「東京会議」参加シンクタンクのトップが感じた会議の意義と、今後の可能性

2017年3月04日

民主主義にとって譲れない原則、それは健全な生活をする権利

MHI_4970.jpgバーバラ・リパート
(ドイツ国際政治安全保障研究所(SWP)調査ディレクター)

工藤:今回、東京会議に来てくれてありがとうございました。G7へのメッセージを出し、いろいろな議論も行われましたが、参加してよかったですか。また、成功したと思いますか。

リパート:東京会議は非常に成功していたと思います。最初の非公開会議でも、10カ国からの非常にインテリジェントなシンクタンクの人と意見交換できましたし、公開フォーラムでも、非公開会議からうまく引き続き議論が行われて、しかも、非常に意見の分かれるところである自由と民主主義の課題を、会場の皆さんと直接議論する機会はなかったのですが、活発な意見交換をすることができましたので、今回はすごく良かったと思います。

 あと、今回は世界のいろいろな国々、特に西側の国ということになりますが、いろいろな意見を聞けて、自分としても良かったと思います。

工藤:通常、こういうテーマではあまり人が集まらないのですが、今回は申込みベースでは満員で、定数を100人以上上回りました。それくらい、民主主義の未来に対して考える人が日本では増えています。私たち日本人は、民主主義という問題についてドイツには非常に期待しているところがあるのですが、リパートさんは民主主義の未来をどう考えているのでしょうか。また、私たちは何を考えなければいけないのでしょうか。


反対の立場の意見も聞いた上で、議論することを学ぶべき

リパート:ドイツの場合、ここまでのところ確かに民主主義はまだ比較的安定していると思います。ただ、ヨーロッパではポピュリズムも台頭していますし、ドイツも例外ではありません。しかし、確かにドイツでは、そこが一番の問題だという状況にはなっていません。ただ、そうはいっても、民主主義の質は気にしていかなければいけないし、反体制側の動きが実際にあることも認識しなければいけないでしょう。これまでと違った制度を求める動きは確かにあるし、デモなどをして今の政治制度とは違うようなかたちを解決策として求めている政党が出てきているわけです。そういう政党は実際に多くの人々を動員することもできていますし、特に、現状を非常に不満に感じている人たちがいることから、支持もされています。

 その中でやっていかなければいけないことは、政策に対する良きアウトプットをきちんと提供することによって、自分たちの生活が良くなるのだと感じてもらうことです。公平であるのだと感じてもらわなければいけません。これはアウトプット、つまりどういう政策のパフォーマンスが挙げられるかということのみならず、インプット側も重要だと思っています。要は、不満を持つ人たちが参加する場を設けて、自分たちの立場を超えにできるようにしてもらうということです。自分たちの立場だけを説得する場を提供することも大事ですが、反対意見の立場も聞く、話させる、ということはもっとやらなければいけないし、意見が違う中で議論するということは学ばなければいけません。ですから、より多様性のあるかたちが増えていかなければいけません。

 最後に、民主主義には譲れない原則があります。例えばドイツの憲法は、国民は日々の生活で全て健全な生活をする権利を持っているという条文があります。これに反対をされると、民主主義の敵ということになってしまいます。

工藤:これから協力していきたいと思います。気を付けてお帰りください。


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