米中対立や米大統領選、国際秩序の今後に関する 有識者調査

2020年2月27日

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 言論NPOは「東京会議2020」の開催に先立つ2月27日、深刻化する米中対立や米大統領選の行方が国際秩序に与える影響、自由や民主主義、そして多国間主義に基づく国際秩序を守り発展させるために何が問われているのか、を有識者に尋ね、その結果を公表した。


米中対立と日本の立ち位置

 米中対立と世界秩序の行方に関しては「全体的な分断には至らないものの、部分的には分断が起こり、対立は残る」との見方が62.1%となり、日本の有識者は米中対立の今後について、かなり厳しい見方をしていることが明らかになった。

 米国が対中姿勢を強めている理由については、中国を「敵対国」と認識し「米国の優位性維持のために、中国の封じ込めや弱体化を図る段階に入っている」が50.9%と、中国を「競争相手」と考え、「中国の国際ルールに反する行動を抑え込むと同時に、各分野における米国自身の対中競争力を高めようとしている」が41.6%と、日本の有識者の意見は分かれている。

 また、こうした米国が進めている中国への強硬策については、日本は「同調すべき」(44.2%)、「同調すべきではない」(40.4%)がいずれも4割強と拮抗しており、日本の有識者の見方は拮抗している。

 なお、米国が中国に対抗するために進める国家主導の産業政策を通じて、米国一強時代を再び到来させることになるかについては、「実現は難しいと思う(「どちらかといえば」という見方が80.1%と8割が、米国の一強時代の再来は難しいと考えている。

 一方で、中国の今後の行動についての見方はかなり厳しいものになっている。この米中対立の結果、「改革開放の原点に戻り、市場経済化や国際ルールへの遵守を進めていく」と見る有識者は8.1%と1割に満たない水準だった。これに対して、「"韜光養晦(とうこうようかい)"路線に戻る」(42.2%)が4割を超え、米国への対抗姿勢を強め「優位に立つ5Gなどの展開を更に加速させていく」(36.4%)との見方が3割を超えている。

 また、中国が進めてきた改革開放の動きについても、「経済成長のために市場経済化を進めるという意思は当初はあったが、結果は中途半端で途中から国家主導の経済色を逆に強めた」(39.9%)、「改革開放はあくまでも経済成長の手段にすぎず、そもそも市場経済を目指すつもりはなかった」(38.7%)と、8割の有識者が中国の改革開放の動きに厳しい見方を示した。


日本のリーダーシップに期待

 こうした米中対立によって世界のリベラル秩序が非常に不安定化している中、「東京会議2020」では、リベラルな国際秩序の維持・発展に向けて米国以外の主要国の努力を促す「『東京会議2020』未来宣言」を出すことになっている。こうした取り組みについては「賛同する」(81.5%)と8割を超えている。

 さらに、米中両国と密接な関係にある日本の立ち位置については、米中のどちらかにつくのではなく、「ルールベースの国際秩序や枠組みの維持に努力し、新しい共通ルールを作り出すためのリーダーシップを発揮すべき」(64.5%)との見方が6割を超え、日本の有識者は日本のリーダーシップに期待している。

 では米国のリーダーシップに期待できなくなった場合、どの国や地域と協力すべきか。日本の有識者の7割は「日本とEU(単独を含む)」(33.0%)、「G7に加えインド・ブラジルなど民主主義の新興国」(24.0%)、「G7各国」(17.9%)、など民主主義国家のリーダーシップに期待している有識者は7割を超えている。

 

米国の大統領選と日米関係

 米国の大統領選については、日本の有識者の7割がトランプ大統領の再選を「望まない」(75.1%)との見方を示している。また、世界が直面している6つの課題については「北朝鮮の非核化」を除く「日米関係」「通称・経済・技術などをめぐる対中姿勢」「WTOなど自由貿易体制」「気候変動問題」「イランの核問題への対応」の5つの課題について、トランプ大統領の再選よりも、民主党候補が当選した場合の方が改善・進捗すると考えていることが明らかになった。

 ただ、アメリカ大統領選後に、アメリカが世界のリーダーに復帰するかについては、「民主党の大統領なら可能性はある」(43.1%)との見方が4割を超えているものの、「誰が大統領になっても復帰することはあり得ない」(22.5%)、「現時点では判断できない」(19.7%)との見方を合わせると4割となり見方は分かれている。

 今後の日米関係については、日米関係を基軸にすべき、との回答は27.2%で3割に満たず、「中国を含めた他の大国との関係も深めるべき」(36.1%)、「他の先進諸国との関係を深めることを重視すべき」(32.7%)との見方をあわせると7割に迫っており、日米関係よりも中国や、その他の先進諸国との関係を深めることを重要視している。

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 今回の有識者調査は2月10日~24日まで実施し、言論NPOの活動や議論形成に参加している346人から回答を得ました。

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