273人の識者が見た「米中対立とリベラルな国際秩序の将来」「東京会議2019」有識者アンケート結果

2019年3月02日

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 言論NPOは3月3日(日)、現在深刻化する米中対立の行方とリベラルな国際秩序の今後を議論するため、G7加盟国とブラジル、インド、シンガポールの計10カ国から世界を代表する有力シンクタンクの代表者を迎え、「東京会議2019」を開催いたします。

 この会議を前にした2月21日から3月1日までに言論NPOの議論づくりにご協力いただいている2000人を対象にアンケート調査を行い、273人から回答をいただきました。ご回答いただいた皆さま、ご協力ありがとうございました。

 ※属性などのアンケート概要については、最下部をご覧ください


1.米中対立の行方

現在の米中関係を「新冷戦」だと捉える人が半数近い

 現在、米中対立が深刻化していますが、この米中対立の現状について、「新冷戦」の状況にあるかと尋ねたところ、「そう思う」(47.3%)との回答が「そう思わない」(37.7%)を上回りました。

【米中関係は"新冷戦"状態か】

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米国の対中強硬姿勢は、党派を超えた米国のコンセンサスとの回答が6割超

 次に、米国の対中強硬姿勢について、トランプ政権に限らず、共和党・民主党の党派を超えた米国のコンセンサスか、との問いには66.3%と6割を超える人が「そう思う」と答え、「そう思わない」(28.2%)を大きく上回りました。

【対中強硬姿勢は米国のコンセンサスか】

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8割の人が、米国は中国の覇権的な行動を抑え込もうとしていると回答

 こうした米国の対中姿勢については、79.9%と8割の人が「中国を米国にとっての『戦略的競争国』だと認め、様々な中国の覇権的な行動を抑え込もうとしている」と考えており、「中国が改革開放の原点に戻り、ルールやリベラルな秩序を遵守するように迫っている」は14.3%にとどまっています。

【米国の対中姿勢をどう見るか】

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米中対立の行方について、識者の中でも見方が分かれる結果に

 では、こうした米中対立の行方について尋ねたところ、最多となったのは「現時点では予測できない」(23.1%)との回答でした。しかし、「対立は世界を巻き込み、グローバル秩序や国際システムの分裂にもつながっていく」(18.3%)、「通商面での対立は長期化するが、他の分野には飛び火しない」(17.9%)、「対立は激化し、政治や外交・安保など他分野も含めた2国間対立に発展する」(17.6%)、「中国が妥協し、対立は徐々に下火になってい」(14.7%)というように各回答が拮抗しており、有識者の中でも見方が分かれました。

【米中対立の行方】

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米中交渉の行方については、交渉延長・追加関税引き上げの見送りが7割に迫る

 3月1日に期限を迎えた、米国の対中追加関税引き上げについては、「交渉延長となるため、追加関税引き上げは見送りとなる」が67.8%と7割に迫り、「交渉は妥結に至らず、追加関税が引き上げられる」(9.2%)、「交渉が妥結し、追加関税引き上げは取り止めとなる」(8.8%)を大きく上回りました。

 ※その後、2月28日にトランプ政権は中国との貿易摩擦解消に向けた交渉の延長を正式表明すると同時に、通商代表部(USTR)は3月2日に予定していた中国製品への追加関税率引き上げを、期限を定めずに延期すると発表している。

【米中交渉の行方】

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日米欧で始まったWTO改革については「実現しない」との回答が7割超

 続いて、現在、WTO改革を巡り、日本・欧州・米国の三極の協議が始まっていますが、米国や中国が納得できるWTO改革が実現すると思うかを尋ねました。その結果、73.3%と7割を超える人が「実現しないと思う」と答え、「実現すると思う」(11.7%)を大きく上回り、WTO改革の成功には懐疑的な見方を示しました。

【米中が納得するWTO改革は実現するか】

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7割を超える人が、中国製品の排除を容認すると回答

 昨年の12月から米国が中国の華為技術(ファーウェイ)などの製品を政府調達などから排除する強硬策に出ており、同盟国でも同様の動きが広がっています。こうした対応への評価について、最も多かったのが「正しいとは思わないが、やむを得ない対応だと思う」(45.8%)との回答で、これに「正しい対応だと思う」(28.9%)が続き、今回の対応を容認する声が74.7%と7割を超える結果となりました。

