は、より大きくなっていくのだと思います。この地域だと、他にもオーストラリア、フィリピンとかベトナム、アジア太平洋地域との連携を強めていかないといけない。その中でも日本の役割というのは非常に大きくなって来るのではないかと思います。これからこの秩序の維持には、関係国の役割は、重要な柱になると思います。