私たちは3月4日、G7加盟国のアメリカ、イギリス、イタリア、カナダ、ドイツ、フランスの7カ国に、インド、インドネシア、ブラジルを加えた世界10カ国からのシンクタンクの代表者を東京に招き、「東京会議」を行った
世界を代表するシンクタンクが、東京に集まったのは、自由や民主主義、法の支配という、戦後世界を支えた規範が大きな困難に直面し、世界が不安定化し始めているからである。
米国では新しい政権が誕生し、欧州でも様々な選挙が始まっている。そういう局面だからこそ、自由と民主主義の価値を共有する10カ国のシンクタンクが力を合わせなくては、と考えた。
この二日間、私たちは議論し、多くの点で共通の理解を得た。
一つは、自由と民主主義という規範が持つ今日的な重要性である。世界は経済の相互依存を深め、地球上の資源の制約という課題や技術の発展など様々な利益を共有化している。これらの規範は個人の自由を守り、世界の利益をより多くの人に包摂的につなげるために、なくてはならない人類の財産である。
もう一つは、こうした規範を守りながら、国家が国際的な協調と国内の利益とでどうバランスをとるのか、である。
私たちが今年5月にイタリアで行われるG7に向けての議論を踏まえて、議長の緊急メッセージを出すことにしたのは、G7こそがまず、世界が現在、背負うべき課題の解決や、法の支配という理念および国連条約・決議を含む世界の規範を尊重し守るために、実効性のある強いメッセージを世界に発信し、その実現のけん引役になるべきと考えるからである。また、その中ではテロリズムとの戦いも喫緊の課題である。
もちろん、政府だけに規範を支えることを期待することは困難である。知識層やジャーナリズムも市民と力を合わせて、今直面する自由と民主主義の試練に真剣に立ち向かい、議論を開始しなくてはならない。この東京会議に集まった、10カ国のシンクタンクはそれぞれの規定の範囲内で議論に参加することで合意している。
この立ち位置から私たちは、以下の5点に焦点を当てた。
第一に、G7各国は自由と民主主義や法の支配という人類が実現した規範の今日的な意味を再確認すると同時に、その価値を守り、課題を克服し発展させるために力を合わせるべきである。
またG7は、多国間主義に基づく国際協力の枠組みを守り、国連や様々な国際組織がこれまで築き上げてきた国際秩序を維持する役割を積極的に支えるべきである。
第二に、G7各国は、保護主義的な動きが、世界経済、国際秩序に悪影響を及ぼし始めていることを重視し、自由貿易体制を堅持し、あらゆる形態の保護主義に対抗する姿勢を示すべきである。
第三に、グローバリゼーションが、国際秩序の下、今後も安定的に展開し、世界全体の包摂的な成長や利益となるために、G7各国は、財政、金融、構造政策を総合的に推し進めると同時に、自国経済の構造調整や産業構造の高度化に対応し、経済システムの強靭性を高める不断の努力を行うべきである。
第四に、難民問題は、安定的で持続性がある国際秩序の形成にとって優先度が高い、世界が取り組む課題であり、G7各国はその解決のために力を合わせるべきである。そのためには国連で合意された緊急性の高い第三国定住目標の実現や、難民の受入国や受入コミュニティへの援助、根本原因への取り組みを強化するほか、民間の取り組みを支援すべきである。
第五に、G7各国は、自由な国際経済システムを維持し、そのルールに従うために過度な摩擦に対応し、国内の利益とバランスできるように、強靭な民主主義の重要性を認識する必要がある。規範を守り、課題に真摯に立ち向かう政府の取り組みは、市民社会の広い支持に支えられるべきものである。
「東京会議」
関連記事
- 世界10カ国のシンクタンクトップが感じた「東京会議」と今後の可能性
- 「東京会議2018」に向けた提言などが寄せられるなど活発な意見交換 ~3月5日非公開会議報告~
- 世界の人たちが横につながり、その知恵を活かして議論する舞台に ~「東京会議」記者会見報告~
- 「東京会議」で岸田大臣が特別講演
- レセプション 報告
- 「グローバリゼーションと国際システムの今後」~その光を増し、影を消すには何をすべきか~
- 「ポピュリズムと民主主義の未来」~複合的な台頭の背景を徹底討論~
- G7への緊急メッセージ提案に向け、白熱した意見交換が行われた ~3月4日非公開会議 報告~
- 281人の識者は、世界の秩序や民主主義の現状をどう見ているのか
- 本番さながらの意見交換がなされた歓迎夕食会
- 3日間にわたる「東京会議」が開幕 ~「東京会議」初日 非公開会議報告~
- 世界の規範や民主主義を守るため、覚悟を固める時 ~「東京会議」立ち上げに当たって~