G7首脳会議(伊勢志摩サミット)を直前に控えた5月17日(米国東部時間)、アメリカ・外交問題評議会(CFR)が主催し、世界25ヵ国の主要なシンクタンクが参加する国際シンクタンクネットワーク「カウンシル・オブ・カウンシルズ(CoC)」の第5回年次総会がワシントンで開催され、日本を代表して言論NPO代表の工藤泰志が参加しました。今回の総会では、昨年に引き続き、2016年版の「レポートカード」が発表されました。
CoCは、米国外交問題評議会が各国の有力シンクタンクに呼びかけて設立したネットワークで、不安定化する国際秩序や国際経済、さらにはグローバルガバナンスの欠如が問題となる中で、各国の外交政策や世論形成に影響力を持つ世界25カ国のシンクタンクが横断的につながり課題解決に挑む取り組みとして注目されています。レポートカードは、加盟各シンクタンクのトップが今年1月に個別に行った評価結果を集計したもので、昨年に続き2回目の発表となります。
今回のレポートカードでは、「2015年における国際協力の取り組みへの評価」について、10分野のうち7つの課題で「進展がみられた」または「やや進展がみられた」という評価となった一方、国際テロ対策や、国内および国家間の暴力紛争の対策の進展については低い評価にとどまりました。
今回のレポートカードで、最も高い「進展がみられた」というA評価を得たのは、「気候変動抑止及び気候変動による変化への適応」でした。レポートでは、2015年末の国連気候変動枠組条約第21回締約国会議(COP21)において合意された「パリ協定」の合意について、「先進国と発展途上国が新たな『ボトムアップ』アプローチを採用し、各国が自らの計画した、国家としての断固たる貢献を表明合意された」とし、CoCメンバーの多くが高く評価しています。
次に、イランの核開発をめぐり、2015年7月にイランと米国など6カ国(米中ロ英仏独)間で、核協議が最終合意に達し、2016年1月にIAEAが、イランが核濃縮に必要な遠心分離機などを大幅に削減したことを確認したことを受け、イランと米国など6カ国は合意の履行を宣言しました。こうした状況を評価し、核兵器拡散防止(A-)が続きました。
さらに、国際開発の促進(B+)の面では、2030年に向けた国連の開発目標「SDGs(持続可能な開発目標)」が2015年9月に国連総会で採択されたことを理由として、「グローバルヘルスの促進」(B+)では、西アフリカのエボラ出血熱流行の終息における国際的成功を理由として、多くのCoCメンバーが「やや進展がみられた」と評価しました。
一方、国際テロ対策(C-)や、国内暴力紛争の防止と対応(C-)および国家間の暴力紛争の防止と対応(C)については低い評価にとどまりました。加えて、この3つの課題については、「2016年において、最も切迫した世界的優先課題であると同時に、最もブレークスルーのチャンスが少ないもの」と考えられており、今後の課題解決の行方が不透明であることを示しています。
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