「イタリアでのG7首脳会議に向けた緊急メッセージ」の発表から一夜明けた3月5日、都内の国連大学で参加パネリストが出席した非公開会議が行われ、今回の「東京会議」の総括や、今後の取り組みの方向性についての意見交換がなされました。
まず、司会を務めた言論NPO代表の工藤泰志が、今回の東京会議についての率直な感想を求めると、出席者は一様に「成功」と手応えを口にしました。特に、昨年3月に主要8カ国のシンクタンクトップを集めて開催された「ワールド・アジェンダ2016」にも参加していたパネリストからは、「この1年で着実な進歩が見られた」との評価が寄せられました。
戦時期、日本国内の自由と民主主義を守るためのネットワークが存在した
次に、工藤は、第2次大戦期の日本で、軍部による厳しい言論統制が行われていたにもかかわらず、リベラルな言論を貫き続けた後の首相、石橋湛山の逸話を紹介。そして、「なぜ石橋は軍部に殺されなかったのか。それは、実は日本国内に自由と民主主義を守るための組織を超えたネットワークがあり、そこに守られていたからだ」と説明しました。
これに対しては、世界規模でリベラルな価値が脅かされようとしている現代においては、各国のシンクタンクが、国境を越えた形でのネットワークを強める必要があるとの声が上がりました。
シンクタンクの役割を再定義する機会に
一方で、ポピュリズム勃興の背景にあるエリート層への反感は、政治家やメディアだけでなく、シンクタンクにも向けられているのではないか、との問題提起がなされると、「各シンクタンクは、政府と世論の仲介役としての能力を磨くべきだ」、「多数派だけでなく、少数派の市民の意見もしっかりと取り上げる『言論のプラットフォーム』としての役割がさらに重要になってきた」などの意見が寄せられました。
市民が考えていく力を身に付けるような議論展開を
これを受けて工藤も、東京会議を傍聴していた若い世代から「議論内容が高度すぎてわかりにくい。専門家だけに通じる言葉ではなく、市民に対する『教育』になるような議論にしてほしい」という要望があったことを紹介。その上で、「自由民主主義は市民が強くなれば機能する。市民が考えていく力を身につけるような議論を展開する必要がある」と語ると、出席者からは賛成の声が相次ぎました。
その後も、東京会議のあり方や、議論すべきアジェンダについて出席者から次々に具体的な提言が寄せられるなど、早くも「東京会議2018」に向けた機運の盛り上がりを感じさせる会議となりました。
この非公開会議を持ち、「東京会議」の全てのプログラムは終了いたしました。今回の「東京会議」後、各国のパネリストの皆さんに、インタビューを実施しています。そちらも併せてご覧ください。(coming soon)
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