日本でのG7首脳会議に向けた緊急メッセージ

2016年3月27日

パネリスト間同士で率直な意見交換がなされた非公開対話
国際秩序の不安定化と平和構築への努力 ~WAC2016 第一セッション報告~
世界経済のシステムリスクと不安定化にどう対応するか ~WAC2016 第二セッション報告~
岸田外務大臣に「G7への緊急メッセージ」を提出


 言論NPOが設立した「ワールド・アジェンダ・カウンシル(WAC)」は3月27日、海外からアメリカ、フランス、ドイツ、カナダ、インド、インドネシアと中国の7つの有力なシンクタンクの代表を東京に招き、「不安定化する国際秩序と世界経済にどう挑むか」と題した議論を行った。

 世界では現状の秩序にさまざまなチャレンジがあり、地政学的なリスクや市場のリスクが高まっている。脆弱国家に代表されるように国と統治、つまりガバナンスが不安定化し、テロは国境を越えて拡大し、中東での国内紛争では和平の動きが始まったとはいえ、難民が大量に発生し、アジアでも大国の中で現状の変更に乗り出す動きも存在している。

 私たちが特に問題としているのは、こうした不安定な世界の秩序や経済のリスクに主要国が連携して取り組むべき時期に、民主主義、市場経済という、我々が最も大切にすべき理念の牽引役が存在せず、多くの国に内向な孤立主義的傾向やポピュリズムが台頭し、多くの政策協調に困難が生じ始めていることである。

 私たちが今回、日本で行われるG7に向けて声明を出すことにしたのは、民主主義や市場経済、法の支配と言った価値観を共有する主要国こそがこうした事態の解決に向けて実効性のある強いメッセージを世界に発信し、その実現のために連携すべきであると考えるからである。

 もちろん、こうした深刻なグローバル課題は政府だけに求めるだけでは解決は難しい。独立したシンクタンクやジャーナリズム、多くの市民も積極的に議論を行い、力を合わせる局面である。
この立ち位置から、私たちは本日、世界のシンクタンクの代表者間での多くの議論を通じて、以下の5点をG7の議長国である日本政府に提案することとした。


 第一は、G7は、民主主義や市場経済と言った人類共通の価値の今日的な重要性を再確認すると同時に、その価値を発展させるための一体性を持った努力を行うべきである。こうした価値の在り方は多様であり、市民社会の広い支持に支えられるべきものである。

 第二にG7は、テロ対策で連携すると同時に、難民の移動などで協力し、それらの地域で多くの人が安全で平和的な生活をおくるために真剣に取り組むべきである。また、立場の違いを理解しつつも、開発や気候変動など世界が直面する課題の解決に取り組み、G20において中心的な役割を担うべきである。

 第三に、先日上海で行われたG20のコミュニケはリスクに対する認識を共有し、財政も含めた政策メニューは提示したが、それだけでは不十分である。
 G7は、G20のためにも世界経済の安定化に強い結束を示すために、一致して構造調整を促進させるための機動的な財政政策やそのための国際協調、自国の構造改革に関して時限を区切ったアクションプランを提出し、世界経済の安定化に強い意志を示すべきである。

 第四に、G7は、自由貿易体制を推進し、あらゆる形態の保護主義に対抗する姿勢を示すべきである。市場経済の安定性を損なう為替の切り下げ競争を回避すると同時にグローバルな枠組みであるWTO、開かれたTPPなどの地域連携や二国間の自由貿易協定に対する努力を止めることなく、推進すべきである。

 第五に、G7はより安定した生活や持続的な世界の経済成長による豊かさの共有という共通目標を実現するため、これまで以上に新興国等へのインフラや技術開発、さらには、気候変動や医療や保険、貧困削減のために官民が協調して資金を供給できる枠組み作りを実施すべきである。

2016年3月27日
ワールド・アジェンダ・カウンシル(WAC)委員一同
パネリスト間同士で率直な意見交換がなされた非公開対話
国際秩序の不安定化と平和構築への努力 ~WAC2016 第一セッション報告~
世界経済のシステムリスクと不安定化にどう対応するか ~WAC2016 第二セッション報告~
岸田外務大臣に「G7への緊急メッセージ」を提出