G7伊勢志摩首脳会談の評価とは

2016年5月28日

今回のG7の合意は、消費増税の先送りのための口実

早川英男(富士通総研エグゼクティブ・フェロー)

 今回の合意は、日本の都合で強引に宣言を出したという印象を受けた。世界全体として「財政出動が必要だ」という合意ができたわけではなく、世界経済が危機的な状況にあるという認識も共有されているわけではないが、ある意味で「ギリギリ危機を防ぐという形で合意を取り付けたように取り繕っている」と感じる。

 まだ正式には表明されていないが、今回の合意によって、G7でお墨付きを得たということにして、消費増税の先送りを決めるのだと思う。
そして、基本的には、今回の合意が世界経済へ与える影響はほとんどなく、日本だけが消費増税の先送りを決めるということになると思う。今回の合意を読んでも、財政出動の合意もないし、みんなが危機的だと思っているわけでもない。安倍首相は勝手にそのように読む、それを他の国は容認するというような合意だ。単に、日本が、安倍総理が消費増税の先送りをしたいがために、かなり強引に話をまとめたということだと感じる。

 問題は、なぜそうした合意をせざるを得なかったか、ということだが、安倍総理としては「アベノミクスは失敗した」と認めたくないのだと思う。認めなくないけれども、消費増税を先送りする口実のために今回の合意を行った。つまり、消費増税を先送りするのは、日本経済が悪いのではなく、世界経済が危機的な状況だからというロジックを作り出したいがための今回の声明だったと考えている。

⇒ 工藤泰志(言論NPO代表)
⇒ 内田和人(三菱東京UFJ銀行常務執行役員)
⇒ 佐久間浩司(国際通貨研究所経済調査部兼開発経済調査部長)
⇒ 早川英男(富士通総研エグゼクティブ・フェロー)
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