第2セッション終了直後、言論NPO代表の工藤泰志は、議論を踏まえて採択した共同声明を発表しました。
その上で、今年のG20議長国を務める日本政府を代表した西村氏と、G7議長国であるフランス政府を代表した駐日フランス大使のローラン・ピック氏にメッセージを手渡しました。
G7ビアリッツサミットでは何を議論するのか
これを受けて、ピック氏が講演を行いました。ピック氏はまず、「我々はもはやグローバルな世界で生きていくほかない。課題は国際協力によって対応していくしかない」と切り出した上で、「しかし今、大きなプレイヤーが自国第一主義を掲げて国際協力に対して異議申し立てをしている。また、彼らは普遍的価値に疑問を抱いているため、世界人権宣言や難民条約といったリベラルの所産も危機にさらされている」と懸念を表明。
さらに懸念要素は国内にもあり、「格差の広がりに多くの人が不満を抱いている。既存のシステムが一部のエリートだけに目を向け、その他の一般層に目を向けてこなかったつけが出てきている」と指摘しました。
ピック氏はこうした状況の中で、G7とG20に求められる使命として、「多国間主義やルールベースのシステムに立脚した秩序を立て直さなければならない」と主張。そして、そのためには、「新しく、革新的で包摂的なアプローチ」が必要になるとし、その具体例としてパリ協定を挙げました。このパリ協定では、市民レベルの動きを巻き込んだことが成功の大きな要因であったと振り返り、こうした様々なアクターを巻き込んでいく手法は、他分野での改革にも有用であると主張。そのようにして、正当性が十分に担保された改革にすることが大事だとしました。
その上で、ビアリッツサミットの議論テーマとしては、気候変動やアフリカの開発、公正な貿易システム、国際租税など多岐に渡ると説明。また、個人データの保護などデジタルをめぐる問題も議題になるとし、この点ではG20でも主要なテーマとなるため、議長国日本との連携が重要になってくると述べました。
ピック氏は民主主義の問題についても言及。まず、民主主義がその強靭性を取り戻すための改革が必要であるとしましたが、その際、国内政策だけに目を向けるのではなく対外政策との整合性も意識することが必要と指摘。そうした意味では「民主主義の連帯性」を強化していくことも重要であり、G7という枠組みを越えてインドやオーストラリアなど有志国も巻き込んでいくことが有効であると語りました。
ピック氏は最後に、「フランスでのG7首脳会議に向けたメッセージ」に対し謝意を示しつつ、改めて日本との連携の重要性を強調し、講演を締めくくりました。
以上をもって、「東京会議2019」はすべての公式日程を終了しました。