言論NPO代表 工藤泰志
今週7日よりドイツ・ハンブルクにて開催されるG20サミット。トランプ政権誕生後の様々な多国間枠組みの変化、英仏での選挙、北東アジアでは北朝鮮の核ミサイル問題が深刻化するなど国際社会は様々な課題に直面する中、先進国・新興国の20カ国が集まるG20では何が話し合われるべきなのか?
規範を共有する国々がまず結束し、グローバル・ガバナンスの強化に貢献を
トランプ政権下でのG20は、多国間主義に基づく国際協力によってグローバルイシューの解決に取り組むという役割は限定されるだろう。トランプ大統領が唱える「米国第一主義」や二国間交渉優先の姿勢にG20はこれからも振り回され、また現在の脆弱な国際秩序を利用する、覇権主義的な大国の動きもあり、これまで世界を支えてきた枠組みがさらに形骸化する可能性があるからだ。
ドイツのメルケル首相は、ハンブルグでのG20サミットで、開かれた市場、自由で公正かつ持続的、包括的な貿易に焦点を当てようとしている。不安定化する世界の秩序はある意味で大国間の「政局化」している。ただ、こうした不安定な局面だからこそ、G20にて仮に大きな成果がなかったとしても、不安定さや潜在的な対立をこうしたレトリックで埋めながら、世界経済の大半を占める主要20カ国・地域のリーダーが世界の共通利益のために努力し続ける姿勢を国際社会に示し、対話の舞台を維持し続けることが大事である。G20の意味はそれに尽きると考える。
グローバリゼーションやリベラルな秩序、多国間協力は世界の共通利益であり、世界経済の包摂的な発展や、グローバリゼーション自体が持つ不安定さや格差への是正が求められている中で、G20の役割はこれまで以上に重要なものとなっている。ただ、こうしたG20の役割を果たすためにも、規範を共有するG7やその他の民主主義の新興国の協力もそれ以上に重要なものとなっている、と私たちは考えている。G7各国の在り方は、グローバル・ガバナンスの強化、今後の自由な世界秩序の形成にも不可欠であり、そのための努力をすべき局面だと考えるからだ。また、G7が主導する世界経済のガバナンスと国際金融システムはグローバル・ガバナンス安定のアンカーであり、その長期的かつ戦略的な主導権維持に対して如何に結束できるかが鍵になっている。
アメリカ新政権の方針転換により、結束が不安視された先のG7イタリアサミットでは、「自由で公正な貿易」との点を確認し、何とか結束を保った。G7の民主主義国が戦略的かつ長期的にグローバル・ガバナンスの強化に貢献するために結束していく今日的な意味は大きいと考える。