 これに対して、「誤った対応だと思う」は16.1%にとどまっています。

【中国製品排除は妥当か】

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今後の中国は、対抗姿勢は控え「韜光養晦」路線に戻るとの回答が6割超

 今回の米中対立について、中国がどのような対応をとると思うかを尋ねたところ、「あからさまな対抗姿勢は控え、"韜光養晦(とうこうようかい)"路線に戻る」(63.4%)との回答が6割を超えて最多となりました。

 一方で、「一歩も引かずに米国への対抗姿勢を強めていく」(11%)との強硬路線や、「改革開放の原点に立ち戻り、市場経済化や国際ルールへの遵守を可能な限り進めていく」(10.3%)との軟化路線はそれぞれ1割程度にとどまっています。

【中国は米国にどう対応するか】

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中国主導の秩序とリベラル秩序の共存については、意見が真っ二つに

 中国が進める党や国家主導の秩序と、リベラルな秩序が今後共存していくことは可能かを尋ねたところ、「何らかの形で双方がルールを共有すれば、共存は可能である」(45.4%)と「中国型の秩序はリベラルな秩序と全く相容れないものであり、共存は不可能である」(44.3%)との回答が拮抗し、有識者の間でも意見が分かれました。

【中国主導の秩序とリベラル秩序は共存可能か】

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中国が進めてきた改革開放の動きについては、意見が分かれる結果に

 これまで中国が進めてきた改革開放の動きについては、「経済成長のために市場経済化を進めるという意思は当初はあったが、結果は中途半端で途中から国家主導の経済色を逆に強めた」との見方が36.6%で最多となったものの、「改革開放はあくまでも経済成長の手段にすぎず、そもそも市場経済を目指すつもりはなかった」(34.8%)との回答と拮抗しています。

 また、「中国はいまだ改革開放や市場経済化の途上にある」との回答も24.5%存在しています。

【改革開放は本当に市場経済化を目指していたのか】

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9割の人が、中国は米国の安全保障上の脅威と回答

 中国が米国の安全保障上の脅威となるかどうかを尋ねたところ、「今後そうなると思う」(47.3%)が最多となり、「既にそうなっていると思う」(42.1%)を合わせると、89.4%と約9割の人が、中国は米国の安全保障上の脅威になると考えています。

 「そうはならないと思う」との見方は7.7%しかありません。

【中国は米国の安全保障上の脅威となるか】

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4割の有識者が「南シナ海」と「台湾」での米中軍事紛争勃発を予測

 米中間での軍事紛争については、「起こらないと思う」との回答が「朝鮮半島」(67%)、「東シナ海」(59%)、「南シナ海」(46.5%)、「台湾」(44.7%)のいずれの地域でも最多となりました。ただし、「南シナ海」では40.7%、「台湾」では39.2%とそれぞれ4割の有識者が米中軍事紛争は「数年以内に起こると思う」、「将来的には起こると思う」と予測しています。

【米中軍事紛争が起こる地域】

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2.リベラルな国際秩序の未来


5割を超える人が、欧米の民主主義の動揺に対する危機感を示した

 世界の情勢は依然として不安定な状況が続いている中、56.4%と5割を超える人が懸念すべきこととして「米国や欧州などの先進民主主義国で、民主主義への信頼が揺らぎ、ポピュリズムや権威主義的な傾向が高まっていること」を挙げ、民主主義の動揺に対する危機感を示しました。

 これに「多くの国が内向き志向となり、世界の課題にリーダーシップを持って取り組む国が少なくなり始めたこと」(42.1%)、「自国第一主義の傾向が強まり、多国間主義に基づく経済協力の仕組みが崩れ始めていること」(41.4%)、「ルールに基づく世界の自由秩序が壊れること」(27.5%)が続いています。

 「世界の秩序が、巨大国家間の交渉で形成される可能性が出てきたこと」を挙げた人は、13.2%にとどまりました。

【世界情勢が不安定な中、特に懸念していることは】

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約9割の人が、多国間主義は何らかの形で続いていくと回答

 トランプ大統領の誕生以降、多国間主義を基調とした国際協力が機能していない状況が続いています。こうした状況下で、多国間主義の今後について尋ねたところ、「多国間主義は破綻はしないが、現在の不安定な状況が続く」との回答が68.5%と7割に迫り、最多となりました。これと「問題があったとしても多国間主義は今後も存続していく」(19.4%)との回答を合わせると、87.9%の有識者が何らかの形で多国間主義は続いていくとの見方を示しています。

 一方で、「多国間主義は破綻し、超大国間の交渉で物事が決まるようになる」は6.6%にとどまりました。

【多国間主義の今後】

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不安定な状況が続くも、現在の国際秩序は続いていくとの回答が6割を超え最多

 ルールに基づく自由な秩序の今後については、「不安定な状況は続くが、現在の国際秩序は存続していく」(62.3%)との見方が最多となりました。
「大国間の対立によって秩序に亀裂が入り、やがて分断していく」という悲観的な回答は18.3%と2割程度です。

 もっとも、「現在の危機を乗り越え、将来的にはより強固な秩序となっていく」という楽観的な回答は7.3%にとどまりました。

【ルールに基づく自由な秩序の今後】

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リベラルな秩序や多国間主義を守るため、
「アメリカ」と「日本」のリーダーシップに期待

 リベラルな秩序や多国間主義を守るために、どの国・地域がリーダーシップをより発揮するべきかを尋ねたところ、「アメリカ」との回答が54.6%で最多となり、48.7%で「日本」、「ドイツ」が28.9%で続きます。「中国」との回答も15.4%と一定数存在しています。

 その他の国や地域は1割にも達しませんでした。

【リーダーシップを発揮すべき国はどこか】

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 続いて、日本がリベラルな国際秩序を立て直すためにリーダーシップを発揮することは「可能だと思う」との回答が56%と過半数を超え、「不可能だと思う」との回答の36.6%を上回りました。

【日本はリーダーシップを発揮できるか】

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3.グローバルガバナンス

2019年に最も優先すべき課題として、「サイバーガバナンスの管理」が最多に

 世界が直面するグローバル課題の中で、2019年に最も優先すべき課題を挙げてもらったところ、「サイバーガバナンスの管理」(38.8%)が最多となり、「国際経済システムの管理」(37.4%)、「気候変動抑止及び気候変動による変化への適応」(33.3%)、「核拡散防止」(32.2%)の4つの課題が3割を超えました。そして、「国際的暴力紛争の防止と対応」(20.1%)、「国際テロ対策」(16.8%)が続きます。

 一方で、「国際貿易の拡大」(4.8%)、「国内暴力紛争の防止と対応」(4%)、「国際開発の促進」(2.9%)、「グローバルヘルスの促進」(2.2%)の4つは1割に届きませんでした。

【2019年最も優先すべきグローバル課題】

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グローバルガバナンスの評価について、
「機能している」が半数を超えたのは3つにとどまる

 グローバルガバナンスの現状についての評価は、「機能している(「どちらかといえば」を含む)」との回答が半数を超えたのは「国際貿易の拡大」(51.7%)、「国際テロ対策」(51%)、「国際開発の促進」(50.2%)の3つの課題にとどまりました。

 反対に、「機能していない(「どちらかといえば」を含む)」との回答が最も多かったのは「サイバーガバナンスの管理」(78.7%)で8割に迫りました。これに、「気候変動抑止及び気候変動による変化への適応」(68.1%)、「核拡散防止」(66%)、「国際的暴力紛争の防止と対応」(62.6%)、「国際経済システムの管理」(51.3%)、「国内暴力紛争の防止と対応」(50.2%)が続き、6つの課題が過半数を超えました。

【グローバルガバナンスの現状評価】

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今後言論NPOが取り組むテーマは、
「世界秩序の今後」、「民主主義の未来」、「インターネット、サイバー」、「北東アジアの平和」

 最後に、今後、言論NPOが世界課題でどのテーマについて議論すべきかを尋ねたところ、最も多かったのが「世界秩序の今後」(58.6%)で、「民主主義の未来」(56.4%)、「インターネットの未来とサイバーセキュリティ」(51.7%)、「北東アジアの平和」(50.9%)の4つのテーマで半数を超えました。これに「多国間主義に基づく国際協力の今後」(46.2%)、「グローバリゼーションと経済格差」(42.9%)が4割台で続いています。

【今後、言論NPOが議論すべきグローバル課題】

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有識者アンケートの概要

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